ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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ギリギリ行けました。(PM18;15)
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2-8 タイタンの休息と幕裏

タイタン

 

土星の衛星であるそこにはかつて小規模な資源採掘場と宙域監視の為パトロールする船に補給を行う小規模なステーションがあるのみだった。

 

内惑星戦争後飛躍的に伸びた航続距離によって土星圏の開発が活発になるにつれステーションは拡大され反比例して軍事施設は縮小された。

 

ガミラス戦直前においては鉱山労働者やその家族向けの商業施設も拡張され約1万人ほどが暮らす拠点として整備される予定だったという。

 

開戦直前に出された避難命令により鉱山は閉鎖、民間人の一切は地球へ疎開し、国連陸軍の工兵部隊が戦略物資であるコスモナイトの採掘を行うほかは護衛と警戒のための艦が数隻駐留するのみであった。その部隊も火星沖会戦前に撤退しガミラスの襲撃を受けたステーションは崩壊、戦後に至るまで放棄されていた。

 

状況が変わったのは2200年のことである。

復興を進める上で防衛軍は地球のみに艦隊を集中することを避けた。

艦隊保全や情報戦、何よりも大艦隊を一か所に置く設備を作ることが難しいというのもあった。

 

閉鎖されたタイタンの鉱山跡にドックや居住設備を設置しステーションの残骸を修復、最低限の泊地として復活したのが現在のタイタン基地である。

 

土方宙将率いる防衛宇宙軍第一艦隊が駐留しており再編が終わった新造艦たちがヤマトを出迎えることとなる。

 

真新しいグレーのボディを備えた戦艦達はステーションから延びる細い桟橋に係留さており、そこに収まりきらない者たちはお互いぶつからないよう距離を開けつつも整然と並んでいた。

 

一方で連絡機のシーガルや内火艇は慌ただしく行き交うことで混雑しており、島を信用しないわけではないが誘導の護衛艦がいなければどこかで事故を起こしていたかもしれないと思うほどだ。

 

問題なく宇宙ステーションへドッキングし小さく息を漏らす。

 

やり遂げた、というには聊か小さな一歩だろうが、ひとまずは終ったと考えていいだろう。

 

ドッキングして暫くしないうちに通信が入る。

映像通信と思われたそれは、音声のみであり、また短く真田さんと俺を呼び出すものだった。

 

英雄としての出迎えを求めていたわけではないだろう。皆散々にもてはやされて最早うんざりしているとまで言える。

 

だがあまりにそっけない態度では不安になるのも人情というもので、通信を受け皆に悟られないよう伝えてきた相原の顔には困惑の色が出ていた。

 

大丈夫と短く伝えなんともない様子で報告に行くと言っておく。

 

警務隊や海兵に囲まれることなくすんなりとステーションへ上陸する。

 

気がかりなのは他の乗組員の上陸が許可されなかった点だ。

 

元々そこまで大きくない民生用の宇宙ステーションであまりキャパシティが無いというのは理解できる話ではあるが。

 

実際いたるところで人に出会い少し居心地の悪い。特にやましいことがないとは言いずらい逃避行の後ではなおさらそう思う。

 

やはり今後のことを考えるとここで希望者を降ろしておきたい。

 

可能な限り彼ら自身の希望に沿うようにしなければならないがもしこのままガトランティス推定支配領域へ探査に向かわされた場合、タイタンで解散するという言葉を信じてついてきてくれた彼らに対する裏切りじゃないか。

 

なんとしても土方司令に掛け合わなくてはならない。

 

そんな決意とともに司令執務室へと踏み入れる。

 

「古代二等宙佐、真田一等宙佐両名到着しました」

 

「よく来た、ご苦労」

 

そう言って出迎えたのは艦隊司令である土方さん、ではなく山南宙将補だった。

 

「司令は多忙でね、特に今は後処理でごたついているから艦隊幕僚なんかも手がいっぱいさ」

 

そう言いながらこちらにと手招きする彼は実に優雅な手つきで勝手気ままに紅茶を入れつつ

 

「スコーンはいるかい?」

 

と聞いて来るのだった

 

「艦隊でも出撃準備に今回の件で手すきの人間は皆書類仕事漬けだからね。土方提督も例外じゃぁない。だから要領よく仕事を終えていた俺が代わりに話を聞くことになった訳だ」

 

なみなみと注がれた紅茶はかなり良い香りを立てている。そう言ったものの良し悪しはわからないが、ガミラス戦中の代用品などとは比べ物にならないことは想像に難くない。

 

「色々訳はあったろうがやっちまったねぇお二人さん」

 

そう切り出してくる山南さんの顔は苦笑というにはシニカルな笑みに彩られていた。

 

「何かもうすこし方法があったのかもしれません。しかし」

 

「あぁ、そういう話じゃなくてな。そもそも気づいてなかったのか?」

 

そう言われても、気づくとは何のことを言っているのだろうか。

 

てっきり軽挙妄動ともいえるこの逃避行について言われたのかと思ったのだが。気づく、とは?

 

「そもそもの話おかしいとは思わなかったのかい?

 

ヤマトの準備然り、こちらの受け入れ然り

 

なんだかんだ言って1軍人の土方さん1人で手が回る範囲じゃ無いと思わんかね?

 

簡単に言うと、だ。ここ迄の絵図を書いたのが政府の方にいたんだろう。

 

でその誰かさんはヤマトに十分な物資を与えられてついでに警備部隊に一言口添え出来て、最後には演習ってことで誤魔化す算段をつけれた訳だ」

 

そこまでは事前にキーマンから聞いていた通り。裏で藤堂長官が手をまわしていた。そういう話だろう。

 

「その顔なら二人ともだいたいは把握しているようだな。

 

じゃあこれならどうかね?ここに大統領捺印の書類が2枚ある。1枚はヤマト反乱演習についてヤマト側に非がない事を示すものだ。もう一つこれはヤマトの後送と乗組員に対する拘束、地球への送還を命じる命令書」

 

そういって机の上に出された書類に対して僅かに身を乗り出してしまう。

 

山南さんが言うように二枚の書類には相反する事項が記載されていた。どちらも同じ人間が同じ書式で書いたものであり書かれた日付すら同じである。

 

「つまるところ政府としてはどちらでもよかったのさヤマトが無くなるのも残るのも」

 

その言葉を言う山南さんは先ほどまでのひょうひょうとした鳴りを潜め真面目な顔で続ける。

 

「今回の一件は結局政府に踊らされたってのが実情だろう」

 

「知ってて踊るのは良いかもしれない。覚悟を決めてそうするんだからな。だが知らずに踊るのは頂けない」

 

或いは過去にそういった経験があってそれを悔いているのかもしれない。

俺も真田さんもガミラス戦中に任官した。すでに政府機能は一部崩壊しつつあり政治というものがいまいち機能していなかった時代だ。

 

「最低限、政治についても知っておくべきだろうと思うよ。何も政治家になれとかそういったことを主導しろってのではなくてね。知識として知っておけば後は何とでもなるものさ」

 

その言葉に深く頷いてしまう。そういったものから離れることはどうしたってできないのだろう。そして自分の性分をわかっているからこそそう言ったものが重要になってくるというのも理解できた。

ただ突っ走るだけでは最早だめなのだ。

 

「ま、今回は軽いほうさ。それにせっかく先達がいるんだ取り返しのつく失敗はしておくものさ。それが若者の役割だからな」

 

顔を緩め冗談めかして言っているがその言葉は軒並み上役が戦死し今や軍でも上層にいるといえる山南さんが言うとことのほか重い言葉だった。

 

「説教はこのくらいでしまいにしておこうか、聞きたいこともあるんだろう?」

 

「はい、今の乗組員達についてです」

 

思うところはあるものの今はこのことに注力すべきだろう。

 

「個々人の意思を尊重するというのが前提ではあるが、まず現在防衛軍に所属しておらず予備役でもないものについては艦を降りてもらう予定だ。ただ現役復帰を希望する場合、そのまま乗艦してもらって構わない」

 

個人の意思を尊重するという一言が最初に出てきた点で少し力が抜けた。

 

「一応軍としては元部署に戻ってほしいというのがあるにはある。むろんヤマトに乗り続けることも可能だ。だがこれも君たちの意思次第だな。というよりもだ、どうせ知ってるだろうがヤマトを遠征計画に組み込むとしても意思確認が不可欠だ。無理やり乗せる、何てのは無いから心配しないでほしい」

 

補足として付け加えられた内容は望んでいたものそれそのままで、山南さんがそこに気づいてそう言ってくれたのは明白だろう。

 

「それでは上陸が出来ないというのは?」

 

真田さんのその疑問はもっともだろう。

 

「上陸を許可できないのは出撃準備のために普段以上に人が詰めているというのが表向きの理由だ。ガミラス側の都合で作戦が大幅に繰り上げて実行に移すことになってね、君たちも見た通りだ」

 

表向きということは

 

「もちろん裏もある、ヤマト艦内である程度の裏事情が広がってるだろうから緘口令を敷く前にしゃべられてもかなわんという事さ」

 

こちらもこちらで最も話だ。

 

少なくとも何も知らない人間が知っていい話ではない。

 

「特に真田一佐なんかは正直そろそろデスクワークに戻ってきてほしいんだが…」

 

「今はまだ現場を離れるわけにはいきませんので」

 

「そういうと思ったよ、古代二佐は、言うまでもないか」

 

何かとこちらがしゃべる前に言い切られてしまうのはやはり顔に出やすいのだろうか。

 

「クルーの希望を取りまとめて出来るだけ早く提出してほしい。ステーションの内部ネットアクセス権をヤマトに付与しておく。そちらを経由して司令部あてに提出してくれ。すまないが次の仕事があるのでこれで失礼させてもらうよ」

 

そう言い残し山南さんは立ち去る。

 

朗報、とまでは言えないだろうがこのことを伝えて改めて希望者を募りそれ以外の者を降ろすためにも一旦艦に戻ることにした。

 


 

艦内で離脱を希望したのは半数程度と言えた。本業に支障が出るという者。子供の為に地球を長期で離れられないという者。それぞれが様々な理由でヤマトから離れていった。

 

一方で補充要員ということで新たにクルーがヤマトへ配属されるそうだ

 

それに先駆けて土方さん直々に辞令交付とブリーフィングが行われる運びとなった。

 

体育館二つほどの大きさを持つ大講堂だがそこに集まった人間はたったの6人だけだった。

 

いくらかやつれたかもしれない土方さんといつも通りの山南さん。そして見たことがない二佐が一人と一佐あとは俺と真田さんの計六人だけだ。

 

「真田志郎一等宙佐を宇宙戦艦ヤマト艦長に任ずる。併せて第113偵察戦隊の司令たる代将に任ずる」

 

代将、ガミラス戦争中にはあまり聞かなかった役職名でもある。

その意味するところは艦隊における最先任艦長といった意味合いが強くそれはヤマトが艦隊行動を取ることも意味する。

 

「古代進二等宙佐を宇宙戦艦ヤマト副長に任ずる」

 

対して自分は昇進したのも併せてヤマトの副長として配属されることになった。真田さんが実質艦隊司令の役割を持つ以上、或いは実質的な艦長業務は俺が取ることになるのかもしれない。

 

これまで司令側にいた一等宙佐がこちらに並び立ってくる。

 

「命令、宇宙戦艦ヤマトは偵察巡洋艦カウンティと共に第113偵察戦隊を構成し天の川銀河深部への偵察を行え」

 

命令と共に正式な命令書が真田さんに手渡され手短にブリーフィングが開始される

 

「ヤマト、カウンティの二隻は明朝07:00を以て出撃、天の川銀河サジタリウス腕方面へ進出する。現在天の川銀河で確認されたガトランティス艦隊はいずれもサジタリウス腕方面より出現してることからこの一帯にガトランティス艦隊の根拠地、無いし前哨基地が存在するというのがガミラス・地球防衛軍の共同検知である。

 

第113偵察戦隊の任務はサジタリウス腕における敵支配領域を偵察しガトランティスの支配実態を調べることである。また根拠地、橋頭堡を発見した場合ガミラス第53遠征打撃群と第一艦隊を中心に編成される防衛軍第11任務群共同で天の川銀河掃討作戦が行われる予定だ。そのため前哨艦隊として、ガトランティスに発見されない経路及び艦隊を展開可能な宙域の探査も併せて行ってもらう。

なお以前に確認された救援信号と思わしき信号の発信地も同方面であるためその探査も可能ならば行ってもらいたい。

 

また偵察艦隊はガミラス側が6個地球側も君たち以外に3個戦隊が派遣される予定だ。何か質問は?なければ早速出撃準備にかかれ!」

 

土方さんの檄に敬礼で答え行動を後にする。

併せて出てきた一佐が恐らく巡洋艦カウンティの艦長だろう。

 

「カウンティ艦長、嶋真人です。真田一佐、古代二佐、よろしくお願いしますね」

 

身長は180ほどだろうか。つい特徴的な割れた顎に目をやってしまい慌てて目線を合わせながら握手に応じる。

 

「艦の準備を急がせないとなりませんので失礼しますが、偵察任務中にでも時間を取って一度お話を聞いてみたいと思います」

 

にこやかに返しながらその実迂闊だというような目線が一瞬真田さんから飛んでくる

 

「その時はぜひ、むろん古代二佐も同席させたいと思いますがよろしいですか?」

 

「もちろん。二佐もよろしく頼むよ、この顎が割れた秘密なんぞをお教えしましょう。ハハハハハ」

 

しっかりと視線に気づかれこうまで言われては形無しだ。

 

聞けば向こうの準備はすでに整っているらしくこちらの出撃に合わせてゆっくりとできるようだ。

 

艦の繋がっている桟橋までくれば窓からいくらかの物資が搬入されるのが見える。

ここまでの航行では大した損耗もなく来れていたが長距離の遠征ということでかなり物資を積み込むことになるのだろう。

 

この時補充メンバーについてもひと騒動がありつつも発進準備はつつがなく行われ予定時刻までに準備はすっかりと終わり出撃の時間となる。

 

「貴艦はこれより地球人類未踏領域に赴きガトランティスへ偵察任務に入る。地球防衛軍として行われた任務の中でも厳しいものであると言えるだろう。しかしヤマトは地球史上でも有数の任務を乗り越え、諸君はあのガミラス戦争を生き延びた。」

 

出撃前のスピーチというのは通例であるらしく任務へ赴く前に土方さんから一言あるからと山南さんから口添えられたらしい。真田さんの演説は自身を鼓舞する側面もあったのだろうか。

 

「諸君ならば、ヤマトならば必ずや無事に任務を果たし帰還できる。貴官の武運を祈る」

 

短いスピーチを終え土方さんの姿がモニターから消え、そして

 

「ヤマト、出撃!」

 

真田さんからの号令によってヤマトは再び星の海へと漕ぎ出す。

 

以前航海のように、或いは逃避行の時の如くではない。大勢の友軍がヤマトを見送る中でヤマトは未知への航海に出撃したのだった。

 




皆様お久しぶりです。作者の化猫です。
本話によって一応本章は終了となります。
いささか駆け足気味で自身の力不足と無謀を痛感しました。

また誤字訂正のお礼を行えていなかった点についてお詫びし改めてお礼申し上げます。

どみにおん様  稲村 リィンFC会員・No.931506様 複数話の誤字訂正誠にありがとうございます。

第二章終了に伴い毎週連続投稿はいったん途切れます。
また書きだめ生活に戻るわけですがなるべく月一のペースで投稿したいと思っておりますので感想等何卒よろしくお願いします。

ではまた。

以下読まなくていい解説

嶋真人一等宙佐 32歳
防衛軍で真田さんの一個下で任官、昇進は同期。艦長経験豊富でありガミラス戦中は駆逐艦みゆきの艦長を務めるもメ号作戦前にドック事乗艦が攻撃され参加できなかった。
2児の父親 モデルはヤマト2の土方さんの副官。

出撃前の新メンバー
今度まとめてやりますので勘弁してつかーさい

本話の出来はどうですか?

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