シルヴァリオサーガRPG ブランシェ家亡命√RTA 作:TTオタク
あの鬼才ミリィの両親はこれくらいチートでいいと思った。後悔はしていない。
目が覚めたら知らない天井、のRTAはーじまーるよー。前回はゼファーさん死亡イベに介入して気を失った所からですね。
目が覚めると知らない天井です。左眼が破裂してお亡くなりになったので、視野判定にデバフが乗っていますね。
はい、しかもベッドから起き上がれません。ステータスを確認すると、右手、右足、左足、左眼が欠損しており、各種臓器も真っ赤っかなダメージカラーで表示されています。右手は戦闘中には欠損していませんでしたが、どうやら治療時に切断されたようですね。
ぶっちゃけほぼダルマ状態です。目が覚めたら今後の人生がやばい状況下なのにカティアのメンタル値が全然削れていません。はい、個性、【奈落の太陽】が【光の殉教者】に変わっていますね。覚醒率の上昇、メンタル値減少割合の低下、特定キャラの好感度上昇などのメリットがある状態です。【光の亡者】よりは光度合いが低いので、彼らほどの覚醒はできませんが効果はあるでしょう。
視界を動かして左を見るとゼファーさんが唯一残った左手を握って寝ています。かわいいですね。そうこうするとお見舞いイベントが発生します。
「カティアちゃん! 気がついたのね!」
カトレアが駆け寄ってきます。ゼファーさんも目が覚めたのか、カティアが目覚めたのに気づきましたね。
カトレアが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれますし、ヴィルも消化器系に問題のない範囲の食事を持ってきてくれます。まあ胃腸が死んでるので粥みたいなのしか食えないんですけどね。
そしてゼファーさんは死にそうな顔をしています。カティアが意識を取り戻したおかげでより四肢の欠損を意識してしまったようですね。
時折気まずい沈黙が訪れるのが見ていて心が痛いです。みんな明るく振る舞わないとやってられないほど心を病んでいるのがみえみえでこちらの心も破壊してきます。
「まあ、なんだ。せっかく助けてもらったんだし、何か買ってやるよ。滅多にないぜ俺が奢るなんて。せっかくの機会だから、ほら。欲しいものを言えよ。なんでもいいぜ」
ゼファーが罪滅ぼしを兼ねてかこんな殊勝な事を言ってきます。今のメンタルボロボロゼファーさんは本当になんでも買ってきてしまうので注意です。
さて選択肢ですが、個性【光の殉教者】のせいで前に進むのに必要なもの───武器防具や義手義足といった戦闘力を取り戻す系しか揃っていませんね。
仕方がないので選択肢「義手と義足」を選びます。
ゼファーさんが俯いてしまいましたね。ゼファーさんはカティアが今なお、己の命を糧にして幼馴染たちの未来を切り開く気でいることに気がついたようですね。
病室の空気が見ているだけで窒息死しそうな重さになってきました。ですが放置です、なにせゼファーさん√で大怪我すると必ず発生するイベントが待っているからです。
「私だ、入るぞ」
はい、チトセネキが入室してきましたね。これはゼファー√必修イベのチトセネキ宣戦布告イベです。このイベントが発生するとゼファー√が確定になり、見事(生き残れば)ゼファーさんを婿とすることができます。
なぜ宣戦布告かと言うと。
「なあヒジリ。貴様も
はい。チトセネキからの好感度が一気に敵対まで行くからですね。特に今回は酷いようで、怨敵レベルまで好感度が下がってます。
まあ大虐殺でゼファーさんに右眼をえぐられると好感度が元どおりになり、妾としてなら認めてやるぞ? くらいまでは復活するのですが、今は機会があれば殺すくらいに下がっています。
「我々
チトセネキめっちゃ怖いです。試走した時より数倍は怖いですね。一体何がいけなかったんでしょう。
「だがお前は職務を放り出して無断で出撃し、許可もなく優秀な隊員2名を負傷させた挙句、自身はもう使い物にならない程の怪我を負ったと。そして結果は何の成果もなく、1人であれば逃げ切れただろうゼファーの足を引っ張っただけ」
この時は健在の両眼がギラギラと怒りに光っています。めっちゃ怖いですね。
「なんだそれは? ふざけるなよ。貴様は貴種としても軍人としても自覚が足らん。我が血縁からそのような愚物が出るとは思ってもみなかった。申し開きがあるなら言ってみるがいい」
選択肢は「ありません」を選択します。
「フン。言い訳をしたならば今すぐ叩き斬ってやろうと思っていたが、まあいい。後日査問会に呼び出してやるから用意をしておけ」
吐き捨てるように言い残してチトセネキは病室を去ります。ぶっちゃけ正論しか言ってないのが耳に痛いです。優秀な部下が勝手に戦闘に突っ込んで使い物にならなくなった挙句、ほかの部下を危険に晒し、何の成果も得られなかったとなればブチギレるのも無理はないでしょう。まだ敵星辰奏者を仕留めていればマシだったんでしょうが、時すでに遅しです。
ゼファーさんが呆然としています。目の前で起こったことが理解できないという風ですね。
チトセイベは終了し、査問会が始まります。チトセネキの影響力はデカく、指揮権限の剥奪という重たい罰則が下されましたが、ぶっちゃけ幼馴染がついてきてくれるのは部下だからじゃないのであんま関係ないです。
さて、無事義足を履いて行動ができるようになりました。任務に出ます。まだ不調は治ってないし、リハビリもろくにしていないけど止まってなどいられないからね。カトレアが号泣して止めようとしてきますが無理です、悠長にリハビリしていたら大虐殺に間に合いません。
たまに傷口が開いてやばいですが、気合で耐えます。気合と根性と聞くと胡散臭さしかありませんが、こうして恩恵に預かるとその偉大さが実感できますね。
そうこうしていると、目標のイベントが発生しました。
「なあ。軍を辞める気はないか、カティア」
はい、ゼファーさんが軍籍を離脱する事を提案してきます。これはゼファー→
正直病み病みイベントが多かったので、ぽっきり心が折れるのではと思っていましたが、どうやら再起に成功したようですね。
「生活費なら俺たちが稼ぐしよ。お前はしばらく食っちゃ寝でもしてろよ。金の事なら気にするな。生憎と、使う暇がなかった貯金が腐るほどあるんでな。俺たち3人分を合わせれば豪邸が建つ額だぜ」
ゼファーさんが他人を養う発言をするなんて意外に思えますが、なんだかんだミリィを一人前になるまで養ったりしてるあたり、なんだかんだ大切な人に対しては金に糸目をつけないイケメンなんですよね、ゼファーさん。
選択肢「ごめんね」を選びます。というか一択なのでこれしかないです。
ゼファーさんが絶望顔を───してませんね。まるで想定の範囲内だったかのように覚悟を決めた男の顔をしています。
「そうか。まあお前はそういうタイプだよな。じゃああれだ。お前は一旦原隊復帰して
ここはどの選択肢を選んでも無駄なので連打します。覚悟を決めたゼファーさんは強いからね。相手に否定されたくらいで折れるような雑魚メンタルではありませんからね。
現在カティアのメンタル属性が光に寄りすぎてますが、このイベントフラグを立てておくと、自動で闇に振り戻してくれるイベントが発生するので、光汚染された場合は必ずやっておきましょう。
ゼファーさんが只人として覚醒してくれたイベントですが、実はこれ地雷イベになる可能性を秘めています。なぜならこのイベントの発生が早すぎ、ゼファーさんがブランシェ一家暗殺を請け負う前に裁剣天秤を離脱してしまうと、別の凄腕星辰奏者が派遣されてしまい、説得が効かないため大ロス確定になってしまうからですね。
さて、放っておいてもろくに戦闘もできない体になったためか深謀双児に戻されます。しばらくは適当な任務で時間を潰します。
「ヒジリ。お前に知らせておきたい事がある」
シロウ・漣・アマツが話しかけてきましたね。表向きは穏やかな風を装っていますが、苦々しい顔を隠し切れていませんね。
「ブランシェ夫妻が改革派のターゲットになったらしい。おそらく夫妻の研究成果への警戒だろうな。なんでも星辰奏者の能力を向上させる兵装を開発中とのことだ。にわかには信じがたいが、もしそんな物が完成すれば戦局は一気に覆ってしまうだろうな」
はい、実はブランシェ夫妻は
問題を解決して前に進むのが兵器開発の基本である以上、いずれ量産性の問題は解決されて然るべきと誰でも考えます。仮に量産が不可能だとしても、クソ強い血統派星辰奏者が強化されるだけで十分脅威ですからね。
「開発されてしまったら間違いなく血統派の手に渡る。技術の持ち逃げもまず無い。あのお人好し夫妻が研究に出資してくれた恩人たちを裏切るわけがない───と改革派は考えている訳さ。君もあの夫妻を知っているならわかるだろ? あの夫妻は恩人が世間では如何なる評価をされていても、躊躇わずその味方をするタイプだ。元々血統派は身内に甘いし、夫妻のような金のなる木に親身に接しない訳がない。恩を感じた夫妻が命をかけても不思議じゃないさ」
そういう訳です。血統派全盛期の環境下で研究をする以上、スポンサーは軍部のお偉いさん、もしくは貴族の金持ちでしょう。両方血統派ですね。
そりゃ自分の研究に価値を見出してくれて出資してくれたなら恩義を感じない訳ないし、血統派にだってある程度の善良性を持ったタイプも居たでしょう。あの大天使ミリィの両親です。恩義を感じている相手が、家族を守るために力を貸してほしいと言ってきたら断る訳ないでしょう。まして、政治的な立場もなく、改革劇の傍観者でしかない夫妻に勝馬に乗れというのも無理な話です。
ですが、これは副次的な理由です。
「科学者という生き物は自分の好きな分野を認めてくれる相手には甘いものさ。なにせ夫妻はアダマンタイトには
シロウの口からとんでもない事が語られましたね。そうです。ブランシェ夫妻は極めて限定的に、度重なる偶然に助けられながらとはいえ
優秀な科学者を、拉致や監禁といった能力を損なわない形での無力化ではなく、殺害という過激な方法に至った理由がこれです。といってもカグツチは特に干渉しておらず、チトセネキの過激な粛清を止めなかっただけです。
研究者というのは得てして既得権益を持っている側に付いている物です。チトセネキのような過激派の餌食になるのは目に見えているでしょう。
魔星を作ったり、ヴァルゼライド閣下を改造したりするために、カグツチとヴァルゼライドは優秀な科学者を囲い込んでいました。なので結構な数の科学者が保護されていたのですが、優秀過ぎるのは対象外のようです。ほっとけば危険因子を排除できるなら便乗しない手はないですからね。
当然カグツチが干渉していない以上、ヴァルゼライド閣下も特に関知していません。血統派の危険な科学者が改革派によって殺されただけの事案ですからね。よくある一幕です。
結果、過激な強硬手段を取る人物を
というわけでブランシェ一家が命を狙われている事が判明した所で今回はここまで。
†
カティアの体はずいぶんと小さくなってしまった。人体において両足の占める割合は大きく、それが無くなっただけでずいぶんと縮んで見えるものだった。
ゼファー・コールレインは兵士である。四肢の欠損した兵士など腐るほど見てきたし、そもそも星辰奏者というのは強者である以上、一般兵の中から不具の者を生み出す機会くらいはいくらでもあった。
だがそれでも、残る左手のみが移動手段であるカティアの姿は、どうしようもないほどの吐き気を催してしまうものだった。
実際、俺はカティアが目覚める前に何度も吐いていた。カトレアは初めて見た時は失神したし、あの無感情なヴィルも声を上げて泣くほどの悲惨さだった。
「ほら無理しないで。大変な思いをしてるんだから少しぐらい頼りなさい」
カトレアは軽々とカティアを抱える。星辰奏者でない彼女ですら、簡単に持ち上げられてしまうほど、カティアの体は内外が欠損していた。
カトレアは必死に笑顔を浮かべて、病室の雰囲気を明るくしようとする。だが瞳に溜まる涙を隠し切ることはできず、声は震え上ずっていた。
ヴィルも美味い病院食の話題など、彼らしい話で盛り上げようとするが、食べられないものの話題に突き当たり、言葉をつぐんでしまう。
ならせめてと、俺は話題を切り出す。
「まあ、なんだ。せっかく助けてもらったんだし、何か買ってやるよ。滅多にないぜ俺が奢るなんて。せっかくの機会だから、ほら。欲しいものを言えよ。なんでもいいぜ」
冗談めかして、ほしいものの話題であれば暗い話は回避できるだろうと、学のない頭で考えて出した答えだったが。
「うーん。今は義足が欲しいかな。義手も欲しい。あまりみんなに迷惑をかけるのも良くないしね。せっかく私の星辰光が強い事がわかったんだから、いつまでも戦えない体でいるわけにもいかないし」
ニコニコと、まるでいつもと変わらないような笑顔でカティアは言う。
俺はその返答に表情を保つ事ができなかった。なにせ2回目でこれだ。3回目の発動などただの自殺でしかない。それをわかった上でカティアは進むと言っていた。
特に、ヴィルとカトレアが気を失っている間にカティアの本心を聞いていた俺は、どうしようもなく理解できてしまう。
愛に序列を付けてしまう闇の理屈と、目的のためにあらゆるものを切り捨ててしまう光の宿痾の合併症に悩んだカティアは。結局は特定の誰かを愛さないという光の道を選び、愛し愛されることを喜びとする闇の道を捨てたのだ。
自分を愛し助けてくれる人を守るために、決して特定の誰かを愛さずに助けを乞わず戦うという矛盾した決意を抱きながら。
カティアの言葉の本質を理解せずとも、機会があれば死ぬ気で戦うと宣言された以上、ヴィルとカトレアもカティアの末路を理解して絶望していた。
だから正直期待していたのだ、部屋に入ってきたチトセがせめて明るい話題を持ってきてくれると。
だがしかし、チトセの口から発せられたのは明るい話題でも、それどころか無事を喜ぶ言葉ですらなく───
「なあヒジリ。貴様も
ほとんど罵倒に近い叱責であった。
そこからのチトセの言葉は耳に入ってこなかった。
ふざけているのか? 義理とはいえ妹が左手以外全て失い、ロクに物を食えない体になって言う言葉がそれか? 愛する人を守ろうと必死になった姿が無様だと?
怒りに我を忘れたわけではない。チトセの正しさは理解できるし、軍規の面で考えれば何一つ穴などない理論で、
だがそれは、正しいだけだろう。愛や想いの入り込む余地のない正論は、それこそただの暴力でしかない。
弱さを一切理解しない光のあり方を見て、俺はふと思う。
自分を守ってくれない正しさなど、ただの害悪じゃないか、と。
なぜか笑えるほど簡単に受け入れる事ができたこの理屈は、言ってみればただのわがままだ。
だがそのわがままは、俺の中で日に日に大きさを増していった。
「もうやめて! 私なんでもするから、お願いだから止まってよ。私たちを幸せにするためにカティアちゃんが死ぬなんて、そもそも破綻してるじゃない。貴女が死んじゃったらぜんぜん幸せになんてなれないよ」
幼馴染3人を含めた人々に未来をもたらすべく国へ奉仕せんと未だ癒えぬ体で立ち上がったカティアと、それを涙ながらに止めるカトレア。
国全体に利益をもたらす奉仕者と、それを私欲で止める者。どちらが正しく、どちらが間違っているかは明白だが、どうにもその正しさには納得できなかった。
こうして俺は───ゼファー・コールレインは芯を得た。わがままに、自分の思うままに生きてやろうと。当たり前に生きて、当たり前に死のうと。