ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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2-3 暗闘

地球防衛軍内には様々な派閥が存在する。

 

宇宙軍内だけでも戦艦閥、航空閥、陸戦閥、その下には様々な子派閥孫派閥が連なっていく。

それだけでなく旧国家に関する派閥、内惑星戦争時代の派閥、ガミラス戦役生き残りの派閥、同じ艦で戦った仲間、etc...

縦だけでなく横にも斜めにもありとあらゆるしがらみが見えない形でまとわりついているのだ。

 

そんな中で一切のしがらみを無視して編成された部隊が存在する。

 

宇宙軍特殊警務大隊

 

星名正幸警視をオブザーバーに招いた同隊は軍内部の監視と逮捕を主任務とし通常の警務部隊と同等の権限と市街地戦に特化した編成によるカウンタークーデター部隊だ。

 

軍内の監視という、不愉快さを伴う任務故、基本的にその行動は秘匿される。

 

そんな部隊の中隊長である近藤勇雄3等宙佐は現在芹沢虎徹宇宙軍幕僚長のオフィスにて不始末の報告をさせられていた。

 

「閣下、かねてから内偵中でした旧宇宙戦艦ヤマト乗艦メンバーの内古代進2等宙佐、真田志郎1等宙佐両名の所在が1時間ほど前から不明となりました」

 

そもそも、近藤としては旧ヤマトクルーたちの内偵などという仕事自体が不本意であった。地球を救った英雄たちである彼等を疑ってかかるなどという思いがあった。

無論それで手を抜いたりはしない。尾行や内偵向きのものを選抜し密かに彼等を尾行していた。その尾行が撒かれたのだ。

報告が1時間も遅れたのも今後の課題であるがそれ以上に内偵対象が行方不明になったという事は問題である。

尾行に気づかれあまつさえ撒かれるというのは恥という他ない。しかし両名が姿を消したという事はなんらかの前触れであるのは明白だ。

 

「現在他の内偵対象を中心に所在を確認中ですが、ブリッジクルーを中心に所在が掴めなくなっております」

 

「最悪だな」

 

そのポツリとこぼされた一言は両者の内心を代弁しているかのように思われた。

まさかヤマトクルーたちに反乱の意思ありとは思いたくなかった。

そういう思いがその一言を漏らさせたと近藤は認識した。

 

「第一中隊は出動待機に移行、動かせるSC97を集めろ。20分以内に藤堂長官と司令部入りする、その時隊の指揮を副官に預け貴官も同行せよ」

 

反乱を起こしたかもしれない英雄たちに対する芹沢の一言は重たいものだった。武力での鎮圧を選択したのだ。

 

 

 

宇宙軍司令部は夜になろうかという時間であっても少なくない人数が詰めていた。

 

その誰もがベテランであり、ガミラス戦役時代を知るものたちだ。

 

「長官、ヤマトクルーの不穏な動きはいまだ継続しております」

 

そういいながら芹沢が藤堂長官に手渡したPDAにはおおよそ100人前後の名前が記されていた。

 

「所在が確認できたクルーたちの名簿です」

 

その言葉に長官は瞠目する。まさかそれほどの人数が参加しているとは思っていなかったのだろう。

 

そしてここからさらに所在が確認されたクルーが増えることはほぼないと思われる。なぜなら所在が確認された彼らは町で目立つように行動していた者たちか地球外で活動していたものに限られる。

 

作為的に発見されることを望んでいた者たちだけだ。

 

この事こそ彼らが計画立てて行動している証拠だろう。集まるのは状況証拠ばかりだがほぼ反乱は確実なものだ。

 

「ヤマトクルーが一堂に何かを行うとして、それはドックにて安置中のヤマトが狙いであることは明白です。鎮圧部隊の投入準備はすでに完了しています。ご決断を」

 

部隊は空中待機に入っている、すでに一言でドックに突入、クルーたちを拘束する準備は整っているのだ。それが全く望ましくない仕事だとしても。

 

「ヤマトが首都圏で破壊の限りを尽くせば容易く万単位の人命が失われます。そうでなくとも彼奴が都市の上空に居座るだけでこちらからは手出しができず人質を取られるようなもの、なにとぞ」

 

たった一隻の戦艦ではあるが、破壊力は絶大な物で、もし政権転覆を目指したら潜在的なシンパも含め大規模な内戦となるのは必須だろう。

そう考えるだけで背中に冷や汗が流れ出てくる。

 

「やむを得ないな」

 

その一言に小さく安堵している自分がいた。少なくとも長官はゴーサインを出した。最悪の最悪は免れたと言うことだ。

 

部隊を展開するよう副長に伝える。

 

空中待機中だったシーガルは程なくドックへ到着するだろう、そのはずだったのだが。

 

「作戦行動中のスーパー014から入電、ヤマト見ず、繰り返すヤマト見ず」

 

思わずモニターを見やる。軍用衛星からの画像には確かにヤマトが映っていた。

 

「くそっ、やられた!」

 

対してシーガルからの映像にはヤマトが映っていなかった。その巨体を支える基盤ごと消え去り、四角く切り取られた地面には虚空と闇が広がっていた。

 

「出航の形跡は見られません。星内航路局からもイレギュラーは確認できずとのことです」

 

一瞬、すでに出航した後かと焦るものの、その考えをオペレーターの言葉が打ち消す。そもそも行方をくらませてからまだ1日と立っていない。まだ時間はあるはず、であればどこに?

 

「旧地下都市だ…」

 

そうぽつりと呟いたのは藤堂長官だった。

 

慌ててドックの構造表に目をやる。確かにドックの最下層部はエレベーターとして稼働する構造になっている。船台がその上に備え付けられている以上船体ごとの移動は可能だろう。

 

「地下都市内の地図を出せ!ヤマトが搬入可能かつ外界とつながっているドックのどこかに奴らはいるはずだ!」

 

芹沢作戦部長がそう吠え、私のほうを振り返る。

 

「作戦行動中の第一中隊は第一、第二分隊を展開、司令部の誘導に従いヤマト探索を開始せよ。残余部隊は空中待機」

 

求められていたのはこういう事だろう。

実際これ以上に人員を割く余裕は無い、であるならば第一中隊たちに不慣れな探索行為をさせるのも痛い仕方ないだろう。

 

「芹沢、全員がヤマトに乗り込んだのち私が説得に当たる。断じて仕掛けるな。殺し合いは許さん」

 

その言葉に思わず藤堂長官のほうを振り向いてしまう。そのままこくりと小さくうなずかれてしまってはこちらとしてもそうするしかない。

 

確かに実際に銃を持つ部下たちのことを思えば下手に銃撃戦になって英雄を殺すなんてことにならずに済めばいい。しかしそれと同じ程度ヤマトを好きにさせてはもしもの時が危ういと考えるのだ。

 

「ですが抑えは必要です。彼らが長官の説得に応じず、もしもの時には無人の軌道衛星を投入しピンポイント攻撃で強行着陸、不可能なら撃沈します。よろしいですな?」

 

「仕方あるまい…」

 

そう、仕方ないのだ。そのはずだ。

 

 




以下読まなくてよい解説

宇宙軍特殊警務大隊
前述の通りカウンタークーデター部隊
基本的に通常の警務隊から推薦され一定以上国家への忠誠心があり守秘義務等の要目を達成可能なものが編入される。また隊員の一部は警察組織からの出向である。
また家族友人等人間関係が調査され常にクリーンな状態であることを求められる。

星名正幸警視
名前の通りヤマトの星名透の父、代々の警察官家庭の出。ガミラス戦時では主に反政府組織の相手を行っており藤堂長官とも旧知の仲。

近藤勇雄3等宙佐
特殊警務大隊第一中隊中隊長
元機動隊所属、現在宇宙軍に出向中。ヤマトの帰還直前に妊娠した妻がおり現在は妻子ともに健康である。
母子ともに無事であるのはヤマトのおかげであると感じておりヤマトクルー内偵にいい思いはしていない。

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