インフィニット・ストラトス -Record of ATX- 作:No.20_Blaz
あのぷくぷくの顔を殴ってみたいですね。(本編と関係なし)
Record.21 「極東防衛」
大西洋、タウゼントフェスラー機内・・・
大西洋を横断するタウゼントフェスラーが一機居た。
その機内では数少ない部屋の一室に小型のPCに写された画像とにらめっこをするラウラが居た。
画面には幾つかのフォルダが出ており、其処には多くのデータなどか写されていた。
「・・・・・。」
其処に、所用で席を外していたシャルが部屋に入り、にらめっこをしていたラウラの元に歩み寄った。
「なーにしてんの?」
「・・・いや、回収された敵の新型の・・・な。」
「あーアレ?あれって確かラファールを全面改修した機体なだけでしょ。別に深く考える事でも・・・」
「機体はな。」
「ほえ?」
「・・・シャル。お前、あの機体を見てどう思った?」
「・・・・・・・・・
ラファールっつーよりもハルート的な」
「ボケは要らん。」
「・・・そうだねぇ・・・コア周りが以上に精密になっていたって所かな。」
「・・・そうだな。」
「・・・それが何か関係あるの?」
「コア周りではない。問題はコアだ。」
「コア?」
「あのコア。解析の結果、現在確認されている900以上のコアのどれにも当てはまらなかった。」
「・・・・・・は?って事は・・・」
「あのコアは新しく製造されたコアだと言う事だ。」
「・・・・・はぁ!?」
シャルは柄にも無く大声を上げて驚いた。それもその筈だ。
元々、ISのコアは過去に束が467個製造し、其処で一旦打ち切られた。
そのコアは各国に均等に分配され、国内にある開発機関に一つずつ使いまわされていた。
その中にも例外はある。それがマオ社だ。
マオ社のみに特例としてコアが一つ配給されており、それを基礎としてゲシュペンストなどが開発されたのだ。
しかし。その後秋龍が起こした事件が起こる。
それによって恐らく束のノウハウからコアが大量製造され、現在確認されているだけでその約二倍の947個が確認されている。
事件後にその大半は国連、今の連邦に回収され、再び各国に分配、更にはまだ分配されていなかった国家にも配給されたのだ。
だが。今回発見されたのは今までには確認されなかった、新しく作られたコア。
そう言うこととなるのだ。
「で、そのコアが新造されたと言う事は、誰かが?」
「みたいだね。それも見た目からして完全に私が昔作ったタイプのコピーだし。」
時を同じくして、束達が乗るタウゼントフェスラーの機内でもコアについて束とギリアムが話し合っていた。
なお、今タウゼントを操縦しているのは一夏とギリアムの部下三人。
操縦などを彼等に任して、ギリアムは束に心当たり無いかと尋ねていたのだ。
「まぁ・・・昔亡国の連中とは関係持って居たけど・・・あの時は無人IS作った程度だったし・・・」
「その時のコアは?」
「確か話しじゃ学園が回収したって言ってたから今は学園にあると思うよ。」
「となれば・・・設計データ?」
「それは無いね。だってその無人機作ったら直ぐにデータ消したモン。」
では一体どうやって?
疑問が残るギリアム達はどうやってか、心当たりは無いかと考えていた。
その中で一番考えられる「最悪」のケース。
「まさか・・・学園の中にスパイが?」
「ま。それが一番可能性アリ・・・かな。」
それが一番考えられるかと束も納得する。
学園で厳重に保管されているものなら。
学園内の誰かがやれば、誰も気づけない筈だ。
それも、それを可能とするのはそんな場所に入れる一部の人間だけ。
「確か、現在IS学園には厳重なプロテクトなどが地下施設がありましたね。」
「ああ。前にハッキングした時、その見取り図は確認したよ。大きさ的にはアリーナ一つ分。プロテクトのレベルは今の国家機関のファイヤーウォールのそれと同じがそれ以上。
パスする方法は色々とあって面倒だけど。」
「その方法とは?」
「網膜に指の血管。定期的に変更される暗証番号にカードキー等々々・・・まぁ厳重にロックされてりゃいいって話しでもないけどね。」
「突破にはそれなりの準備も要ると言う事ですね。」
「まあね。んで、問題のその場所に入れる人だけど・・・」
「生徒会長の更識楯無。そして数名の学園教職員。」
「その中に・・・ちーちゃんも入っている。」
「・・・行きますか。」
「・・・・・うん。」
『いっくん。タウゼントフェスラーの進路を・・・』
「日本に・・・ですね。解ってます。」
タウゼントフェスラーのコックピットでは一夏とギリアムの部下である壇・光次郎・怜次の三人が話しを聞いていたのか機体の針路を日本に変更していた。
彼等の内でギリアムの部下の怜次が苦笑しつつギリアム達に答えた。
「この状況です。大体の察しは付いてますよ。」
「それに俺達も解析に立ち会いましたし、行きたいのは同じです。」
『すまんな。色々と苦労をかけて。』
「と言う事ですが・・・向こう大丈夫ですかね。」
ギリアム達との通信を切ると、年長である壇が苦笑して一夏の台詞に答える。
現在の世界情勢からしたら確実に日本もターゲットに入っている筈だ。
無論、その考えはココに居る三人も同じ。
しかし、それ以上に一夏はある事を忘れていた。
「そうはいうが、日本には伊豆の特殊戦技教導隊が居る。ちょっとやそっとじゃま落ちないよ。」
「あ・・・」
「けど、今回って物量戦ですよ。幾ら伊豆に戦力が揃っているからって日本各地に分散するでしょうし・・・」
「そうはいうが、日本は世界の中でトップの治安の高さを誇っている国だ。恐らくゲリラ的な規模さ。」
「・・・だといいんですけどね・・・」
確かに、日本は連邦参加国の中でもトップランクの治安の良さだ。
しかし、だからと言って敵が少ないと言う事も無い。
その証拠に、現在連邦軍の極東基地、伊豆基地は襲撃を受けていたのだ。
極東方面・伊豆基地・・・
「ジェットマグナムッ」
コックピットからの声と共に左腕のステークから高圧電流が流れ、それをリオンにぶつける。
機体に電流が流され、それによって内部の電気系統にもダメージ。
リオンは爆発した。
「これで七機・・・」
地面に着地したのはカイが駆る緑色の「量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改」。
ゲシュペンスト強化計画である『ハロウィン・プラン』によって改修されたエース及び指揮官向けの機体だ。
ゲシュペンストの高い汎用性と拡張性を活かし、計三種の換装パーツを持つ機体で、現在カイが使用しているのは格闘重視のタイプGと呼ばれる物だ。
格闘戦重視と言うことで射撃武器に乏しいが、其処は携帯武装でカバーする事になっており、カイはそれによってM13ショットガンをゲシュペンストの腰に担架していた。
『カイ少佐。大丈夫でありんすか。』
「む。此方は問題ない。そっちはどうだラミア?」
『此方はアラドとゼオラの二人とで何とか。特機相手には無理はする気は無い様ですよん。』
「・・・・・そうか。こっちもまだ余裕はあるか・・・」
カイと通信を行っていたのは同じく特殊戦技教導隊に所属するラミア・ラヴレス。
かつてインスペクター事件時に現れた平行世界からの特殊部隊「シャドウミラー」に所属していた人物だ。
しかし、その正体はかつてのスパイであり、同時にラミアは人ではなく、作られた人間。
つまりは人造人間。その証拠に彼女は敬語だけが時折上手く話せないのだ。
「ラトゥーニ。各戦線はどうなってる?」
『現在、ドッグの反対側と此方に戦線が集中。向こうはラミア少尉たちのお陰で何とか。』
「・・・よし。このまま此方の敵を殲滅。手の空いている者、または今まで敵がいた戦線に居た者は此方と向こうに回せ。」
『了解。』
「にしてもだ。ココまででISを何機確認した?」
『・・・此方では全20機。その内二機が新型です。』
カイと共にドッグ側の戦線を維持していたラトゥーニ。
新生した教導隊の最初期から居る少女であり、最年少である。
しかし、それに見合わず能力は高く、心身共に大人顔負けだ。
彼女が駆る機体は最初期に開発された可変型PT「ビルトラプター」の強化機、「ビルトラプター・シュナベール」。
新たにレールガンと短剣の「ブレード・サイ」が装備され、より攻撃力が増した機体となり、より遠近両方に対応できる機体になった。
「・・・幾らテロ部隊だからと言って・・・数が可笑しすぎる。」
『ええ。新型は恐らく何処かから横流しされた機体だとしても、現在連邦軍に回収されたほぼ900のコアから考えて、明らかにテロ部隊の使用したコアとあわせたらオーバーします。』
(・・・誰かが新たに新造した?だか一体誰が・・何のために・・・)
「アラド、ゼオラ。そっちはどうだ?」
『あ・・・カイ少佐・・・』
『えっと・・・その・・・此方は・・・・・』
「・・・・・・?」
「代弁して言うと、現在織斑少佐とイルム中尉が二人で無双しているでごんす。」
「・・・・・はぁ?」
『より厳密に言えば私達が入る隙が無く、どうすればいいんだ状態ですの。』
「・・・・・つまりアレか。今、そちらの模擬戦場では千冬とイルムの二人だけで敵を相手取っていると。」
『ええ。』
「そして現在二人で完全に手玉に取っていると。」
『その通りでござんす。』
「・・・確か千冬が借りた機体は・・・」
『打鉄でござんす。ですが、一応射撃武器のM950マシンガンを装備して、更にはOSを変更している様でありんす。』
「・・・・・・。」
この時、カイは何を思っていたか。それは唯一つ。
やり過ぎだ。
と。
そんな戦いが行われている伊豆近くの離島、水鳥島。
其処で敵の迎撃に当たっていた部隊と、ラミアの機体である特機タイプの機体「アンジュルグ」の左右隣にいた同教導隊所属のアラド・バランガとゼオラ・シュバイツァーはそれぞれの愛機である「ビルトビルガー」と「ビルトファルケン」にのって唖然としていた。
「ま・・・マジかよ・・・」
「ラミア少尉。私達、援護しなくて・・・」
『しては駄目だ。多分な。』
ラミアが駄目と言う程、戦いは圧倒的と言う状態だった。
互いに背中合わせとなり、グルンガスト壱式がオメガレーザーで牽制する。
散開したリオンとラファール達に壱式がブーストナックルでリオンのみを撃破していく。
「っ・・・!」
『ゲーボ2ロスト!被害が大きすぎる!!』
「弱音を吐くな!男だろうが!!」
『くっ・・・!』
『ッ!!ファイ1、前だ!!』
「えっ・・・・・」
僅かに気を逸らしていたラファールに対し、容赦なく打鉄が太刀を振るい、撃破していく。
狙いどころによっては大ダメージとは言うが、一撃で落とせるものではない。
しかし、それを彼女はやってのけた。
「まだ来るか。」
『けどま、そろそろ打ち止めかもしんねぇぜ?』
再び背中合わせの状態になり、イルムが千冬に対して軽口を言う。
千冬は話しをしつつもまだ弾の余裕があるM950マシンガンでISに対して牽制する。
「その根拠は?」
『さっき飛んでた時に、敵さんの旗艦潜水艦を確認した。位置をマーキングしていたから時々確認してたが、今のを最後に増援が出なくなった。』
「其処からはと言う事ではないのか?」
『そうは言うがさ。最近、太平洋や日本海などに潜伏していたテロ部隊は次々と消えている。他の場所から集まったとしても高が知れてる。』
「・・・そうやって、昔みたいに足元をすくわれるなよ。」
『そんな昔の事を思い出すなよ・・・。つかお前執念深いな・・・』
「それはそうだ。お前の所為でロクな日々ではなかったからなっ!」
『そうか?俺は結構楽しかったぜっ!!』
太刀と拳で敵を撃破し、未だに焦りを見せない二人。
そんな彼等を見て、敵味方どちらも唖然としたり驚いていた。
「ば・・馬鹿な・・・たった一人と一機で・・・しかも話しながらだと・・・・」
『俺達の意味って一体・・・』
「くっ・・・だが・・・作戦は
『り、了解ッ』
「・・・・・。」
『私達・・仕事出来るのかなぁ・・・』
『当分無理なんじゃないか・・?あの二人で無双しているし・・・』
(確かに。今の二人で戦線が成り立っている事が可笑しい。幾らあの二人の能力と機体スペックが出鱈目だからといって・・・)
ココでラミアは敵に対して不信感を抱き始めていた。
その不信感というのも戦い方と言うよりも戦法が、あの表れだったのだ。
何処か手を抜きつつも本気で戦っている。
まるで何か待っているかの様な感じ。
しかし、後方で支援しているキラーホエールに搭載されていた機体はもう既に全機出切っている。
ではこの不信感は何だ?
(狙っている・・・いや・・・待っている・・?)
(この動き・・・真逆ッ・・・)
「イルム。こいつ等・・・」
『ああ・・・何か嫌な予感がしてきたぜ・・・まさかと思うが・・・!』
刹那。連邦軍部隊に対し一つの報告が駆け巡った。
『伊豆基地司令部から全防衛部隊へ!日本沿岸防衛システムに敵別働部隊の出現を確認しました!』
「何っ!?」
「別働隊・・・違和感はコレか・・・!」
『尚。敵予想目的地は・・・・・IS学園と断定!!』
「ッ!!」
『あいつ等、始めから学園の機体と生徒達が狙いだったのか!』
これでハッキリした。ココに居る部隊は囮。本命は今出た別働隊。
狙いは学園にあるISの確保と生徒達を人質にする事。
それに慣れていなかった彼等はどこか動きに手抜きと油断、慢心があったのだ。
「くそっ!」
『まんまとハメられたぜ!このままじゃ俺達釘付けだぞ!』
「解っている!」
しかし、其処にアンジュルグがシールドと兼任している武器であるシャドウランサーを放ち、敵のリオンたちを散開させる。
その後、アンジュルグを筆頭に待機していた部隊が一斉に敵部隊と交戦を始めたのだ。
『少佐と中尉は今の内に学園の方に。此方は私達が請け負うでござんす。』
「ッ・・・・・・・・・居たのか。」
『居ました。居ましたけど・・・』
『どう入ればって言うか入れなかったって言うか・・・』
『・・?何言ってんだお前ら?』
『兎も角。早く学園の方に急いでくださいってばよ。』
「・・・解った。しっかり潰しておけよ。」
イルムはグルンガストを変形させ、飛行形態のウイングガストに変形させる。
その上に千冬が同乗し、ウイングガストはわき目をくれずに発進した。
後方から彼等を行かせまいとリオン等が攻撃するのだが、いずれも後ろを見ていなかったのでアンジュルグやビルトビルガーなどに落とされていった。
「行かせるかよ!」
「さっきまで戦えなかった分、やらせてもらうわよ!」
「くそっ!各機、敵部隊を迎撃しろ!」
「逃げた連中はどうする!?」
「あっちは向こうの部隊に任せればいい!」
「それって・・・マズイのでは・・・」
『今は学園優先だろ!』
「・・・・解っている。このまま進んでくれ!」
『了解ッ!!』
デュノア・カンパニー専用工廠・・・
デュノア婦人の持つ工廠。
そこでは一機の機動兵器が組み上げられており、完成は間近に近づいていた。
「セイヴァーは間も無く完成です。唯、キングの方は調整に手間取っているのでロールアウトはセイヴァーの少し後かと。」
「急いでセイヴァーをロールアウトさせなさい。キングは遅れても構わないわ。」
「解りました。」
社員がそう言うとその場から去る。
婦人は開発ラインが見える場所から見物しており、完成間近の二体を見て不適な笑みを浮かべていた。
「フフフフフ・・・・・これで戦争は加速する。それによって我が社は・・・」
「イスルギが居ますが・・・あちらはどうなさいますか?」
「どうでもいいわ。あいつ等にも少し痛い目にあってもらいましょう。」
「・・・・・・。」
「ミスタ。あのままで良いのですか?」
「何が?」
「デュノア婦人の事です。彼女の行動でヘマをすれば、我々は・・・」
「解っている。だから、手は打ってあるさ。」
工廠の中にミスタは連れの男達二人と共に組み上げられている機体を見ていた。
どうやら、連れの二人は何か心配事があったらしいが、ミスタは問題ないと答えた。
その理由は何なのか。それは彼だけが知る事だ。
「ま。手は打ったし、それに僕等の目的はコレのデータ収集だろ?だったら彼女にはもう少し働いてもらわないと。」
「・・・ですが・・・」
「心配性だなぁ。大丈夫。気づく人間は居ないさ。」
彼等を除いて。
ミスタはそう言いかけたが、今は言わないでおこうと思い、その先は何も言わなかった。