就職してからとっても忙しくなり、学生時代のありがたみを噛み締めている今日この頃です。
それでは第4話どうぞ。
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新たな援軍の登場に対し、上条は喜びの感情よりも先に恐怖を覚えていた。
「・・・翼さん、あれは新手の敵ですかね?」
「本気で言っているのなら寿命を縮めることになるぞ」
「当麻ッ!!なんでこんな所にいるのか説明しなさいッ!!?」
「ひぃいッ!?」
啖呵切って風鳴翼を助けに来た少年はおらず、ここにいるのはノイズやシンフォギアを纏ったテロリストよりも恐ろしい親友に怯えていた少年であった。
そんな風に評されている立花は、鬼のような形相のまま上条に詰め寄り、それにビビりながら、上条は言い訳をし始めた。
「えっと、そのぉ。翼さん一人置いて逃げるのも何というかすごく嫌なかんじがするから、何か力にならないのかなぁと思って来た次第でして・・・」
「そうやっていつもいつも首突っ込んで大怪我して痛い目ばっかりあっているのにどうして学習しないんだよ、このバカあッ!!」
怒りに身を任せ腕をぐるぐる回しながら、上条の方へ向かってくる立花。その光景だけ見れば微笑ましいものだが、腕を回しながら風をきる音の効果音が付属されると全然微笑ましくないものにある。
「それはそうなんでせうが・・・」
「おいバカ。こんだけ言っても聞かねえみてぇなんだから、やっぱりあたしの提案通りもう一回痛い目見させた方が良いだろ。大丈夫だぞカミジョー、お前を傷付けた責任はチャントトルカラナ・・・」
「ちょっと待て。あれ完全に味方サイドの発言じゃねえだろ!!てか、まじでリボルバーの撃鉄起こすのは止めてくれませんかね雪音さん!?」
「そんな危ない方法で解決するなんてダメだよクリスちゃん!大丈夫、このアホでバカで、人の言うことなんて右から左に聞き流すような当麻でも、いつかちゃんと分かってくれるはずだから!!」
「お前それフォローのつもりなのか?言っとくけどフォローするどころか上条さんの心ベキベキに凹むまで殴ってるからな」
もう周りのことなんかそっちのけでギャーギャーと騒ぎまくる立花達。
翼もマリア達への警戒は続けたままであるがその様子に呆れた顔を浮かべ、マリア達に至っては呆然とした表情を浮かべる他なかった。というか完全に出番を喰われていた。
「調、マリア。あいつら何でアタシ達ガン無視して仲間割れ始めてるデスか・・・?」
「・・・なんで、かしらね・・・・・」
「それは後で考えようか切ちゃん。それよりも、あいつらが油断してるならさっさと仕掛けるべき」
金髪で変な日本語を使っている少女、『暁切歌』の問いかけに対しマリアの方はハッキリと理由が分かっているが、黒髪ツインテールの少女『月読調』は宣言通り、言い争っている上条達の方へ突っ込んでいき、ワンテンポ遅れてマリアと暁の二人も攻めにでた。
「ッ!?痴話喧嘩は後にしろ、来るぞッ!!?」
翼の言葉に雪音はすぐさま反応し、遅れて襲ってくるマリア達を迎撃するが、通り過ぎる桃色の光には届かず、上条達の方へ向かわせてしまう。
「チッ!?まちやが・・・ッ!?」
「お前の相手はアタシデースッ!!」
「わざわざ近づいて来んじゃねえよ、クソがッ!」
翠と黒の鎌を振り回す暁相手に、嫌そうな顔を隠す様子もなくそのまま表情に出す。遠距離武器しか持たない雪音では近づかれるだけ不利になっていく。相性は最悪。出来れば翼か立花に相手をして貰いたいが翼はマリアと対峙しており、立花とすぐさま入れ替わる距離でもない。
やりにくい相手にどう立ち回るか。そう考えながらリボルバーからボウガンへと形を変え、新手の装者に狙いを定め引き金を引く。
一方上条達はと言うと、翼の声に対して遅れて反応し、さらにアイススケート選手のような軌道で先読みすることが出来ず、月読調の接近を許してしまう。
ローラスケートを滑らせ、静かで感情の波を感じさせない歌を歌いながら、ヘッドギアの形を変え。狙った獲物を無限に追跡し、切り刻む刃を展開している。
『γ式・卍火車』
狙う相手はただ一人。自分と同じシンフォギア装者に向かって刃を振りかざす。
それに対して、立花は避けることを選ばず、ガントレットを|代わりに真正面から受け止める。ガキンッ!!火花を散らしながら装者達の力は拮抗する。
少しでも気を抜けばガントレットごと切り裂かれそうな状況下であるのに、立花は少女に対し静止の声を投げかける。
「止めようよ!私達が戦う理由なんてないんだよ。だって私達は、ノイズと違って言葉が通じ合えるんだk」
「黙れ偽善者・・・ッ!!」
「え・・・?」
感情を感じさせない歌声から一転して、強い憎しみの言葉が月読の口から放たれた。
「この世界には貴女のような偽善者が多すぎる。貴女のような他人の痛みも知らない人がッ!」
「待って。私は困ってる人を助けたくて、だから・・・ッ!」
「貴女と話すような舌も、貴女の言葉を聞く耳も私は持ってない!綺麗事出来た世界以外を知らない貴女なんかに、誰かのためになんて言って欲しくないッ!!」
「ッ!?」
月読の言葉に動揺してなのか、それともそれ以外での理由なのか、腕の力が抜けてしまい丸鋸の勢いを受け止めることが出来ず、体ごと宙へ飛ばされてしまう。
そのチャンスを見逃す事なく追撃を加える。
体を宙へ投げ飛ばされては避けることもできず、身に迫る刃に対し覚悟を決めたその時。
「だから、人のこと勝手にハブんじゃねえよッ!!」
誰かがそう叫びながら、延長されたヘッドギアの一部分が触れられた、いや殴られた感覚が月読に伝わった。その感覚のすぐ後に、ヘッドパーツに接続された丸鋸ごと、光の粒子となり消え去った。
その光景に驚きながらも、原因となった上条に注意を向けた。
「やっとこっち向きやがったな、チビガキ」
「・・・まさか貴方が、
「なんで、こいつの事知ってんだ!?」
「教える道理はない。私達の邪魔をするのなら、貴方も私達の敵だッ!」
そう言いながら、ローラースケートを回転させ突撃をかける
シュルシャガナの特徴として挙げられるのは、範囲の違う2つの武装である。一つは立花との対決で見せたヘッドギアの形を変え、大きな丸鋸として相手にぶつけるもの。もう一つはへッドギアから小さな丸鋸を射出するもの。そして、地上では
本来であれば、その機動力を用いての
シュルシャガナは一対一、一対多数であっても相手を倒すことができるほどの凶悪な刃を持つザババ神の刃の一振り。だからこそ、右手より上が生身の上条相手ではどうやっても流血沙汰になるのは見えており、最悪殺してしまうかもしれないという事実が彼女刃の動きを鈍らせていた。
だがそれでも、機動力や単純な力勝負では上条に負ける道理はない。だからこそ、自身の足を生かした戦法で上条を翻弄していた。
(アームドギアを形成しなくたって、こんな奴…ッ!)
「人のこと偽善者だの、痛みを知らないだの散々言いやがってッ!お前知ってんのか、あいつが今までどんな人生を歩んできたのか。本当にあいつがただ甘い世界だってどうして言い切れるんだッ!!?」
「ッ!?うるさい!」
「お前はあいつの何を知ってんだ。家族構成か、好きなものか、趣味か!?一つでも答えられるもんがあんならそれでいい!!けどな、何一つ答えることができねぇなら、女だろうと関係ねぇ。本気でてめぇをぶん殴るッ!!」
そう言って足のギアをあげる。追い付くかなんて分からなくてもいい。今はただ、この女を殴らないと気が済まなかった。
拳を振り上げ、近づこうとした。直後。
「…空っぽだ」
「なんっつた、テメ
「貴方もあいつの言葉も、空っぽなんだッッ!!!」
先ほどのように感情任せに声を荒立てた。ただし、先ほどの声が憎しみの感情によるものなら、この声はただ、追い詰められて逆切れした子供のような声であった。
「何も知らないって意味なら、私や切ちゃんがどういった気持ちでマリアに全て背負わせたのか分かるのッ!!?フィーネの器にすらなれなかった、マリアの負担を肩代わりできなかった渡したいの痛みが、貴方なら理解できるっていうの!!?」
「ッ!?」
「私は知ってるぞ。お前たちは何も失わずに世界を救った。マリアのように死んでしまうことが確定したわけでもなく、セレナのように消えてしまったわけでもないッ!!ご都合主義の英雄譚しか歩まなかったお前たちが、なんの理由で私たちを責めるんだッ!!!!??」
その言葉に反論することが出来なかった。その言葉を聞いた瞬間、彼女の言い分が正しいと感じでしまったからだ。だって自分は、誰かを助けた記憶も経験もない、彼女の言う通り空っぽの言葉を吐いてる偽善者すら名乗ることが出来ないものなのだから。
ギュルルッ!!彼女の意思にこたえるかのように、ローラースケートは全速力で上条に向かって走り出す。
ただでさえ目で追うのがやっとだった速度が、先程以上に上がたため、もう上条の動体視力では捉えることさえ出来なくなった。
何とか彼女の姿を捉えよとするが、それより先に前に来た彼女の腹の中をぶちまこうとするような蹴りをまともに喰らう。
「ごッ!?――うぉええ・・・ッ!?」
蹴り飛ばされると思い、足と腹に力を入れたのが間違いだった。急停止からのボディへの一撃は、相手を吹き飛ばすためのものではなく地面へ叩きつけるための一撃であった。
元々漫画や見よう見まねで威力を消そうとしたのが仇となり、赤く染った吐瀉物を吐き出してしまう。
呼吸を整えようにも、酢と鉄臭い呼吸では口からまた吐き出しそうになるので必要以上の酸素を取り込むことが出来ず、その場に蹲る。
そんな状況の上条を見逃すほど、月読調は優しくない。ヘッドギアの片方を丸鋸に変形させ、月を背景に刃が光る。慈悲なんて一切ない刃が、少年の胴体を真っ二つに。
「そんなことさせないッ!!」
ガキンッ!!刃が肉を切り裂く前に、白と黄色の手甲ガントレットが防ぐ。
上条を守るように立花響が割って入る。叩き切るために勢いつけた一撃を、交差した腕で押さえつける。さらに勢いを殺すため、地面を踏み込みこみ地面へ衝撃を飛ばしていく。上条のように見よう見まねの動きではなく、師と仰ぐ人物から教わった技術は見事に少年を守るのことができた。
先程のような鍔迫り合いではなく、立花の方が少しずつ刃を押し返していく。
怒りでも憎しみでもない。ただ真っ直ぐな視線が月読を射抜く。
「・・・確かに、私たちは貴女達にどんな事があったのかは分からない。だからッ!」
言葉を口のする。真っ直ぐで最短で、偽りでもない空っぽのなんかじゃない言葉を穿つ。
「貴女達のことを、私は本気で知りたいんだッ!!だから、教えて欲しい。貴女達はなんでこんなことをするのかをッ!!?」
そこまでが限界だった。バキバキッ!!と、刃にヒビが入っていく。上条のように特別な力を使った訳でもない。正真正銘の力勝負で立花響は月読調を打ち破った。
それは思いの力なのかが上回ったのか、ただ単純な膂力勝負に勝ったのか、それとも別の理由だったのか。ただこれだけは言える。
今の月読調では、立花響に勝つことはできない。
だとしても、それでも。
「・・・まだ負けてない。私は――ッ!!」
何か言葉を繋ごうとする前に、緑色の光が立花達の後ろから放たれる。
直後、緑色のスライムのような
「調、切歌。
マリアはそう言って、両腕のプロテクターを合わせ、槍へと形を変える。
槍の先端が二股に別れ、光が集まる。
光は一直線にノイズに目掛けて放たれる。弾着と同時にノイズは拡散、分裂し数を増やしていた。
それを見るやいなや、すぐさまマリア達3人はドームから逃げ去った。
「ッ!待って、まだ話が・・・ッ!!」
「優先順位を見誤るな立花ッ!今対処すべきはこのノイズ達だッ!!」
「でもどうすんだ!?さっきから鉛玉与えてバラけては増えるばかりだぞこいつらッ!?」
翼の飛ぶ斬撃も、雪音の弾丸も、イタズラに数を増やすだけで減らすことはなかった。
もしこのまま分裂増殖を繰り返せば、ドームを乗り越え避難が出来ていない人達を巻き込むことになる。
その中にはかけがえのない親友や、ドーム内では横たわったままで動くことの出来ない親友がいる。
今必要なのは広範囲で相手の増殖速度を超える高火力。そして、立花達にはそれを可能にする切り札があった。
「・・・絶唱。S2CAトライバーストを使ってこの場のノイズを一気に倒すッ!!」
「でも、あのコンビネーションはまだ未完成だろ!?」
「それに失敗すれば、立花へのバックファイアは図りしねないものだぞッ!?」
「だとしても、今みんなを助けるのにはこの方法しかありません!だから2人とも、力を貸してくださいッ!」
頭を下げ頼み込む。翼も雪音もこれ以外の方法を思いつくことは出来なかった。それに、動けない上条を逃がすよりここで倒しきる方が現実的であることも分かっていた。
だから2人とも頭を縦に降った。
それを見た立花は、まだノイズが居ない場所に上条を運んだ。
意識があるのかないのか分からず、その目は何かをぼんやりと写しているだけだ。
「たち、ばな・・・」
「大丈夫だよ当麻。すぐ終わらせて安全な所に連れていくからね」
「じゃ、行ってくるねッ!!」
何Mのも高さから飛び降り、翼達の元へ向かった。
「上条の容態は?」
「大丈夫です。私の呼び掛けにも答えてくれたので、今のところ意識はあります」
「だったらさっさと、こいつら全部片付けねぇとな」
立花を真ん中に立たせ、手を繋ぐ。呼吸を整え、覚悟を決める。
「いきます、S2CAトライバーストッ!!」
そして、3人の装者から同じ
消えそうな意識の中、上条は確かに、立花達の歌を聴いていた。
初めて聞くのに、どこか懐かしさを覚える歌。
その歌を聴きながら、何故か。
(――この歌なんだか好きじゃないな・・・・・)
どうしてか、そんな悲しいことを思ってしまった。
歌が終わると同時に、立花を中心に凄まじいエネルギーが集まる。
ぼんやり見える光景でも、立花の表情が苦しそうなものになっているのが見えた。
そして、光は収まりガングニールの形が変わっていく。
S2CAトライバースト。それは立花の持つガングニールの性質を利用した絶対無敵の一撃。絶唱の力を立花のガングニールが調律し、立花1人に力の全てを託すものであった。だがそれは、シンフォギアのバックファイアを1人で受け止めるということであり、その痛みは想像を絶するものであろう。
だけれど少女はそんな様子を見せずに、ジャッキの力を使い飛びかかる。
最速で、最短で、、真っ直ぐに、一直線に!!
「これが私達のォッ!!絶唱だァァァああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!!」
何者をも貫き通す無双の一撃が、ノイズに襲いかかる。ぶつかったと同時に、ノイズを中心に虹色の光の柱がそびえ立った。
「・・・ああ、綺麗、だな――――」
その光景を目撃したと同時に、上条の意識は消え去った。
「当麻、当麻ッ!!」
「無理に揺らすな立花。気絶しているだけだ」
「でも、口から色々吐いてたし、もしそれが詰まって窒息でもしたら・・・ッ!?」
「呼吸音も普通の音だ。そうやって揺らしてる方が、カミジョーの体に毒だぞ」
「そっか。なら良かった・・・」
安堵の息を漏らしながら、立花の表情に余裕が出てきた。
そして、それ同時に、目から涙が零れた。
「!?お前、大丈夫か!もしかして、さっきの絶唱の負荷が・・・ッ!?」
「ち、違う違う!ちょっと安心したら、なんだか涙がでちゃって・・・」
「ぶっつけ本番によるものだ。成功したとはいえ、体に何らかの負荷がかかっていてもおかしくはない。本部に戻るとすぐ、メディカル検査を受けるといい」
「はい・・・」
目を擦りながら、涙を拭くが一向に止まる気配がなかった。
何故なら、彼女が泣いているのは体が痛いからじゃなく。
(・・・私のしてることって偽善なのかな)
声と認識されないほど小さい言葉であった。
(・・・胸が痛くなることだって、知ってるのに―――)
そう少年に問いかけたかった。だけど少年は答えることはしなかった。
それは気絶しているからでもあり、仮に目を覚ましたとしても。
少年が記憶を無くしているから、答えることなんてできるわけが無いのだ。
誤字、脱字、感想等ご報告お願いします。
上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)
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風鳴翼
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雪音クリス
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月読調
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暁切歌
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マリア・カデンツァヴナ・イヴ
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セレナ・カデンツァヴナ・イヴ