ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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二話目です

20/11/20改稿 


序章D、あるいは始まりの終わり

 

 

モニターを眺める将校達は勝利を確信し、浮かれ始めていた。敵艦隊は撤退を始め、敵砲艦を2隻とも撃沈、既に抵抗力はなくなり、浮遊大陸基地の奪還は決まったも同然だと。

 

 

 

だからだろう、先行偵察のために物資が足りなくなりつつあった巡洋艦に対し、補給ではなく太陽系への一足早い凱旋で労を労おうとしたのは。

 

 

 

芹沢はその時確かに、何か嫌な予感とも言えるものを確信していた。何かを見落としている、と。

 

 

 

しかし、彼のそれが間に合うことはなかった。

 

 

 

「敵弩級戦艦、増速したまま本隊に突っ込んできます!」

 

 

 

敵弩級戦艦を含む殿は急加速を開始、その巨大に見合った砲火力を再編が終わったばかりの連合艦隊に叩きつけながら、まっすぐと陣形中心部に向かっていく。

 

 

 

アンドロメダが応戦し巡洋艦2隻を沈めるも弩級戦艦を取り逃す。突如、陣形内に敵艦隊を入れることとなった連合艦隊は指揮系統の問題もあり、一気に陣形を乱す。その隙をつくような動きは先程の47戦隊による突撃と同じものだったが、練度が数倍上の敵艦隊と数倍下の味方陣形による効果で加速度的に被害を増していく。ガミラス艦同士の衝突や、友軍誤射が相次ぎ、各個に反撃を行う、友軍艦を嘲笑うかの如く、奥へ奥へと突き進んでいく。

 

 

 

「何をやっている!散開し被害を減らせ!」

 

 

 

そう叫ぶが、一度乱れた陣形のせいで、散開もままならない。既に敵艦隊はその数を減らしながらも隊列の3分の2を通り過ぎ、さらに混乱を拡大させていく。

 

連合艦隊の艦列を抜けた敵艦は弩級戦艦たった1隻だったものの見事にその役割を果たし、浮遊大陸基地のガトランティス艦隊が離脱する時間を稼ぎ切った。そのまま減速することなく弩級戦艦もワープインし離脱する。

 

 

 

最後の最後で勝利に泥をかけられた気分だったが、それ以上に芹沢の脳裏には警報が鳴り響いていた。

 

 

 

それはゆうだちが静止命令を無視し地球へ向け緊急ワープを行った瞬間確信へと変わる。

 

 

 

地球へと離脱してきたサラトガデファイアンスの2隻はそのシグナルを月軌道から離れた外縁部から発信していた。

 

 

 

直後、ガトランティスの弩級戦艦がワープアウトし、2隻をおしのけ地球への軌道に乗る。数瞬遅れたのち弩級戦艦の前にゆうだちがワープアウトする。それを意に介さず、ただ突き進む敵戦艦、ゆうだちの攻撃を受けながらも刻一刻と地球へと向かってくる。減速を一切せず、通信を送りながら、加速し続ける様を見る限り、何かしらのトラブルなのだろう。しかしこのままでは地球に落下するのも時間の問題だ。

 

 

 

「軌道計算を開始!落着予測を報告しろ!」

 

 

 

地球の位置を敵に知られた事に自責を感じながらそう命令を下す。

 

 

 

ゆうだちがその火力の全てを持って攻撃するのが映るモニターを食い入るように見つめながら報告を待つ。事ここにいたり出来ることは殆どない。

 

そんな中若い女性士官が悲鳴のような報告を挙げる。

 

 

 

「落着予測地点は……ここです!」

 

 

 

その一言とともにアラートが鳴り響く。今現在いる、地下司令部施設は市街地の真ん中に存在している。ここに落着すれば、都市の住人達は元より、あの巨大質量によって司令部も壊滅だろう。

 

 

 

避難を呼びかけるガミラス人達を横目に、

 

 

 

 

 

 

 

「間に合うものか…」

 

 

 

 

 

 

 

そんな言葉が漏れてしまう。ここにいたり彼の意識は真っ白に塗りつぶされていた。

 

藤堂長官が、地下都市へ避難誘導を開始させ、一部の司令部要員とガミラス人達が避難を開始する。

 

それを横目に司令官として停止していた思考が動き出したのは、先ほどまで無理やりにでも軌道を変える為戦隊をぶつけて押し出しにかかっていたゆうだちが大気圏を目前に離脱を開始した時だった。

 

 

 

急な避難勧告に市街地は完璧なパニックに陥っている。それでも一部の人間は地下へと逃げ延びるだろう。

 

 

 

「現時刻をもって本指揮所を放棄!

 

避難誘導要員を除き司令部要員は避難を開始せよ!指揮は第二艦隊旗艦ワーテルロー へ引き継げ!」

 

 

 

そうとだけ言い残し、再び椅子へとへたり込む。最低限の義務は果たしたが、これ以上できることもないモニターに映る敵戦艦はデブリ排除用の防護砲台を歯牙にもかけず体当たりで突破し大気圏へ突入する。

 

このまま指を咥えて見ているしかない。

 

諦めが頭を支配しかけたその時に奇跡は起こった。大気圏を突破した直後の敵艦を衝撃砲が貫き、直後四散する。紅蓮の炎に包まれた敵艦はその破片を海へとばら撒きながら燃えてゆく。

 

 

 

「敵艦、撃沈…」

 

 

 

オペレーターにとってそう呟いたのは無意識のうちだったのだろう。

 

誰もが唖然としている中、その言葉で正気に戻った芹沢は激発を抑え詳細報告を命じる。 

 

 

 

その怒りが収まるのは数刻の時を必要としていた。

 

 

 

二日後

 

地球、宇宙軍司令部第二艦隊庁舎、長官室

 

 

 

「貴様は自分が何を行ったのか理解しているのか!?」

 

 

 

怒気を隠さず正面から叱り付けてくる上司に対し古代進は些か懐かしさを覚えながらも、冷静に答える。

 

 

 

「は、独断専行と命令無視であります」

 

 

 

そう古代が静かに答えると、一瞬面食らった表情になりながらも第二艦隊司令谷剛三先ほどよりも数倍の声量で怒鳴りつける。

 

 

 

「そんな程度のことではない!」

 

 

 

事実、古代に与えられていた独自裁量権は地球での戦闘に置いても撤回されておらず、独断専行とは言い難かった。また、敵戦艦攻撃に際して艦隊司令部からの制止命令を無視した件も同様に捉えられている。

 

 

 

元より声を荒げることも少ない谷は幾ばくか声を枯らしながらも古代を嗜める。

 

 

 

「貴様が行ったのは指揮の放棄だ、引き継ぎもせず、部下を戦場に残し敵を追撃する。その意味を理解しているのか?」

 

 

 

その言葉に古代は衝撃を受ける。彼が艦の長として戦うのは何度も機会があった。それこそ一年近い航海で士官として一人前になりつつもあった。しかし艦隊の司令として配属されたのは先の戦闘が初陣でもあった。それが理由とはいうまいが、些か自覚に欠ける行動であった。

 

 

 

「やっと、理解したようだな?」

 

 

 

顔を伏せ後悔をにじませる古代。それに対しまだまだ青いと谷は断ずる。

 

 

 

海千山千の指揮官達に混ざり戦った記憶のある谷にとって、言い返しもせず、素直に自分の非を認めて後悔する古代は青く若いが可愛らしい部下でもあった。

 

 

 

「はい…」

 

 

 

「ならば処分を伝える。古代進二等宙佐に二週間の休職処分を言い渡す、また始末書の提出をするように。」 

 

 

 

「了解しました、失礼します。」

 

 

 

そう言い残し部屋を出ようとする古代に対し谷はかすかに笑みを浮かべ一言

 

 

 

「よくやった、貴官の健闘に感謝する」

 

 

 

そう告げた。

 

 

 

 

 

同日 地球国家連合防衛軍庁舎、三号会議室

 

 

 

「以上の観点から最も有効な手立てとしてヤマトの主砲発射に踏み切った、という事です。」

 

 

 

「芹沢君、私が聞きたいのはそういう話ではないのだがね?」

 

 

 

「おっしゃる意味が解りませんな。」

 

 

 

目の前のスーツ姿の男に対し芹沢はひょうひょうとした態度を崩さない。

 

 

 

オーダーメイドだろう上等なスーツを着こなす男性はしかし、お世辞にも上品とは言えぬ苦り切った顔をしていた。

 

ため息を一つ吐き出し

 

 

 

「今回は騙されよう。終わった話でもあるし、何よりソレに私も救われた。だがね芹沢君、覚えておきたまえ。君がもし邪魔をしてきても必ずソレは廃艦にするし、その時は君も一緒にお払い箱に送る。今回は君の献身と実績に免じるがね。」

 

 

 

そう言い残し地球国家連合初代元首チェスターVブラウンは退出するのだった。




長らくお待たせしてすいません。少々難産でした。ご感想お待ちしています。

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