インフィニット・ストラトス -Record of ATX- 作:No.20_Blaz
次回はまた日本防衛に戻りますが。
Record.23 「サイドストーリーズ」
- ラウラ・シャルチーム -
タウゼントフェスラーでの移動を続ける二人。位置はそろそろフランスの陸が見える頃合いと言う所。機内ではコクピットでパイロットの椅子の後ろに居るラウラが見える大陸を見つめており、その後ろからシャルがやって来てラウラに尋ねた。
「・・・で。これからどうするの?勢いで基地から飛び出してきたけど。」
「先ずは参謀本部だ。本部とてこのテロ活動にデュノア婦人が動いていると知れば何らかの行動に出るだろう。彼女の行動は彼らにとってマイナスでしかないからな。」
「・・・・・・。」
「・・・どうした?」
「いや・・・何か嫌な予感だけしかしないような・・・」
現在の世界の状況から不信感を持って居たシャル。それが何なのかは確信も根拠も無い。だが何か嫌な予感がしていたのだ。
「・・・・・・。」
「・・・そうか。」
晴れない疑問を持った表情で考えるシャルに、ラウラはその先は何も言わなかった。顔が全てを語っていたからだ。そして唯一言、言い終えると再び前に映る水面と大陸の影を見ていたのだ。
だがそれは直ぐ終わり、操縦席一帯にアラートが鳴り響いた。
「ッ!少佐、四時の方向から熱源接近。数は2。」
「照合は。」
「照合・・・一機はゲシュペンストMk-Ⅱ。もう一機はイギリスのブルーメイジです。」
「「ブルーメイジ?」」
パイロットの言葉に顔を合わせた二人は接近する二機に対して警戒をしていた。
ブルーメイジは本土防衛を旨とする部隊でしか運用されていない機体だ。
それが何故こんな仏国の近海に現れたのか。
まさか逃げてきた?
様々な理由が浮かび上がる二人だったが相手が誰だか解らなければ意味が無い。
そこでオープンチャンネルで接近する二機に通信をする事にしたのだ、が。
「あ、向こうから通信が来ましたよ。」
「向こうからだと?」
「ええ。回線は・・・非常時に使用される特殊回線ですね。送り主はブルーメイジです。」
「・・・解った。繋いでくれ。」
「了解。」
パイロットが了解を言うと回線を開き、ブルーメイジとの通信を繋いだ。
雑音がかなり混じって聞き取りにくかったがラウラがコクピットの通信機を調整して聞き取れる周波数に合わせ直した。
合わせ終わったその時、二人に聞き覚えのある声が通信機のスピーカーから聞こえてきたのだ。
『此方、イギリス国家代表候補生、セシリア・オルコット。其処の輸送機、聞こえますか。』
「ってセシリア!?」
『!? デュノアさん!?まさか・・・』
「私も居るぞ、オルコット。」
『やっぱり・・・お二方どうして此方に?』
「理由あってな。取り合えず、後方のハッチを開放する。其処から入って来い。」
『・・・解りました。』
「パイロット。後方の機体ハッチを開放してくれ。」
「解りました。後方の大型ハッチオープン。高度を270から250に下げます。」
パイロットがタウゼントフェスラーの後方ハッチを開放させると二人は操縦席を離れ、後方の機体格納庫に向った。其処からセシリア達が入るからだ。
どちらも知りたい事が山ほどある。それを早く知る為、二人は急ぎを抑え後方の格納庫に向かって歩いていった。
『セシリア。タウゼントフェスラーとは?』
「通信は取れました。向こうには私の知り合いも居ましたので大丈夫です。」
『知り合い?もしかして学園の?』
「ええ。タウゼントフェスラーの後部ハッチを開放すると言っているので輸送機の後ろに行きましょう。」
二人が通信をしているとタウゼントフェスラーの後部ハッチが開き、其処から機内に着艦できるようになった。更に機体の高度も下がり、より着艦しやすくなった。
二機がゆっくりと後方から近づき、速度を少しずつ落とすタウゼントフェスラーの後方に付く。其処からセシリアは簡単そうに機内の足場に着地。先に着艦したのだ。
「ふうっ。」
軽く息を吐き、後から来るゲシュペンストの為に少し奥に進んでいく。
疲れが身体から一気に現れるがまだ歩ける程度は元気はある。
それでもダルさが少し動きに現れ、ややふらつきながら奥に進んでいった。
「あ。」
「やっほー」
「久しぶり・・・と言う程ではないが。」
「まぁそうですわね・・・。」
奥からラウラとシャルが姿を現し、セシリアと言葉を交わす。
まさか双方こんな所でこんな形で会えるとは思っても居なかったのでどう声を掛ければいいかと困り気味でもあった。
其処に、彼女と同行していたゲシュペンストが着艦。直ぐに格納カーゴに移動し、機体を固定させようとしていた。そのゲシュペンストを見て搭乗者は誰かと思い、二人はセシリアにゲシュペンストのパイロットについて尋ねた。
「・・・そういえば、ゲシュペンストのパイロットって誰?」
「あ、そうでした。ご紹介がまだでしたわね。」
「ゲシュペンストと言う事は、軍の人間か?」
「いえ、私が参加している開発計画の参加者で歳は近い人です。」
「へー・・・」
シャルが棒読みの返答をしたのでセシリアは苦笑し二人が見る方を共に見つめていた。
見つめる方にはゲシュペンストがカーゴに固定され、格納が完了する時の様子だった。
格納が完了したのでゲシュペンストの胸部にあるハッチが開放され、其処から乗っている搭乗者が姿を現す。
最初に現れたのは手。細目の手だったので乗っているのが女性だというのがわかった。
次に足。細く綺麗な足をしているので美脚と言えばいいのだろうか。
そして最後に全身が現れるのだが
「ふうっ。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
現れた豊満なフロント上部に二人は目が点になり、整った顔つきと髪と言うダブルパンチが加わり、完全に何故か思考が停止していた。
其れもその筈。出てきたゲシュペンストのパイロットであるセツコは『歳がわりと近い』のだ。それなのにその歳と似合うのかどうかと思うほどのプロポーションに驚いていたのだ。シャルは。
「せ、セツコさん。こっちですわ・・・」
「あ・・・って・・・この二人が?」
「え、ええ・・・ですけど・・・」
「・・・・・・。」
「えっと現在セツコさんの歳って・・・」
「え、私は今は二十歳だよ?」
二つ三つ違うだけでこれだけの体格の差があるのか。
シャルは未だに信じられないという顔でセツコに人差し指を刺してセシリアの方を向いていた。セシリアも大体何が言いたいのか理解していたので簡単にではあるが説明をした。
「・・・・・・。」
「そ、それは私だって最初は・・・」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
一方。ラウラは静かに顔を下に下げ、自分の身体を見ていた。
そしてさっきまで見ていたものと見比べた。
その結果。自分の身体は足とへそが見えたのだ。
「・・・・・・人間。育ち方次第ってワケだ。」
「そ、そう言う事で・・・・・・って!?」
気づけばラウラが少しずつ負のオーラを出していたのでセシリアは思わず声が裏返ってしまった。それにシャルも便乗しラウラの方を見たのだが、ラウラの目の色のハイライトが消えていたのだ。このままだと色々とマズイ。そこで二人がラウラを説得しようと必死に彼女に語りかけたのだ。
「だ、大丈夫ですって!」
「そ、そう!!
「・・・・・・。」
「そうですよ!
「・・・・・・・・・。」
「そうそう!!別につるぺただからって・・・」
ぷちん。
その後。キレたラウラによって格納庫でクレイモアが発射されたとかされて無いとか。
- テスラ研 -
時を同じくして、テスラ研は辛うじて標的からは外されていたらしく被害は無かった。
しかし他の基地などの情報は入ってきていたので、テスラ研の一角で箒が隠れて一夏に連絡を取っていた。
以前にあった騒動で一夏との連絡方法を貰っていたが、出来るだけしょっちゅう掛けないで欲しいと釘を刺されていた。だが最近は学校生活で連絡が取っていなかったので大丈夫だろうと信じ、連絡を取るとどうやら一夏の方も箒に連絡を取ろうとしていたらしいのだ。
「・・・解った。取り合えずそっちは日本に行くんだな。」
『ああ。流石に情報が少ないし、何処から連中が武器やAMを手に入れたかさえ解れば、起訴は出来るって。』
「確かに・・・だが一体どうやってだ?」
『こっちの知り合いの人がテロ部隊の潜水艦を見つけてな。その潜水艦のあった偽装されたアジトに今向かってる。』
「場所は?」
『えっと待てよ・・・『(怜)えっと場所だろ?確か『(壇)鳥島だ。』・・・すいません。ってなワケで鳥島だ。』
一夏の電話越しから数人の声がして一夏の近くで話し、彼に目的地の場所を伝えた。
その会話がスピーカー越しに聞こえていたので箒は一夏が再び戻ってくると彼に尋ねたのだ。
「・・・と言うか誰か居るのか?」
『まぁその知り合いの部下の人が。』
「・・・。鳥島か。東京の島からかなり離れた場所にある火山島だな。」
『聞いてる。で、其処に昔の旧西暦に使われていた観測所があって其処がって話だ。』
「観測所・・・か。解った。」
『ああ。・・・そういや箒はどうするつもりだ、これから?』
「私は参式も紅椿も無いからな。当分お前の幼馴染二人、テスラ研に残る。」
『って鈴も居るのか。』
「中国政府に突っぱねられたらしくてな。こっちに居るのだが・・・さっきからテストルームでカザハラ博士とラドム博士がコンビで引き篭もってる。」
『・・・嫌な予感しかしないぜ。』
「同感だ。」
- 同所 テストルーム -
《Ti.Ti.Ti・・・》
《ピッピピピッ》
殆どが暗い実戦フィールドとは別。それ以上に暗いボックスルームでは僅かに光るモニターとそれを見つめる数人のスタッフ達が居た。
その中にラドムとジョナサンも居ており、二人は同じ大モニターを見つめていた。
「取り合えず調整はひと段落ですな。ラドム博士。」
「別にどうでもいいですわ。私は彼女の剣技モーションのデータなどが手に入ればいいですから。」
「・・・・・・。ま、私も最初は貴方の豪語にびっくりしましたよ。けど・・・まさかあそこまで既に設計図が完成していたとはね。」
「『ウィザード』と『ヘルト』の設計データからのノウハウを元に開発しただけです。まぁ、あの子とは通ずる点が多くありましたし・・・」
(似てるって・・・束と?)
正直彼女との設計思想は月とすっぽんではなく火星とすっぽん並みの設計の違いではないのかと思っていたジョナサン。言いすぎだと思う者も居るが、彼は束は搭乗者を危険な目にあわせる設計をした事は無い。と言う事を知っているのでそう考え表したのだ。
彼女でも|『並の人間が乗れば直ぐにグロッキーになる古鉄』《アルトアイゼン》や|『装甲が空力カウル並みで当たれば即致命傷の白騎士』《ヴァイスリッター》を見て正気の沙汰だとは考えないだろう。と
「・・・ま、それは後にして・・・」
「調子はどうですか?」
『問題はありません。後は実際に戦って見ないと・・・』
「よろしい。後は貴方の好きにすればいいわ。この事件が終わればね。」
『・・・。』
「・・・随分とご執心の様ね。」
「興味は持って居た。それだけでも十分でしょ。それに、あの機体のデータはウチとしても欲しいのは事実ですしね。」
「・・・・・・。」
二人がそう話し合い、フィールドに置かれている一機の機体を映すモニターを見る。
其処には幾つものホログラムディスプレイを表示し、其処にデータを打ち込んで調整をしている鈴の姿があった。
その姿は真剣なものでデータを打ち込む彼女は自然と小さく舌を回して作業を続けていた。
まるで自分の好物が目の前にある子供のような感じで、唯々打ち込み続けていた。
「・・・・・・。」
安置される一機のIS。カラーリングは元々の色をそのまま使っているので赤色がメインとなっている。大きさは通常のISよりも少し大きい。
肩部に廃熱フィンの様なもの。背部には四基のブースターが装着されている。
その姿をもう一度と見た鈴は身体からこみ上げる興奮を必死に抑えていた。
彼女の目の前には一度試乗してみたいと言い、正式に借り受ける事になった機体、
『グルンガスト弐式』が居たのだから。
「待ってなさい・・・弐式・・・」
- 一夏・束チーム -
そして。最後の一人である一夏はタウゼントフェスラーの後部ハッチに移動し、出撃の用意をしていた。後部にある格納庫では既に束が一夏用のラファールを起動させて後は一夏が乗り込むだけだった。
その近くではギリアムが先に、自身の愛機である『ゲシュペンスト・タイプRV』に乗り込んで起動させていた。
『博士、こちらは何時でも。』
「いっくんはやくー!」
格納庫から他の部屋などに繋がる道と階段から一夏の姿が現れる。彼の服装は既にISスーツの状態で直ぐに乗り込める状態だった。一夏が束の直ぐ近くまでに来ると乗り込む一夏に束が機体の説明を簡単に行った。
「言われたとおり、ナパームミサイル搭載のシールドミサイル付けといたから、後は捨てるなり盾にするなりしても大丈夫だよ。」
「解りました。んじゃ、行ってきますッ!」
素早く乗り込み、機体を起動させる一夏。その間数秒足らずで、直ぐにスラスターなどを吹かせて機体を浮かせた。それと同時にRVも動き出し、二機は後部ハッチから降り、テスラ・ドライブを起動させて出撃していった。
二機のブーストによって起こった突風でタウゼントフェスラーは多少揺れはしたが、直ぐに姿勢を建て直し、落ち着いてハッチを閉鎖したのだ。
「っ・・・あっぶねぇ・・・ギリアムさん達が出ただけでこの突風かよ・・・」
「かなり近い距離を飛んでたな。大丈夫かあの二人?」
「・・・それより篠ノ之博士・・・大丈夫かな?」
「ひーん!誰か助けてー!!」
その後。気になっていた光次郎が束の居た格納庫に行き、彼女がPTのカーゴと人が通る足場の間で宙吊りの状態になっているのを見つけ、引っ張り上げたのだった。
束曰く、もう少しで頭を打っていた。だけらしい。
そんな彼女達をタウゼントフェスラーに残し、一夏とギリアムは鳥島に向かい低空飛行をしていた。水面ギリギリの方が銃撃での水しぶきで目くらまし代わりに出来るからだ。
その低空飛行の中、ギリアムは一夏が束に頼んで装備させてもらったシールドミサイルの中身について尋ねた。
「所で一夏君。」
『はい?』
「・・・君のラファールのシールドミサイル。ナパームを入れたと言うのは本当か?」
『・・・人に当てる気はありませんよ。弾も三発だけですし。』
「・・・極力当てるなよ。」
『解ってます。』
一夏だって人殺しの為にナパームを持って来た理由ではない。これを使って敵をいぶり出すだけだ。正直、一夏は今まで対人戦というのをあまりした事は無い。
対ISなどで経験はしたいるがその数は高が知れている。
何より、一夏は人殺しをした事は無い。それは誰にだって通ずる事だ。
しかし、ISは一歩間違えれば死人は出る兵器。存在意義を原始回帰させれば元々スポーツではなく兵器であるのだ。
それを知って、一夏の手は震えていた。
間違えて人を殺さないかと。見ず知らずの人間を殺すのではないかと。
しかし、その考えが読まれたのか。ギリアムが通信で再び一夏に言ったのだ。
『・・・一夏君。この際ハッキリ言っておく。』
「は・・・?」
『人殺しの兵器で人を殺さないと言うのは・・・骨が折れるぞ。』
「・・・!」
『それでも、君は大切な人達を守りたい。そう考えてISを手に再び戦うのを決意したのだろ?』
「・・・・・・。」
『忘れるな。銃の重さ。命の重さをな。』
その言葉を受け止め、一夏は口の中で歯を強くかみ締めていた。
分かっていた事だと思っていたが、実際にそれをやる者から言われ、何も言い返せなかったのだ。
まるでそれが現実にあるかのような言い方で。
いや、現実に起こるかもしれないからだ。
そう考えると再び手が震えた一夏だったが、再度覚悟を決めると手を強く握り、一人速度を上げて向ったのだった。
二人を出撃させ速度を落としたタウゼントフェスラー。
そのコクピットに居たギリアムの部下達は遠目で見える島を見て警戒を強める。
そろそろ敵の迎撃システムの一つや二つが出ても可笑しくないからだ。
だがそろそろ距離的には近づいてはいけないと感じ、操縦をしていた怜次が母機を水面に着水させた。
「そろそろこの辺りで陣取ります?」
「だな。これ以上行っても危険なだけだ。それに、ここ等なら航続距離的にRV達も問題ないだろうしな。」
怜次と壇がそう言って会話をしながら周囲の警戒を行っていた。
敵は何時何処からと言うのを忘れずにと言う常識的な考えからやる事は一つだ。
タウゼントフェスラーが着水しているので水中から、空中からとほぼ全角度から敵が仕掛けてくるかは解らないのだ。
その為に、水中用のレーダーを母機から射出させ、釣りの浮きの様にして水面に垂らしておく。
空中は空中で通常のレーダーでも反応するので其処を怜次がしっかりと見ている。
三人が周囲警戒の準備をしていると、壇が操縦席の隣にある通信機にメールが届いているのに気づき、勝手にそのメールを開く。
そのメールの中で壇はこの時知らなかった事実を知り、思わず声に出して読み上げてしまった。
「っ・・・日本IS学園に・・・IS型のヴァルシオンが出現?!」
「何っ・・・」
「えっ・・・!?」
コクピットに上がってきた束が第一声で聞こえた事に驚き、思わず途中から走って壇の座る通信機の近くに駆け寄った。
そして横から顔を覗かせ、確かに英文でそう書かれているギリアムの仲間からの報告を見て黙り込んでしまっていた。
「・・・ヴァルシオンが・・・」
「連中・・・トンでもない代物を引っ張り出したものですね。」
「博士、学園は大丈夫でしょうか・・・」
「・・・大丈夫。ちーちゃんが居るから・・・」
怜次の不安を耳に、束は珍しく同様した顔で答えていた。
彼女でもヴァルシオンの恐ろしさは知っていた。
それは彼女が一番肌で知っていたことだからだ。
そう。彼女がかつて実機をビアンと共に開発したのだから。