2-1 発進準備
毎年、沖田艦長の命日には集まるのが慣習とはいえ、それは誰かから強制されるわけでもなく例年はそこまで多くの人数が集まったわけでもなかった。
しかしその日、ヤマトクルーの多くが英雄の丘に集まっていた。地球に生きて帰還した者たちのおおよそ八割が集まっていたのだ。
ヤマトと共に旅をした彼らはそのうちのいくらかが軍から去っていたがこの日だけは現役時代の制服に身を包んでいた。
この場にいないのは過労の為自宅療養を行っている新見を除けば病没や先の戦闘で戦没したもの、そして現在も軍の任務に従事しており仕事場を離れることができない者たちだけだった。
特に旧ヤマト航空隊の面々は壊滅している航空戦力立て直しのため日夜月面で新人教育を行っている。そんな彼らの家族となったものもまた月面に滞在しており未参加なのは残念でならない。
再び始まろうとする戦乱を感じ取ったのか彼らは一堂に集まった。それは様々な思惑があってこそだがしかしその場に集まればそれぞれの立場と考えを脇に置き、お互いの壮健を称え合い、散っていった戦友達の死を悲しんだ。
慰霊祭とも近況報告とも言える厳かな儀式が終われば各々持ち寄った酒や料理で宴会が始まる。何処ぞの酒屋なり飯屋なりを予約するべきであろうが、幹事担当の佐渡先生が予約をミスしまたそれぞれの仕事や任地の関係で遅れたり早抜けしたりする関係上開放感のある宴会が適していたためそのまま英雄の丘で騒ぐのが毎年の決まり事となった。
こうしてヤマトクルー達と騒いでいるとヤマトでの航海を思い出す。
ヤマトに乗り合わせたクルーたちはその多くが若者だった。
古代を含む部門長でさえ任官してから5年経ったものは新見と真田、徳川だけなのだ。
軍歴を重ねたベテランたる下士官は兎も角として士官として配属された者たちの中には短縮された士官教育課程を更に繰り上げて任官した者たちでさえいた。
ヤマト乗艦の新米士官達の平均年齢は概ね19歳であり一番若いものは16歳だった。
青春の只中をヤマトで過ごした彼らにとってこの集まりは同窓会の様なものだ。
そんな和やかな雰囲気を漂わせている中、どうやって切り出すものかと、頭を捻る。各々楽しんでいるその最中、転機は訪れた。
アンドロメダ級その1番艦が舐めるように低空を飛び去って行く。態々沖田提督の命日にそんな飛び方を行うのはどう言うわけなのだろうか。
しかしそのアンドロメダに対し不満が出たことで空気は変わる。
馬鹿野郎!そう最初に叫んだのは南部だった。南部重工の御曹司としての立場と防衛軍期待のエリート、二つの立場からくる重圧故か昔から少し気負ったところがある彼は周囲に対し些か尖ったところがあった。
いい加減丸くなったと思っていたがまだまだ熱い男らしい。
この一言からクルー達は各々上司の愚痴や今の政府に対する不満が溢れ出した。
復興を始めて約3年、まだたった3年しか経っていない。そう感じるほどこの3年間は長かった。ついこの間の式典においても順調な復興を政府は強調していた。しかしその内実はどうだろうか確かに極東管区を含む一部の復興は順調であり、むしろガミラス戦役前よりも発展していると言ってもいいだろう。しかし一歩主要都市から足を延ばして見れば相変わらず草木の生えぬ大地や、復興が進まぬゴーストタウンが見て取れる。
形ばかり立派になった地球艦隊も愚痴の原因だろう。元ヤマトクルーたちがこの場に集まったのは何も彼らの意思が強かったという訳ではない。現役の士官下士官たちはほぼ全員が地球の何らかの部署に転属が命令されていたのだ。その多くは非戦闘部門でありデスクワークが主な仕事の部署ばかり。これを皆左遷と捉えているのだ。古代から伝えられたキーマンと言うガミラス人曰く英雄を殺さない為、らしいが。
各々の愚痴からこのタイミングを置いて他に内だろう。
「みんな、少し聞いてほしい。」
同じことを考えていたのだろう。結局先にそう切り出したのは古代だった。
「ヤマトが廃艦になることが決定された。」
一言一言切り出すようにそう告げるのは今話を考えているゆえだろうか。
結局自分がやるべきだと背負い込んでしまったのだろう。だから今この場でそう決断してしまったのだ。
ざわめきがざわめきを呼ぶ。それは皆が漏らした落胆とも驚愕ともいえる声だった。
「俺はヤマトをこのまま終わらせたくはない。」
古代が一言話すたび
「ヤマトを土星に運ぶ。そうすれば土方さんが後を受け持ってくれる。協力してくれた皆の今後も含めてだ。」
古代が一言話すたび、ざわめいていたクルー達が口を閉じその一言を待つ。
「無理にとは言わない。」
多分その一言だけでここにいる者たちの多くが協力するだろう。だからこそ、今、その一言が必要だ。
「皆んなの力を貸してくれ。俺たちでヤマトを救おう。」
その一言で静まり返った会場は一気に喧騒を取り戻す。肯定的なヤジや政府、軍上層部に飛ばす愚痴を混ぜつつ、皆乗り気なのだろう。
だが、ここで判断を下させる訳にはいかない。今、酒の力も借りて勢いだけで決めるべきではないだろう。
「協力してくれる者は明日、私に連絡をくれ。確かに今後の事を土方閣下は見てくれるだろう。しかし何のお咎めもなしとは行かないはずだ。少なくとも上からの覚えは悪くなる。一晩じっくり悩んでくれ。以上だ。」
憎まれ役、とまでは行かないが水を差すのは俺の役目だろう。
幾らかのブーイングと大多数の真剣な悩む表情は意外と勢い任せではない事を伝えてくれる。
その中で、島だけが苦悩の表情を浮かべていたことがやけに目についた
「真田さん古代、俺は一緒に行くことが出来ない」
一日を待たず、そう告げたのはいくつか理由があった。
「そうか。わかった」
端的に短くそう告げる真田さんの言葉は一見冷徹に聞こえた。少なくともそういう人間ではないと知っているし、第一に眉根が少し下がっているから、残念には思ってくれてい居るのだろう。
一方古代のほうは、おいおい。
「すまないな、古代。だが俺にも家族がいる、親父の代わりに守ってやらないといけない家族が。お前は、反乱をやめる気はないのか?」
つらそうな顔をしていた古代は一転決意を秘めた目でこちらを見返す。そういうやつだよな、お前は。
「森君は、どうする気だ?彼女も連れていくのか?お前にその決断ができるのか?」
痛いところだったのだろう。彼女が軍に残ることも、彼女を失いかけた、いや失った苦しみも全て知っている。だからこそ、思いとどまってほしい。
「彼女には、地球にいてもらう」
悪手だろう、それは。
彼女が納得するわけがない。だがもう意思を固めたのだろう。どう説得するか検討もつかないが、仕方あるまい。
「失敗すれば、極刑もありうる。それでもか?」
「それでもだ。やると決めたんだ、最後までやるさ」
無駄なあがきと分かっていても、言わずにはいられない。たとえ答えがわかっていても。
「このリストは、今回直接参加できないと私たちに連絡してきた者たちだ」
そういいながら真田さんが差しだしてきたファイルには少なくない人数の名前が書きこまれていた。
大島 宮澤 峯岸 星名
「それぞれに理由がある、彼らも君もだ。星名君がとりまとめをやってくれるそうだ。連絡を取るといい」
「真田さん、やつを頼みます」
死ぬなよ、古代
みなさん非常に長らくお待たせしました。
作者の大猫です。リアルが忙しく長らくほうりっぱで申し訳なく思います。
それはそうと本日より宇宙戦艦ヤマト2205公開ですね。
といことで公開を記念して本日より2章が終わるまで毎週投稿します。
終わったらまた書き貯めに戻ります。
筆が遅い作者ですがどうぞよろしくお願いいたします。
では
感想お待ちしております。
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