戦姫絶唱シンフォギア IB   作:ドナルド・カーネル

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どうも作者です。
お久しぶりの投稿です。アンケートは三日後に終了と致します。
新約11巻フルボイスイベントや、聖闘士星矢コラボなどいろいろありましたねー。
無事に両作品もアニバーサリーを迎えれることを願います。
それではどうぞ。


第5話 終焉を望む者、終焉に臨む者

1

ここ最近、和式の家よりも洋式の家の方がよく見かけられる。それどころか日本の家でも土足で上がっても良い家が増えている。

だがそれでも、未だに土足で家に上がることに抵抗感があるのは、日本人が持つ『和』の心が忘れられていないという事であろう。

そして、『昔ながら』と言うよりも『昔からある』武家屋敷に、ドカドカと()()で踏み込んできた人物が来た。

その人物は180cm以上はあるであろう大男で、短い金髪をツンツンに尖らせ、青色のサングラスで目線を隠した少年だった。前を全開で開けたアロハシャツにハーフパンツという、明らかにその場にそぐわない格好をしていた。

 

「これは一体どういうことだ、風鳴訃堂ッ!!?」

 

「・・・・・」

 

男からの怒鳴り声に屋敷の主である翁『風鳴訃堂』は沈黙を貫いていた。だがそれはその怒鳴り声に臆した為ではなく、少年が持ってきた書類の内容に呆れて、言葉を発することさえ億劫に感じていたからだ。

 

「俺はな、大抵のことならお前の無茶ぶりも黙って従う。マリア・カデンツァヴナ・イブの宣戦布告一件から数時間も経たない内に情報を探ってこいというお前の命令も、その命がけで世界中から情報を探ってきた情報を二課の面子に無料(ただ)で与えるのも別に構わない。そんな事はいつものことだし全て与えてる訳ではないからな。俺やお前にとってもマイナスの面が勝ってる訳ではないからな」

 

だがな、そう言ってサングラスのレンズを光らせ。

 

「これに関しては何一つ納得が出来ん!何故奴らのアジトの強襲に上条当麻を使うッ!?」

 

「・・・貴様が知ることではない。それとも何か、学友を巻き込むことにためらいを覚えているのか?」

 

「そんなんじゃない。ヤツは俺のような陰陽師崩れの『天邪鬼(ウソツキ)』やお前達のような『護国』に命を捧げているような存在でもない。ヤツはただの一般人だ、そんな素人を何故前線に・・・ッ!?」

 

「言ったはずだ、貴様が知ることではないと。それに装者やノイズ(害敵)、挙げ句の果てには悠久を生きる巫女にさえ戦い生き残った者は、もう一般人とは呼べるものではない」

 

翁から発せられる言葉にはまともに会話をする気はないと言うことだけが伝わってきた。

これ以上ここにいても無駄だと悟り苛立ちを隠す様子もなく、金髪の少年はあえて畳に汚れが残るように足下を翻しながら翁の支持に改めて従う。

 

「分かったよ。クソったれが、お前の腹の内は何時も分からないが、今回に関してはいつも以上に読めん。それほどまでに上条当麻に固執する理由なんだ?」

 

「・・・時に貴様は、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の骸が何を生み出したか知っているか」

 

「あぁ?」

 

八岐大蛇(ヤマタノオロチ)須佐之男命(スサノオノミコト)戦いは、この国の神話に詳しくなくても知っている人は多くいるであろう。

とある老夫婦が沢山いた娘を贄として八岐大蛇に食べられ、最後に残った娘も今年の贄になってしまうことを聞いた須佐之男命が、8つの首と頭を持つ八岐大蛇を倒して娘を娶るといったもので、その時首を切り落とした剣が天羽々斬(アメノハバキリ)。そして八岐大蛇の尾から取り出された剣を・・・、

 

叢雲剣(ムラクモノツルギ)、それが一体どうしたんだ」

 

急に口を開いたかと思えば全く前後のつながりのない話をしてきたため、余計に苛立ちが募ってくる。

 

「国仇なす竜は、その骸さえ川を血で汚していったが、その最後に出てきたのは国を象徴する剣であった」

 

翁の願いは誰にも分からず。実の息子達にさえ全てが見えているとは分からない。齢100を超える(怪物)の思考など予想も付かないが、

 

「ではあの少年の奥に潜むモノは、何を浄化し討ち滅ぼした後に与えるのであろうか。気にはならないのか、()()()()()

 

きっとそれは、碌でもないものだろう。少年はそう思いながら翁の言葉に何も返さず、屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

 

2

マリア・カデンツァヴナ・イブが発した、国土割譲という世界中への宣戦布告から一週間。彼女、いや彼女たち『フィーネ』の動きは全くなく人為的と思われるノイズの発生もなく、政府関係者は緊張の糸を斬らすことが出来ない一週間であったが、普通の人々達は2、3日もすればいつも通りの平和な日々を送っていた。

風鳴弦十郎が率いる『特異災害対策機動二課』は、仮設本部として兼任している次世代型潜水艦の中にて『フィーネ』の動きや居場所の手がかりを探していた。

そして、今から十数時間前にある筋からそれに関する情報が入ったため、その裏取りを行っている緒川慎次からの連絡を待っていた。

ずっと気難しい顔をしている彼の頬に、ふと冷たい感触が伝わってきた。それは氷の入ったアイスコーヒーをお盆に載せた櫻井了子の仕業だった。

 

「冷たい物どうぞ」

 

「おう、冷たい物どうも」

 

弦十郎に渡してから、藤尭や友里にも同じようにコーヒーを渡していく。最後の一つを手に取り櫻井は自分の机で作業を行いながら弦十郎に話しかける。

 

「そんなに信用できないのかしら、今回の情報源?」

 

「うむ・・・。信用できる出来ないの話なら、出来るものではある。だが今回に限っては何故我々に直接この情報を与えてきたのかが気になってな」

 

今回二課に情報を与えてきた組織とは繋がりが蟻、以前からもこう情報を与えてきたことは多々あった。だがそういうときは間接的に渡しており、直接指示を与えることなどは一度もなかった。なのに今回に関しては組織の長自らが情報を渡すという本来なら想像すらつかないことが起っていたのだ。

何故今回に限ってそのような事をしでかしてきたのかを考えている弦十郎に対し櫻井は

 

「あんまり考えてても思いつかないのなら、今は考えない方が良いんじゃないの?送ってきたのが貴方の実に()()だとしても、国を護る事以外ならどんなことでもやるような人間の心の中なんて、貴方みたいな優しい人には分からないモノよ」

 

勿論わたしもだけど、と言って櫻井はコーヒーを啜った。頭の働きをよくするために砂糖を大量にいれたそれは、自分がやった記憶がないとはいえ、世界を破滅寸前まで追い詰めさらには大切な仲間であり古くからの友人の腹を刺した人間を許し、それどころか守ろうとした赤い髪のいい男を思い浮かべるような甘さと優しさがあった。

 

「分からないことを悩むより、ほんの少しでも分かっていることを考えましょう」

 

そう言いながら櫻井キーボードを叩いて以前姿を表した新手の装者達をディスプレイに表示する。

マリア・カデンツァブナ・イヴが纏うのはもうひとつの第3号聖遺物『ガングニール』であるのは分かってはいたが、残り2つについては今まで確認されたアウフヴァッハヘン波形のどれとも一致しなかったためどういったものか分からなかったのだが。

 

「車輪と丸鋸を操っていた子と鎌を操っていた子が持っているシンフォギアだけど、メソポタミア神話に登場するザババ神が持つと言われている2振りの刃、『シュルシャガナ』と『イガリマ』ということと、適合者の名前も分かったわ。『シュルシャガナ』の適合者は『月読調』、『イガリマ』の適合者は『暁切歌』。そしてマリア・カデンツァブナ・イヴを含め3人ともアメリカの研究機関出身よ」

 

「この短期間でよくそこまでわかりましたね」

 

「まあね。天才にかかればちょちょいのちょいって、言いたいところだけど、これに関しては私の記憶じゃなくて私が残してた()()にあったものを引き出してきただけなんだけどねー・・・」

 

櫻井了子はここ十数年の記憶が抜けている。それはフィーネと分離したのが原因なのかは定かではないが、今の彼女にはシンフォギアを作成する技術も知識も持ちえないのであった。

だが、マリア・カデンツァブナ・イヴの宣戦布告から自分に宿っていた時にそれらに関する情報がないのかと探し出してみると、何を思ってなのかフィーネは自身が生み出したシンフォギアシステムのデータを厳重にロックしていたとはいえ二課に置いていたのだ。そしてそこには二課以外にも別の国でも研究をしていたことが判明しており『シュルシャガナ』、『イガリマ』そしてもうひとつの『ガングニール』もそこで研究していたということが記されていたのだ。

それにより、櫻井はある程度の修復やシンフォギアに関する知識を得ることは出来た。だがそれでも今わかってるのは一部分だけであり、その部分だけでも二課では1度も行われたことがなかった悲惨な実験が行われていたことが記されていた。

 

「これだけでもとんでもない事実が発覚しているのに、まだあるんですか・・・」

 

「記憶がないとはいえ、この全てが自分のやった事だと思うと嫌になってくるわね・・・」

 

頭を抑えながら櫻井は天を仰ぐ。この十数年間、人の体を使ってどれだけの被害をだしてきたのか想像もつかないが、今までフィーネがやってきた事に比べるとこれでもまだ氷山の一角であり、歴史の影に悠久の巫女がいたことを示す事実でもあるのだ。

 

「・・・了子くん、もしも辛いのなら別の誰かに任せることも」

 

「気持ちは嬉しいけど、お断りするわ。もしかしたらこれ以外にもデータの写しがあるのなら、悪用される前に一刻も早く解明しなくちゃならないわ。これ以上、フィーネに被害者を増やさせるわけにはいかない。それがフィーネに取り憑かれて何も出来なかった私がやるべき事だもの」

 

そう言って櫻井はデータの解析に取り掛かる。それと同じくほかのメンバーも仕事に取り掛かり始めた。

それが『大人』として自分たちができる最大限のことだと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

3

一方、色々と事情を知っている上条当麻は、どちらかというと後者の立ち位置に立っていた。

 

「・・・ハァ」

 

今は昼休みの中頃。ランチタイムを終えた学生達は駄弁っていたり、スマホを弄っていたり、違うクラスの友達に会いに行ったり、隣に新しく出来た()()()を見ていたりと各々が時間を潰しているなかで、上条は自分の席から動かずに腹をさすりながらボーッとしていた。

 

(・・・腹痛ぇ)

 

あの日、自分が気絶して数時間後にいたのは二課の仮設本部として運用されていた潜水艦の中だった。

目を覚ますとかなり不機嫌な小日向未来と装者三人に囲まれながら、後ろの方にはなんとも言えない顔で弦十郎と櫻井が見ていた。

そこからは怒りの説教タイムに突入し、さすがに怪我人相手の折檻は行われなかったがもしこれで軽い怪我や無傷だったらあの時並に殴られていたのではないかと思うと今でもゾッとする。

ある程度説教が終わり櫻井による身体検査の結果、内臓に傷はなかったが骨に異常が見つかり、本来なら入院と行くところだがただでさえ学校の授業や人間関係にまだ慣れきってない時期に長い休みに入ると学校での居場所が無くなるのではと思い、弦十郎と櫻井に頼み込んだ結果、激しい運動の禁止という条件付きで2日後には学校に通う姿が見えた。

 

昼ごはんの後に痛み止めを飲んだがまだ効いておらず、机でうずくまっていると青い髪で世界3大テノール声もびっくりな野太い声がで話しかけてくる学友が来た。

 

「カミやーん、しんどそうな顔してるけど男の子の日なん?」

 

「んな日がある訳ねぇし、今の発言で俺までもクラス中の女子から冷たい視線を送られきたんだけど」

 

「なんや、今頃気にしだしたん。このクラスになって2週間くらいたったら土御門くん含めて今とおんなじキモチノイイ視線で見られてたやん」

 

「こんな視線を喜ぶのはお前くらいで、俺と一応土御門のやつも巻き込むんじゃねえ。そういや、もう昼だけどあいつから連絡全然来ねえな」

 

「ホンマやねえ、小萌せんせーはなんか体調不良がどーたらとか言ってたけど、結構しんどいんかな」

 

「俺部屋が隣だから、放課後お見舞いの品でも持って様子見に行こうかな。同級生が部屋で1人野垂れ死にかけてるとか嫌だし」

 

「まあ舞夏ちゃんおるんやし、1人でってことはないんちゃう。今頃メイド服着せた義妹(いもうと)に看病プレイしてもらってるかもしれへんなぁ」

 

「学校サボってそんなことしてたら1発殴るか」

 

こんなふうに今は学校に居ないもう1人の友人のことを気にしながら、上条たちはだべり出す。

土御門の話題から離れ、今度は隣の女子校のものへと変わる。

 

「それにしても、向こうも昼休みだとしても明らかに騒がしすぎやしねぇか?」

 

「そりゃあ向こうはもうすぐ学園祭やから、今も準備にに勤しんでるんやろうな。僕行こうとおもとるけど、上ヤンも一緒に行く?」

 

「あー、それななんだけどな。小日向から聞いたんだけど、どうやら入場に制限がかかってて、生徒から配られるチケットがないと入場できないんだとさ」

 

「何やて!?じゃ、じゃあ僕らは入られへんのかっ!?」

 

「まあ、ただでさえ女子校ってだけで男子禁制ってイメージなのに、日本のトップアーティストまでいる学校だしなぁ。セキュリティとか厳重にするに決まってんだろ」

 

「そ、そんなぁ。ボクァちょっと純度の高い女子高生を脳内メモリーディスクに保存したり、それで新たな可能性を構築したりしよと思てただけやのに・・・」

 

「お前みたいなのがいるからだろ・・・」

 

あからさまにテンションが駄々下がりしている親友を見て、どれだけ行きたかったんだよこいつ・・・。と少し引いていると涙を流しながらガシッと肩を掴み、

 

「上ヤン、僕ら友達やんな!だからお願いが「断る」まだなんも言うてへんやん!?」

 

「あの話聞いてチケット貰いに行くわけねえだろ」

 

「頼む、一生のお願いやっ!!上ヤンなら小日向ちゃん以外にも知り合いもおるやろ!?」

 

血走った目で本気で頼みこんでくる長身の男に、前の自分はもう少し友人関係をちゃんと考えるべきだろうと心の中で頭を抱えていた。力尽くで掴んでくる腕を外して取り敢えず離れようとすると。

 

ヒラリ、と上条のポケットからなにかの紙切れが落ちた。

それは先程まで話題に上がっていた女子校のチケットである。

それを見た青髪ピアスだけでなく、クラス中の男子全員が上条に視線を向けている。それは、ピリピリとしたものであり殺気みたいなものに近かった。

上条はチケットを拾ってポケットの中に入れる。そして、ニッコリと笑いながら青髪に話しかける。

 

「なあ、青髪」

 

「なんや、上ヤン」

 

青髪も笑顔で応える。

 

「俺達、友達だよな!」

 

「あの裏切り者を捕まえてチケットを奪うぞォッ!!!」

 

「「「「「おおおおおおッッッ!!!!!!!」」」」」

 

「チッッックショウがぁぁああああ!!!!!???」

 

そこから昼休みが終わるまで、上条の逃亡は終わることはなかった。

 

 

 

「・・・あいつら鬼か」

 

痛む体を引きずりながら家路に進む。昼休みが終わって授業が始まってからも男子達から放たれる殺気は止まることはなく、ホームルームが終わったと同時に、授業中に考えていた『窓からの逃走方法Part4』を使って男子達からの追撃をなんとか振り切り逃げ切った。

もうこの痛みだとご飯を作る力もないので、今日はお弁当でも買って帰ろうと雪音に連絡をすると。

 

『悪い。今日は任務あるから飯は要らねえ。大人しく家に帰ってろよ』

 

という連絡を受け一人寂しくスーパーの安売り弁当を買いに行こうとすると。

 

「お!いたいた。おーい上ヤン」

 

「あれ、土御門・・・?」

 

後ろから声をかけられて振り向くと、アロハシャツにハーフパンツを着飾った土御門元春がそこにいた。

ピンピン元気な様子であり、今日学校に来なかったのは病欠ではなくただサボりだったと言うことが分かった。

 

「お前今日学校来なかったけど何かあったのか?」

 

「まあ色々とあったんぜよ。それより上ヤン」

 

「ん、なんだよ?」

 

ギラリ、と青色のサングラスを光らせ悪友(親友)はこう言った。

 

「ちょっと今から肝試しに行かないかにゃー」

 

 

 

 

 

 

「ここに、マリアさん達が・・・」

 

「ええ。ほぼ間違いないかと。申し訳ありません、皆さんには明日学校があるというのに」

 

「いえ、これも防人の勤めです。それより、()()は上条は来ていないのだな」

 

「ああ、カミジョーのヤツからちゃんと家に帰れよって連絡したし、家に帰った写真も送ってきたから大丈夫だ」

 

装者三人と緒川は、マリア達のいるとされる廃病院にいた。

これから侵入し捕まえようとするとのことで、四人とも警戒心も強めていた。

 

「何があるかわかりませんが、恐らくノイズの襲撃は予想されます。皆さん、気をつけて下さい」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

 

 

 

「さあ上ヤン、覚悟はできたかにゃー」

 

「ああ、もうとっくに出来てるよ」

 

「今ならまだ逃げられるぜよ」

 

「あんな話聞いて逃げれるかっての」

 

 

上条と土御門はさっきと同じ服装で肝試しを行う場所にいた。

上条は息を整え緊張をほぐしていたが、土御門の方はいつも通りのお気楽具合であった。

だが二人とも、その瞳に宿していた光はとても強いものであった。

 

「「じゃあ、行くとしますか!!」」

 

そうして彼らもまた、彼女たちと同じ廃病院へと足を進めた。




誤字、脱字、感想等ご報告お願いします。

上条×IF装者 見たいのは?(ビッキーは『翳裂閃光』があるので今回はなしで)

  • 風鳴翼
  • 雪音クリス
  • 月読調
  • 暁切歌
  • マリア・カデンツァヴナ・イヴ
  • セレナ・カデンツァヴナ・イヴ
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