ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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初投稿です(ガチ)

2020/9/14 2月前を1月前に変更 設定解説を追加


序章
序章 A


無限に広がる大宇宙、その静寂の中を滑るように進む蒼くふくよかな巡洋艦。やや小ぶりではあるが、船体横に刻印された艦名はゆうだち、艦長席に座るのは元ヤマト戦術長古代進ニ佐である。

彼女に続くように今度はブルーグレーの乙女が3隻ややばらつきながらも単縦陣を組みながら進んでゆく。

「戦隊作戦宙域に到達、落伍艦なし。」

ヤマトがその未曾有の長期航海から帰還して3年、地球は統一政府となり防衛軍はその形だけ復興を成し遂げていた。

「各艦異常なし、第二艦隊司令部より打電、全艦2種警戒配備となせ、以上。」

周囲には新品の巡洋艦や戦艦が多数戦列を組んでいる。この新鋭巡洋艦ゆうだちも防衛艦隊再建に伴い建造された。15.5サンチ衝撃砲連装3基6門と波動防壁を装備した強力な巡洋艦である。

しかしながらその乗組員は一朝一夕に再建できる物ではなかった。

「えぇっと、こちら艦橋、総員2種警戒配備、繰り返す総員2種警戒配備、以上。」

事実新人の通信長は艦内放送に手間取る始末である。

「山野、焦らなくていい。他の艦も似たようなもんだからな。」

ベテランは副長の水口一尉くらいな物だ。

数少ないガミラス戦を経験した士官だが、その為に名誉除隊していたのを引っ張り出してきたわけだ。ブランクは相応にある。

艦隊を構成する各艦も艦暦と比例するように乗組員も若い、あるいは老人の域に入った者しか居ない。

「前方ワープアウト反応確認、ガミラス辺境第38任務部隊です。」

対してガミラス艦隊は定刻通り、乱れることのない戦列を維持している。旗艦を先頭にした見事な複葉角陣だ。ゆったりとした動作で同航してくる。

「総員戦闘配置」

号令をかければ拙いながらも各員が戦闘配置へと切り替わり、眠りから覚めた乙女達はその秘める力を解放する時を今か今かと待ちわびている。

「艦隊司令部より通信、前衛はガミラス艦隊が務める。地球艦隊は作戦通り支援砲撃に注力されたし。以上」

通信文が届くと同時にゆっくりとした動作のガミラス艦隊は地球艦隊の前に着く。前衛を重巡洋艦、後衛を駆逐艦が務め、艦隊旗艦は複翼陣の先頭に鎮座している。特筆すべき点は艦の前面に増設された追加装甲だろうか。

ガイデロール級のスマートな艦首に対し傾斜して配置された増加装甲は各部に冷却装置や、装甲、ワープの誘導を行う装置などを搭載している。作戦前のブリーフィングではそう伝えられたが、実際のところ敵の大型戦艦にどこまで通用するのかは未知数だ。一応シャンブロでのデータと回収された残骸からのデータが流用されている、らしいがその信頼度はどれほどか。

 

地球から程近い恒星系のガミラス軍浮遊大陸基地が攻撃されたのが1月前、最後の通信からおおよそ1週間。十数名の基地要員でよく持ち堪えたと言えるだろう。一応通信室を放棄し大陸内の防護トーチカに逃げ込むと言っていたが無事で居てくれるだろうか。

元々恒星系内に有る大型ガス状惑星から資源の採掘を行う為に建設された8番浮遊惑星大陸基地はもはやその能力を全てガトランティス側に使われているようだ。幸い防衛システムの類はガトランティスの攻撃と基地要員の破壊措置で沈黙しているようだが。つくづくいい仕事を彼らはして行ったようだ。

思考の海を彷徨っていたが、目を焼く光で思考を浮かび上がらせる。

先行するガイデロール級の一番艦に火災の濁流がぶつかる、すわ爆沈かと思われたそれは

時間にして十数秒ほどの火炎の濁流をみごと盾に吸収しきった。シャンブロウ沖で視認した時はもう少し炎柱が太かったが、これも増加装甲に施された跳躍収束機の能力だろう。

極めて限定的ではあるが、敵の火炎投射砲に対しては有効だ。

じりじりと、撃たれ続ける火炎をファランクスで防御しつつ敵艦隊を射程に収めるため進軍を続ける。六発目の火炎が転移された時、異変が発生した。火炎の威力が上がったのだろう、ファランクスの中央部が打ち破られ盾を形成していた僚艦もろともコントロール艦が撃沈されたのだ。ついに防御が破られたがファランクスはあと二つあり、すでに敵艦隊は射程圏内に収まりつつある。第一関門は突破できたと言えるだろう。

ようやく前衛艦隊が砲戦を開始した、浅く広く布陣するガトランティスに対してガミラス 軍前衛は円錐陣をとっている。一気に突撃連携を断ち数に勝るガトランティスを翻弄する算段だろう。無数の光線が両陣営に着実なダメージを与えていく。ある巡洋艦は被弾、慣性制御か推力系にダメージを負ったらしくゆっくりと眼下のガス状惑星に沈んでいく。またある駆逐艦は迫り来る対艦ミサイル群から艦隊を守るべくミサイルの進路に躍り出た。

ガミラス艦隊は持ち前の機動力を活かした一撃離脱による撹乱戦術を得意とする。ところが現在のところガミラス前衛主力はその動きに精彩を欠いている。まるで機械のような整った陣形からの砲撃はなるほど正確無比ではある。しかしその連携は甘く手当たり次第に近くの艦から攻撃しているように見え、統制射撃とはとても思えない。なにより持ち前の機動戦術が全く活かされていない、結果として半包囲されつつある。だからこそ、後衛たる地球艦隊が包囲のため回り込もうとする艦を叩かねばならない。もとよりその作戦であるし新品ぞろいの艦隊でも、その程度はできなければ援軍としての意味がない。

遂に焦れた敵艦が浮遊大陸周辺の岩塊から顔を出し速力を上げながら飛び出してくる。勢いの良い駆逐艦はさりとて良い的でしかない。

「戦隊統制射撃用意」静かに、しかし確実に聞こえるよう号令を下す。

いままで固唾を飲んで見守るしかなかったのが遂に自分たちの番となったのだ。

「照準、艦隊旗艦指示の目標に合わせ」

速射砲を撃ちこちらを食い破らんとする攻撃はしかし波動防壁に阻まれる。

その間に砲雷長はデータリンクにより優先目標を割り振っていく。

「撃ち方はじめぇ!」

かくして火蓋は切って落ちた。

 

 

 

 




以下本文中の設定解説を行っていきます。見なくても大丈夫です。

古代の乗艦変更
 
 2202の金剛改型からパトロール巡洋艦に変更しています。それに伴い艦名も夕凪からゆうだちに変更。

古代が所属している戦隊について
 第二艦隊所属、4隻編成の同艦隊は月面駐留艦隊でもあります。編成はパトロール巡洋艦1巡洋艦1金剛改型2隻の計四隻。戦隊指令は古代が兼任しています。

水口1尉 36歳
 ガミラス戦役からのベテラン、戦中中盤にて乗艦が大破、その時下半身を失うも一命をとりとめ名誉除隊。戦後ガミラスからの技術支援により下半身を機械化し現役に復帰した、という設定です

山野准尉 19歳
  最後の日本国防衛学校卒業生、戦中から戦後にかけて防衛学校に在籍、戦後国連宇宙軍構成国の士官学校を統合する流れにより、日本国防衛学校は閉校、当時在籍していた中で1年次生だった彼は卒業と同時に母校を失う。任官1年目

ガイデロール級の増加装甲
 地球側呼称ファランクス。ガミラス臣民の盾と違い6角形、7つで一つ、半円型に結合して使用する。一つ一つに運搬艦艇が必要なためガイデロール以外にデストリアが6隻随伴している。機能としては強制冷却機構、ワープを誘引し盾の正面に転移させる機構、申し訳程度の防弾が備えられています。2202と違いワープの遮断機構は有りません。同型装置を三機ローテーションで使用することで火焔直撃砲を無効化しています。まあさすがに同時斉射は耐えられませんでしたが...

八番浮遊大陸周りのアレコレ
 ガス状惑星のガス採掘、精製プラントとして設定しています。土星沖の浮遊大陸基地も同様のものと想定。ミサイル等の推進剤補給基地であり駐留隊員は多くて30名、防衛機構こそあるものの辺境ゆえに大したものも装備していない、と言う具合です。
なんで1月近く持っているのだろうか...

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