戦姫絶唱シンフォギア IB   作:ドナルド・カーネル

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どうも作者です。
創約2巻読んだあとに『アカツキノソラ』を聞くと上条さんに聞いて欲しい曲だと思います。『覚悟は大事だけどもっと自分を大事に』ってフレーズがすごく刺さります。切ちゃんと早く絡ませてみたいですね。
それでは第18話どうぞ。


第17話 兆しの行方は

1

 

雪音クリスは浅橋の上で一人考えていた。

 

(完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だと、フィーネは言っていた。・・・あたしが『ソロモンの杖』を起動させるのに半年はかかずらったのを・・・)

 

あいつは、融合症例であるあの女はあっという間に起動させ、それどころか無理矢理力をぶっ放した。それは、彼女にとっては恐怖以外の何物でもなかった。そして、それと同じかそれ以上に恐怖を感じたのはあの右手であった。あの一撃には、あのあたり一面を全て壊す程の威力だということは明らかであった。なのに、それなのに!

 

(・・・あの男、拮抗していたとはいえ、デュランダルの一撃を真正面でかき消しやがった。どれだけデタラメな力なんだよ・・・ッ!?)

 

「化け物共め・・・!」

 

不意にそんな言葉がでてきた。あの右手は、あんな一撃をくらってなお、傷一つなくデュランダルの力を消しきった。少女は自分が起動させた完全聖遺物、ソロモンの杖を握った。そして、自分の協力者が何故あそこまであの二人にご執心なのかがようやく分かった。自分以上のフォニックゲインを生み出すことが出来る少女と、その力を一撃にて打ち消すことが出来る規格外の少年。

いくら彼女が、雪音クリスがソロモンの杖を半年で起動させた才能の持ち主とはいえ、その二人の前では霞んでしまう。もし、自分があの二人を連れて来たら、

 

「・・・あたしは用済みで、また、ひとりぼっちに・・・っ」

 

イヤだ、それだけはイヤだった。痛いのは我慢できる。誰かを傷つけるのだって多少の躊躇いはあっても命令されればできる。でも、一人になることだけは耐えることが出来なかった。誰かに助けを求めても、誰も助けてくれない。嫌だと言っても、嫌なことをやめてくれない。あんな生活に戻るのだけは、少女には耐えることが出来なかった。不安で顔が歪みそうになった。だが、少女は顔に力をこめて、後ろにいる女を見る。

 

「・・・分かっている、自分に課せられたことくらいは」

 

そういって少女は、ソロモンの杖を女に向かって投げる。

 

「こんなものがなくても、あんたの言うことくらいやってやらぁ!あいつら、よりもあたしの方が優秀だってみせてやる」

 

少女は自分以外が力を持つ事が許せなかった。だから……。

 

「あたし以外に力を持つものは、全部この手でぶちのめしてくれるっ!それがあたしの目的だからなぁ!!」

 

そんな少女の決意に対し、女はただ笑みを浮かべたままだった。そんな中、少女はもう一つの疑問が頭をよぎった。

 

(あいつは、どうしてあたしを助けたんだ?敵であるあたしを・・・)

 

デュランダルの一撃が迫るとき、雪音は動くことが出来なかった。何故なのかは分からないが体が動くことは出来なかった。もしあのままでいれば、自分は確実にやられていた。でもあの男は、その間に割って入って自分を守った。訳が分からなかった。助ける理由も、自分をかばう理由もないのに。

 

(・・・訳解んねぇよ)

 

あのツンツン頭には、自分を助けてくれた借りがある。だがもうそんな悠長なことを言っていられる状況ではなかった。

 

(・・・悪いけど、次会ったときは容赦はしねぇ)

 

今度こそ、確実にあいつを倒す。少女は心の中でそう誓った。

 

 

 

 

 

 

2

 

「はぁ~~~」

 

だるいなー、と授業を真面目に受けている人からは出ないであろう言葉を心の中で呟いたのは、不良少年上条当麻であった。久しぶりの授業だからか話している内容が飛んでおり聞いたところでわからないところが多い。また、とある一件で利き手に怪我をしたためペンを握ろうにも痛みのせいで長時間握れず、一層やる気をなくしていたのである。

 

(右手がいてぇ・・・)

 

不良少年は暇そうに窓の外を眺めながら、その一件を思い出す。デュランダルの一撃をまともに受けたのが原因で右手首に負荷が掛かり、またそのような状態のままで勢いよく立花響に触れたために、手首を捻挫。また鎧女との戦闘は自分が思っていた以上に疲労を感じていたらしく、立花を抱えたまま気絶し、目を覚ましたのは全てが終わったあとであった。

 

そしてそこからは本当に大変だった。泣きじゃくりながら怒りながら落ち込むといった器用なことをする立花をなぐさめ、2時間に渡る弦十郎からの説教、さらには目を光らせ、手の一部分を切り取らせてくれと言い出したマッドサイエンティスト櫻井の追求をしりぞける等、もう色々と大変だったのであった。ちなみに、デュランダルの護送は中止となり、再び二課にて管理される事となったのである。

 

さて色々と考えている内に授業終了のチャイムが鳴り今日の授業は終了である。時刻は14:30を少し過ぎた頃、本来ならもう1時間授業があるが、最近頻発しているノイズに対する職員会議があるため今日はここで終わりである。

 

「あ~~終わったーー。しかし、さっきの授業のノート、どうしようか・・・」

 

「上条、貴様、ノートの板書をしてなかったの?」

 

そう言って上条に話しかけてきたのは、クラスメイトでクラス委員の吹寄制理だった。

 

「おー吹寄。上条さんの右手はこの通りなので禄に書くことができないのですのことよ」

 

「また貴様はどこいらで不良共と喧嘩をしたのか」

 

「いや、今回はコケて転んでやっちまっただけ。やっぱツいてないなー俺」

 

「・・・あたしはね上条、不幸や不運とか言う曖昧なものを理由に人生をなあなあで生きている輩が嫌いなの。そんな曖昧なものを理由にしてサボってんじゃないわよ」

 

「ったく、相変わらずの鉄の委員長属性だよな、お前」

 

「貴様が不真面目すぎる」

 

俺が不真面目ならアロハシャツに学ランといった謎の服装をしている土御門や、担任に怒られるためだけに課題をわざと忘れる青髪はどういった扱いになるのだろうか・・・(なお、上条もカラーシャツに学ランと言った服装であるため人のことをとやかく言えない)。そんなことを思ったが口にすれば余計に怒りそうなので心にしまっておくことにしようと上条は笑って誤魔化した。そんな中、1人の少女が彼らに話しかけてきた。

 

「上条くん。よかったら、私のノート見る?」

 

「お、良いのか姫神?」

 

「うん、怪我しているのなら、仕方がない」

 

彼女の名は姫神秋沙、同じく上条のクラスメイトである。

 

「姫神さん、このバカを甘やかすのはおすすめしないわよ」

 

「でも。ノートが書けなくて、困っているよ、上条くん」

 

「それはそうだけど、こいつの事だから姫神さんの優しさにつけ込んで・・・」

 

上条を間に、まるで教育方針の違いで喧嘩をしている親の図になっている吹寄と姫神。それ見たクラスメイトの反応は以下のようである。

 

「チッ、上条の野郎、また女子に絡まれてやがる」 男A

 

「あいつだけなんでこう色々と女子から甘やかされてんだよ・・・」 男B

 

「俺、この前リディアンの女子と一緒に帰ってるのを見たぞ」 男C

 

「俺はリディアン女子の胸に突っ込んでるのを見たにゃー」男T・M

 

「ほんまそろそろ上やんに制裁加えてもええんちゃうんか」男A・P

 

「「「「「よし、今度あいつをボコボコにしよう」」」」」

 

(・・・中学の時よりましだけど俺への殺意がビンビンだぁ〈泣〉)

 

不幸だ、と小声でつぶやく。どうにかしてこの殺意の波動を向けている集団から逃げる方法を考えねばと、思っているとポケットから着信音が聞こえてきた。

誰からだろうと電話の相手を見ると、『緒川慎次』と映っていた。

 

(緒川さん・・・?一体何だろう)

 

電話の内容を考えながら席を立ち、電話に出る。

 

『もしもし、上条君ですか。緒川です』

 

「どうもっす。なんかあったんですか?」

 

『ええ。翼さんのお見舞いをお願いしたいのですが・・・』

 

「お見舞い・・・ですか?」

 

『はい。少し手が離せない用事がありまして、こんなこと頼めるの上条君と響さんしかいなくて・・・。すみませんが、お願いできますか?』

 

「俺は構わないですよ」

 

『ありがとうございます。あと響さんにもお願いしていますので、翼さんのことお願いします』

 

「了解です。そっちも頑張ってください」

 

通話を切り、上条は学校を出る支度をする。

 

「姫神、ノートだけどさ、用事出来たから悪いけど明日見せてくんねえか?」

 

「別に、構わないけど。写真を撮る、という方法も、ある」

 

「ああ、じゃあ写真撮るけどいいか」

 

「うん。これ、どうぞ」

 

ありがとな、と言いながら上条は姫神から借りたノートの写真を撮った。そしてカバンを担ぎ、お見舞いの品を何にするかを考えながら、男子からの嫉妬と憎しみの視線を無視し学校を出た。

 

 

 

 

 

 

3

 

学校を出ておよそ20分、近くのスーパーでお見舞い用の果物ゼリー(税抜き98円)を3つ購入しリディアン近くの総合病院へと足を運んだ。緒川曰く、表向きは普通の病院であるがその実は、特務2課の医療施設であり戦闘で傷ついたシンフォギア装者を治療する以外にも、ノイズによる負傷者や死亡者についてのデータを収集している研究機関としての側面も持つとの事である。

 

「ええっと翼さんの病室は、っと・・・」

 

緒川からあの後、翼の病室と暗証番号が書かれたメールがあり、それを頼りに病室を探す。そういえば、ここまで立花に会わなかったのはまだ授業中だからなのかと考えていると、目的の場所に着いた。暗証番号を打つと、病室のドアが開く。その時、上条の脳裏に何故か着替え中の立花と小日向の下着姿を見てしまったことが浮かぶ。

 

「緒川さんですか?ってちょっとま・・・っ!?」

 

翼の制止の声が届く頃には遅く、ドアは全て開いてしまった。そこで上条が見た光景は衝撃の一言であった。地べたにおきっぱなしの服や下着、零れている飲みかけのペットボトル、何かを探そうとしたのかひっくり返されたゴミの山、そして・・・・・

 

 

下着姿の風鳴翼であった。

 

 

「あ」

 

少年は思い出す。たしかあの時もノックするのを忘れて入ったら着替え中だったという事を。つまり今回もまた同じ過ちを繰り返したようであった。

 

 

「「・・・・・・・・・」」

 

時間が止まったかのように静かであった。そんな中、先に口を動かしたのは上条であった。

 

「・・・下着が上下違うのは新手のファッションなのでせうか?」

 

瞬間、今まで見たことのない位顔を真っ赤にした翼から悲鳴と花瓶が上条に直撃した。




番外編 アンケートであった『グレ響と中学生上条さん』の偽予告

少女は独りぼっちだった。仲のよかった親友は自分の元を離れ、彼女には人は仲間がほとんど居なかった。そんな少女に世間は冷たかった。『人殺し』、『被害者面した加害者』、『税金泥棒』そんな心ない言葉が彼女や彼女の両親にまで投げかけられた。そして、少女は最後の味方にも迷惑をかけないために、家を出た。独りでいれば、誰も傷つかないから、あの事件に生きのこった事件で自分には、これが相応しい罰なんだと思っていた。
そして少女は自分の事を知らない世界に入り込んでしまった。そこは、人口の八割が学生で占められている異様な街であった。少女は本当に世界で独りぼっちになってしまった。そんな彼女に声をかけたのは

「何やってんだよお前。このクソ暑い中冬物のパーカー着てるとか、マゾなのですか」

「・・・・別にどうでも良いでしょ」

どこにでもいそうなツンツン頭の少年であった。

伸ばされた手を掴むのを拒み独りを望む少女と、伸ばしたていた手を掴むことができなかった少年が交差する時、物語が始まる。







          とある戦姫の翳裂閃光




「いいぜ立花。お前がまだ、自分独りで居ることが誰かのためになる言い張るなら、まずは、その幻想をぶち殺す!!」

「やってみなよ、上条。私の思い(幻想)を殺せるものなら殺してみろ!!」



誤字、脱字、感想等お願いいたします。

上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)

  • 風鳴翼
  • 雪音クリス
  • 月読調
  • 暁切歌
  • マリア・カデンツァヴナ・イヴ
  • セレナ・カデンツァヴナ・イヴ
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