ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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2020/6/21 改行 修正編集
2020/7/25 メガルーダ級呼称を大型戦艦から大型砲艦に変更


序章 B

 

クリスタルパレス 旧アメリカ合衆国、シャイアンマウンテンの地下にその施設はあったという。今現在地球上でその名を冠する地球防衛軍の施設は、北米管区ネヴァダ砂漠地下の地球防空司令部GSD、統合特殊作戦局司令部、欧州管区カストーの空間防衛総体総司令部、極東管区呉防衛軍司令庁舎及び呉宇宙軍総司令部の五箇所存在する。八番浮遊大陸基地奪還の為、防衛艦隊は平時として限界まで戦力を動員しており、300隻近くを本作戦に参加させている。その総指揮はここ宇宙軍総司令部内の指揮所で行われている。薄暗い室内に蒼く光るモニター群には作戦に参加している全艦とデータリンクが表示され作戦状況を知らせてくれる。あまりよろしくないと言う状況が。

 

ガミラス戦役終戦後、地球とガミラスはいくつかの条約を締結していた。その中には迫りくるガトランティスという共通の敵に対応するための軍事同盟も含まれている。復興したばかりの地球にとってガミラスは唯一の友好国であり同盟国である。経済、軍事あらゆる面でガミラスを頼っている地球にとってガミラスの存在は重い。しかしガミラスから見れば数ある友好国保護国の一つであり、支援対象でしかない。

 

むろん地球側から何の見返りも無いと言われればそんなことはないのだが軍事同盟の相手として相応しいのか、地球を見定める必要がガミラスにはある。小マゼラン辺境部での戦闘は小康状態だが、大マゼランや、銀河系その他の戦線では今も戦闘は続いており特に天の川銀河ではガトランティスの出没が相次いでいる。八番浮遊大陸がいい例だ。これからガトランティスとの戦闘は激化するだろう。その時自活できないようでは話にならない。それが彼らの言い分だろう。

 

もちろん地球に言い分はある、僅か三年で宇宙戦力を再建し経済を立て直しさらには植民まで始めているのだから多少はほころびも生まれるし、何よりも今の苦境がガミラスとの戦争のせいだ、と。

 

しかし、この場で指揮を執る男たちはみな真実を知っている。むろん現場にいる制服組のトップたる芹沢虎徹もその一人である。

 

 

 

私にとってこの戦いは地球の趨勢を決めるものだ。何から何までガミラスに世話なっている地球は、この場でガミラスから価値を見出されなければ今度こそ地球人類は滅びるだろう。この三年で地球はありとあらゆるものをガミラスから提供された。技術、資源、ドクトリン、船、星に至るまで。そのいくつかはガミラスとの取引によるものであったし、イスカンダルからの支援でもあった。だが多くはガミラスの代わりを行う対価としてもたらされたものだ。今ガミラスは政治的に揺れている。デスラー失踪後軍部と政府軍部内でも拡大派と改革派、政府でも民主派と貴族派、大公派が存在しており未だ混迷を極めている。かろうじて主流の民主派の支援で復興してきた地球にとってここでガミラスの支援が途切れるのは致命的であり、民主派の没落はそのまま地球復興の終焉を意味する。

 

ここでガミラスに価値を認められることは民主派のポイントとなるし、もし民主派が非主流派となっても他派との連携を行うことも不可能ではない。向こう数十年を決める重大なターニングポイントと言える。だからこそ持てる戦力はほぼ出し尽くし保険もかけることにした。今統合司令部内では軍の文民トップたる防衛司令と制服組トップの私、そしてガミラス政府のオブザーバーとガミラス軍需産業の役員たちが集っている。新生地球艦隊の評価、地球の戦力価値を確かめガトランティスへの対応を決定するために。

 

まるで受験をしているようだ。彼らの評価如何で地球の今後十数年が決まるわけだ。

 

だからこそ現状を何とかしなければならない。

 

戦闘は佳境を迎えつつあった。主力たるガミラス艦隊がその足を止めノーサイドでの砲戦を始め側面を突こうとするガトランティスに地球艦隊が対処を行う。数で勝る連合艦隊にとって消耗戦となってもここで確実に敵を叩いておきたい。しかし、側面防御を任されている地球艦隊は少しずつ押されつつある。地球艦隊はデータリンを通じた統制射撃と管制指示、波動防壁といった戦術的優位を勝ち得ている。にもかかわらず、推されているのだ。被弾艦は刻一刻と増え、飛び出してきているガトランティス側を抑え切れていない。詰まるところ練度不足なのだ。砲撃はなかなか当たらず、冷静な対処もできていない艦も多く、故に被弾し後退する。今はまだ予備戦力があるがそれも無限ではない。ここで戦略予備を投入すれば一気に戦局はこちら側に傾く。しかしそれではガミラス側による地球艦隊の能力、対応力の評価は下がるだろう。ガミラスとイスカンダルから供与された技術でなく、地球で培われた戦術で勝たねばならない。例え心中複雑であろうとも使いこなさねばならない。

 

「11.16.28.34.48の各戦隊を後退、残余の予備戦力を適宜防衛ラインの穴に回せ。抽出した各戦隊に遊撃を下命データリンクを戦略旗艦級に変更、オペレーターは専属を配置、独自判断で地球艦隊の戦線支援にあたらせろ。」元ヤマトクルー達の指揮する戦隊は十分な練度で的確な判断を下している。この場ではむしろ独自の裁量権を与え、分艦隊の指揮系統から離脱させ柔軟に動かすことの方が有意義だろう。各戦隊はそれぞれ押されつつある戦線の支援に向かう。モニターに表示される星図で支援隊が付いたことにより押し込まれつつあった戦線をひとまず抑え込めたことがわかる。主力艦隊の砲戦は依然激しく脱落艦もかなりの数出てきているようだ。ガミラス艦隊を示す赤いアイコン、ガトランティス艦隊を示す緑のアイコン、緑のアイコン群の中に地球艦隊を示す青いアイコンが突入するのが見えた。

 

「あの艦隊は…?」

 

「識別確認、第二艦隊所属、48戦隊です」

 

確かに独自行動を許可したが、まさか敵艦隊に突っ込むとは、無謀としか思えない。単縦陣でガトランティス艦隊の中を突き進む四隻は戦場下面からガトランティス艦隊へ縫うように侵入する。旗艦たるゆうだちをトレースしているのか一切の無駄のない軌道で追従していくその様は、まさに一体と言ったところだろう。

 

 

 

「敵艦中央に高熱源!」

 

 

 

意識をガトランティス艦隊に向けると火炎投射砲が発射されていた。火柱はワープすることなく直進しガミラスの前衛を味方ごと舐めとる。

 

「蛮族どもめ...」思わずそんなつぶやきが漏れ出る。いくら勝利のためとはいえ友軍事敵を打つとは、理解しがたい。だが分からないと言えば射程の短いはずの火焔砲がガミラス前衛に届いたの謎である。

 

「敵大型砲艦の観測データでました!」

 

二隻の大型砲艦は寄り添っている映像がサブスクリーンに投影される。隣り合う二隻の間には何かチューブのようなものが接続されている。原理は不明だが火焔をワープさせずに射程を伸ばすため強引に出力を上げているのだろう。

 

 

 

一閃 モニターに映る大型戦艦の艦底部が光り、爆轟がその巨体を包み込む。その爆炎の縁を四隻の軍艦がかすめて飛び去って行く。

 

 

 

「敵、大型砲艦、一隻撃沈、一隻中破!」

 

 

 

息つく暇もなく、事態は進行する。旗艦と思われる戦艦二隻が前後不覚に陥ったためか、大きな迎撃を受けることなく48戦隊はこちらの陣形に戻ってくる。

 

 

 

仕切り直し、か

 

「各艦に通達、ガミラス艦隊が再編を終えるまで現状を維持。再編後進撃を再開する。」

 

前衛主力艦隊が受けた被害は確かに甚大ではある。しかし三段の複列陣のうち中央の矢じりが欠けただけであり、上下の二段は健在である。ここで突撃を受けたのならば混乱状態である、中段は壊滅するだけでなく上下の陣形にも手痛い被害を受けるだろう。

 

 

 

「敵艦隊、後退する模様」

 

 

 

「ガミラス旗艦EX223より通達、第三主力は追撃に移行する。地球艦隊は第二主力群とともに後詰に当たられたし。以上!」

 

 

 

予想通りガミラスは三個主力群のうちの一つで追撃を行うようだ。報告を耳にしながらふと未だ敵艦隊を移すモニターを確認する。確かにガトランティスは後退していく。その動きは機敏であるといえるだろう。しかし、何か違和感を感じる動きである。その違和感の原因を探っている間に主力は追撃を開始し敵との距離を詰めていく。

 

 

 

「敵艦隊後方よりアンノウン出現。岩塊とみられる。主力群前衛との相速度68sノット」

 

 

 

そこに冷や水を浴びせかけられた。すわ隕石ミサイルかと警戒するも特に爆発するでもなく、ずんずんと敵艦隊の中心を抜け艦隊主力の眼前まで抜けてくる。

 

 

 

そこで違和感が氷解した。敵の後退が整然としすぎているのだ。艦列が乱れ我先にと逃げ出すでもなく、きっちりと艦列を組み直している。詰まるところ敵は戦線整理でもなければ敗走でもなく、誘引のために後退したという事になる。そうでなければ組み直す陣形が前衛に近すぎる。

 

そこまで考えて、一つの可能性に気付く。すでに艦隊の前衛に迫った岩塊は重巡数隻の集中砲火で外側から削られている。その破片はそこそこの大きさのまま艦列の間をすり抜けていく。

 

 

 

まずい

 

 

 

「ガミラス旗艦に緊急電!」

 

 

 

そう叫ぶ、と同時、集中砲火を受けていた岩塊が四散、中心から大戦艦とも言うべき緑の巨躯が現れた。

 

一瞬の間を置き、大戦艦の艦主部が光る。砲撃かのようだがその矛先は先ほどの破片へ向かう。

 

破片に当たった閃光は輝きを増しながら、さながらスプレーのように艦隊に降り注ぐ。五月雨のごとく増幅された光は第三主力群を穿ち、旗艦を含む主力は一瞬のうちにハチの巣となる。ここに第三主力群は壊滅し、再編を終えたガトランティスは逆撃に打って出てきた。

 




おそらくあと一話、二話で序章が終わります。

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