あ、ちょっとキャラ崩壊が発生してるかもです…
僅かな立ちくらみとともに視界に光が戻ってくる。
ワープアウトと特有のこれはいつになっても慣れるものではない。
以前一度だけガミラスの船に乗ったことがある雪曰く向こうではそんなことがないそうな。
岩塊と静寂な宇宙が広がり、それ以外は全く見えない。
西条さんの方を見やれば未だ回復しきっていないながらも頷き返してくる。
少なくともレーダーが捉える範囲内には追撃艦がいないと言う事だ。
ここから土星までショートジャンプを一度行えばすぐつくが、それを差し引いても第二艦隊の管轄から離れる事で追撃そのものを気にしなくても良くなる。
土星を根拠地とする第一艦隊の管轄内であれば土方さんに話が通ってる以上、無事に到着することができるだろう。
「!…ワープアウト!!」
その叫びとともに目の前の空間から氷の塊が出現する。
すぐさまは氷は剥げ落ちその下から紺碧の船体が姿を表した。
ゆっくりと回頭をしながらその巨体を疎らな岩塊の間から覗かせてくる。
4基装備された3連装砲塔が特徴の巨艦。
クリーム色の特徴的なラインを携えているのがよく見える。
アルデバラン
艦隊旗艦の艦記号をなびかせ現れた第二艦隊の新旗艦だ。
幸にして至近距離に出現したわけではなかったがそう遠いわけでもなかった。
少なくともヤマトの射程圏外ではあったが、あの巨砲ではどれほどのものかもわからない。
「前方の艦より入電!」
「モニターへだせ」
ごく短時間のブレもなくすぐさま通信は繋がる。
特徴的な髭と強面の顔、何よりも不愉快気にこちらを睨みつける顔はついこないだ見たばかりでもあった。
「谷提督…」
「反乱艦ヤマトに次ぐ。
直ちに停船、或いは月、第二艦隊司令部へ帰還せよ、然らずんばここで撃沈する」
厳めしい顔から繰り出される言葉はやはり厳しいものだった。
撃沈である。おいそれといえる言葉ではないだろう。
ここが正念場ではある。停船だけでなく地球への自主帰還を進めるのがいい証拠だ。
故にこそ、もしこのまま進めば必ずこちらを沈めにかかるだろう。
「猶予は与えんし、2度も言わんぞ、古代」
それまでと同じく、或いはそれ以上に厳しい目でこちらを見やってきた。
こちらが口を開く前に谷提督が続けて叱りつける様に言ってくる。
「この行動にどれほどの意味がある。決まったことを覆し、地球から飛び出して、その先に出るであろう戦死者に対して貴様は責任を取れる立場でないだろう」
全くもっての正論だ。
俺にあるのはクルーたちから委ねられた信頼しかない。
指揮権など本来はあるはずもない。
だからこそ虚をつかれ黙りこくってしまう。
或いは彼らを信じきれない、真の意味で任せきれない思いがあったからかもしれない。
「提督、お言葉ですが」
そう発言したのは真田さんだった。
「我々は総員、我ら自身の意思でヤマトを動かしています」
「誰かに命じられるわけでもなく。頼まれたからでもない」
「このままではいけないという思いからです」
「地球がヤマトを疎んじるのは仕方ありません」
「或いは、今が準戦時下で余裕がないというのなら仕方ないでしょう」
「ですが、ヤマトを政争の生贄にして、それでいて今ある危機を軽んじる」
「目の前に危機が迫っている!助けを求める声があり、それを助ける力と理由がる!」
「その上ですべてに目をつむり黙っていることは、我々にはできません!」
気づけばその言葉に艦橋中の人間がうなずいていた。
「このままではだめだと、そう言って向かった先で諸君らは例え戦闘になろうともそして沈められようとも構わない、そういうのかね」
谷提督の顔は厳しいものから苦々しいものへと変貌していた。
「その覚悟がないものは、この船に乗ってなどいませんよ」
そう答えたのは南部だった。
谷提督の顔は、口惜しい、そう如実に物語っていた。
「では、貴艦は撃沈させてもらおう」
それだけを伝えスクリーンは光を失った。
「総員戦闘配置!」
軽く呆けている俺と異なり真田さんがすぐさま号令を下した。
「戦術科総員戦闘配置完了!」
北野が艦内無線を通じてそう言ってくる。
「船務科、大丈夫です」
そう伝えてくるのは西条君だ。
「機関部、いつでも行けます」
ここにはいない徳川さんも
「古代」
横の島が声をかけてくる。
「後で話を聞かせろよ。お前が言えなかったことの話をさ」
軽く振り向けば他のクルーたちはみなうなずいていた。
万感の思いを込めて叫ぶ
「ヤマト、前進!」
ただ、今は前へと
アルデバランの艦橋で谷幸三はただ不愉快さを隠さない顔をしていた。
その心中は顔と同じ、というわけでもなかったが。
どこか面はゆい気持ちと安堵のような気持とそれと同じ程度の不満があった。
「ヤマト進路変わらず、前進してきます!」
あそこまでの啖呵を切ったのだからそうだろうなとしか思わない。
「頑固者目が」
そう言葉が漏れる
「貴様の子供たちはみんな頑固者ばかりだ」
イスカンダルへ向かうその航海に思をはせ
「なぁ沖田」
今無き先達を思い出す
「艦長、艦の指揮をしばらく預かるぞ」
本来提督である谷が個別の艦を指揮するという行為は行わない。
ではなぜか?それは少し疼いてしまったからにほかならない。
勝てなかった沖田、その子供たちと自分どちらが優れているか、と
年甲斐もなくそう思ってしまったのだ。
全体の指揮官として第二艦隊の指揮を執るべきであるが、ここにきているのはアルデバランただ一隻のみである。
そして旧知の仲でありワーテルローから引き続いて艦長をしているフレーザーは話が分かる男である。
「お任せしましょう」
そう二つ返事で指揮を任せてくれる。
最後に直接艦の指揮を執ったのはガミラス戦の中頃だったろうか。以後そんなことはなかったが衰えてなどいない。
「右舷砲雷撃戦用意!目標反乱艦ヤマト!」
艦を拝領し慣熟航海を行い始めた矢先のこれだ。命中精度などあてにはならんだろう。
「各宙雷発射管は初弾装填後指示を待て」
側面をさらし最大火力をヤマトへと向ける。
「主砲、砲術長照準指示!」
T字の形になるように。ヤマトが転舵すればそれだけ時間が稼げ撃破まで持っていけるだろう。
お互いに波動防壁を持つのだ。
手数が多いほうが有利と言える。
「砲術長、最初は当てなくてもいい、きっちり威圧感を与えろ」
若い士官だ。こうも言ってやれば
「当てても問題ないんでしょう?であれば当てて見せますよ」
少しむきになりながらこう返してくるわけだ。
「よろしい。ではその腕を見せてみろ大尉。…撃ち方始め!」
「Fire!」
短い復唱とともに40.6サンチ収束型圧縮衝撃砲が放たれる。
コチラは向こうからすれば射程圏外だ。
まっすぐに飛ぶ光跡を無視してヤマトの行動に注視する。
最大射程の攻撃をそれも真っ向から見やっていれば避けるのなど容易い事だろう。
事実僅かに、そうほんの僅かにだけ艦をロールさせその上で右転舵することにより最小限度動きのみでヤマトは第一斉射を避けきった。
目指すのはアルデバラン下方、岩塊の密度が濃い部分だろう。
ワープアウトの安全性のため近辺にはそれほど多く小惑星がない。
盾にできるものが増えれば容易く逃げれると思ったのだろう。
そうは問屋が卸さないが。
案外に狭いアンドロメダ級の第一艦橋は態々そちらを見ずともだいたいの顔が目に見える。
悔しそうに歯噛みしながら手早く誤差を修正し第二射へと移る。
まだまだ勝負はこれからだ。
第二射、第三射と立て続けに打ち込んでいく。
その間もヤマトからの応射は来ない。
微妙に予想軌道からずれるヤマトに四苦八苦しながら砲術長は射撃を続けていく。
からくりに気づく前に、そろそろ次の手を打たねばならない。
「微速前進。ヤマトを正面から迎え撃つ」
幸いと言っていいのかここは小惑星帯の中では開けている部類だった。
機動戦を行ったところで支障ない。
コチラも移動を開始したことでいよいよ砲撃が外れだす。
少し恨めし気でそれでいて悔しいそうなのは砲術長である。
「魚雷、一番から四倍、号令とともに斉射、続けて装填、次弾は近接信管だ」
ようやくからくりに気づいたらしくずらされた軸線分誤差を修正し始めたことでヤマトへ至近弾が出始める。
しかしそこはヤマトもさるもの今度は逆に大ぶりな回避でこちらから離れるとともに射点から外れようと下降した。
「砲術、左舷アンカー準備」
「はい?」
「急げ!」
「は、はい!」
少し呆けていた砲術に活を入れ仕上げに入る。
「魚雷!目標ヤマト、鼻っ柱に叩き込め!撃てぇっ!」
今か今かと待っていたのだろう。瞬く間に魚雷は放たれヤマトへ向かって吸い込まれていく。
下降気味であったヤマトへ向かって放たれた魚雷はヤマトよりさらに深い角度で突き進む。
鼻っ柱といって艦首の先へと当たるように調整した宙雷長の手腕が光る。
このままでは危ういとうっかり上げ舵を切るヤマト。
「第二射、目標敵前部砲塔!撃て!」
そこに追撃のこれだ、近接信管では効果がないだろうが無問題
「艦首即応装填!通常弾!、面舵一杯!逆さ落としだ大きく捻りこめ!」
ヤマトが二発目にかかりっきりなる間にこちらも転舵する。
艦首を大きく右に捻りこむことでT字戦から反航戦に持ち込めた。
その結果上下が反転するが無問題だ。
「ヤマト正面!」
そう砲術長が叫べば真正面には逆さになったヤマトが向こうの艦橋にいる人間の顔が見えるほど近づいていた。
「波動防壁艦首最大!第三射!狙いをつけんでいい!ぶちかませ!」
向こうの慌てざまが見えると思ったが案外冷静に対処が出来てるようだ。
爆炎が一瞬現れたと思うや、両艦の波動防壁によって押し出される。
「衝撃に備え!」
その言葉を言い切る、その直前に大きく艦が揺れる。
真正面からヤマトとアルデバランの波動防壁がぶつかり合い、それが重力アンカーで固定された艦を揺らしているのだ。
ぶつかった瞬間古代と目が合った。
迷いのない、しかし少しの気負いを見せる目だった。
僅かに軸線が右舷にずれていたためにらみ合いは瞬く間にとけお互いにすれ違う。
口元に笑みをたたえ勝利を確信する
「左ロケットアンカー、目標ヤマトエンジンノズル!撃ち込め!」
号令をかけ、チェックメイト、とはならなかった。
一つはぶつかった衝撃で砲術長が呆けていたこと。
もう一つは衝撃で開口部がゆがみ発射に遅れが生じたこと。
僅か数瞬しかないチャンスはしかしこの二つのアクシデントで消し飛んだ。
そして私の闘志もここで切れた。
「進路反転180度、ヤマト追撃に移ります」
そう言ってくる航海長に対し待ったをかける。
「やめだ」
そう一言言って黙る
「提督、宜しいので?せっかく追撃しやすいよう小惑星の薄いエリアに誘導したというのに」
そう聞いてくるのはやはり旧知の間であるフレーザーだ。
やはりコチラの作戦意図をしっかりと読んでいる。ヤマトが下方へと逃げていた場合濃密な小惑星帯に阻まれ追撃は難航しただろうからそうしたのだが。
「構わん。この世に運命の類があるのなら彼らが行くことは決まってしまったんだろう。第一艦の練度が足りない。ヤマトはこちらを攻撃することなく切り抜けたのだ、このまま追撃しても手玉に取られかねん」
案外そこそこの本音を込めて言うも
「そういうことにしておきましょうか、提督」
そう冗談めかして返してくるのだからたちが悪い。
ガミラス戦初期からの付き合いであるのだから仕方がないが。
フレーザーも思うところがあったのだろう。ヤマトを憎く思うものなどこの地球防衛軍の中にはいないのだから。
「司令部より通信です!」
恐らく、小惑星帯のすぐそばに待機していた第一艦隊の艦が追撃しないこちらと離脱するヤマトをとらえたのだろう。
司令部にその連絡が届き、事態の幕引きと相成ったのだ
「宇宙戦艦やまとヲ標的トシタ臨時演習ヲ終了ス。参加艦艇及ビ部隊ハ帰還セヨ、以上です」
小さく小声で
「どうやら向こうも決着がついたようですな」
何て言ってくるものだから
「どうせ初めから決まってたのだろう。君も知っての通りだ」
と返してしまった。
「はてなんのことやら」
と答えるのだから全く白々しい。少し古代の素直さが寂しくなってくる。
「艦長、自分は…」
もう一人ここに残った若者がいたな。
「三木、次はあいつに食らわせてやれ。しばらく留守にするらしいから帰ってきたときに鼻を明かしてやればいい」
少なくとも落ち込んでる人間に追撃をくらわすほど鬼じゃない。
フォローを入れて次の機会を狙わせればいい
十分に若いのだ。
「はい!」
若さってのは、どうしてこうまぶしいのか
そう独り言ちるのだ。
どうもストック切れたのでひーこら言ってる化猫です
本話より試験的にアンケートを追加しました
またそれに伴い一部の過去話も同様のアンケートを設置しました。
ご協力いただければ幸いです。
それでは
以下読まなくていい設定
戦闘宙域
アステロイドベルトの一部、極端に小惑星の密度が低く戦闘の邪魔になる小惑星はほぼ存在しない。
唯一小惑星帯の密度が濃い部分が存在するもののアルデバランが立ちふさがりヤマトは小惑星帯の薄い部分を離脱せざる得なかった。
三木大尉
日系英国人今年23歳
アルデバランの砲術長
戦術長は昇進、他艦の艦長に就任したため空席、次席たる砲雷長は慣熟航海中に合流予定であったため今回の追撃に参加できず止む無く戦術科において最高位に
ジェフリーフレーザー准将
アルデバラン艦長、59歳
ガミラス戦争初期において連合第四艦隊に所属、当時谷は連絡武官としてフレーザーが艦長である戦艦ネルソンに同乗していた。
その後英国艦隊の壊滅、再編成に伴い谷は転属し巡洋艦しらね艦長へ、フレーザーは引き続きネルソン艦長を務め同じ艦隊にて戦う。
一士官であるはずだが防衛軍の内情に詳しくヤマト反乱についても情報を一部谷に漏洩している。
感想お待ちしております。
本話の出来はどうですか?
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