もう今年もあとわずかになりました。無印編は今年中に完結したいと思っていましたが、この更新頻度だと難しそうですね。
それでも頑張って行きたいと思います。
それでは第33話どうぞ。
1
正直な所、未だに理解が及んでいなかった。自分の部屋は五階建てマンションの一番上の階にあり、地上から遠目に見ても、窓ガラスは全部割れており、家の中は無事ではないことは簡単に察せられた。ただ、隣の金髪頭の同級生の部屋は、見たところ壊れてはいないようだった。
今までも、色々と不幸な出来事に巻き込まれることはあった。
だからこそ、その不幸に他人を巻き込まないようにしていたが、ついに自分の不幸のせいで誰かを傷つけてしまったのではないかと、不安になってきた。
頭の中がネガティブな思考に走しりだしていたすと、後ろの方から自分の名前を呼ぶ男の声が聞えてきた。
「当麻君っ!無事か!?」
「風鳴、さん・・・」
「翼のライブに行っていたのは把握していたが、実際に顔を見るまでは安心できなかったが、無事で何よりだ」
「・・・何で、何でこんな事になってるんですかっ!?それに、他の人は無事なんですかっ!!?」
胸ぐらにつかみかかりそうな勢いで、上条は弦十郎に詰め寄る。自分でも彼に当たるように問いかけるのは間違いなのは分かっているが、それでも理性よりも感情の方が先立ってしまう。だがそんな彼を咎めることなく、弦十郎は彼の質問に答えていく。
「今、二課で何があったか調べているところで、誰による襲撃かはまだ判明していないんだ。今分かっているのは、家の中は滅茶苦茶で、泥棒が入った形跡にしては雑なものという訳だ。それと、怪我人も死亡者も出てはいないし、運が良いのか悪いのか、破壊されたのは君の家だけだったようだ」
「そうですか、良かった・・・」
報告を聞くと、上条はホッと胸をなで下ろした。誰にも迷惑や被害を被っていないのは本当に安心できたし、胸に刺さっていた不安が少しだけ消えていった。
「じゃあ、何で俺のとこだけあんな事に・・・」
「色々と予測は付けることは出来るが、確証は持てないな。君やクリス君といった個人を狙ったものなのか、それとも誰でも良かったのか・・・」
「・・・ふざけんじゃねえよ」
今まで黙って上条の側にいた雪音クリスが、静かにそれでもイライラしているのが分かる雰囲気を放ちながら口を開く。
「コイツは、コイツはあたしみたいに悪いことなんかしてないだろっ!?なのになんで、こんな目に遭わなきゃ何ねえんだよっ!!?」
「雪音・・・」
「お前もお前だよ。自分の家壊されたのに、なんでそんな冷静でいようとしてんだよ!もっと怒れよっ!!」
「いや、誰にも迷惑かかってなかったのは良いことだろ。まあ、今日の寝床は悩みものだけど・・・」
「でもッ・・・!?」
「司令っ!周囲の防犯カメラから犯行の瞬間を捉えた画像を見つけました!」
捜査員からの一声によって雪音は冷静さを取り戻す。
カメラの画像を覗き映っていたいたのは・・・、
「ノイズ?」
画像はぶれておりどのタイプかは判明しないが、それでもこの独特の色使いはノイズの物であった。
「こんなピンポイントでノイズを呼び出せる奴なんて、一人しか居ねぇ」
「フィーネの仕業かっ!?」
「だが待て、では何故ノイズの出現観測がされなかったのだ!?」
上条の自宅周辺であってもノイズ出現による反応は容易に探知は出来るからこそ、一切の反応もなく、そして急に飛び出していったことすら感知させないとはどう考えても異常としか言いようがない。
「今はまだ分からない事が多すぎる。ひとまずクリス君や翼が言っていたフィーネと呼ばれる人物を首謀者として、こちらで捜査することにする」
「「「了解!!」」」
「そうですか、それじゃあよろしくお願い・・・、っておい雪音!何処行く気だ!?」
「決まってんだろ、今からフィーネの所に乗り込みに行くんだよッ!!」
「一人で行くなんて無茶だ!それにどう考えてもこれは罠だろ!?」
「でも、さっさとあいつをとっちめねぇとまたお前の周りや、今度こそお前自身が傷つくことになるかもしれねえんだぞッ!!?」
「じゃあ俺が行く!俺に売られた喧嘩なら俺が買うのが通りだろッ!?」
「ふざけたことぬかしてんじゃ・・・ッ!」
「二人ともいい加減にしろッッ!!」
「「ッ!!?」」
弦十郎の威圧感を目の前で喰らってしまい、二人は思わず黙り込んでしまう。
「少し落ち着けッ!ここで言い合っても何も変わらないぞ!!」
「!?・・・それはそうですけど、でもこのまま黙って見ているなんて出来る分けないじゃないですか!?」
「分かっているが、策もなく突撃するのは得策ではない。一度二課で対策を考えるから君たちも来い。どちらにせよ、今日の寝床もないのだろ」
「・・・分かりました。雪音もそれでいいな」
「チッ、分かったよ・・・」
今の雪音は最近よく見ていた感じではなく、初めて会ったときのようなトゲトゲとしたものになっていた。それだけ、今の状況の余裕がないのだと察せられるほど彼女もまた、今の事態を飲み込めてはいなかったのだろう。
こうして二人は、二課の本部にて、夜を過ごすことが決まった。
2
「うん。今日寝るところ確保できたから大丈夫だよ。じゃあおやすみ・・・」
通話を終了し、ベッドの上に携帯を放り投げ、自身の身もベッドに預けていく。
なんだかもういろいろありすぎてもう寝てしまおうかと思っていると、扉を叩く音が聞える。
「カミジョー、入っていいか・・・?」
「雪音か?入っていいぞ」
合図をすると自動ドアが開き、お盆に飲み物を載せた雪音がいた。
「それどうしたんだ?」
「ここにいる人から『2人で温かいものでも飲んで落ち着いてね』って渡されたんだ」
飲み物を作って人を頭に思い浮かべながら上条は温かい飲み物が入ったコップを受け取り、雪音もコップを片手に彼の横に座った。
グッスリと眠れるようになのか、いつものコーヒーやお茶ではなく温かい砂糖入りミルクであった。疲れ手板からだとグチャグチャになっていた頭を癒やすように、温もりと甘みが体に染み渡っていた。
さっきまで口喧嘩をしていたために、どう話しかけるべきか考えていると、
「・・・さっき誰かと話してたみたいだったけど、誰と何だ?」
「ん、親父とだよ」
フーフーと息を吹きかけミルクを冷まし、
「あんま迷惑かけたくないから、面倒事に巻き込まれても話さないようにしてるけどさ、今回のことはさすがに話しとかねえとマズいからな。まあ案の定、すげぇテンパってたわ」
「そっか、お前にはまだ親がいるもんな・・・」
「・・・・・、」
「ああ悪い、お前を困らせるつもりはなかったんだ」
飲み終えたコップを手で遊びながら落ち着いた様子で言う。
「なんていうか、お前は自分の事をどこにでもいる平凡な奴だって言うけど、それは間違いじゃないって思ったんだ。あたしにとってのお前はあたしを助けてくれた恩人で、一緒にいてくれると言ってくれた今のあたしの帰る場所。でも本当は、お前には親や友達がいて、学校で勉強したりバカしたりするって話を聞いていると、やっぱりお前のはあたしが思う平凡な人間なんだって」
少女の経歴は平凡ではない。だからこそ、自分では出なかった生き方に憧れ、その生き方を美しいものだと感じている。
そう感じながら雪音は上条の腕を掴み、彼を自分の方に引き寄せ、
「だからこそ、お前には普通の人でいてほしいんだ。笑うときに笑って、悲しいときには悲しんで、怒るときに怒れる、そんな普通の人としてさ。・・・だからもし怒るのを我慢してんなら、自分1人で抱え込まずにちゃんと吐き出して欲しいんだよ」
「・・・そっか。心配かけてごめんな雪音」
でもな、と言いながら小さく微笑みかけ、
「確かにあの時、俺は怒ってはいたけどさ、それ以上に嬉しかったんだよ。誰も怪我なんてしなければ、家を壊されたわけではないんだからし、これ以上の幸運なんてないよ」
「そんな事ねえよ!もっと欲張れよ、もっと怒れよ、そんでこんな事を引き起こした原因であるあたしを恨めよっ!!?」
「・・・お前を恨む理由なんて一つもねえし、それこそ、俺は憎むなんて感情を微塵も持っちゃいねえよ」
「・・・・・お前は、本当に甘い奴だな」
(でも、そんなお前だからあたしを助けてくれたんだよな・・・。なら、やっぱりやることは一つだ)
その言葉を聞くと雪音は何か覚悟を決めたような表情をした。何故そんな顔をしたのかを聞こうとしたが、急に眠気が差し込んできた。
理由については寝不足やら、疲れやら、口ではなんともなさそうに言っていたが心の方はやはり疲れ気味だったのだ。
「悪い雪音、俺、もう起きてられないわ・・・」
「ああ、構わねえよ。今日はゆっくり眠れ」
「うん。おやすみ、雪音」
そう言って上条は夏用制服のままベッドに身を預け眠りについた。そんな彼の頭を雪音はなで始めた。どんな顔で、どんなことを思っていたのか今目を覚ましている彼女しかわからない。だがもし、今の彼女の顔を見た者がいるのなら、とても『 』で、それなのにどこか『 』にも見えたであろう。
彼の眠りが深くなったのを確認すると、雪音は部屋を出た。
部屋を出ると、ドア横に弦十郎がいた。
「彼は?」
「ぐっすり眠ってるよ。今頃夢の中で遊んでんじゃねえのか」
「そうか、ならよかった。あんな事があったのだ、眠れないかもしれないと不安だったんだが・・・」
「あいつ、絶対に神経図太てぇ野郎だぞ。じゃなきゃ、一度殺そうとした相手と、毎日一緒の部屋で寝られるわけないだろ」
呆れたような物言いをするが、それなのにどこか嬉しそうな顔をしている彼女を見て、弦十郎も同じような顔をしていた。
それはきっと、かつて助けたかった少女が笑顔でいられているからなのだろうか。
「それで、彼には
「・・・話しちゃいねぇよ。フィーネの件はあたしがケリを付けなきゃならない事だ。それに、やっぱりあいつと話してて分かったよ、これ以上、あいつを戦いに巻き込む訳にはいかない」
雪音は一人でフィーネのアジトに乗り込むつもりだった。だが、そのことを知れば上条当麻は彼女を助けに行くに違いない。それが嫌だから、少女は少年を守ることを決心した。
例えそれが、今もまだ、信じ抜くことが出来ない大人達を頼ったとしても。
「・・・あたしは、今も
今まで壊すことしか出来なかった力だとしても、それでもその力を使って守り抜きたいと思える存在が出来た。
そういった存在を作った人間ほど、強く固い存在はない。
「だから改めて頼む。これ以上、あたしはあいつを傷つけるようなことをさせたくない!だから、力を貸してくれっ!!」
「・・・ああ、勿論だ。子供のやりたいことに力を貸すのが、大人の義務だ」
「そう、なのか・・・」
「そうだとも!そして君も我々からすれば守るべき子供なのだと言うことを忘れないでくれ。君にもしもの事があれば当麻君以外の人が悲しむことになる」
「分かってるよ。だからあたしも、全力で戦うよ」
そして次の日の朝早くにフィーネ捕縛部隊は、雪音クリス案内の元、アジトへと向かった。
3
腹の真ん中にまで響き渡る地響きの音によって上条は目を覚ました。
「え、何!地震!?」
驚きながらベッドを飛び出し、昨日の服のまま部屋を出る。
何があったのか分からないが、ともかく司令室に向かおうと考えたその矢先、エレベーターの方向からまたしても大きな音が鳴り響いた。
(あっちの方で、何かあったのか!?)
もし怪我人がいるのなら助けなければ、そう考えたと同時に体は動き走り出していた。
目的の場所まで走り出すと、人の影が見えてきた。一人は、何故か倒れている緒川慎次、一人は見覚えのある鎧を着た女、そして最後に見えたのは。
その女に首を捕まれている、小日向未来の姿が見えた。
「ッ!?」
瞬間、頭のなかでナニかがぶち切れた。今まで怒りを覚えたことは何度もあった。しかし少年の中に今流れているのはそういったものではない。怒り以上にどす黒いものが、あふれ出てきた。
そのむき出しの感情に従うまま、上条は近くにあったガレキを持ち、女の頭めがけてそれをぶつけるために思いっきり投げていた。
ゴン!鈍い音が女から響き、親友の首を掴んでいた手は衝撃を受けたせいでゆるみ、小日向はその場に落ちてしまう。
「ゴホッゴホッ!!な、なに・・・?」
ゆっくりと女に攻撃をぶつけた存在が誰なのかを確認する。そこにいたのいは、昨日から連絡が途絶えていた上条当麻であった。
だけど、何時もの優しい表情ではなく、眉間にしわを寄せ、何かドス黒いオーラを纏っていた。そんな彼を見て、小日向はとてつもない程嫌な予感が駆け巡った。
そして、女はゆっくりと後ろを振り向き、さほど先程の攻撃を喰らっていない表情のまま言った。
「なんだ、ずいぶんと原始的でつまらない攻撃だな、
その言葉に、上条は今の自分の感情をそのまま言葉として変換した。
「うるせぇ、二度と立てないようにしてやるよ!クソ野郎がッ!!」
その感情とは殺意であり、自身を平凡と称する人間からは一番離れている物であった。
誤字、脱字、感想等ご報告お願いいたします。
上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)
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