インフィニット・ストラトス -Record of ATX- 作:No.20_Blaz
父の方はISの他にもパーツなどを製造するのに対し、
婦人は完全純軍事です。
Record.16 「会い・逢い・合い」
アイドネウス島・・・
かつて、『メテオ3』と呼ばれる隕石が落下したこの場所は、現在は連邦軍の管理下となっている。ここでは様々なことが起こり、一度は大統領直属組織『ガイアセイバーズ』が島を改装して基地としていたが、現在はその殆どの施設が撤去、接収されていたのだ。
そんな島から数十キロ離れた島。
アイドネウス島の近くある島の中では、最も大きい島で、其処にはポツリと一件の民家が建っていた。
そんな島の近くに、一隻のタウゼントフェスラーが着水する。
中から現れた二人の人物。その二人はその民家に続く丘をただ歩いていた。
「ひぃ・・ひぃ・・・・さ・・流石にキツイ・・・・」
「・・・まだ歩いて十分も経ってませんよ。束さん。」
「い・・・いっくんはいいよね・・・結構体力あるし・・・・」
そう言って束は息を切らしつつも丘を上っていた。
流石に走る力はあっても上るのは苦手だったらしい。
そんな彼女を見つつ、同行していた一夏はゆっくりと丘を登った。
「・・・・・・。」
何処にでもありそうな民家の玄関に立ち、一夏は先にと思い、ドアを開ける。
木製の木々の家である為、落ち着いた感覚と木々のいい香りが漂う。
「・・・・・・!」
気づくと、彼の前には一匹のドイツ犬がテラスの近くで待っていた。
その犬は一夏を見ると、ただ黙ってそのテラスの奥に消えていった。
「はぁ・・はぁ・・・いっくん、待ってよ・・・・」
「・・・・家まで着いたんですし、少し落ち着いて・・・」
「ひっひっふー・・ひっひっふー・・・」
「何で出産の息遣いなんですか。」
息を整えた束と共に、一夏は先程の犬が消えたテラスに向かった。
其処には、一人の男性が椅子に座っており、その近くに先程の犬が座っていた。
「はー・・・もっとマシな所に自宅作らないかなぁ・・・」
「ハハハハハ。私は、ここが気に入ってるのでね。コイツも同じだ。」
「・・・・・・はぁ。束さんが言うのもアレだけど・・・・おじちゃんも変わってるよね。」
「・・・・そうだな。」
「・・・・。」
「・・・君とは、こうして会うのは始めてだな。はじめまして、織斑一夏君。
私が、ビアン・ゾルダークだ。」
「・・・・・貴方が・・・ビアン・・・・」
この時。一夏は思った。
『似てない』と。
「・・・・娘と似てないと思ったか?」
「あ゛・・・・」
何故か読まれていた。
娘があんなに金髪美人なのに、どうして父親はこんなにヒゲのあるダンディなのかとも。
「仕方あるまい。あの子は外見は母親似だからな。」
「・・・はぁ・・・」
「さて。長話も難だ。飲むかね?」
そういって、ビアンはワインクーラーの中にある数本のビンから一本を取り出す。
まさか酒かと思う二人だったが、先にビアンが補足を言ったのだ。
「心配するな。客人用のブドウジュースだ。」
「・・・・ほっ。」
向かいに用意されていた椅子が二つある。
其処に一夏と束は座り、ビアンもブドウジュースに口をつけていた。
話す体勢は出来た。
そう思い、束がビアンに対し話しの第一声を言ったのだ。
「・・んじゃ。改めて、ビアンのおっちゃんは束さん達がわざわざココに来た理由・・・解ってるよね?」
「・・・・・大よそはな。しかし、先に言っておく。私が知っているのは全て過去の事だ。現在はどうなっているかはわからん。」
「・・それでもいいよ。だって・・・先ずはおっちゃんの過去について知りたい事があったし。」
「・・・・・・・。」
束はそう言うと胸元から紙束を取り出す。
それはビアンにも見覚えがある物で、ソレを見て少し眉を動かした。
「まずさ。どうして・・・『この計画』を実行しなかったの?」
「・・・・・この計画・・・か。」
「・・・・束さん、それって・・・・・」
「・・・・ビアンのおっちゃんが提唱した『異星人侵攻論』。アレには続きがある筈だった。」
「・・・・・・。」
「人類が異星人と戦う為に力をつける。その為の『剣』を示し、鍛える。そのための組織。通称『ディバインクルセイダーズ』。」
「・・・そう。地球人類に『試練』を与え、その力を目覚めさせる為の組織。叶わぬ場合。その時はDCが守護する剣となる・・・・・筈だった。」
「・・・だった?」
「・・・そう。不安定だったのだ。人類自体が。」
「・・・・・女尊男卑。」
「そう。ISと言う新たな力を手にし、その力に溺れた。それによって、DCの設立自体が不安定になったのだ。」
「・・・それだけ・・・で?」
「それだけではない。異星人と結託し、この地球を我が物としようとした地球人も居た。それは、君が一番良く知っている人物。」
「・・・・・秋龍。」
「そうだ。だが、実際彼は他にも地球内部、果ては異世界にまでもそのパイプを持っていた。」
「異世界・・・・・ラ・ギアス!」
「・・・・・・その辺は私はシュウから聞いた。尤も。地球の技術ではラ・ギアスの技術を再現は出来ない。加えて、ラ・ギアスの兵器を持ってきても、それは同様だ。」
「・・・マサキは、それを承知で・・・・・」
「そして。彼が繋がっていたもう一つの組織・・・」
「亡国企業。」
「・・・・恐らく、ゲストの一件とリクセントでの戦い。そして、彼の蘇生は彼等の手引きだろう。」
「・・・アイツは・・・ガキの頃から奴等と繋がっていた・・・・?」
「・・・・かもしれん。だが、恐らく、彼はそれ以前からも繋がりがあったのやもしれん。」
「・・・・・・・・・どう言う事?」
あるかもしれない可能性の話し。それを話すべきかと考えたビアン。
だが、彼等なら受け入れる筈。考える筈。
そう思い、ビアンは閉ざされていた可能性の箱を開かせたのだ。
「・・・・・それは・・・・」
数日後。
一方、その頃。連邦軍伊豆基地では、IS学園で回収されたバフォームの解析が進められており、イルムに呼ばれていた千冬はその基地内を歩いていた。
そして。基地内にある一室に入り、其処に居たカイに敬礼をした。
「失礼します。カイ少佐。」
「・・・別にお前はもう軍の人間じゃないんだ。敬礼はしなくてもいいぞ。」
「・・・・・では、お言葉に甘えて・・・・・」
「んじゃ千冬。俺には昔のドイツの軍服で俺に敬礼を・・・」
「自分でやれ。」
近くに居たイルムには冷たい言い方で返事をし、イルムはいじけた。
だが、千冬が話しを切り出すと、イルムも態度をまじめにしたのだった。
「・・・で。あれの解析はどうなった?」
「・・・・・さっぱり。だが、幾つか解った事もある。」
「・・どんな事だ。」
「・・・まず。あの機動兵器は、かつて俺達が見た事がある。」
「っ・・・・・!」
「実際に私もイルム達もあれが動いているのを見た事がある。その時の攻撃パターンも同じだった。」
「・・・では何処が・・・」
「・・・・だがな。同時にある疑問点が浮上した。」
「・・・疑問点?」
「そう。あの機体、『バフォーム』は『この世界』の兵器ではない。」
「・・・・・・この世界の?」
この世界ではない。では、何処かファンタジーの世界があるとでも言うのか。
だが、イルムとカイの顔は嘘を言っているような表情ではなかった。
「・・・・どういう事ですか、少佐。この世界の存在ではないと言う事は。」
「・・・以前。鋼龍戦隊はある異世界に転移した。そこでは、我々のとは全く違う技術が使われ、機動兵器が開発・量産されていた。」
「そして。それを使って戦争もしていた。俺達が転移した時は丁度戦争中だった。」
「・・・・・その・・異世界とは一体・・・・・・」
「・・・・ある少年がこういった。この地球の地下にあるであろう異世界。
ラ・ギアス。」
「・・・・・・・・・。」
「その中で、このバフォームは量産機として生産、配備されていた。」
「・・・では。学園に現れたのは、それを基に?」
「だろうな。それに、幾つかではあるが、此方で使われているパーツも見つかった。つまり。」
「あのバフォームはラ・ギアスの兵器の設計を基に作られたコピーだ。」
「コピー・・・ですか。」
コピーであれ、あれだけの機動兵器を開発できるには、相当の技術と金が要る。それは世の常だ。では何処が?思い当たる企業はあるにはある。その中でも最も最有力候補は二つ。
一つは、今でも多くの軍事兵器を開発・製造し、何処に構わず売りさばくミリタリーカンパニー、『イスルギ重工』。
最近ではシロガネを短期間で修理したと言う事で、その技術力等が見直された企業だ。
そして。つい最近頭角を現した純軍事企業。
そう。デュノア・カンパニーだ。
だが、一つと言わず、どちらもと言う事もある。
いずれにしても確信が無いのは事実だが。
「・・・・・。」
「ま。今は連中の尻尾はでちゃいねぇ。見極めるのはまだ早いぜ。」
「・・・・そうだな。」
深く考えていた千冬に少しリラックスさせるイルム。
自分も考えすぎかと思い、千冬も思考を一旦中断させた。
すると。そういえばと思い、カイが千冬に尋ねた。
「・・・そういえば、代表候補の子達はどうしている?」
「・・デュノア、ボーデヴィッヒは大した損傷は無かったので、現在はラングレーからの修理パーツ待ち。オルコット、凰は逆に損傷がある為、一旦本国に戻りました。」
「・・・箒ちゃんとアリスちゃんは?」
「・・・篠ノ之は参式の修理と共に少し用事でテスラ研。アリスはあの有様だ。今は病院で寝ている。」
「ビルトシュバインのお陰で何とかって感じか。」
「まぁな。だが、結局そっちも損傷がヒドイからしばらくは月行きらしい。代わりにカーク博士の伝手で、ビルトラプターを借りるとな。」
「・・・・・ラドム博士の怒りの表情が眼に浮かぶよ。」
「「全くだ。」」
が。その噂されていた本人は別の事でそれ所ではなかったらしい。
そして。千冬もある程度前から考えていた事を口にした。
「それと少佐。手続きが終わったので、正式にタイプSを受領します。」
「ん。解った、お前ならきっとアイツを乗りこなすと思うからな。だが、データは時折寄越してくれ。」
「解っています。その為にも幾つかの追加装備を受け取ったので。」
「ええっと。M・B・ライフルとスプリットミサイルとスラッシュリッパーとロシュセイバー二本とM950マシンガンとM90アサルトライフルとM13ショットガンとGリボルヴァーとG・インパクトステークとシザースナイフと・・・・」
取り合えずイルムは一通りの『武器』の名前を口に出して読んで見た。
そして。少し考えた結果。
「お前は一人で戦争でもする気か!?」
思わずつっこんだ。
「・・・・そうか?」
本人は解ってなかったが。
所変わって月のマオ社では、社長であるリン・マオは変わらず社長としての仕事をこなしていた。だが、そんな彼女のもとに、ある企業からの通信が入ったのだ。
「・・・・『ダニエル・インストゥルメンツ』から?」
『はい。社長に直接と。』
「・・・・・・あそこの企業が何故・・・・?」
ダニエル・インストゥルメンツ社とは西暦時代からあるガン・カンパニーで人間が使用する銃器からIS、更には現在では主にPTを中心としても開発・製造を行っている所だ。
製造しているのは主に実弾武器。その最もポピュラーなのが現在爆発的に普及・配備されているM950マシンガンだ。
だが、ガン・カンパニーがどうして機動兵器を専門としている企業に連絡を取ったのか。
疑問は残るが、リンは取り合えず聞くだけ聞くと思い、通信を繋がせた。
『始めまして。ミス・リン=マオ。私はダニエル社・交渉課の『レイブン』と申します。』
通信を開くと、何処かのオフィスを背に一人の男性が顔を出した。
目と髪の色から欧米系、加えてドイツかイタリア辺りの人種だとわかった。
「・・・早速ではあるが、ガン・カンパニーの貴方方ダニエル社がどうしてわが社に連絡を?」
『・・・無謀な注文は承知の上。私達は貴方方にある頼みを申し上げに来ました。』
「・・・・頼み・・だと?」
『ええ。寧ろ、取り引き、または交渉と取ってもらっても構いません。私達が今から言うのはそう言うものですから。』
「・・・・・・いいだろう。何が望みだ?」
『・・・ズバリ。貴方方が製造している量産機の『ゲシュペンスト』を二機。此方にお譲りして欲しいのです。』
これが無謀か?
何の事も無いただの頼みではあった。
現在は殆どがビルトシュバインなどに量産を移行している状態なので数はそこまで残っては居ない。だが、別に減るものでもないし寧ろ好都合ともいえる。
取り合えず、ココは彼の提案を呑もう。
「・・・・解った。ゲシュペンスト二機。それだけでいいんだな。」
『はい。その代わりとして、此方からは幾つかのIS用銃器を無料でお譲りしたいと思っています。』
「・・・いいのか。商売上がったりだぞ。」
『ええ。此方もマオ社にはお世話になっていますので、そのささやかなお礼です。』
「・・・・。では、数日後にそちらに輸送しておく。」
『ありがとうございます。それでは。』
レイブンはそう言い、一礼をして通信を切った。
何故彼等がゲシュペンストを欲したのかはわからない。
だが、何か理由があるのは確かだ。
それを探るためには仕方ないだろうと思い、リンは丁度ISの整備を行っていたラーダに連絡をした。
「ラーダ、私だ。」
『あ、社長。どうしたんですか?』
通信越しにはインド人である証拠の褐色の肌。
服装もインド系だ。
その優しい風格などから周りからも親しまれている人物。
それが彼女『ラーダ・バイラバン』だ。
「実は、先程ダニエル社からゲシュペンスト二機を頼まれてな。用意は出来るか?」
『ええ。今はアリスちゃんが申請した武器と装備の積み込みで少し時間が掛かりますが、今日中にはできます。』
「そうか。頼んだぞ。」
『はい。』
ラーダはそう言って返事をすると通信を切り、大きめのコンテナに詰め込まれている物資の確認をした。だが、M950マシンガンを見て、思わず先程リンが言っていた事を思い出した。
「・・・・そういえば、どうしてダニエル社が・・・・・?」
ラーダもリンと同じ疑問を持ち、考えていた。
すると、そんな彼女の所に社員の一人が寄って来た。
「ラーダさん。先程物資の輸送を頼まれたのですが・・・」
「あら。今度は誰から?」
「どうやら織斑氏の様です。」
「あら。そういえば彼女から頼まれていたわね。此方で物資は揃えますので、リストを。」
「あ・・・・・はい・・・・・」
「・・・・・?」
社員の苦笑の顔に首をかしげるラーダ。
その社員からリストを貰うと、彼女も嫌でもその顔になったのは言うまでも無い。
そして。ゲシュペンストを注文したダニエル社ではレイブンが通信を終え、椅子に深くもたれかかっていた。
「・・・・ふうっ。探りは入れられると思うが、取り合えずは成功だな。」
どうやら彼はリンの考えをある程度読んでいたらしい。
彼女がゲシュペンストを渡す事による探りを薄々とは予想していた様で、彼女の表情と言葉遣いからそれを確信した。
「武器は此方で揃えられるし、パーツも問題ない。後は・・・」
パシュッ
「やぁ。レイブン。」
すると。彼のもとに一人の男性が現れる。
だが、彼はただの男性とは言えず、何処か風変わりで悪く言えば悪趣味な人物だった。
その言葉を現すかのように服はスーツではなく、衣装の様で、ネクタイも結び方が違う。
そして、顔には耳から口近くに繋がったイヤリングと多くのイヤリング。この調子だと、舌にも何かしていそうだと思うほどだ。
「・・貴方か。マオ社との交渉は上手くいったよ。少し探りは入れられると思うけど。」
「そうか。これで僕の立案した計画はまた一歩進むのだった・・・ってね。」
「・・・人事に言う。こう見えて結構苦労するんですよ?」
「・・まぁ君には感謝している。お陰で新型の武器を実験できるんだからね。」
「はぁ・・・・・全く、貴方の行動には何時も驚いてばかりですよ。ダン・ワッツ。」
ダン・ワッツ。
彼こそ、ダニエル社の本部次長である。
そして、近くある窓によると、子供の様に嬉しそうな顔で空を眺めてたのだった。
「さて。亡霊を昇華させようか。」
次回予告
各地に散らばった少女達。
新たな力を求め、様々な行動を起こす。
そして、少年は再び動き出す。
次回「日の光・日の影」