2021/9/23 「」の追加、一部重複している文書を削除
序章 C
逆撃に出たガトランティス艦隊は、残存する第三主力群の生き残りを殲滅しつつ前進を開始、敵の拡散砲搭載艦及びその中継増幅機をその場に残し中破し火炎投射砲が使えない大型戦艦を軸に重段横陣を敷いている。
ガミラス第二、第三主力群は壊滅し、特に第三は文字通りの全滅だ。生き残った第一群第二群残余だけでは荷が重く、地球艦隊を加えても、抵抗し切れるかはわからない。
と、なれば
「長官、好機かと、」
そう進言するのが私の仕事だろう。
驚きに満ちた顔は、しかし苦渋に満ちた顔へと変わる。絞り出すよう
「射線上の安全確保を万全にしろ。それが、絶対条件だ。」
そう伝えられる。
「は!」
そうして決断は下された。大いなる決断が。
「総員、プランA発動!速やかに所定の行動に移れ!」
そう告げ、指揮ネットワークに戦略予備を接続する。
地球、ガミラス両軍各個に後退、態勢を立て直す。ガトランティスの目にどう写っているのか定かではないが、後退し戦列を立て直そうとする、ガミラス第一、第二主力群に対し、大型戦艦を中心に空母、巡洋艦を主力とする敵艦隊が追撃に移行する。意外なことに弩級戦艦は追撃に参加するつもりが無いらしい。
地球艦隊は、その場に足を止め、阻止射撃に勤しむ。殿として敵を足止め出来ずとも、遅らせる為、何より敵をこれ以上近づけぬ為である。
サブモニタの一つ、そこに映るカウントダウンは凡そ二十秒。
ガミラスが体制を立て直し、射線上から逃れた瞬間からカウントダウンはスタートする。
その時まで、ガトランティスにコレ以上進ませるわけにはいかない。
幸にして第二主力群の残骸が遮蔽物となり、敵の進軍と砲撃を受け止めている。それも少ししか持たないだろうが、その数秒は何よりも代えがたい。
敵大型戦艦が率先してデブリを排除し、前進を続ける。地球艦隊の内、比較的損耗の少ない部隊が、牽制射を加えるも、隠れているデブリごと、火力により圧殺される。波動防壁が生きているお陰で何とか、撃沈こそ免れているものの、既に戦術予備も含め、波動防壁使用可能艦は底を着きかけていたが、ようやっとカウントダウンがスタートする。
オペレーターのカウントダウンを聴きながら、芹沢虎徹は思考の海に潜る。
戦略予備を使う以上、ここで勝ちきらねばならない。主力たるガミラスは半数程度の戦力を失っており、地球艦隊も、空間騎兵を輸送した部隊を除くと、おおよそ三分の1が戦闘不能になっている。幸にして戦死者は想定より少なく済みそうではあるが、しばらく地球艦隊は動けなくなるだろう。特に損傷修理にどれほどの時間がかかるかは余り考えたくない問題だ。今後の補助艦艇の建造計画を見直さねばならないかもしれない。
カウントダウンはいよいよ、終盤に差し掛かり、戦略予備がその姿を連合艦隊の後方に現す。
地球防衛軍第一艦隊旗艦アンドロメダは強大な力を秘めた、砲口をガトランティス追撃艦隊に向ける。
ゼロの合図とともに、二門の波動砲から放たられる奔流はガトランティス追撃艦隊の戦闘、大型戦艦の真横で収束し拡散した。マイクロブラックホールから発生した熱と破壊の波はガトランティス前衛を飲み込んで余りあり、後方の再編されたばかりの主力を飲み込み消失した。
その光景に司令室の人間はしばしば言葉を失っていたが、一拍を置き俄かに騒がしくなる。それは大別して二種類であり、一つは歓声、一つは困惑の声である。
イスカンダルとの条約により、波動砲は使用できない。そう認識する人間は防衛軍にも多く存在する。そんな彼らが困惑の声を上げるのは、仕方のない事だろう。だが、今は困惑も、歓喜も置いておかねばならない。
「戦果確認をいそげ!」
その一言でオペレーター達は再起動を果たす。しかし、オブザーバーや会社役員達は違う。笑みを浮かべ手を取り合い、計画の成功を祝している。
「やりましたな、芹沢さん」
そう声をかけるオブザーバーの1人、アベルト シューペオは地球における、軍需技術供与の最高責任者でもある。彼がこう言ってくるという事は、ガミラスとして、この戦火に満足している、という事だろう。
手元のモニタに映る報告書にはガトランティス守備艦隊、そのほとんどを葬り去ったという事が記されている。
一方、敵旗艦と思われる大型砲艦も大型戦艦もどちらも生き残っているという事も、記されている。
大型砲艦には近すぎ、大型戦艦には遠すぎた、ただそれだけなのだろう。
「各艦に伝達、掃討戦に移行する。地球艦隊はガミラス艦隊残余と歩調を合わせ、前進せよ」
だが、実際の所おおよそ、戦いの趨勢は決しただろう。
アンドロメダは大戦果を上げ、ガトランティス主力はその戦略的価値を失った。大型砲艦は火炎投射砲を失い、大型戦艦はビットを失った。もはや、抵抗力は無いに等しい。
悠然とアンドロメダが前進を開始する。
拡散波動砲の射線を遮らないよう逆円錐形に艦隊が展開している為、その中心を進むアンドロメダはさながら孤高の舞台女優といったところか。少なくとも今はそう思ってやらねばならん。
その実態がたとえ道化師だとしても。
「デファイアンスが後退する模様、護衛としてサラトガが付きます。」
それに合わせ友軍の損傷艦も後退していく。すこし気を抜くのが速すぎる、と思うのは自分だけではないだろう。艦隊司令部が陸上に移されその幕僚を含め地上に高級将校が
生き残った現役兵や士官達は確かにガミラスに対する憤りを持ち合わせていた。愚かなことに復讐を望む者たちもいただろう。その結果が軟禁と指揮権の剥奪なのだからある意味仕方ないことなのかもしれない。しかし納得ができるかは別だろう。
アンドロメダ艦長山南修にとって、この戦いは茶番でしかなかった。
再編成途中の地球艦隊も、ガミラス遠征任務軍の主力を担う地球産の無人艦隊もこのアンドロメダさえ品評会の羊に過ぎず、その出来をガトランティス相手に確かめる為だけにこの八番浮遊大陸基地が選ばれた。破壊工作によって基地の戦略的価値はほぼ無くなり、そこに駐留する少数のガトランティス艦隊をどれだけ早く叩けるか、それだけを見るためだけの臨時編成である。地球の存亡のためと信じて戦う将兵たちにとって、これがどれほどの価値のあるものか。しかしながら今この瞬間だけは眺めるのではなく友軍の為に戦えることに感謝していた。
拡散波動砲、その奔流に呑まれかけながらも生き残った代償として、砲艦は著しくその性能を低下させていた。主機である対消滅エンジンは不調を起こし、主砲の砲身も一部損傷している。しかしながら、ノロノロとした動きでも、生きてアンドロメダの進路を塞ぐ為、反航戦を挑んできた。
「敵艦、健在の模様!」
「右砲戦、主砲、一番、二番斉射始め!」
下された号令とともに41センチ陽電子衝撃砲はエネルギーを収束させつつ、敵艦に向かって吐き出す。
敵砲艦も負けじと応射をするが、大型砲塔5門のうち3門しか返ってこない。
第一射、二射ともに砲塔へ命中、基部からその巨砲をもぎ取る。
対して敵弾は波動防壁に阻まれながらも、貫徹し見事右舷サブエンジンに被弾する。
「ダメージコントロール!」
「右舷第一第二エンジン損傷!推力35%ダウン!」
行き脚が遅くなり、高速で行き違うはずの2艦は近付くに連れ速度を落としていく。片やサブエンジンを全て使えない戦艦と片や主砲をもぎ取られた砲艦、その交差の瞬間勝負はついた。
アンドロメダの3射目と4射目は艦橋とその後方、飛行甲板を直撃、貫徹力に優れた収束型衝撃砲は発艦しようとする艦載機もろともバイタルパートを打ち抜きエンジンへ直撃、弾薬庫に誘爆しつつ、砲艦は爆炎の中へと消えた。
瞬く間に苦戦していた砲艦を討ち取ったアンドロメダに続かんと地球、ガミラス混成艦隊が八番浮遊大陸に向けて進撃を再開する。
「敵艦が軌道上より離脱を開始しました!」
敵旗艦を撃沈したのが効いたのか、残存していた敵艦隊は次々と衛星軌道を離れワープインしていく。
空母を優先しているのか後方で待機していた艦艇たちが次々と離れる中、敵弩級戦艦とその護衛らしき巡洋艦数隻がアンドロメダに向かいゆっくりと加速してくる。
息をつく間も無く、舞台は次の章へと移りゆく。
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