ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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2-6 幕間 ヤマト副長は考える

ヤマトは月を抜けタイタンへと向かう。

一度のワープで一気に向かう予定であったが…

 

「ワープは避けたい、ですか」

 

徳川機関長の申し出はそういうものだった。

 

「ヤマトの波動エンジンはそっくり新造のものに変わっとります。恥ずかしい話ですが機関部の者たちはみな慣れとりません。正直工作精度は前のものより良いのですがその分繊細になっとります」

 

ヤマトの再艤装の時、波動エンジンと波動砲、艦内の伝導管などまとめて交換がされていたという。

新型の波動エンジンは以前の様なワンオフによる試作品では無く、現在他の防衛軍艦艇に広く採用される予定の物をカスタマイズした物だ。

 

当然以前と少しばかり勝手が違うし、何より多くの点で試作品だった前の波動エンジンよりも優れてはいる。

 

もとより完熟訓練も行えておらず、マニュアルを読みながらの作業は以前の航海で慣れている。何よりも前回とは違い一から学び直す必要はない。

 

しかしそれは以前とは違いついてしまった癖との戦いでもあると言う。

 

少なくとも6時間の間、通常航行にとどめてほしいと。

 

今は少しでも早くタイタンにつきたいのが本音だ。しかし現地に向かうため無理を行えばタイタンでは修理できないような損害が発生しかねない。

 

幸いにも最大の懸念である地球火星間の防衛を担う第二艦隊は装備改変によって多くが稼動しておらず数少ない例外達を振り切るのはそこまで難しい話ではなかった。

 

航空隊の面々も合流し艦内の士気も高い。まさに意気揚々と言ったところだろう。

 

何とか余裕を保てているからこそ大事を避けるということで通常航行が決まった。

 

「せめて山崎が居れば話は違ったのかもしれませんな」

 

そんな一言が徳川さんの口からも漏れたのは方針を決める会議が終わりそれぞれの部署へ戻る道すがらだった。

 

「わしから言い出しておいて、今更な話です」

 

山崎さんは現在地球に残留している。旧式の核融合炉を搭載しているキリシマは一度稼働させてしまったら放置しても問題ないというものではない。

 

長年の使用で各所に独特の特性ともいえる癖があるキリシマのエンジンは核爆発などは当然起こさないだろうがそれでも放射能漏れやプラズマ漏れ、最悪の場合キリシマ自身が炎上しあたり一面が火の海となる場合もありうる。

 

山崎さん以下志願した機関要員5名が機関停止と保全のため地球に残った。何事もなければ地球残留組が回収し南部重工のほうでかくまわれているだろう。

 

その時山崎さんを送り出したのは徳川さんだった。この船にはわしがいるといって。

 

故に新しい機関にてこずっているのが自分で許せないのだろう。

 

「幸いにも追撃は今のところありません。それに通常航行には問題ないですし、戦闘もそうです。徳川さんが残ってくれているから問題なくヤマトは飛べていると、私も古代も思っています」

 

「真田君…」

 

多少は励ますことが出来たのだろうか。徳川さんにはお世話になりっぱなしで申し訳なく思っているのだ。

すでに軍を退いていた彼を引っ張り出したのは他ならぬ自分なのだから。

 

「年寄りの愚痴に付き合わせてすまんかったね」

 

そう言って機関部に戻る彼は多少なりとも活力を取り戻していた。そう、見えた。

 

 

通常航行を続けるからと言って暇なわけではない。

 

6時間もの間追手が来ないはずもなく、また無理をして発進したため相応に各部に負担がかかっている。

 

特に甲板部は忙しいだろう。

 

レーダー主たちは警戒を募らせ戦術科たちは火器の立ち上げや確認に余念がない。

 

暇を持て余しているのは、技術者の集まりたる技術科の自分ぐらいだろう。

 

現在艦の指揮は暫定的に古代がとっていた。一人で抱え込む気質であるからそうすることはわかってはいた。最後にはすべての責任をかぶるつもりであえて少し独裁気味にふるまっているということも。

 

だが彼一人に責任を負わすことを、艦内の誰もが望んでいない。

 

何よりも責任を取るべきならば自分こそと全員が思っているのだから。

 

艦内を見て回るとその様子がよくわかる。

 

人の心がわかるわけではない。

だが誰しもがその職務を一生懸命に果たしているのが見えるし、何よりもそんな彼らを信じたいのだ。

 

広い船だ、何も見ず脇目も降らず一周するのでも走っても30分ほどはかかる。

 

艦橋に戻るころには昼頃をすぎていた。

 

相原によると防衛司令部からの追撃命令がいくつかの艦に出ていることが確認できたという。

 

その識別コードのほとんどが未知のものというから恐らく新造艦が出てくるのだろう。

 

そう考えると予想以上に猶予がないといえる。

 

幸いにもこの短時間の間に極短距離までならばワープが可能になったという。

 

徳川機関長の努力には全く頭が上がらないものだ。

 

ワープ先は火星、木星間のメインベルト。重力安定地点があり機関の負担が少なく尚且つ隠れる場所が多いのが魅力である。

 

防衛軍の演習地点にも指定されていることから相応の戦力の出迎えを受ける可能性もあるが木星軌道までたどり着くことが出来れば問題ない。

 

すっかりワープ準備が済み後は号令を待つのみの艦橋で同じく見回りをしていたのだろう私に遅れること五分程度、艦橋に入室した。

 

歩き去る直前、耳打ちをする様に訪ねてきた。

 

「真田さん、もしもの時は」

 

「可能な限り戦闘は避ける。それでいてどうしようもなくなれば足止めくらいは仕方ないだろう」

 

決意を新たにしていたのかもしれない。

引き締まった顔にはそう言ったものが見て取れた。

 

だからだろう。こう言わねばと思ったのは

 

「古代、もし戦闘が起きるようなら貴様が指揮を取れ。だが艦長代理としての指揮権はあくまで私が持っておく、いいな古代」

 

無茶苦茶の様に聞こえたろうか、まぁそうだろう。

 

戦闘の指揮は取るくせに艦全体の指揮権は譲らないと言うのだ。

そもそも不確かな指揮系統が混乱しかねない。

 

だが私にも意地がある。

 

少なくとも古代だけに指揮権を持たせるよりはあとの言い訳が聞くだろう。

 

「しかし」

 

「譲る気はないよ。たまにはこっちも頼れ、古代」

 

そう言い切り、話を打ち切る。

 

納得のいかない顔でそれでも戦術長の席へ戻る古代の背中を見やる。

 

お前も頼ってくれ古代。俺が頼るだけでなく、お前も頼ってくれ。

 

少なくとも背負うのは一緒だ。今度こそ、な。

 

カウントダウンが始まる。

 

FCSには火が入り、艦内では即応待機の応急班が手ぐすねを引いてる。

 

佐渡先生も今頃、普段通り酒を飲んでいるだろう。

 

次に目に入るのは、無人の原野か或いは毒蛇の目の前か

 

「ワープ!!」

 

そうしてヤマトはワープへと入る




読まなくてもいい設定

山崎さん周り
おおむね書き込んだ通りですね、離脱タイミングはヤマトへのクルー移送直後ですね。
当初は徳川さんが残ろうとしていましたが、山崎さん自ら志願し居残りました。
同伴者は機関部のモブのみであり本編とは違い桐生さんや星名君のほうは艦に乗艦しています。

新波動エンジン
D級向けのものを拡大チューニングして乗っけてます。

うろつく真田さんと古代君の居場所
真田さんは本気で艦内をうろうろしてましたが古代君は艦長室にいました。
覚悟は決まってますがさすがに友軍艦を撃つのは別なので、一人になれる場所で色々考えこんでいました。

ワープまでの時間
当初6時間の予定でしたが徳川さんが頑張って3時間で済ませました。

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