戦姫絶唱シンフォギア IB   作:ドナルド・カーネル

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どうも作者です。
新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
またアンケート実施していますので、よければご協力お願いします。
それでは第36話どうぞ。


第36話 翼、燃つきて/The breaking of tower

 

「クリス、ちゃん・・・」

 

「雪音・・・」

 

崩れゆく月を見ながら、二人は同じ少女の事を思う。

雪音クリス。たった一人でカ・ディンギルの一撃から歌の力を使い月と世界を守るために命を燃やした少女。

そして、その代償として少女が目を覚ますことは二度とないだろう。

そのことを受け止めきれていない立花は、その場に崩れ落ちた。

 

「・・・・・こんなの、こんなのってないよ!私もっと色々と話したかったのに。もっと遊んだり一緒にご飯を食べたりしたかったのに。こんな結末なんて当麻だって、絶対望んでないよ・・・ッ!」

 

涙が地面を濡らす。分かってる。こんな事をしている場合ではないと分かっている。

カ・ディンギルは倒れてはおらずいつまた発射してもおかしくはない。櫻井了子(フィーネ)にダメージらしいものを感じておらず、いつまた襲いにかかってきてもおかしくない。

まだやることはたくさんある。なのに、散った少女の事を思うと涙が止まらない。悲しい気持ちが溢れてきて、拳に、力が入らない。

悲しい雰囲気が戦場を包み出した頃、

 

「・・・フ、フフフ。アッハハハハハ!!」

 

女は一人その状況を笑いだした。

 

「哀れだなクリス!お前が命をかけてカ・ディンギルの一撃を止めようと、デュランダルのエネルギーが尽きるまで、何度だって撃つことが出来るッ!ああ、本当に哀れで馬鹿な娘だよ!!」

 

笑いながら、命をかけた少女の行いを侮辱していた。最低で最悪な行いであるが、カ・ディンギルのエネルギー源であるデュランダルはまだ稼働しており、塔のような砲台には傷一つ付いていない。不利な状況なのは変わりない。怒りのままに動いて良い場面ではない。

それでも、剣を持つ防人はそれに怒る。

 

「・・・嗤ったのか。命をかけて守った人思いを、貴様は嗤ったのかッッ!!?」

 

かつて、雪音クリスと同じように絶唱()を歌い人々を守った戦姫(少女)がいた。

限りある時間ではあったが何ものをも貫き通す槍を持って人類の障害を払いのけ、最後の最後まで戦い抜いた。そして散る間際まで人のことを思いながら笑顔でいた戦姫がいた。

その少女の行いを、風鳴翼は今も尊敬し、憧れていた。

だからこそ、雪音の行いを侮辱したフィーネを、風鳴翼は絶対に許さない。持っていた剣を相手に向け、氷になる寸前の水の如き冷えきった怒りの視線で睨み付ける。それは、何があろうと確実に切り捨てるという意思の表れだった。

そして、立花響もまた言葉を言う。ただし、

 

「・・・何がおかしい。何故笑う。どうしてクリスチャンを殺したお前ワラッテルンダァァアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!??

 

翼のような静かで、それでも怒っている事が分かるものではない。

全てを燃やすような勢いで燃える炎のような激しい憎悪による怒りの言葉をフィーネに向かって放つ。

その言葉と共に、立花の意識と体が黒色に染まる。

その彼女を見た翼は驚き、フィーネは面白そうなものを見る目をしていた。

 

「やはり、精神が不安定になると聖遺物に意識を取り込まれるようだな」

 

「止めろ立花ッ!それ以上暴走を続ければ、聖遺物との融合を早めることになるぞッ!?」

 

――――――ッ!!!!

 

言葉にすらならないまるで獣のような咆哮と共に、足のジャッキを利用してフィーネに向かって飛びかかる。その早さはすぐ横にいた翼でさえ一瞬反応するのが遅れた程のであった。

その早さを目にしながら冷静な態度で言葉を紡いぐ。

 

氷 冰 ice gelo is (二度toメザめる事naku凍レ)

 

――――ッ!!

 

その言葉は上条や弦十郎に発せられた不思議な言葉であったが、立花の周りには何も起きることなく最短で襲いかかってきた。

 

(チッ、やはり今の融合症例では効かないか・・・)

 

仕方がなく2本の鞭をネットのように束ね、壁を作る。

そんな壁に向かって力任せの拳を打ち込む。壁の強度と拳の力は拮抗し合っていたが、バキッ!っという音と共に鞭の壁が崩れていく。その勢いのまま拳をフィーネに叩き込む。同じ聖遺物に体を蝕まれた故に本来以上の力を引き出していたが、ありとあらゆるリミッターを切った状態である立花の方がネフシュタンの鎧ごとフィーネを地に下す。

ズドンッッ!!!!地鳴りと共に土煙が舞い、二人の姿を隠す。

少しずつ土煙が晴れていき、翼の目に映ったのは、いまだ暴走状態の立花と腕を吹き飛ばされたがすぐさま再生していたフィーネであった。

 

ニクイニクイニクイニクイ!!コワスコワスコワスコワスコワスコワスッッ!!!!

 

怒りと憎しみが頭の中を染めていき、もう一度フィーネに向かって飛びかかろうとしたその時。

 

「立花ッ!!」

 

横から誰かに突き飛ばされバランスを崩した。転がりながら、理性のない目で押し倒してきた人物を見る。

上条当麻が、もっとも危険な地帯に飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

8

「落ち、着けッ!!」

 

(まじかよ、また暴走状態にはいったのかッ!?)

 

不意打ちによる突撃で立花を押さえ込もうとしている上条は、今の黒くなっている立花を見て余計に焦りを覚えた。単純な力比べで負けるのは目に見えて分かっている。なら右手を使ってギアを強制解除する手もあるがそれを行おうとは思わなかった。

 

(例え右手を使って暴走状態を解いたとしても、こんな危険地帯でシンフォギアを解除するのはマズいッ!だけど・・・ッ!?)

 

「あば、れんじゃ、ねぇよッ!!」

 

――――ッッッ!!!!??

 

左手で彼女の腕を掴み、右手が体に触れないように右腕で体を押さえているがあと少ししか持たないのは、上条自体がよく分かっていた。この場から離れようにも、今の彼女の耳にどれだけ言葉が届いているのか分からないし、それ以前に後ろにいるフィーネの事も気にかけなければならないのはとても難しいことだ。

 

「ここまで来るとは、本当にしつこいなぁ貴様は。もういい、カ・ディンギルが発射される前に、お前を確実に殺すと・・・」

 

「させると思うかッ!!」

 

フィーネが鞭を剣の形に変えて、上条達を切り裂こうとする前に翼が間に入って止めにかかる。足のブースターを全開にして自分とフィーネをこの場から離す。取り敢えずは問題の一つは解決したことに安心したせいか、立花の頭が間近にまで迫っていたことに反応することが出来なかった。

 

――ッ!

 

「ガァッ!?」

 

頭の中にまで鈍い音が響き、意識が途切れそうになるが次の瞬間には右腕を掴み近くの岩盤に叩きつけられていた。

 

「ぁ。ガァァアアアアアアアアア!!!!?」

 

口から空気と血の塊と吐瀉物が混ざったものを吐き出す。痛みのおかげで何とか意識を落とさないで済んだが、体はまともに動かず頭もろくな思考を働かせることが出来ない。立花はもう目の前にいる人物か誰なのか分からず、上条に狙いを定めるように拳に力を込め出す。

 

(う、ごけ。動け・・・ッ!!)

 

このままあの一撃をまともに喰らうことになると確実に自分は死ぬ。そんな事になれば、例えフィーネの目的を阻止できたとしても、今度こそ目の前の少女は壊れる。

それだけは、それだけは何とか阻止しなければならないと心は思っているのに、頭と体は言うことを聞かない。そして自身の射程距離までついに達した。

 

――ッ!アアアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

もう言葉ですらない獣のような咆哮を上げながら、上条めがけて文字通り必殺の一撃を放つ。上条は彼女に謝りながら思わず目をつぶる。

 

(クソッ!ここまでかよ!?)

 

自分の無力さを呪いながら痛みに備える。

でも、いくらたっても拳が当たる感覚はなかった。恐る恐る目を開けると、1~2メートル前で立花の拳が止まっていた。当たるギリギリで理性を取り戻したかと思ったが、未だ彼女は黒い何かに覆われたまま、無理矢理体を固定されているようだった。

そして上条もまた、体を動かすことが出来なかった。

 

「どう、なってんだ・・・?」

 

「なんとか、間に合ったか・・・」

 

「翼さん!これって一体!?」

 

「『影縫い』、私が緒川さんから習った忍術の一つだ」

 

「忍術って・・・」

 

もう一度聞き直そうかと思ったが、そんな事をしている暇もなく、カ・ディンギルも発射できるほどエネルギーを貯めきったようであった。

塔を見ながら、翼は自身が考えた作戦を伝える。

 

「私は今からこの塔を切り落とす。それを確認したらすぐに立花を連れてここを離れて」

 

「離れろって言われてもまだ立花はこんな状況で、しかもあの女もいるのにギアを解除するのは危険すぎます!」

 

「ええ。だからフィーネを塔から離れた場所で『影縫い』を使って拘束しているわ。塔の崩壊を見れば多少なりとも動揺して動けないはず。だからその隙に遠くへ逃げて」

 

「でもこの拘束は!?」

 

「それなら大丈夫よ。その術は、()()()()()()()()()()()()()()()()強制的に解かれるから」

 

「・・・待って下さい。それって・・・ッ!?」

 

「・・・ごめんなさい。奏や雪音の最後を知っているあなたに、これ以上背負わせるわけにはいかないって分かっているのに、こんな作戦しか思いつかなかった私を恨んでくれも構わないわ」

 

言葉と雰囲気で分かってしまう。彼女は命を失うことになってでも、あの塔を壊すのだと。

 

「・・・上条。本当にごめんなさい。あれだけ巻き込まないと言ったのに、結局最後の最後で頼るような事になって」

 

「・・・止めて下さい。こんな方法は止めて下さいッ!!一緒に考えましょうよ、二人いればこの作戦よりも良い案がきっと・・・ッ!」

 

「上条」

 

なのに、少しも悲壮感を感じさせない顔で、駄々をこねる子供のような上条を優しく諭す。

 

「気にしなくていいわ。私はこの国を守る防人だ。戦場で死ぬのは本望だし守るべきものを守れるのなら、これ以上の誇りはないわ」

 

「違う。違う違う違う!!あんたは防人じゃなくて風鳴翼だッ!人との関わり方が不器用で、片付けるのが苦手で、凄い歌手で、優しい人で、今まで一人でずっと頑張ってきた人なんだよ・・・」

 

「・・・そんなことないわ。本当の私は泣き虫で臆病なさみしがり屋なのよ」

 

上条の頭をなでながら、翼は微笑みかける。

 

「でも、それを刺し引いてでも、ほんの数カ月で色々と知られたのは、それだけ貴方たちと付き合う時間が長かったことよね。ならそれだけで私は充分よ。本当の私を知ってくれる人を、増やすことが出来たのだから」

 

「つばさ、さん」

 

「・・・・・――!」

 

「立花」

 

立花の目の前に立ち、彼女を抱きしめる。すると、彼女の口から流れていた唸り声が止んだのだ。

 

「奏から受けついだ力を、彼に振るってはダメよ。その力は人の思いを束ね重ねた物なのだから」

 

「・・・・・、」

 

立花の手を包み込むように握らながら言葉を聞いた彼女の目から涙が流れた。

 

「では、行ってくる。聞いていてくれ、風鳴翼の歌をッ!!」

 

そう言って彼女たちから離れ、助走を付け走り出し、足のブースターを噴かし空に向かって飛び上がる。塔の真ん中あたりまで跳ぶと、剣を投げ巨大化させる。

 

『天ノ逆鱗』

 

翼の何倍の大きさを持つ剣。だがそれでも、塔を切り裂くことは出来ない。なら、剣を中まで入り込めば破壊することはできるのではないか。

そう考えて、剣を足で蹴り上げながら、跳び蹴りの要領で塔にめがけてブースターを限界まで噴き出す。

このままいけば塔を倒せる。そう思った時に、

地から飛び出してきた槍が剣を砕き、その破片が翼を貫いた。

 

「!?」

 

「翼さんッ!!」

 

少し離れたところで、フィーネは一人叫ぶ。

 

「・・・誰にも、誰にも私の夢を、壊させてたまるかぁぁあああああああああああ!!」

 

重力に逆らう事が出来ず速度を付けながら、シンフォギアを纏っていても危険な高さから落ち始める。だけど翼には、全てが遅く動いているように見えた。

 

(ああ。私にはやっぱり出来ないのかな・・・)

 

心の中で弱音を吐きながら、目をつむり出す。当たり所はましな部分だったが、フィーネと大量に発生したノイズとの戦闘で、彼女の体は限界を迎えていた。

誰にも彼女を助けられない。そう思っていた時、声が聞えた。

 

『何弱音吐いてるんだよ、翼』

 

「かな、で」

 

『あたし達大空を翔る二枚の翼(ツヴァイウィング)がそろえば、どこまでだって飛べるさ』

 

その声は幻聴であったかもしれない。昔親友が言ってくれた言葉を思い出したのかもしれない。

だけど、今の翼にはそれがどちらだって構わなかった。

 

「ッ!?うぉおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!??」

 

2本の剣を作り出し、炎を纏わせる。それを地上から見ていた上条には、どこか鳥の翼をイメージさせるものであった。剣を構え、塔に向かって突撃する。

昔、一緒に空を飛んでいた翼はもうない。でも今の風鳴翼には、新しい翼が背中に生えているのだ。ならば落ちることなんてありえない!!

 

そのままの勢いのまま翼は塔に突撃した。

そして、まばゆい光を放ちながら、神に挑もうとした塔は崩れ去った




誤字、脱字、感想等ご報告お願いいたします。

上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)

  • 風鳴翼
  • 雪音クリス
  • 月読調
  • 暁切歌
  • マリア・カデンツァヴナ・イヴ
  • セレナ・カデンツァヴナ・イヴ
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