ヤマト2202 防衛軍戦記   作:化猫

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2021/9/23 改稿 乗艦→上官 語句調整


1-2 覚悟を示せ

ひび割れた音の中から女性の声が漏れ聞こえてくる。

 

『...宇宙...戦..達...私...危機が...たすけ...』

 

同じワードを繰り返しているのかいくつか意味が解らない、おそらく原語のものも有ったがソレは確かに助けを求めるものだった。

 

「やはり、正しかったか。少しチューニングが必要だろうが、この分なら全文を知ることもできそうだな。」

 

そう聞いた時、古代進は何度目かの衝撃に固まっていた。真田の説が正しかったから、ではない。

 

確かに直感に頼る真田も、それが正しいという事実も古代にとっては驚きに値する。

 

だがそれ以上にメッセージに気を取られていた。地球に助けを求める声に対して。

 

真田が呼びかけるまで呆然と立ち尽くした古代に真田が気づくのはそれから数分を要することになる。

 

 

「落ち着いたかね?」

 

そう言いながらコーヒーを差し出す真田。しばらく取り乱していた古代であったが冷静な真田の対応に落ち着きを取り戻していた。手慣れたものであるようなその手腕には感服すら覚える。

幾分か気恥ずかしさを隠しながら謝罪する古代に対し、

 

「なだめるのは俺の役割だったからな」、と答えるその姿には幾分かの寂しさが感じられた。

 

「それで、結局この通信の発信源はわかるんですか?」

 

救助を求めるそのメッセージは、同時に発信地点も指示していた、彼女らの表記で、と注釈がつくが。

 

「不可能ではないね。かなり古い星図をもとにしてるみたいだが、イスカンダルやガミラスが使っていた単語といくつかの類似点が見受けられる。細かいことは調べないとわからないが同じ星図をもとにしているんじゃないかな?」

 

イスカンダルと国交を結び、ガミラスとの終戦協定を結んだとき、それぞれアーカイブから地球までの星図を提供されていた。イスカンダルの物はいささか古いのか多少の差異が見受けられたが、その分広い範囲が記されていた。逆にガミラスの星図は正確でありガミラス領内をふくむ多くの星系の情報が制限されていた。そのどちらにも記されていた恒星系、その名前が記憶の限り一致していた、ということだ。

 

「単位がわからないから解析に時間はかかるだろうがね。」

 

コーヒーをすすりながら話を進める真田には見当がついているかのようだった。

 

「上はこのメッセージをどうするでしょうか?」

 

無下にはしたくない、と言う思いと、地球の防衛を担う軍人としての意識の板挟みからかそう、口をついて出てきた。

 

「無視、とはいかないだろうね。何かしらのリアクションは有るだろう。だが救援に向かうのは難しいだろう。軍はようやっと一部の再編が終わったところであるし、八番の件で上の腰も重たくなっているみたいだ。」

 

艦隊の再編成は何とか三個艦隊を要するほどまでに回復した。しかしその内情は厳しく新造艦艇も半数以上が内惑星戦争時の艦を再設計しただけの旧式艦ばかり。ここ数か月で新設計の巡洋艦が配備され始めたばかり。第一艦隊には新型の戦艦が試験運用され始めているものの、その数は十分とは言えない。

人員もベテランが足りず新兵ばかり、その若手すら民間との取り合いである。ガミラスからクローン兵の技術移転ないし提供を受けるべきと言う言説すら議会では叫ばれている。その処遇などはすべて棚上げにしてだ。現在ガミラスで発生している、停戦に伴うガミラスクローン兵の人権問題、帰還兵問題は地球でも取りざたされるほどであり、その取扱いは慎重を期さなければならない。

未だ多くのガミラス軍が占領地や植民惑星に駐屯を行っているが、その多くがここ数年で新編されたクローン兵、二等臣民を主軸とした二線級部隊だ。一等臣民が主体で構成される一線級部隊は本国に配備され、外地部隊はそのまま現地に島流しされるのではないか。或いは、クローン兵たちはガミロイドのように廃棄されるのではないかと言う不安が広がっている。多くのクローン兵とそれを指揮する中級士官の中では本国に対し不満と不安が広がりつつあり、それを本国が沈静化できずに離脱している部隊もあるという。

 

翻って地球の内情も同程度には混乱している。先に挙げたクローン兵計画は無論のこと、無人艦隊計画、アンドロイド配備計画、果ては、生体CPUを使用した無人兵器まで計画されているという。どこまでが本当でどこまでが嘘なのか、防衛長官ですらすべてを知らぬというのだから、解るわけもなし。ガミラスとの戦争でとかく恐怖を覚えた軍部はこのように警戒を強めガトランティスとの全面衝突に備えているものの、政府は逆に、ガトランティスの攻撃は収束しつつあるとの見解を示している。

 

「古代、もう一つお前を呼んだ理由があるんだ。」

 

真田は苦々しい顔を浮かべながら話し続ける。

 

「ヤマトの廃艦が決定した。内示の段階ではあるが、艦隊司令部からの確かな情報だ。艦政本部にも同様の内示があったようだ。」

 

この言葉に、古代進は驚かなかった。まさかと思い続いて疑問が頭の中を埋め尽くした。驚いている余裕がなかった、と言っていいかもしれない。

 

「唐突、ですね。どうしてそんな話に?ヤマトの再武装はかなりのところまで進んでいるはずです。それこそショックカノンを放てる程度には。それにガトランティスの脅威が少ないと政府が判断していてもいま、まともに戦える艦を手放すのはおかしいですよ」

 

一気にしゃべり切った古代に対して真田は苦り切った顔のまま一言

 

「私にもわからないんだ。ヤマトの再武装と現役復帰は艦隊司令本部内では既定路線だと思っていた。だが、内示を伝えに来た富山宙将補以外ヤマトの現役復帰計画について知っているものは部下の他、誰も知らなかった。同じ艦隊司令部の同僚たちに至っては私が他に移動したと認識していた。」

 

真田の所属する艦隊司令部は宇宙軍の所属艦艇をほぼすべて管理している。その中で真田とその部下、そして直属の上官たる富山宙将補しかヤマトの復帰について知らなかったというのは、どういうことか。さらに富山宙将補から伝え聞く限り、艦隊司令部はこの内示を受けたに過ぎないという。

不審に思った真田は作戦本部勤務の新見に事の次第を確かめた。

 

「新見君に作戦本部の様子を尋ねたが、ここも通達を受けたに過ぎないそうだよ」

 

作戦後の事後処理に忙殺され過労で倒れた新見を発見したのはちょうどこの時だったようだ。病院で診察後、病室でこの事を新見から聞き出し、追跡を断念したという。

 

「艤装長のあとの仕事が決まっていないなか休暇を取る羽目になったからな。ちょうど新見君のお見舞いの後佐渡先生にデータ解析を頼まれてな、暇つぶしがてらあのデータを解析してたんだ。」

 

言い終えた後真田は一泊置いて

 

「古代、俺はヤマトを廃艦にしたいとは思わない。できることは少ないだろう、だがそれでも何かできないか、やってみるつもりだ。お前はどうする?」

 

そう尋ねてきた。

 

 

 

 




設定雑解説

メッセージ周り 
イスカンダルのメッセージはガミラス翻訳機とも別のシステムで構成されています。具体的には聞き取る対象に概念を伝えることで聞き取るものが勝手に脳内で母語に変換する、と言うシステムです。今回テレザートから送られてきたメッセージは同様の技術を使用していますがイスカンダルに比べ技術レベルが低い事、地球側に受け取るための受信機がなかったため人間に直接届くまで出力を無理やり上げて送信しています。ちなみに星図とこの技術はイスカンダル、テレザートどちらもアケーリアスの遺跡から回収したものがベースです、がテレザートはイスカンダルに比べ古い時代の遺跡しか周辺に存在しなかったため技術格差が生じています。

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