シルヴァリオサーガRPG ブランシェ家亡命√RTA 作:TTオタク
ようやく星辰光を獲得する、なRTAはーじまーるよー。前回、士官学校での再会イベで終了しました。その後は倍速を続け、卒業にまで漕ぎ着けます。やってることはひたすら基礎ステータス上げなので、見ている方も暇ですしね。
はい、これで士官学校を主席で卒業できました。このまま士官大学校へ向かうルートもありますが、そんなもの通ってたら大虐殺に間に合いませんからね。
新西暦1024年。これで部隊へ配属になります。ですがその前に、念願の星辰光獲得です。アストラル照射を経て、はい無事に星辰奏者になりました。ぱちぱちー。
星辰光の能力の計測のために、星辰光を発動する事を要求されます。良いでしょう。発動値AAAの力を見せつけてやります。
選択肢「創世せよ、天に描いた星辰を。我らは煌めく流れ星」を選択。
はい、どうでしょうこれが発動値AAAの実力───ん? どうして画面からホラーゲームも真っ青な悲鳴が聞こえるのかな? まるでモルモットとして丹念に切り刻まれるアッシュくんのような悲鳴だね。あれれーおかしいね。
大慌てでステータスを再確認していますね。めちゃくちゃ動揺しています。こんなんじゃRTAになんないよ。
カティアちゃんは身体中の血管が負荷に耐えきれず破裂、脳を含めた体内出血と内臓破裂、その結果による細胞の壊死を繰り返しながら、生きながらにして腐っていきますね。
画面が暗転して集中治療室に叩き込まれます。一応カティアちゃんはアマツの血筋なので、死ぬと政治的にやばい立場ですからね、主に星辰奏者技術者たちが。
血統派がピンピンしてた時特有の高待遇の治療でどうにか生存します。なんと
はい、現在のカティアちゃんですが、全身の骨が砕けて立つ事もままなりません。内臓はどうにか回復したものの、しばらく流動食です。そして何より、視力が低下し、メガネが必要になってしまいました。
治療が進んでいくうちに髪も伸び、だんだんと髪の毛に白髪が増えていって、陽光を思わせるような金髪が、不健康そうな色素の薄い金色に変わってしまいました。ほとんど銀髪ですね。
個性【拭えぬ恐怖】が追加されました。クソ個性です。これはキャラに致命的な出来事が発生した場合、高確率で習得してしまう個性です。トラウマに関わる行動に制限がかかる個性で、往々にして邪魔なものでしかありません。一応光に傾きすぎないための重石としては有能なのですが、RTA的には地雷です。
この個性のせいでカティアは発動値への移行がほぼ不可能になりました。まあ完璧な医療設備が無いと地獄の苦しみの末に死ぬとか普通使おうとしませんからね。常識的な反応でしょう。
そんな出来事を踏まえ、カティアの配属は
まあ叡智宝瓶所属は当初の目標だったので、結果オーライだったりします。
というわけで叡智宝瓶での生活が始まります。配属部署は無理を言ってある場所にしてもらいます。はい、ブランシェ夫妻の所属する部署です。
「貴女が新任の助手の朧少尉ですね。自分のような冴えない技術者の助手などつまらないでしょうが。何か学べる事があるなら全て盗んでいって下さい。質問ならいつでもお受けします」
ミリィの父であるカルロ・ブランシェ少佐が笑顔で言ってくれます。穏やかで謙虚な性格で、あぁミリィのお父さんなんだなと思わせる温かい雰囲気を持っています。
選択肢「自分は少尉なのですから、敬語を使うのは私の方です」を選択します。
「いや、いくらなんでもアマツの方にそんな───いえ、貴女は真剣に技術を学びに来てくれたんですね」
「
はい、これで無事ブランシェ夫妻の部下になることができました。そして順当にカルロの妻であるエミリー・ブランシェとも仲良くなれます。そして本RTAのメインヒロインたる、ミリィ嬢の登場です。
「ほら、ミリィ。カティアちゃんに挨拶して」
「ミリアルテ・ブランシェです。ミリィって呼んでください」
かわいいですね。両親の部下で、たびたび家に遊びに来るのでミリィちゃんはあっという間に懐いてくれます。
「お姉ちゃん、どこか痛いの?」
ミリィはかなり聡い子で、適格にこちらの心理面の欠落を見抜いて癒しに来てくれます。さすがは魔星更生師とまで言われる天使ぶりです。
ここで選択肢「私はね。結局何もできなかった大馬鹿者なんだよ」を選択します。
あ、ミリィが抱きしめてくれましたね。カティアも思わず泣いています。カティアをカルロもエミリーも慰めてくれます。ほんとあったけえなぁ。これは世界敵に回してでも守ると誓う輝きですわ。
これでブランシェ家の好感度稼ぎは完了したので、次のステージに移ります。
メンタルが復活したおかげで自由度が増えました。相変わらず【拭えぬ恐怖】は消えていませんが、それでも十分です。全力で研究───ではなく叡智宝瓶内の横領や薬物横流しの告発に力を注ぎます。
研究は成果を出すまでに時間がかかりすぎますし、そもそも技術型チートのブランシェ夫妻とミリィがいるので技術系列の最終形態である
それよりもある部隊のスカウト条件である汚職や横領の検挙で一定以上の成果を上げる、を達成する必要があります。
さて、条件を達成したのかイベントが発生しましたね。
「はじめましてになるな。俺は
というわけで、深謀双児に転属します。チャート上は転属を決めて行動していましたが、カティアとしてはブランシェ家を思っての行動だったので、突然のスカウトに面食らっています。
自動で回答は一旦保留にされます。ここで相談相手を選べるのですが、ここはすかさずブランシェ夫妻を選択します。別に朧当主のおじいちゃんでもいいのですが、そろそろおじいちゃんは死期を悟りはじめているので関わりすぎるとチトセネキがおじいちゃん殺した時にメンタルが死にます。なのでブランシェ夫妻が最適解です。
「そりゃ一緒にいて欲しいっていう思いはあるよ。でもそれで行動を縛っちゃいけないんじゃないかな?」
「カティアちゃんが選びたい物を選んで。でも、私たちにはいつだって会えるんだから、カティアちゃんがやりたい事を優先してもいいんじゃない?」
はい、夫妻の後押しにより無事深謀双児配属が決まりました。
「ありがとう。お前さんみたいなのが居れば百人力さ。早速で悪いが、配属は新設された対テロ捜査部門になる。昨今の改革派と血統派の争いは激しさを増し、その手段としてのテロリズムが増加しつつある。政治主張はどうであれ、市民に被害を出すテロを許すわけにはいかねぇ。今までは普通の犯罪捜査部門で行なっていたが、処理能力を超えはじめてな。忙しい職場になるが、お前のウデを期待してるぜ」
対テロ部隊に放り込まれたところで今回はここまで
†
私───ミリアルテ・ブランシェは回想する。
「はじめまして、ミリィ。私はヒジリ・朧・アマツ。ヒジリでもいいけど、カティアでも良いよ。好きな方で呼んでね」
両親の部下であるカティアお姉ちゃんはすごく優しい人だった。貴種の生まれにも拘わらず、周りに優しく接し、私のことを実の妹みたいに可愛がってくれた。
時々遊びに行った研究所でも、お父さんやお母さんより年下なのに、まるで同僚みたいに仕事を託される様は、私の憧れでもあった。
「ミリィは本当に可愛いし良い子だね。お小遣いあげる。お父さんとお母さんには内緒だよ」
そう言って優しく頭を撫でるお姉ちゃんの顔は優しくて、とっても大好きだった。でも、その顔を見るたびに私の疑問は強くなっていった。
「大丈夫だよミリィ。ちょっと雷が強いけど、この家に落ちたりしないよ。大丈夫大丈夫」
辛い時や悲しいことがあれば抱きしめて慰めてくれた。どんな時も笑っていたお姉ちゃんの笑顔は、どこか悲しそうな雰囲気をしていて、すごく辛そうだった。
最初は私の事が嫌いなんじゃないかと思ったりもしたけど、お姉ちゃんが私に向けてくれる愛情は本物だったし、お父さんとお母さんに向ける笑顔も辛そうだったから。
だから私はお姉ちゃんを含めて4人でピクニックに来た時、お姉ちゃんに思い切って聞いてみた。
「お姉ちゃん、どこか痛いの?」
辛そうなのはきっとどこかが痛むからだ、という子供っぽい理由で私は言った。お姉ちゃんは少し驚いた顔をして言う。
「ミリィは優しいね。お姉ちゃんはどこも痛くないよ」
「でもお姉ちゃん辛そうだよ? 私にできることがあるなら言って欲しいな。私お姉ちゃんが大好きだから、お姉ちゃんが苦しそうだと、私悲しいな」
お姉ちゃんはしばらく私を見つめた後、私を膝の上に乗せた。
「じゃあ優しいミリィに甘えて、少しだけ愚痴らせてもらうね」
少しだけ鼻声だったけど、これは言ってはいけないんだと思った。お姉ちゃんの心の傷に踏み込んだのだと、子供心に理解できたから。
「私はね。結局何もできなかった大馬鹿者なんだよ」
そこからはまるで溜まった何かを吐き出すように、お姉ちゃんは過去を語ってくれた。
「昔ね、私が今のミリィより少し年上だった頃、私にも大好きなお姉ちゃんが居たんだ。私、結構早くお母さんもお父さんも死んじゃって。使用人たちは良くしてくれたけど、私は彼らより立場が上で、思うように甘えられなかったから。思う存分甘えられるそのお姉ちゃんが大好きだった」
お姉ちゃんは大きく深呼吸をして話を続ける。
「周りのみんなもお姉ちゃんが好きで、たくさん友達もできた。苦しい状況だったけど、久しぶりに子供でいられた時間だったんだと思う。私はあの場所が大好きだった。けどね、お姉ちゃん、私の事嫌いだったみたいで。結局仲直りもできずに離れ離れになっちゃって。友達を1人も助けられなくって。たまたま再会できた友達が、私のおかげだって言ってくれたけど、結局私の力不足だったんだ」
お姉ちゃんが私の手を握る。その手はとても震えていた。
「シンシアもロジーもダスティンもヴィルもマリアもゼファーも、マイナお姉ちゃんも! みんな! みんな大好きだった! 離れ離れになった後、みんなを助けられる立場を持っても、みんな既に居なくなっちゃってて。今度みんなと再会できたら、大切な人ができたら守り通せるようにと軍に入って、星辰奏者になって。でもダメだった。できあがったのは動かせば自壊する
お姉ちゃんが上を向く、晴れ渡る空を見たのか、涙を堪えていたのか。その両方だと、私は思う。
「みんなを守ってあげなきゃいけなかった。私はできたんだから! できるんだから! きっと私にはできたはず。おばあちゃんを殺して金を奪ってみんなに分ければよかった。嫌いだからなんて嫌がらず、もっと真面目に武術に励んでアマツになるべきだった。みんなよりずっと恵まれてるクセに何もできず、挙句発動値を使うのが怖い? なによそれ。この後に及んで自分の身が恋しいの? どうしようもない塵屑のくせに」
お姉ちゃんの呼吸が荒くなっていく。
「あれだけドブをさらえば、ほかのドブ漁りが廃業になるのはわかり切ってた。でもどうでもよかった。大切じゃない人だったら死んでも良かった。マイナお姉ちゃんみたいに誰かを犠牲にすることを辛いと思えないクズで。好きな人にしか優しくできなくて、甘えたい癖に甘える相手すら守れずに、挙句そんな無様を晒して自分の命が惜しい? 誰かは犠牲にできるくせに自分はできないんだ」
ポタポタと、私の手に水滴が落ちる。
「大馬鹿だよ、私は。みんな優しいなんて言うけど、結局はどこまでも自分優先のクズじゃない。自分が好きな人に優しくして気持ちよくなりたいだけの、救いようのない塵屑。本当に、救えない」
お姉ちゃんは袖で涙を拭き、私立たせて向き合う。
「ごめんね、変な話して。8歳の子にこんな話するべきじゃなかったのに。ごめんね」
目一杯吐き出したはずのお姉ちゃんは、いつもよりさらに悲しそうな顔をした。私は、子供なりに理解できた事を話す。
「よくわからないけど、お姉ちゃんはわがままが嫌なの?」
「わがまま?」
お姉ちゃんが聞き返す。
「だってお姉ちゃん、わがまま言って誰かの物をとっちゃったんだよね? それはいけない事だよ。けどね、欲しいって思う事はきっと悪い事じゃないよ。だって、私も欲しいおもちゃが一つしかなかったら悩んじゃうもん。お姉ちゃんもきっとそうだよね。だからね───えっとね」
言葉が出ない、私が迷っていると、横合いから声がする。
「
「カルロさん?」
「ごめんね、盗み聞きするような形になって。でも、言ったことは本心だよ」
お父さんは少し困った笑顔で言う。
「他人より愛する人を選んでしまうのはごく普通の事じゃないか。僕だって、ミリィと知らない人が溺れていたら、真先にミリィを助けるさ。それに、大切な人がいるからこそ命が惜しくなるんだ。カティアの言った事はごく当然の。普通のことだったんだよ」
お父さんの言葉に、お姉ちゃんは動揺する。お父さんに助けられたけど、私は私でお姉ちゃんにしてあげられる事をしよう。
「大好きだよ。お姉ちゃん」
私はお姉ちゃんを抱きしめた。