創約三巻のあらすじやシャナコラボの影響を受け、ハッスルしながら書いてたら8000字超えていてびっくりしました。
それでは第27話どうぞ。
8
小日向未来は走り続ける。何処までも、ノイズが諦めるその時まで。
だが状況は決して良いものではない。今でも走るのは好きだが、現役時代に比べればかなり遅くなっており、
それでも、彼女の目に諦めの感情はなかった。
(こんなところで終われない)
命をかけて必死に走る。自分にしか出来ない事を、今の自分に出来る最善の行動を行う。
後ろを振り向くと、
小日向未来が思いついた作戦とは、単純なおとり作戦であった。あのノイズの習性として、音に反応するのは分かっていた。そしてその音をだしている原因を消えすまでその対象を追い続けるてくるのは、彼女にとっては嬉しい誤算であった。
だから彼女は親友に頼んだ。
何とかして私を助けに来て、と自分の全てを預けられる少女に、そう頼んだのだ
自分一人じゃ何も出来ないなんて分かってる。だから、何とかすることが出来る立花響を頼ったのだ。もし今この状況ではそれが出来なくても、自分が時間稼ぎをしている間に何とかしてくれるのなら、それでいい。
それにあの少年なら、きっとこうしていたはずだ。何時も前に立って守ってくれたあの少年はこうしていたはずだ。どれだけ痛くても、どれだけ怖くても、『誰か』を助けるためなら、走り出していたはずだ。
今になって少しだけ、あの少年の気持ちが分かる気がする。痛みや恐怖も、あの少年にはあるんだと。だけどそれ以上に、『誰か』が傷つくのがイヤなんだと、心で理解した。
すると、自分の頬が緩んでいることに気がついた。何が嬉しいのか、何に喜んでいるのか分からない。だけど、この思いは絶対に嘘なんかじゃないというのだけは分かった。
だけど彼女の願いは唐突に終わる。
「きゃッ!?」
道路の石に躓き倒れてしまう。そのせいで足が止まり、逃げることが出来なくなった。そんなまな板の上の鯉となった彼女にノイズは情けをかけない。少しずつ近づき、触れた物を炭に変える触手が狙いを定め始めた。
足は動かない。くじいたのか、疲れのせいで動けないのか分からない。
だけど、まだ彼女の心は折れていない。迫り来るノイズを睨みながら、親友達に伝えたいことを思い続ける。
(まだ終われない。まだ二人に謝れてないし、約束した二人ともここには居ない!)
そしてもし、二人と仲直りが出来たのなら、やりたいことがあるんだ。
(私はもう一度だけ、三人で流れ星を見たいんだッ!!)
諦めず、その命が終わる最後までノイズを睨み続ける。睨んだところで怯むはずがないが、それでも視線を逸らしはしなかった。
ここで逸らせば、本当に彼女達を裏切ってしまう気がしたからだ。
だが、そんな彼女の思いを無視して、ノイズはその足を振りかざしてきた。次なんてなく、体の一つも残るはずもない。死の一撃が。彼女を襲う。
その手前で、
少女の身に奇跡が起きた。
「こ、ひ、小日向ァァあああああああああああああああッッッ!!!!??」
そんな叫び声と共に、何かが横切った。少女が死んで終わるという幻想を壊すために、
上条当麻がそこへ間に合ったのは、偶々ではなかった。
目の前に居たノイズを倒した後その場から離れ、どうやって小日向達の所へ向かおうとするが、そもそもどこに居るかも分からない事に気がついた。
そこで連絡を取ろうとスマートフォンを取り出すと、その場で震えだした。ディスプレイに表示されたのは、『立花響』。親友にして、シンフォギアの装者である少女が、この緊急時に二課かから支給された通信機器ではなく
そして立花は話した。
『未来が囮になってノイズを引き連れているッ!だから助けるのを手伝ってッ!?』
内容は簡潔で重要な物だった。だけどそれは唐突で、雷に撃たれたように衝撃的で、聞こえてきた言葉によって頭が沸騰しそうなほどイライラしていた。何故あの時、ガレキを乗り越えてでも一緒に居てやれなかったのか、もっと他にも何か方法がなかったのかと後悔と自分への怒りが頭と心をグチャグチャにしていた。
ギリギリで残っていた理性で頭を冷すが何とか立花に返答をする。
「分かった。
『違う!
その言葉に一瞬面食らったが、またグツグツと沸いてきた怒りのまま、
「俺一人でいい!元々俺があいつの近くに居たのに一緒に居てやれなかったのが悪いんだッ!だから俺一人で全部や
『本当の人助けは一人なんかじゃ出来ないんだよッ!!?』
「ッ!?」
続けようとした上条の言葉は、まるでホース中に入った異物の如く詰まってしまい、立花に対して反論することができなかった。それと同時に、先程まで燃えさかっていた怒りの炎が嘘のように消え、今度は逆にシーン、と頭が冷えてきた。だが、そんな上条の事など知らずに立花は話し続ける。
『私分かったんだ。シンフォギアの力があれば誰かを守れたり、誰かを助けだせるって思ってたけど、それはただの思い上がりなんだって。助け出すためにそこへ向かう人、それ支えてくれる人、そして
その言葉を聞いて、今までやってきた
『本当は、未来と約束した私がやらなくちゃいけない事だけど、まだいるノイズを倒してたら間に合わないかもしれない・・・・・』
不安そうな声が電話を通して聞こえてくる。年相応で本当は怖がりな少女の本音だと少年は気づく。
本来なら右手以外は普通の少年を巻き込むべきではないことは重々承知している。彼は戦える人間ではあるが、戦わせてもいい人間ではない。
だから、そんな彼女を今人のわがままに第三者を巻き込んだと糾弾する人だって居るかもしれない。
だとしても、それは大切な親友を助けるためなら、大切な人を失うなんて
どんな人を頼ろうとしても、どんなことに巻き込もうとしても。
それは絶対に。
『だから改めてお願い、未来を助け出すのに協力してッ!!』
――――それは絶対に間違いなんかじゃない。
その瞬間。上条の頭と心からは怒りや後悔なんていう感情は、消え去っていた。忘れていた、当り前のことを思い出す。自分は一人なんかじゃない、あの時のように全部やらなくてはならない訳ではない。
今の彼には、いや彼らには、その背中を支え、守ってくれる人が居るのだから。
そして、心の奥底から謝れば、許してくれる人がいるのだから。
ふと、口元が緩んでいたことに気がついた。力むことなく、自然体のままの自分になっている証拠なんだと気がついた。少なくとも今は、感情に身を任せるようなことはしない。
だから、彼女の問いかけに今はこう答えるべきだ。
「
『!?うん一緒に行こうッ!』
人が一人で出来る事なんて限界がある。だから人は言葉を使い、互いを助け合える生き物だ。
だからそれは恥じることでも、間違いだと思うことでも何でもないのだ。
人という生き物が長い年月をかけて生み出した進化の結果なのだから。
こうして、上条は立花を経由して二課の力によって小日向未来の現在地を知ることができたのだ。
幸いなことに上条が渡した通信機器はまだ彼女の手の中にあり、より正確な位置が把握することが出来た。
そして少年は走り出す。今もなお必死に頑張る少女の元へ、二つの約束事を守るために。
案内の通り進み、辺りを見回す。立花響はいないが、小日向未来が居た。ただしノイズに追い詰められている状況であった。
それを見た瞬間、今ある力を振り絞り本気で走り出した。なりふりなんて構っていられない、右手を握り、少女の名を叫ぶ。
今一番会いたかった人の名を。
「こ、ひ、小日向ァァあああああああああああああああッッッ!!!!??」
少女を守るために、
それを見て、悲鳴のような声が小日向の口から出た。
「!?ダメ――
言葉を言い切る前に上条の右手と、ノイズの触手が触れてしまった。炭になる、大切な友達が消えてしまう。悲劇が一番望んでいない結果が少女を襲い、全てがの光景がゆっくりと動いているように錯覚しはじめた。ただし、
バキンッ!ガラスの割れるような音と共に、目の前に居た脅威が姿を消した。消しゴムで消したかのように、元々そんな物がなかったかのように綺麗さっぱりなくなっていた。
その光景は少女にとって一生忘れられない物となるだろう。今まで自分が聞いてきた常識が跡形もなく崩れ去ってしまったのだから。どんな理由でどういった原理で消えたかなんて分からない。理解出来ない現実が目の前で起きていることにようやく気がついた。
ダンッ!大地を踏みしめる足音と共に、少年は短い滑空を終えた。
ノイズに触れた右手は炭と化してはいない、自分より大きくがっちりとした右手のままだった。
上条は小日向の方へ振り向き、焦りを含んだ顔で話しかけてくる。
「小日向、無事・・・ッ!?」
言葉を言い切る前に、上条は小日向に向かって飛びかかった。少女の頭を守りながら転がり込み、ガードレールにぶつかった。何故こんなことをしたのか一瞬分からなかったが、先程まで自分がいたところを見ると答えは自ずと出てきた。そこにはノイズが突き刺さっていた。上を見ると鳥のようなノイズが二体ほど居たのだ。まだ気を緩むことは出来ない、そう思っているとビキビキビキッ!と音を立ててアスファルトが砕け始め、崩れ去ってしまう。
上条達の居たところは山の方であり、地上までの距離はあるとは言え、このまま重力の逆らうことなく落ちていくと二人そろって死ぬことになることは明らかである。そしてまだ上空に居たノイズがこちらに向かって襲いかかってきた。
「マズい・・・ッ!?」
(右手で小日向を抱えたままじゃどうすることも出来ねぇ!どうする・・・ッ!?)
上条にはこんな高さから落ちた経験なんてあるわけがなく、一瞬でも彼女を抱えることをやめればどうなるか分からない。それにどうやって着地するかも考えなければならず、頭も体も思うように動くことが出来ない。
万事休すかと思い始めた瞬間、歌が聞こえだした。
「♪今を生き抜くために♪私たちは♪出会ったのかもしれない」
小日向未来を助けに向かったのは上条だけではない。シンフォギア奏者の一人立花響が、もう一人ヒーローが力がわいてくるような希望の歌と共に駆けつけた。
右腕のアームドギアを引き延ばし、上条達の方を向いているノイズを倒すために、空を蹴るように近づく。
「♪私ト云ウ♪音響キ♪ソノ先に」
「やっちまえ、立花ッ!」
「♪微笑みを♪Sing out with out!!」
ノイズを消すことが出来るもう一つの例外が、二体のノイズをまとめて貫いた。
そして空中で姿勢を変え、腰についてあるバーニアを噴かし二人に近づいて行く。上条の右手に触れれば力が消えてしまうため細心の注意を払いながら二人を抱えこむ。そのまま着地の勢いを消すためバーニアを最大噴射で噴かし、脚に着いてあるジャッキを引き延ばし展開する。着地と同時にジャッキを戻し勢いを地面へと逃がした。だがそれでもバランスはくれてしまい三人仲良く川へと転がり込んでしまった。
「「キャアッ!!」」
「グエッ!?」
甲高い声が二つと、カエルが潰れたような声が一つ聞こえた。シンフォギアの力をすべて使い果たして為に立花の服装はリディアンの学生服に替わっていた。
口に入った水を吐き出しながら立花は二人に話しかける。
「イテテテ。二人とも、ゴホッ。大丈夫!?ゴホッゴホッ!!」
「なん、とか。俺は大丈夫。てか、頭痛え・・・」
「私も、大丈夫。それより当麻、頭から血が・・・」
頭を触ると手に赤い液体が付着していた。川に向かって転がり込んだときか、ガードレールにぶつかった時かは分からないが、上条の頭からは血が少しづつ流れていた。
「ん?うわ、本当だ・・・」
「ご、ごめん!私がちゃんと着地できなかったから・・・」
「気にしてねえよ。てか、助けてくれた恩人に文句なんか言うほどクソ野郎じゃねえよ」
頭から流れてくる血に関してはさほど気にならない様子で上条は答えた。
「ありがとな立花。お前が来てくれなかったら、完全に詰んでたわ」
「ううん。あの時未来が私を信じて走り出していなきゃ、おばちゃんは助からなかったし、私もシンフォギアを纏えなかった。だから今日一番頑張ったのは未来なんだよ、ありがとね未来っ!」
顔に汚れがついたまま立花は笑う。それを見て小日向は涙を流さないようこらえるような表情をしだした。
「どうした小日向!どっか痛むのか!?」
「・・・・・ううん、違うよ。私に出来る事って少ないなぁって思ったの。響や当麻みたいにノイズを倒せるわけじゃないし、ノイズ相手に囮になるのもすっごく怖くて・・・。結局私には当麻のようなヒーローにはなれない。私に出来る事って帰ってくることを信じて待つだけなんだって。でも、今の私はそれすらも出来なくなってるのがたまらなくいやなの・・・」
小日向が泣いている理由はノイズが怖かったというのもある。でも、一番の理由はいつものように彼らを信じて待つことが出来なかった事だ。もしも、彼女が最初から全部知っていたとして今まで通りに待つことが出来たのかは分からない。少なくとも、あんな恐ろしい場所に赴こうとすれば止めるに決まってる。でもそれは自分の我が儘なんだと小日向は感じ取っていたのだ。
それを聞いた上条は真剣な顔で小日向の方を見る。
「それを言うのなら俺だって小日向みたいに信じて待つ事なんてできっこねえよ」
「え・・・?」
「簡単そうに言うけど、俺には立花がやる無茶に対して大丈夫だって思いながら待つなんて事は出来ねえよ。立花が何かに巻き込まれたなら絶対に首突っ込んじまう。それでお前らに迷惑や心配かけたことだって、指で数えられないほどになってる。そういう意味じゃお前には全然敵わないんだよ」
「・・・・・、」
口が開いたまま小日向は上条の言葉を聞いていた。自分よりも強い彼がそんな風に思っているなんて一度も思わなかった。
「だからさ、俺が尊敬する強さを、弱いものだなんて思わないでくれ。・・・それとごめん。立花の事情を知ってたのに隠してたせいで、お前のことを凄く不安にさせちまった事、立花のヒーローなのに何時も近くに居てやれなかった事、立花のことを本気で止めようとしなかった事、ごめんなさい・・・」
そう言って上条は頭を下げた。許されないことだとしても、それでもこれだけはやらなくてはならないことだと思い謝った。
そして謝られた小日向は、
「・・・・・・・・・ふぇ」
もう涙をこらえることは出来なかった。自分の感情を抑制することなく小日向は泣き出してしまった。
上条は自惚れ屋ではない。自分の言葉が響くものだなんて思っていない。きっと、今の今までため込んできた何かが、上条の言葉を引き金にあふれ出てしまっただけだ。
でも、やはり端から見れば上条が泣かしたようにしか見えず、
「・・・当麻が未来を泣かした」
「待て。小日向を泣かしたの俺が原因なの!?」
「むしろ今の光景を見てそう思わない人はいないでしょ。というか未来、なんで当麻にヒーローだって教えたの!?」
「ええっとなんとなく流れで・・・」
「流れで人が恥ずかしがってる秘密さらけ出さないでくれるかなっ!!?」
「あ、秘密と言えば雪音のことなんだけどさ・・・」
「この流れを消そうとするんじゃない!そしてなんで、未来がクリスちゃんのこと知ってるの!!?」
「やかましいぞ立花。ちょっと黙ってろ」
「私の扱い雑すぎでしょ・・・っ!?」
「・・・フフフ、あははははは!!」
さっきまでの泣き顔が嘘のように、晴れ晴れとした陽だまりに相応しい笑顔を咲かせた。その笑顔つられて、親友達も笑いだした。
どこまでも普通の親友同士のじゃれ合いがそこにあったのだ。
「話を戻すぞ。実はあいつ避難所には逃げてないんだ。あいつも立花と同じ力を持ってて、それでノイズを倒しに向かったんだ」
「そう、なんだ・・・」
「悪い、止められなくて」
「・・・じゃあ一つだけ私のお願い聞いてくれるかな。それを聞いてくれたらクリスの居場所を嘘ついてた事許してあげる」
上条の顔を見て、微笑みながらお願い事をする。無理難題でもない、この少年ならきっと出来るであろうお願い事を伝える。
「――――――――。出来るよね当麻」
必要ないとは思うが確認を取る。
「・・・ああ約束するよ。それにお前に言われなくてもどっちみちそうするつもりだったし」
「でも、一人で大丈夫なの」
立花の疑問に上条は笑ってこう答えた。
子供一人で無理なことは、大人を頼ってやれば良い、と。
9
空の色は茜色から、深く暗いみな底のような黒色に変わっていた。都会から離れてる場所ではあるが星は見えず、ただ一つまん丸なお月様が浮いているだけだった。
雪音クリスはシンフォギアを解除し、鉄橋の手すりに体を預けるような格好をしていた。
ぼんやりと町の方を見る。数時間前まで慌ただしい様子だった街は何もなかったかのような平穏さを取り戻していた。
(あいつら、ちゃんと逃げられたかな・・・)
今日会った人たちのことを思い出す。自分とは違う世界に住んでいて、自分が決して望んではいけない物をもっている人たち。でも自分のせいで彼らの平穏を滅茶苦茶にしてしまった。
あの時、唯一の理解者だと思った女の頼み事を聞かなければ、『ソロモンの杖』を起動させていなければこんなことにはならなかった。だがもし仮に、起動の手伝いをしなければ自分の命は終わっていたか、またあの糞溜みたいな場所に戻っていたかの二択だろう。だから、少女は選んでしまった。力を求めるためにも、・まだ生きていたいという醜い欲求のために少女は歌ってしまった。
何処で間違ったなんて分からないけど、もう戻る事なんて出来ない。だから刺し違えてでもあんな状況を作った
それ以上は考えることは出来なかった。
なぜなら、少女の目から知らず知らずのうちに涙が零れていたからだ。
「・・・もういやだ」
ぐずついた、誰にも聞かせたくない声で呟く。
「・・・たすけて」
自分を救ってくれる人なんて居ないと分かっていながら少女は願う。だがボロボロの言葉は闇夜に消え去っていく。
「だれか、たすけてよ・・・」
決して誰にも届かない
カツ、という足音が聞こえた。
「・・・・・、」
疲れ果てた表情のまま足音が聞こえた方を見ると、
「よう。やっと見つけたぞ」
その少年は、闇夜を引き裂きように、やってきた。
自身の居場所が地獄しかないと思っていた少女の幻想を殺すために、
誤字、脱字、感想等お願いいたします。
上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)
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風鳴翼
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雪音クリス
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月読調
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暁切歌
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マリア・カデンツァヴナ・イヴ
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セレナ・カデンツァヴナ・イヴ