こんな話にお気に入りが50以上も付きました!
本当に皆さん有り難うございます。
今後も出来る限り皆さんに読んでいただけるように頑張って行きたいと思いますので、どうか宜しくお願いします。
では、本編へどうぞ。
ランサーのサーヴァント、クー・フーリンは己の得物である槍を構えながら眼前の黒いヒト型を睨み続けていた。
(クソッ……誘ってやがんのか?)
そのヒト型が取る構えは戦士である彼からしてみれば隙だらけであり、攻めてくださいと言っているようなもので、言うなれば格闘術の初心者が誰かの型を見よう見まねで真似しているような感じだ。
だが目の前のコイツが初心者だと?そんな事はあるまいとクー・フーリンは自分の考察を捨てる……未だに何者かは分からないが自分と同じ英霊の座に召し上げられた存在。
更に先程は致命傷になる程ではないとは言え、自分が防戦を強いられてしまった。
彼は決して油断などしていない、ましてやアーチャーや最初に目の前の敵と戦った際のように手加減を強いられている訳でもない。
だとするならばこのヒト型の実力が彼と拮抗している……もしくはそれ以上だということを己の直感と未だに少し痺れている両腕が表している。
それは先程の攻防でハッキリと分かる。
それよりも気になるのは先程から相手の体に浮かぶ刻印についてだ。
あれが浮かぶ度に動きのキレと拳の威力が上がっていき、その後に聞こえる鎖が砕けたかのような音……。
元々何かの誓約を己に課しているのか、それともあれは強化魔術の類いなのか。
しかし、それならば段階を踏んで解除するのが一般的で、だとしたら
初見での戦闘では
その事から『伍』が奴の強化または誓約の解除の最大の数値ではないか……と踏んでいるが、数字のカウントはランダムで規則性がない。
そうなると『伍』よりも上の数があり、『弐』から『肆』を解放・強化した今よりも数段階強化される可能性があることは十二分にあり得るだろう。
それに加え厄介なのは攻撃を受けたり、防いだ際に体から力がほんの少しだが抜け落ちていく感覚。
恐らくは奴の持つ能力の1つなのだろうが、依然抜けた力が戻ってくる気配は無く、これだと返ってくることは無いと考えた方がいいだろう。
戦闘を続けていると彼方は次第に強まっていくのに対して此方は弱体化させてくる。
なんともまぁ恐ろしい相手だ。
更に言うなれば初戦の時のように多少のダメージであれば気にすること無く攻撃に転じてくる辺り、中途半端な速度と威力の攻撃や反撃を行えば先程のようにそれを阻止され、逆に凄まじい反撃を食らうことになる。
相性は最悪……と言う訳ではないが、決して良いとも言えない。
宝具を使えば倒せるかもしれないが、まだこの場には初見のアーチャーのサーヴァントが存在する。
ならば不用意に見せることは今後の事を考えてもあまり良い選択とは言えないだろう。
ならばどうするべきか、今ここで奴との戦いを続けるべきか、それともアーチャーに擦り付けてここは退くべきか。
そんな事を短時間の間に考えていると、不意にヒト型が口を開く。
「来ぬのか?ならば此方から行くぞ」
瞬間、彼の視界の殆どが黒と碧で埋め尽くされる。咄嗟に槍を前に突き出し防御するが相手の拳の威力に体が浮かされ後方に飛ばされる。
最初に受けた拳よりも遥かに速く重い一撃の衝撃を両腕がまだ痺れている事もあり、殺しきる事ができず今度は全身が痺れる。
その為か、両足での着地が上手くいかずに思わず槍を持っていない左手を使ってしまう。
そうなると必然的に隙が増えてしまう事になり、それを相手が逃すはずも無く瞬時に間隔を詰められ再びその拳が自分に迫る──
「──残念だが、そうはさせん」
「何ッ!?」
──直前に2発の光矢が赤い軌跡を描きながらヒト型へと迫り、ヒト型はランサーへと向けていた体を瞬時に捻りながら1射目を右拳を横凪ぎに振るい弾き飛ばし、続く2射目を横凪ぎにしたその勢いのまま体を右に回し、左足で落とす。
その合間にランサーはヒト型から距離を置き、後方へと一気に下がる。そして前方に佇むヒト型が向ける視線の先へと同じく視線を向けると、そこには──
「……何のつもりだ、テメェ」
「何、マスターの命令に従ったまでだ」
─弓道で言う残心の状態で、黒い洋弓を構えている赤い外套を羽織っているアーチャーのサーヴァントの姿があった。
ヒト型が固まったように動かない為にアーチャーの元まで行き、先程の言葉の意味を問う。
「マスターの命令だと?」
「ああ、君と協力してアレを倒せとの事だ……気が乗らないが仕方あるまい」
フッ、と台詞の後に皮肉げに小さく笑った浅黒い白髪の弓兵に少し苛つきながらも、槍を肩に置きながらその後ろにいる少女へと視線を向ける。
黒髪ツインテールの少女は此方が投げた視線に対して強く頷く……それは隣の弓兵が言っていた事が正しいと言うことを表す。
そして再び弓兵を見ると目を細めて肩を竦める。
いちいちその言動が目に付くが今はそれどころでは無い……目の前に佇む英霊とは思えないまでの禍々しい威圧感を放つアレをどうにかしなければならないのだ。
戦略的撤退も視野には入れてはいるが、目の前の相手が自分がここから離れることを易々と許してくれる訳がない。
少なくとも、先の戦闘で弱体化らしきものを受けながら防戦に回っていたとは言え、自分と同等以上の速度で攻めてきた事から逃げることは今の状況では難しいだろう。
やはり、ここを乗り切るにはあのヒト型を撤退させるしか現時点では無い。
槍を構え、隣の弓兵に小さく問いかける。
「おい、弓兵」
「なんだね?」
「アイツが何処の英雄か分かるか?」
そう言いながらランサーがアーチャーを見ると先程の黒い洋弓はいつの間にか消え、両腕には自分とのやり合いの際に使用した黒と白の二振りの双剣が握られていた。
そしてランサーの問いにアーチャーはヒト型から視線を逸らすこと無く今度は真剣な表情で告げる。
「残念だがさっぱりだ……分かっていることは君との戦闘から見るに何かしらの武術の心得を持ち、かつ体に浮き出るあの刻印からして何かしらの封印を己に課している可能性があると言うことだけだ」
「……封印だと?」
「ああ、強化魔術の類いとも考えられるが……だとするならば最初から付与しているだろう」
淡々と事実を述べる為に口を開くアーチャー。
その間も彼の視線は常に前方に静かに余裕綽々と言った風に佇む禍々しさの擬人化とも言える正体不明のサーヴァントへと向けられる。
──余裕綽々と言ったが、当の本人の内心は「え、何?アーチャーとランサーが共闘するの?マジで?え、もしかしてそれと戦うって事は僕……かなりヤバくない?」と冷や汗ダラダラなのだが。
「それに段階を踏んで奴の力は強化されている。仮に強化魔術の類いであるとしても一気に強化して勝負を決める筈だ……それをしないというのであれば召喚の際に力を封じてられていて、それを何らかの方法で解放している……と考えられないかね?」
「成る程な」
アーチャーとランサーはそれ以降口を開かず、ただ自分達の前方のヒト型との戦闘に備える。
会話が途絶えた事を確認していたかのようにヒト型が口を開き、低く威圧感の込められた声で問いかける。
「……話は終わりか?」
2人は答えない。
だが、それが相手にとっての問いに対する何よりの答えになったであろう。
「そうか……」と一言呟くと大きく息を吐き出し、足を開いて腰を屈める。
「ならば──」
そうヒト型が溢したその時、本来3騎のサーヴァントと1人のマスターしか居ない筈のグラウンドに何者かが砂を踏みしめる音が響く。
一瞬停止する3騎と1人。その硬直がもっとも早く解けたのは青い装束とそれとは対極の真紅の槍を持つランサーだった。
彼はその音の主がいるであろう方向へ向けて目を見開き叫ぶ。
「誰だっ!!」
しかし、音の主はそれに答えることはせず、聞こえてきたのは硬質な廊下を人が走る音。
そしてランサーの次にアーチャーとヒト型、最後に硬直が回復した凛は直ぐ様その足音の正体に辺りをつけると同時に驚愕の声をあげた。
「生徒!?まだ学校に残ってたの……!」
「そのようだな……」
凛の言葉にアーチャーが静かに同意する。
その会話の直前にランサーはヒト型へ険しい表情で視線を向けると、ヒト型はただ何も言わずに頷く。
その反応を見たランサーは直ぐ様に霊体化しその場から消え、逃走者の排除へと向かった。
「……ちょっと?ランサーはどうしたのよ!」
「さっきの人影を追ったよ」
ランサーが消えてから約2~3秒程経ってから凛がランサーの不在に気がつき慌てる。
そんな彼女の言葉にランサーが逃走した者を追いかける所を見ていたアーチャーが答える。
「目撃者だからな、恐らく消しに行ったのだろう」
「……っ!」
アーチャーの言葉に彼女は息を飲む。
彼女の意識は今この空間よりも、逃げた生徒の安否と助けなければならないという目的に向けられていた……が、アーチャーの一言が彼女の意識を今現在へと戻す。
「さて……残るは我々のみだが、どうするマスター」
「それってどういう……っ!」
彼女がアーチャーに問いかけようとして彼の鵬へ顔を向ける。そうすると必然的に彼が向いている方向へと視線が向かい、その先依然として佇んでいるヒト型の姿を捉える。
そう、今この場にはランサーが居なくなったことによりサーヴァントはアーチャーとあのヒト型のみになっている。
と言うことはあのヒト型とアーチャーが戦わなければならないという事で、そうなれば地力で負けているアーチャーが圧倒的に不利だろう。
逃げた生徒とランサーを追いかける為にアーチャーを残して向かえば良いのだが、そうなるとマスターである自分を一瞬とは言え無防備に晒してしまう。
だがそうなるとその隙をついて殺されかねない。
どうするべきか……と、短い時間の中、凄まじい速度でこの場面を乗り越える為の算段をたてるが、そのどれもが様々な理由で却下される。
(くそっ、どうしたら良いってのよ……っ!!)
そう心の中で悪態を付く彼女の悩みを解決したのは、他でもない現在進行形で悩みの原因の1つであるヒト型であった。
「行くと良い」
「……え?」
ヒト型がポツリとそう溢した一言にそんな事をしている暇は無いとは分かっていながら思わず聞き返す。
すると、ヒト型は小さくため息を吐いた後に先程よりも強めの口調で口を開く。
「行くと良い……と言ったのだ、汝に悩んでいる時間は無いと思うが?」
「……っ!ええそうね、アーチャー!先に行って、すぐに追い付くから!」
そう言うが早く、足に強化魔術を使い常人とは思えない速度で校内へと駆ける凛。
そして何を思ったのかヒト型を一瞥したアーチャーは何事もなく霊体化し、ランサーを追った。
その後、ランサーに殺された生徒──衛宮 士郎を強引に蘇生した凛はアーチャーにランサーの追跡を命令。
そして校庭に戻るとそこには既に黒いヒト型の姿はなく、抉られた地面とへしゃげた朝礼台だけが残っていた。
◇
一般人の理解を越えた戦いを見てしまった青年、衛宮 士郎は青い装束を来た何者かに殺された……はずだった。
記憶には確かに心臓を一突きされ息も絶え絶えで段々と寒くなっていく体を薄れていく意識の中で感じていたことを覚えている。
だが、こうして自分は生きている。
何があったのかは分からないが、近くに落ちていたペンダントを拾い、そのまま自宅の帰路へとついた。
そして、朦朧とした意識の中でフラフラと自宅である衛宮邸に帰宅し、安堵していたのもつかの間。何処からともなく突如現れた青装束の男に再び襲われる。
近くにあったポスターを丸め、強化の魔術を流し青装束の男の槍をギリギリ防ぐと、士郎は何かに導かれるかのように命からがら土蔵へと逃げ込んだ。
土壇場でポスターを広げ、心臓を狙った真紅の槍の一撃を防ぐと驚いた表情を男が浮かべ称賛してくるが、そんなことは今の士郎にとってはどうでも良かった。
自分はこんなところでは死ねないのだ。
恐らく……いや、確実に1度自分は死んだ。
それを誰かは分からないが助けてもらったのだ。
「まぁ……運が悪かったと思いな、坊主」
そう言いながら男は槍を構える。
その姿から男は人を殺すことをなんとも思っていないように士郎には見えた。
「ふざけるな……っ!」
その姿を見て、彼の口からはその言葉が自然ともれていた……。
制服の槍で空けられ血で染まった胸の穴に手を添える。これこそ1度自分が死んだ証……そして、誰かに助けてもらった証。
「助けてもらったんだ……」
世界がゆっくりと動いているように感じる。
青き陣が光を放ち始める。
「助けてもらったからには簡単には死ねない……」
それはかつて自分が体験したことだから。
あの地獄の中を生き抜いた……いや、生き残ってしまった自分だから。
そして、陣の光は呼応するように輝きを増す。
「俺は生きて義務を果たさなければならないのに……死んでは義務が果たせない」
未だにあの地獄を思い出す。
炎と瓦礫で包まれた赤い、赤い地獄を。
陣の輝きは更に増していく。
「こんなところで意味もなく……」
男が槍をゆっくりと突き出す。
それに対抗するように彼の手の甲に小さな赤い光と共に同じく赤い刻印が浮かぶ。
「平気で人を殺す、お前みたいな奴にっ!!」
目を見開き彼はそう叫ぶ。
そして槍が士郎へと迫り、胸を穿とうとするその瞬間、土蔵内に青き光が満ちて魔力が溢れ出す。
そして青装束の男──ランサーは驚愕で目を見開く……あり得ない、と言ったように。
「何っ!?サーヴァントだとっ!!」
槍を縦にし、迫る一撃を防ぐ。
しかしその一撃は重く、ランサーを土蔵から外へと飛ばしていく。
突然の事に呆気に取られる士郎。
そんな彼が目にしたのは、風に揺られながら鎧とドレスが一体化したかのような姿をした少女。
何が起きたか未だに理解できていない彼に向き直り……一言。
「問おう……貴方が私のマスターか」
それは
因みにそれを遠くから眺めている1騎のサーヴァントが「うわーー!原作通り!尊いっ!!」と悶えていたとか何とか。
今回も最後まで読んで頂き、有り難うございます。
本当は先週の日曜日に投稿しようと思っていたのですが、台詞回しとかを考えていると今日になってしまいました……。
それでも改めて読んでいると本当にこんな事を言うだろうか……?と違和感を感じてしまいます。
キャラ崩壊のタグでもつけておこうと思っていましたが……これは必須ですね。
それでまた次のお話で。
主人公の宝具は幾つが良いですか?
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3つ
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4つ
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5つ