ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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離水シーンは2202本編でお楽しみ下さい(手抜き)


2-5 VS戦闘衛星

地球から飛翔し朝日を受けヤマトは大宇宙へと駆け上っていく。

 

陽光に照らされ輝いているブリッジでは緊張が走っていた。

 

ヤマト前上方に浮かぶ戦闘衛星である。

 

甲乙丙の三種がある。乙型、遠距離支援用のそれが軌道上に立ちふさがっていたのだ。

 

ガミラスから供与されたレーザー、反射衛星砲と呼ばれるそれを中核に村雨型と同程度の躯体、波動エンジン、波動防壁を備えたそれは近接戦闘こそ不向きであるが地球周期軌道から月軌道までのすべてを射程に収めている。

 

元来宇宙から迫りくる脅威のため向けられるべき砲口が地球側、ヤマトに向けられているのだ。

 

 

「主砲、発射用意」

 

果たしてどう対処したものか多くが決めあぐねている中、南部が一早く迎撃を指示した。

 

それは本来艦長代理を行っている古代がとるべき指揮なのだろう。心にそういった靄を持ちながらそれを追認する。

 

「あれは無人ですよ、それに今落とさなければ月にだって行けやしない」

 

その言葉がなくとも決断はできただろう。しかし安堵したのは事実だ。

 

「対象熱源増大、発射体制に入りました」

 

雪の代わりに西条君が冷静に伝えてくる。未だショックカノンの射程内ではない。あと少し高度が上がれば水蒸気の影響が減って打ち抜けるのだが、それよりも前に敵の一撃がヤマトを貫くだろう。

 

「波動防壁」

 

そこで言葉が途切れた、いや邪魔されたのだ。西条君に。

 

「!10時の方向より5ポイントの熱源反応が接近、カウンティ級偵察巡洋艦の砲撃と推定!」

 

半ば悲鳴とも取れるそれは無慈悲な砲撃の接近を伝えていた。

 

「転舵左2.35!波動防壁艦首展開!」

 

よけきれるものでもないがさりとて何もしなければ沈んでしまう。少なくとも艦首を敵に向ければ当たる確率は格段に下がるだろう。

 

そんな努力が実る前にショックカノンは無慈悲に装甲板を穿った。

 

無遠慮に突き立てられた刃は装甲を貫通し爆炎とともに反対側の装甲から飛び出す。

 

カウンティ級のショックカノンは28センチと小口径ながら十分な破壊力を誇る。いくら強固な装甲を誇っていようとも波動防壁なしに防ぎきることはでき無かったのだろう。

 

波動エンジンを貫通したのか或いは補機の推進剤に引火したのか爆炎を伴いながらゆっくりと攻撃衛星は降下を始めた。

 

呆然と上昇するヤマトから降下する攻撃衛星を眺める。

 

ヤマトを狙って放たれたはずの閃光はしかし攻撃衛星を破壊し以後放たれる様子はない。

 

一体何が?

 

 

「艦長代理、平文の通信を傍受、読み上げます。コチラ巡洋艦ゆうだち報告二アッタ不審船ヲ発見、威嚇射撃ヲ実施スルモ照準拙ク攻撃衛星ヲ誤射、不審船ハ離脱シタ模様。指示ヲ乞ウ。以上です」

 

 

ゆうだち、水口さん達が助けてくれたのだ。

 

ヤマトが大気圏を離脱するころにはゆうだちの姿が肉眼でも確認できる距離となっていた。

 

発光、それが幾重にも連続してヤマトへと照り付けてくる。ゆうだちからの発光信号だ。

 

 

キカンノブウンチョウキュウヲネガウ、ネガワクバツギコソトモニ、ユウダチ

 

 

そのメッセージは相原が翻訳しなくても理解できた。思わず眼がしらが熱くなりそうになる。

 

 

「発光信号にて返信、イッテキマス、と」

 

あまり露骨なことは言えないだろう。指向性が強いとはいえ地球側に放つのだ。十中八九傍受される。

ゆえに簡素に、それでいて意図が読めるように。

 

本来は返信しないほうが良いのだろうが、そうすることはできなかったのだ。

報いなければ、気が済まなかったのだから。

 

 

 

 

時刻は少し戻りその影、月面でも事件が起きた。

 

事の起こりは現地の第11工廠。

 

月の裏側にある新基地完成までの間航空隊の仮設基地としても運用されていた。そこで新兵訓練を行っていた宇宙軍第203航空隊がヤマト反乱に呼応するかの如く無断出撃、隊員18名、訓練生1名の計19名がヤマトへの合流を図ったのだ。

 

 

強行発進した飛行隊は一路月の裏側からヤマトへ向かって飛翔する。

 

無事に強行離陸した編隊はしかし第84戦闘飛行隊の追撃を受けていた。

 

ヤマトが月軌道に滞在できる時間は限られている。

増槽によってある程度まで追随できるとは言え妨害があれば着艦などままなるはずもない。

 

編隊の誘導機を務める山本の顔には焦りの色が見えていた。

 

相対距離がじんわりと縮まってるのだ。

どちらも同じCT2を主力としているはずだが、問題と言いえばこちらには新人の乗るコスモファルコンが混じっていることだ。

 

本人の技量が未熟なこともあるがコスモファルコンの最高速はわずかにCT2に届かない。

 

編隊に組み込んだ以上遅いほうに速度を合わせるほかない。じりじりとしかし確実に追いつかれるだろう。

 

「鶴見、軌道変更が遅いぞ。無理やりついてきたんだ、くらいついて見せろ!」

 

最後尾に位置する篠原が鶴見を叱咤する。

 

本来ヤマトへ向かうのは生き残りのヤマト組だけの予定だった。

それをどこで聞きつけたか鶴見とSHIの技術者が一人同道したのだ。

 

実験機の持ち出しを行っている立場上強く言えず乗機にサブシートを乗せて運ぶ羽目に、今はもう伸びてうるさくないのが幸いか。

 

地球軌道からヤマトが月軌道に訪れるまで15分。

 

それまでに追撃を振り切る必要がある。

 

青く輝く地球が瞬く間に地平線に沈み、鋼鉄の尖塔群とすっかり様変わりした月の裏側が眼下に広がっていく。

 

一部工区では現在も工事が続いているのが見て取れる。作業用のアームや大型の建機が稼働しており、大型のアシストスーツを着た作業員がその合間を縫うように動き回っていた。

 

ヤマト合流までの時間、この建設地帯で追撃をやり過ごそうと言うのだ。

障害物だらけのここならば必然追撃隊も速度を落とさざるを得ず、回り込むことも容易なはずだった。

 

イレギュラー2人がいなければの話だが。

 

どちらもここで激しい空戦機動に耐えることはできないだろう。

 

後一歩のところでご破産になりかけている。

 

手詰まりだったその時レーダーが機影を捉えた。

 

ガミラス大使館方面から1機のみ、まっすぐとこちへ向かってくる。

 

警戒態勢を取り散開を命じる、その前に機体から通信が入ってきた。

 

「聞こえるかヤマト航空隊、こちらはエスコート係だ」

 

もちろんエスコートの話など聞いたこともなかった。

 

そんな警戒心を見透かしたようで

 

「ヤマトに無事たどり着きたくばついてこい、時間はそうないぞ」

 

一方的にまくしたてられ一方的に通信を切られる、これほど腹立たしいことがあるだろうか。

 

嘘だったらその場で撃墜してやろうと思いつつエスコート機に追従する。

 

真っ白なツヴァルケだ。追従する事にはすぐ気づいたのだろう。挑発するように増速を開始する。

 

向かう方角は月面裏側の端に位置するガミラス軍駐屯地だ。

 

駐屯地とは名ばかりで軍などおかれておらず、時たま来る連絡船が係留される程度の場所であるが、それなりに広い面積を有している。

 

それなりに広い開けた場所だ。

 

やはり騙りかなにかか。

 

要塞群の外縁をなぞりながら進む。

 

「警戒、後方より追撃部隊が接近」

 

ジャミングポッドを装備している澤村がロスタイム終了を告げる。

 

どういうつもりか知らないがこれ以上はここで持久戦をするほかない。

 

「このままだ、ついてこられるだろう?」

 

そのはずなのだがガミラス機はこのまま進めと言い放つ。

 

「お客さんは振り切ってやる、ぴったりと離れるな」

 

そう言い残し一気に高度を下げる。要塞陣地に逃げ込むのは変わらぬようだ。

 

少しの逡巡を残してこちらも増速しつつ追従を開始する。

 

「篠原!鶴見は任せた!」

 

「ちょっと!?」

 

篠原の腕なら誘導しつつ難なくついてこられるだろう。悲鳴なんか知るもんか。

 

組み立て途中の重砲やレールガンを避けクレーンをよけて地表すれすれまで高度を下ろし外縁部の資材用リニア路線に侵入する。

 

開口部は一瞬で過ぎ去り半地下のトンネルとなる。堀のようにっているそこは上側に橋や装甲板、エネルギーの伝導管などが張られている。

 

迂闊には攻撃できないだろう。

 

「そろそろ難所だぞ、気を抜くな」

 

それまで無言だったエスコート機がそう忠告してくる。

 

「そんな!?」

 

鶴見がオープン回線でわめくのも無理ないかもしれない。少なくとも彼にとっては冷や汗ものだったこれまで以上となるのだから。

 

ゆっくりと速度を落とし始めるエスコート機、一応上空にいる84飛行隊にとっては絶好のチャンスになりうるそれだが、建材の製造工場に近いことから発砲できないでいた。

 

何本目かの橋の下、そこでエスコート機は一気に右旋回ほぼ90度直角に曲がり橋の袂へとぶつかる、いやその下のトンネルへと進んでいく。

 

機体に急制動を掛けずドリフトするように滑らせる。

実戦ではあまり役に立たないが慣性の打ち消しに余計なエネルギーを使わずに済む。

無理やりな軌道を取って盛大に無駄を発生させていたのは結局鶴見だけだった。

 

 

月面の整地に使われた土砂の採掘跡だろう、静かというほかない地下だが幾重にも張り巡らされた落盤防止の柱が行く手を遮る。

 

「目、目が痛いです」

 

そんな鶴見の泣き言を聞きつつ、トンネルを進む。いい刺激といったところだろう。

 

多少、緊張による疲労が溜まってきた頃合いだ。

 

にわかに光が見え始める。こういったところは地球と変わらないのか、というよりもあの青い光は。

 

出口が見えてから脱出しきるまでは一瞬だった。

 

トンネルを抜けると青い地球そしてヤマトが見えた。

 

振り返れば月の表側、と言っても境界ぎりぎりの地点だった。

 

「こちら山本以下ヤマト航空隊、貴艦への合流と着艦を希望する」

 

そう告げながらヤマトをフライパスする。その交差の瞬間エスコート機のコックピットが目に映る。

 

残念ながらその厭味ったらしいだろ顔はマスクに包まれていて見ることはかなわなかったが。

 

 

 

 

船は行く、月を抜け広大に広がる宇宙へとまた、一歩

 

 




以下読まなくてもいい解説

戦闘衛星
作中にある通り甲乙丙の三種が存在しそれぞれ
甲型 砲戦型36サンチ衝撃砲3連装8基24門、波動防壁を装備する、機動力もそこそこあり無補給行動はおよそ5日可能、地球軌道に現在12基が投入されている。機首には波動砲をマウント可能なようスペースが明けてある。

乙型 作中登場、反射衛星砲を改造した長距離砲一門、波動防壁を装備。作中で波動防壁を展開していなかったのはショックカノンの射程外だったため。地球軌道には4基が投入済み(うち一基が今回撃墜され残りは3基)

丙型 ミサイル戦型対艦対空用ミサイル、波動防壁を装備。地球軌道上に1基投入済み

ショックカノンの射程
大気圏内では陽電子砲は射程がガクッと落ちます。地表部から大気圏外の衛星に対しての攻撃の場合ヤマトが海中から発進したことも相まって有効射程が衛星よりも低下してるというわけです。

ゆうだちの援護射撃
ヤマトがドックから発進した段階で付近を航行していたゆうだち以下一部第二艦隊所属艦に対して不審船拿捕命令が下りていました。
ヤマトを不審船と認定したのはフライトプランが未提出であり付近の戦闘衛星が戦闘準備を行っていたからです。
不審船の正体がヤマトと認識できたのは戦闘衛星からのデータリンクによって判明しました。

月面裏側
バリバリに要塞化が進んでいます、ショックカノン、反射衛星砲、ミサイル、レールガン(マスドライバ)やパルスレーザー砲台まで完備しており、地下深くに発電施設や居住区まで設置されております。

トンネル
トンネルは戦闘機で潜るもの。峡谷は戦闘機で飛ぶもの。
クレーターの穴ぼこを埋めるため掘削された土砂のあとということです。

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