何とかクリスちゃんの誕生日に間に合わせる事が出来ました。
お誕生日おめでとうございます!
今年最後の更新になりますが、それでは第35話どうそ。
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「ダメです、何度やってもこちらからの通信を受け付けません!」
「了子さん、いや、フィーネはデュランダルのエネルギーを使いこの場所で何かを行うと予測していましたが、まさか本当になるなんて・・・」
先程から電気が消えた暗い司令室を慌ただしい声と人の動きが駆け巡っていた。
弦十郎がやられたあと、上条達は司令室に向かい弦十郎の怪我の治療と状況報告を行ってると、急に電源が消えてしまい、コンピューターもオフラインどころかディスプレイには何も映らない状態になっていた。
「これも全部了子さんがやったことなのかな・・・」
「・・・・・、」
「当麻、どうしたの?何処か痛いところでもあるの」
「え、ああ悪い。話聞いてなかったわ」
「さっきからずっと上の空だけど、本当に大丈夫?」
「大丈夫だって言ってるだろ。風鳴さんが前に出てくれたおかげで俺はそれらしい怪我を負ってはいないからな・・・」
あの時はどちらが貫かれてもおかしくはなかった。あの一瞬、刹那とでも呼ぶべき時間に上条は動くことが出来なかった。
そしてその結果自分よりも前に出ていた弦十郎がやられる結果になったのだ。
「・・・ごめん。思い出せちゃって」
「気にすんな。それより小日向、櫻井・・・いやフィーネ・・・ああもう!どっちで呼べば良いんだよ!?」
「ちょっと落ち着いて当麻。それで何か聞きたいことがあるんじゃないの」
「ああ。俺が火に囲まれたときや、風鳴さんに雷が落ちたときに変わった所ってあったか?」
「変わったこと?」
「何でも良いんだ。どんな情報だってあいつの力の突破口になるかもしれないし」
「知ってどうするの。まさか、また戦うつもりなのっ!?」
「俺じゃなくても、立花達は絶対にあの人と戦うだろ。そんときに役に立つ情報がひとつでもあればと思ってさ」
完全聖遺物ですら戦うのは厄介な相手であるのに、それに加えてあの謎の攻撃までやられる事を考えると不利なのは変わりない。一緒に戦うために前へ出たところで足手まといになることは分かっている。それでも何か出来ることはないかと考えたときに思いついたのが、あの攻撃の攻略法を探し出すことだった。
「変わった所って言われても、了子さんが言ってた言葉よく分からなかったし・・・」
「え?ちょっと待てよ。雷の時はともかく火に囲まれたときは『火』って言ってただろ」
「嘘でしょ。火に囲まれたときも当麻が急に止まったときも、どっちも知らない言葉を言ってたよ。でも弦十郎さんが雷に打たれたときは『Thunder』って言ってたような・・・?」
「・・・俺が雷に打たれたとき、了子は『雷』って言っていたな」
「「風鳴さん(弦十郎さん)!?」」
二人で話し合っているときに、横で眠っていた弦十郎の声が聞えてきた。
「まだ起き上がらない方が・・・!」
「もう大丈夫だ。と言っても先程のように暴れ回ることは出来ないがな」
「その傷でもう動けるようになってる時点で色々とおかしいですよ・・・。それより、『雷』って聞えたって本当ですか」
「ああ。それを聞いてた瞬間にスタンガンをぶつけられた感覚に陥ったが、あれくらいなら耐えれると思ってそのまま突っ込んだしだいさ」
「スタンガンを・・・?」
(確か俺が『火』って聞えたときは、逃げ場のない炎が襲いかかってくるイメージがあったような・・・)
「それよりも全員、すぐにここを離れるぞ。了子の狙いはここを使って何かを行うこと、何時までも掌の上にいるのは得策じゃないからな」
そう言って立ち上がろうとするが、傷のせいで壁に手をついて立つのがやっとであった。
それを見て上条と緒川の二人は弦十郎の方を持つ。
そして司令室にいる全員は地上を目指して外へ逃げ始めた。
通路を歩きながら上条はふと、疑問に思ったことを口にした。
「・・・結局櫻井さんはここで何をするつもりなんですかね?」
色々悩んだが櫻井了子として彼女と付き合ってきた時間がなかったので、櫻井の名前で彼女を呼ぶことにした。
「色々と予想を立ててはいるが、ハッキリとは分からない。ただ、了子は二課施設を『カ・ディンギル』と呼ばれるものに組み替えることを前提として色々と改造していたようだ」
「カ・ディンギル・・・聞いたことのない名前ですね」
「私たちの方でも色々と調べては見たけど、結局何も分からずじまいよ」
「言葉の意味としては、『神の門』って意味らしいよ」
友里と藤尭の説明を聞いてもいまいち上条にはピンと来なかったようだ。
「二課の改造や『イチイバル』と『ネフシュタンの鎧』紛失及び強奪、他にもまだ彼女の掌の上で踊らされていることがあると思います」
「・・・それでも同じ時間を過ごしてきたのだ。これまでの全てが芝居だったなんて俺には思えない」
「・・・俺もそうだって信じたいです。あいつ自身、まだ櫻井さんの意識はほんの少しだけ残ってるって言ってました。だから俺達の前で何時も笑っていたのは、フィーネじゃなくて櫻井了子ですよ」
「・・・俺も君も中々割り切れないものだな」
弦十郎の言葉に上条も同じだという反応みせた。
だがそれでも、彼女を取り戻すことは出来ない。上条の右手が、あらゆる異能の力を消すことが出来たとしても、触れることが出来なければその力を発することは出来ない。
だからこそ、これ以上櫻井了子の体を弄び、罪を重ねさせるようなマネをさせたくはなかった。
そしてその思いはここにいる全員が思っていることであった。
「もう少しで地上に出られます。皆さん、あと少しだけ踏ん張って下さい」
道が見えにくいせいでいつもより長く感じていたが、その言葉を聞いて少しだけホッとした次の瞬間。
通路全体がグラグラグラッ!と揺れ始めた。
「うぉっ!」
「きゃっ!」
「了子の奴、もう何かを始めたのかッ!?」
「皆さん!こっちにまだ生きているエレベーターがあります、こちらへどうぞ!!」
緒川の案内の元すぐに上条達はエレベーターに乗り地上、リディアン音楽院へと移動した。
「やっとついたっ!!」
「おい、あそこにいるのって安藤達じゃ・・・っ!?」
「ヒナとカミやん!?なんでこんな所から出てきたのっ!!?」
「色々言いたいところだけど、詳しくはこの人達から聞け!それより安藤、出口って何処だ!?」
「え、えっとここを出てすぐ左だけど「分かった、ありがとな!」って外行くのは危ないよっ!」
「当麻!やっぱり戦いに行く気じゃ・・・!?」
「大丈夫だ!すぐに戻ってくるから安心しろ!!」
「待てッ!当麻君ッ!!」
小日向達の静止の声を無視して上条は外へ出て行く。
ポケットの中にあるインカムを耳に付け、通信できるかを試す。だがザザザザッ!っとノイズだけが走るだけだ。
外に出てみると、塔のような物がそびえ立っていた。
(あれがカ・ディンギルか!?)
すでに塔の上には光が集まっており、あれが一体何なのかを想像することは出来ない。だけど嫌な予感が膨らんでくる。そしてなんとなくだが、あそこに立花たちがいる気し、急いで底へ向かう。
すると急にインカムから音が入った。
そこから流れたのは、
『♪Gatrandis babel ziggurat edenal』
一つの、聞き覚えのある歌であった。
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「♪Emustolronzen fine el baral zizzl」
歌を歌っているのは雪音クリスであった。彼女は今、成層圏にてある一撃を迎え撃とうとしていた。『荷電粒子砲 カ・ディンギル』、そしてカ・ディンギルが狙うのは宙に浮かぶ月。
少女はそれを止めるために、宙へ向かった。
カ・ディンギルの威力は未知数そこで少女は絶唱を用いて、カ・ディンギルの威力減衰と狙いを逸らすことにした。だけどこれも確実に成功するという保証はない。それに成功しようと失敗しようと、自分の身はここまでなんだと察していた。
それでも、自分の命をかけてでも守りたいものを守るために、最後の歌に魂と願いを込める。
しかし、悔いがないといえば嘘になる。
(最後に、カミジョーと話がしたかったな・・・)
あの少年と話すどころか。別れの言葉も言えずじまいだった。自分の居場所を作ってくれて、私に新たな、いや本来持っていた夢を思い出させてくれた。
『歌で世界を平和にする』
彼と出会う前はその夢を否定しそれどころか反する行動をしていたが、少年はそんな自分の目を覚ましてくれた。それは人に聞かれれば笑われるかもしれない夢、でも、あの少年はきっと心の奥底からその夢を応援してくれるだろう。
どこまでも真っ直ぐで、温かくて、ずっと一緒にいたい人。
(・・・あいつ、こんなことをしてるって知ったら、すごく怒るんだろうな)
あの少年には笑っていてほしい。私が消えて、泣くことになっても、いつかは笑って前に進んでほしい。そう思いながら銃爪に指をかける。夢をなぞることは出来なくても、夢を守ることは出来るだろう。
そう思っていると、
『雪音!聞えてるか、おいッ!!』
最後に話をしたかった少年の声が聞こえてきた。
『返事はしなくてもいい。今すぐその歌を歌うのはやめてくれッ!』
少年はその歌詞や題名を知らない。でも、その歌を歌った者の最後は知っている。口や目から血が流れ、最後には細胞の欠片も残さず炭と化す。例え炭になることはなくても、彼女の命が消える可能性の方が大きい、自分の命を燃やす歌。そんな出来事を少年は何度も目にしたくない。だから少年は叫び続けた。
「・・・♪Gatrandis babel ziggurat edenal」
だけど少女は歌うことをやめない。歌わなければ、守るものを守り抜くことは出来ない。少年の力があの光に通じるかは分からない。
この場で、この世界を救う可能性が高いのは、少年ではなく少女なのだ。
『・・・頼む、頼むから待ってくれ。方法ならいくらでも考えるから、俺は何とかしてみせるから!!だから、お願いだから、それだけは、それだけは止めてくれ・・・・・』
インカムから、泣きそうな声が聞こえてきた。ただ少年がどれだけ泣き言を言おうとも時間は止まらない。あの砲台は動きを止めない。
刻一刻と迫る中、少女が下した決意は、
(・・・悪いカミジョー。やっぱり、あたしにはこれしか思いつかないや)
そして、少女は最後の詞を口ずさんだ。
「♪
雪音の歌が終わると同時に地上から緑色の光が放たれ、宙からは紅色の光が落ちてくるのを上条は目撃した。
緑と紅の光とぶつかり合い、膠着状態に陥る。少年は紅色の光が勝つことを祈る。
「・・・色々言いたいことがあるんだ。だから勝って、勝って戻ってこい!雪音ぇぇえええええええええええええ!!!!!」
だけど、少年の願いは神には届かない。その叫び声の数秒後、膠着状態が解ける。進みだした緑の光が紅色の光を飲み込む。
宙にいる少女は引き金から指を離さず、逃げることもしない。あと何秒持つか分からない。
体がのあちこちから痛みが発するし、血も流れている。それでも力を緩めるな。銃身にヒビが入ったって恐れるな。
だがカ・ディンギルの光は弱まることなく、ついに少女の近くまで伸びてくる。
それでも、少女の顔に絶望の2文字は宿ってはいない。
(あたしは、パパとママの夢を継いでいくよ。あたしの歌で、世界を救ってみせる)
口に溜まっていた血が溢れ出てくる。言葉も歌も発することは出来ない。だからといって諦めるつもりは毛頭ない。
(あたしの歌は、そのために・・・っ!)
そして。光が少女を飲み込み、月を穿った。
「ゆき、ね・・・?」
月にヒビが入るのが見えた。それは、少女の敗北と死を意味する。
上条はそれを認めたくなかった。
それから目を背け、あの少女の無事を願う。
だがインカムからは先程同様ノイズしか入ってこない。
嫌いな歌でさえ、届かない。
そう思っていると、
『・・・・・カミ、ジョー』
「!?雪音!!」
雪音の声が聞こえた。だけど、その声は弱々しく、あの日の天羽奏を思い出してしまう。
そして、雪音は弱々しい声のまま上条に言った。
言っていい言葉ではないと分かっていても、言ってしまった。
『・・・あとは、たの、んだ・・・・・・・』
「ッ!?待て、雪音!!?」
その言葉を最後にまたノイズが走り出した。
それを聞いた上条は立ち止まってしまった。
辛くて、苦しくて、泣きそうになる。声を押し殺さないと、それと一緒に涙まで出てきそうで耐えるので精一杯だ。
「――――――ぁああッッ!!」
でも、だけど、今は泣くな。託されたんだ。任されたんだ。ここで泣くのは、あの少女の思いを踏みにじるに値することだ。
顔を叩き、気合いを入れる。
ジンジンとする頬が、頭の雑念を振り払ってくれる。
そして、少年はまた走り出した。
何が出来るかは分からないが、それでもじっと待っているのは間違っている。
そう思っていると、泣きたくなる気持ちは消えていた。
来年もよろしくお願い致します。
誤字、脱字、感想等お願いいたします。
上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)
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月読調
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暁切歌
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マリア・カデンツァヴナ・イヴ
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セレナ・カデンツァヴナ・イヴ