戦姫絶唱シンフォギア IB   作:ドナルド・カーネル

32 / 59
どうも作者です。
前回の感想のほとんどが上条ォ!ニゲロォ!!だったのが笑ってしまいました。さあ上条さんは無事に生き残れることが出来るのか。
それでは第21話どうぞ。


第21話 拳に思いを乗せて/Armoredgear Development

4

女は杖を片手に一人、崖の上に居た。

 

融合症例(立花響)に関するデータは元々クリスを使ってとる予定だったんだが・・・。幻想殺し(イマジンブレイカー)め、相も変わらず邪魔をして・・・ッ!?)

 

持っている杖に八つ当たるかのように力を込め握る。本来現れるはずのない異端分子(イレギュラー)に苛立ちを覚えながらも、女は冷静でいようとする。長い長い時の中、ヤツは幾度も現れ自分の邪魔をする。そのしつこさに慣れたが、怒りを覚えないと言えば嘘になる。

 

(チッ!本当ならノイズを使って始末するつもりだったが、思うようにはいかんな。あの子にアレの始末が出来るとは思えないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まあ、刺し違えてでも倒せば御の字だな)

 

女にとってクリスと呼ばれる人物はただ利用できる道具の一つとしか考えてはいなかった。完全聖遺物のポテンシャルを最大限発揮できる人物がいれば、あの少女の利用価値はないに等しい。その考えが少女をどれだけ不安にさせているかなど女には知ったことではなかった。

 

(まあいい。さあ、私にその力を見せて見ろ、融合症例(立花響)

 

目の前にある新たな可能性に胸を馳せ、女は一人笑い始める。

 

 

 

 

 

 

5

 

「♪何故どうして広い世界の中で♪運命はこの場所に私を導いたの」

 

いつもとは違う歌が胸から流れる。聞いたことのないはずない歌をすらすらと口ずさみながら、ノイズがいる場所へ向かう。親友を危険な目に遭わせた奴らだ。

ゼッタイニユルシテナルモノカ・・・ッ!!

 

「ッ!?」

 

(ダメだ、またあの黒い感情に飲み込まれそうになる・・・ッ!?)

 

少しでも気を抜けばあのドロッとした感情が這い出ようとする。あれは人に向けてはならないものだ、そう思い心を静めようとするが、ノイズ達はそんな隙を作ってはくれない。後ろにも前にも仲間は居ない。自分一人で戦わなければならない。でもできるのだろうか。ノイズの中には初めてシンフォギアを纏ったときに居た巨人型(大きなノイズ)もいる。アームギアも展開できない自分に倒しきることが出来るのか。不安のせいかマイナスな考えが頭から離れない。自分だけでは守りたい者も守れないのか!?

 

(違う、違う!)

 

守りたいと答えたのだ。何でもない日常を、かけがえのない親友を。誓ったのだ、あの少年(ヒーロー)に追いついて、一緒に戦うのだと。だったらこんなところで不安になる暇はない。

 

「♪繋ぐ手と手♪戸惑う私のため」

 

今度こそ自分の力で戦い、守り抜いてみるんだ!

 

「♪受け取った優しさ♪きっと忘れない!」

 

そう思いながら歌を歌うと心が温かくなる。さっきまであったドロッとしたものが消えていく感じがする。シンフォギアを纏い歌を歌えばそれは自分の力になる。物理的な意味でも、勇気を奮い立たせるという意味でも。そう思いながらノイズを倒し出す。力任せではなく自分の体にたたき込んだ中華拳法の動きをもって倒していく。

 

(でも、このままじゃダメだ!もっと力を最大限発揮できる打ち方じゃないとあのデカいのは倒せないッ!)

 

自分の拳には、上条当麻のような一撃必殺の威力はない。風鳴翼のようにアームドギアを巨大化させる事も出来ない。考えを巡らせていくと、ふと右の掌に熱を感じた。熱を感じたまま拳を思いっきりの握ると、ガントレットのような腕部ユニットが自動でスライドし排煙し始める。先程とは違い右腕全体に熱を感じる。だけどこの熱は歌と同じくらい自分に勇気と自信を持たせてくれる。この力をあのデカいのにぶつければ倒すことが出来るのではないのかと感じ始める。一か八か、残っているノイズはあと一体。このまま膠着状態のままなのはダメだ。なら、やってやるしかない。

 

(稲妻を喰らい雷を握りつぶすようにぃッ!!)

 

「♪今を生き抜くために♪私たちは♪出会ったのかもしれない!!」

 

心の中で弦十郎の教えを叫び、全力で歌う。それに答えるように足のパーツの形が変わりジャッキが伸びはじめる。

ドンッッ!! ジャッキが縮むと同時にノイズめがけて思いっきり飛ぶ。最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に!目の前の相手めがけて拳をぶつけるために!!

 

「これが私のぉッ!!アームドギアだァァあああああああああああ!!!!!!!??」

 

ズドンッッ!!!!??全てを穿ち抜くかのような威力の拳がノイズに叩き込まれた。その一撃は本部に居た弦十郎達にも計測され、そのエネルギー総量はあの『絶唱』にも匹敵するものであった。何者をも貫く無双の一振り(ガングニール)の名に恥じぬ威力を喰らえばたとえ自分の何十倍もでかいノイズでも耐えきれる事は出来ずノイズを突き破りそのまま炭とかした。重力に逆らわずそのまま落下するが、先程使用したジャッキを使い着地の衝撃をそのまま次のジャンプ力へと利用する。

 

『響君、先程凄まじいエネルギー量が観測されたが大丈夫かッ!?』

 

「はい、ちょっと疲れましたけどまだ動けます!!それより師匠、あの娘は今どこに!?それと私の親友が近くに!?」

 

『ネフシュタンの鎧の少女は移動をやめ、()()()()()()()()()()()!それと君の友人は回収班が迎えに行っている!』

 

「分かりました。私も急行します!」

 

あの少年が何でもかんでも首をつっこむのはもう慣れはしたが、終わったら軽く説教してやる!そんな思いを胸に抱き少女は戦場へと駆けだした。

 

 

 

 

 

6

右手が信じられないほど痛む。あんな怪我をしたまま全力で殴った代償なのだろう。だけどその結果は代償に合わないものであった。

 

「マジ、かよ・・・ッ!?」

 

(あいつの鎧消えていないのかよ、クソ!!)

 

上条が殴った少女は、竹とんぼのように回転して吹き飛ばされた。しかし、少女が纏っている鎧は右手に反応はしたが消えることはなかった。シンフォギアであるのなら一撃でかき消す筈なのに消えない。デュランダルに触れた時もそうだったがもしかするとこの右手には処理能力に限界があるのではないのかと嫌な予感が胸を駆け巡る。だが少女の方も余裕があるものではなかった。殴られた顔の部分を手で覆い、浅く早い呼吸になっていた。

 

(痛い、痛い!クソッ、あいつの右手のせいで鎧壊れたやがったのか!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()

 

ネフシュタンの鎧の特徴としてあげられるのはその再生能力の高さである。ある程度のダメージならすぐに再生し、『絶唱』を真正面から喰らっても元に戻る事ができる。だがその再生力は装着者を巻き込みこともあり、少女が言っていた『浸食』してくるとはこのことである。少年の右手は完全に鎧を打ち消す事はできなかったが、絶唱と同じダメージを与えることは出来たらしくその時と同じように少女に体を巻き込んで鎧は再生するのであった。そして少女が先程から蹲っ(うずくま)ていることに少年は疑問を持ち始めた。

 

(・・・あいつなんでさっきから動かないんだ?まさか、効いているのか。でも・・・)

 

もう一度ぶつければ今度こそ鎧を完全に消すことが出来るのでは、そんな事を思ったが拳を握る気にはならなかった。拳が痛むというのも理由だったが、今の少女を殴るのは、何故か、とても気が引けたのだ。

あの時、彼女を殴ろうとしたあの時、何かに怯えているように見えてしまったからか。

 

「・・・おい、大丈夫か?どこか痛むのか?」

 

自然とそんな声をかけていた。目の前で自分のせいで怪我をした少女に対しての闘志はもう消え去っていた。それどころか、罪悪感すらでてきた。そんな感情とは裏腹で真逆な感情を持っている少女は敵意ある目で上条を睨む。

 

「・・・何言ってんだよテメェ」

 

「お前、さっきから痛そうにしてるから打ち所悪かったのかと思ってさ・・・」

 

そういって左手を少女に差しだす。少女は何をしているのか理解出来なかった。だってこいつとはさっきまで命のやりとりをしていたのだ、敵同士だったのだ、手を差し伸べるべき相手なんかではないのに何故。あの時も、今回もこの男はなんで自分の事を気にかけるのか分からない。

そして。震えながら、少女は差し伸べられた手を・・・・・。

 

「当麻ッ!」

 

少年の後ろから大声が聞こえた。その声を聞いて少女はハッとした。何をしていたのだ、敵と手を繋ぐなんて、こんな方法で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もし分かり合えるのなら、自分の親は()()()()()()()()()()()()()()

そして、自分を助けてくれた人の言葉が脳裏に蘇る。

人と人が繋ぎ会える方法はただ一つ。

 

(・・・痛みだ。痛みでしか人と人はわかり合えないんだッ!)

 

こいつが手を差し伸べるのだって油断させ、裏切る作戦なんだ。汚い大人達がやってきた手の内のひとつだ。そう思い、少女は差し伸べられた手をはらった。もうネフシュタンの鎧は纏ってはいられない。これを外せば、()()()()()()()()()()()()

だけど。もう、この手しかない。

 

「吹っ飛べよ!アーマーパージだッ!!!」

 

瞬間ネフシュタンの鎧がはじけ飛ぶ。だが、上条は反応ができず鎧が体に叩きつけられる。

 

「が、ぁ!?ァァァあああああああああああッッッ!!?????」

 

顔、腹、足や腕、そこら中に痛みが走る。散弾のように襲ってくる鎧をまともに喰らい上条は倒れてしまう。立花は飛んできた鎧に当たることはなかったが腕を前に出し顔を守ったせいで視界が狭まってしまう。

そして、

 

Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

そんな歌が少女の口から聞こえた。なんていうタイトルでどんな歌詞なのかは上条や立花には分からない。でも、彼らは知っている。似たような歌を聞き歌ったことがあるのだから。

歌い終わると同時に少女の体が光に包まれ、衣装が替わる。赤と黒をベースとしたインナー。スカートのようにまとうと機械のパーツ。そして、シンフォギア装者達に共通してあるヘッドギアとペンダント形のマイク。

 

「お前、ガハッ!シンフォギア装者、だったのか!?」

 

口の中にある粘っこく鉄の味がするものを吐き出し、声を出す。喉につっかえていたものが、ほとんど出ていったが息をするのが難しい。立ち上がろうとするが先程よりも酷い痛みが脚だけでなく、体全体に駆け巡る。血が目に入ったのか、視界は朧気で、赤色に染まっている。

 

「・・・歌わせたな」

 

恨みのこもったような声が少女の口から漏れる。

 

「あたしに、雪音クリスに歌を歌わせたなッ!?」

 

「どういう・・・」

 

「教えてやるよ、異能力者(ミュータント野郎)。あたしは歌が大っ嫌いだッ!そして、綺麗事しか吐かないお前みたいな偽善者も嫌いだッ!!!」

 

「歌が、きr

 

言葉を言いきる前に上条の腹に蹴りが直撃する。サッカーボールのように上条を蹴ったのは雪音であった。一瞬自分が宙に浮いている事も気がつかないまま上条は立花の方へ跳ばされ彼女にぶつかってしまう。

 

「きゃあッ!?」

 

「ごっ!?・・・ァァがあああああああああああああああああッ!!!!??」

 

メキメキメキッ!!あばらの方から嫌な音が聞こえる。折れたのかひびが入ったのか、骨折経験があるとはいえ判断が付かない。先程よりも多くの血液が口の中に広がる。急いで吐き出さないと血が詰まりそうになる、そう思い無理矢理口の中に手を突っ込み血の塊を吐き出す。

 

「わ、るい。たち、ばな。だい、じょうぶか。」

 

「しゃべらないで、当麻ッ!?あなた何でこんなことをッ!?」

 

「うるさいッ!お前らみたいな現実も知らない甘ちゃん共なんかに、あたしの居場所奪わせてたまるかァァああああああッ!!!!??」

 

雪音の怒りに応じるようにスカートのような機械パーツからミサイル郡が発射される。

 

MEGA DEATH PARTY

 

無数のミサイルが上条達を襲う。確実に仕留めるために逃げ場をなくすために四方から、死の塊が襲いかかる。

ドカーーーンッ!!!爆発なんて言葉から一番関係のない場所から爆発音が鳴り響く。土煙が舞い、辺り一帯が見えなくなる。今度こそ確実に仕留めたと、雪音は確信を得た。だけど同時にナニカ大切なものを失った、そんな感覚もあった。少しずつ土煙が晴れ、雪音の目に映ったのは。

 

「・・・盾?」

 

「剣だ」

 

巨大な剣と青きシンフォギアを纏った風鳴翼(防人)であった。




誤字、脱字、感想等お願いいたします。

上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)

  • 風鳴翼
  • 雪音クリス
  • 月読調
  • 暁切歌
  • マリア・カデンツァヴナ・イヴ
  • セレナ・カデンツァヴナ・イヴ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。