ゲール少将の胃痛   作:化猫

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頭の中からの蔵出しです。


乱文 又は各個人の記録

「獲物が罠にかかったのだよ。」

 

そう答えるエレクドメル上級大将に対して俺は複雑な心境だ。恐らくは自分の死因になるであろう男でもあるし、アニメにおいて自分と彼との仲は決して良いと言えるものでもなかった。それでも今はその事を置いて執務に専念せねばならない。

鎮守府の執務棟まで行く間気まずい沈黙が車内を包む

 

「ゲール君、君に一つ礼を言いたい。シュルツの事だ、よく守ってくれた。」

 

「礼を言われる事ではないかと、今は私の部下ですので。」

 

銀河方面軍作戦司令から副司令へ降格されたのは単にシュルツを庇ったから、というのがあるだろう。ヤマトを沈めることもできず作戦を失敗し、あまつさえ現場指揮官を処断せず庇ったのだから当然だろう。しかし、シュルツは基地こそ失えど、それだけで処刑されるべきではない。ガミラスの軍法にはそんな記述はないし、いままでそんな理由で処刑された指揮官もいない。ましてや戦艦のクルー全員を巻き込んでの自殺など見過ごせないだろう。ゼーリックには散々文句をつけられたものだが、正直な話どうでもいいというのもある。早々に指揮官を解任されれば、ヤマトと戦わずに済むかもしれない。或いは一戦艦乗りとして戦うことが可能かとしれない。そう考えていた。誤算だったのはゼーリックが殊の外俺を気に入っていた点だろう。銀河方面軍、ましてやバラン鎮守府は彼奴のシンパしか居ない。所属する艦隊はもちろん一駆逐艦に至るまで殆どが彼奴の私兵みたいなものだ。だからこそ変わりはいくらでもいると考えていたが。ドメル上級大将派遣がその流れを変えたというのもあるだろう。

つらつらと考え事に浸る俺をよそにドメル中将は続けて、

 

「無事ヤマトを仕留めた後、私は小マゼランへ戻る。その時は君が司令に戻れるよう取り計らうつもりだ。今暫く辛抱してほしい。」

 

やはりあまり嬉しくはない申し出ではある。が受けておく他はないだろう。

礼を言って頭を下げると、ドメル中将は満足げにうなずいた。

 

「よろしく頼むよ、ゲール君」

 

前途は多難だ。

 

 

 

司令室にて罠についての詳細を聞き終えた後。一時解散となり各々がバランで使う部屋へ向かう道すがら、俺はハイデルン大佐に艦隊幕僚達について聞いてみた。

 

「確かに些か奴らは若く、階級も低いですな。思慮に欠ける所もないとは言えません。ですがバーガー、ゲットー両名共光るものを持っています。少しばかり荒削りではありますがね。今回の転属で奴らを抜擢したのは成長を促す為というのもあるでしょうな。クライツェは年長として2人を十分に御してます。まあ、少しばかり心配になるのは分かりますが信じてやってください。」

 

そう答える大佐の顔は父親のようだった。伊達に親父さんと慕われるわけではないのだろう。

 

「閣下は彼奴等をどう評価されますかな?」

 

そう尋ねられ迷う。正直に答えるか、或いはお為ごかしを言うか。

そう迷っているのを見透かすように続けて正直な感想をと続けられ顔を見る。

この吾人はたたき上げの将校らしく不敵な笑みを浮かべていた。勝てないと、そう思わせてくる。ならば誠実に答えるのが俺の役目だろう。

 

「少々、生き急ぎが過ぎますな。特にバーガー少佐は顕著です。本人に自覚がないのがまたたちが悪い。いくらか改善したようにも見受けられますが、それにしても無謀が過ぎる。勇猛果敢か猪武者か、そのどちらにもなりえます。ゲットー少佐はエースだそうで、その自負に満ちています。自分のやり方にこだわりを持っている。悪いことではないですが、幾分想定外に弱いところがあります。埒外の情報を聞くと固まる癖は致命的とも言える。思慮深さをうまく生かせるか、と言ったところです。クライツェ少佐は寡黙と言うよりしゃべらないところを何とかすれば今すぐにでも将官を熟せる器です。それだけに惜しいとも思いますが。こんなものですかな」

 

そう言い切った俺に対してハイデルン大佐は満面の笑みで答える。よく笑うその姿に多くの兵が勇気づけられるのだろう。軽くうなづき返し、自身の執務室へと向かう。自分とは正反対のその姿に少し羨望を覚えながら、うまくやっていけるとどこかで確信していた。

 

 

 

 

 

第一印象は最悪と言ってもよかった。くたびれた中年男性、その印象しか与えぬけだるげな風貌はとても軍人には見えなかった。だがその眼差しだけは鋭かった。ギラギラとした瞳には言いようのない凄みがあった。しかしその後やはり第一印象が正しいのだと考えを改めた。結局の所保身にしか興味のない官僚軍人だと。もう一度考えを改めたのは、もはや死ぬしかないと言った時だった。デスラー総統の作戦を失敗し、基地損失の責任を取り部下たちと共に死ぬことこそが、家族の引いてはザルツ人の為になると。しかしその決意を無駄だと切り捨てたのは閣下だった。

 

ただ淡々と撤退を命じられた時はわが耳を疑ったが、結局ヤマトの追撃は行わず、生き延びる羽目になった。部下の仇をとれず悔しがる私に対し今生きている部下を殺すなと言う閣下に何も言えなくなったのだ。

おめおめとバランに到着した私たちは憲兵に取り囲まれるも、閣下がとりなしてくれたおかげで特にお咎めもなく済んだ。

だからこそ私たちを庇い降格を受けたという話に大いなる恩を感じた。

 

総統を含む高官たちが集う中で一人啖呵を切ったという。曰く、シュルツは自分の部下であり、その進退を決定するのは自分であると。作戦の失敗は試作兵器の想定外の行動によるものであり、何よりもあたら優秀な部下を殺すための命令を行うことはできない、と。その啖呵に対し静かに気炎を上げる宣伝相と親衛隊長官を抑え、大いに喜んだのが総統である、と言う話は閣下が降格され派遣されたドメル閣下から伝えられた。

 

だからだろう、ドメル閣下にもう一度共に戦わないかと問われ、断ったのは。

この恩を返すまで私は閣下のもとで戦うのだから。

 

 

 

 

ゲール少将について知ったのは、叙勲式ののち銀河方面軍についてディッツ閣下から話を聞いた時だった。

曰くもみあげゼーリックの懐刀。曰く反乱軍最悪の裏切り者。曰くバトルシップエース。そして総統にかみつく狂犬と。しかし噂に踊らされるなと、そう説明され興味を抱いた。いくつもの戦場を渡り歩くも、今だ少将のこの男は、しかしドメルのかつての部下シュルツを助けるため、この国のトップであるデスラーに噛みついた。運よく降格で済んでいるものの、一つ間違えば首が飛ぶだろう。きっとこの男ならば部下たちにいい影響を与えてくれるだろうとも。そしてバランで初めて会ったその男は、期待通りの男だった。

 

 

 

 

 

 

ゼーリックにとってゲールは野心がゆえに戦場を志し自分に付き従っているものだと思っていた。だからこそアドミラルシートにしがみついているのだと。ゼーリック率いる貴族閥はその影響力こそ軍、政府とはず強力だが、実働戦力と言う点では劣っていた。いかに優等装備と言えど、それを扱うものが二流では話にならない。特に親衛隊はすでに一線級部隊に匹敵する装備と規模を誇る。これに対抗するにはこちらもそれなりのものが必要だ。その点ゲールは辺境鎮圧で武名を轟かせた優秀な指揮官であり、実働指揮官として申し分なかった。その評価が一変したのが、ヤマト問題だ。部下を庇いあまつさえ高官たちの前で作戦批判じみたことさえしてのけた。過去の功績とデスラーのとりなしで銀河方面作戦副指令に降格で済んだが、貴族閥にも動揺が走っている。このまま狂犬を飼い続けていいのかと。貴族閥に所属する軍人の多くが武門の出ではなく、安全と出世をこよなく愛するからこそゲールの行動を理解できぬのだろう。

優秀な手ごまではあったが、ここが潮時だろう。これ以上ゲールを手元に置くメリットよりもデメリットの方が勝る。そう決断したゼーリックは部下に計画の変更を伝える。ゲールをドメルと共に拘束し首都にて軍法会議にかけると

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