ゲール少将の胃痛   作:化猫

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最終話です。

少し悩みましたがカレル星域での戦闘はほぼ原作通りなのでカットとなります。

その関係でほぼ最終決戦までカットとなります。あらかじめご了承ください。

2021/09/02改稿 誤字変更 原則を減速に 発信を発進に 単純以下力を単純に火力に


決戦

宇宙戦艦ヤマトを沈めることは出来るのか。

 

敵にとして相対すればあの鋼の城は迫りくる敵をすべてなぎ倒し最後には敵の母星を破壊する、死の運び手だ。

 

行く手にふさがるものは破滅しかない。

 

作中でヤマトが危機に陥ることは幾度と有った。

だがしかし、彼らは決して沈まなかった。

 

そういう作品だと言ってしまうのは簡単だ。

 

しかし、では今、この宇宙で生きている人たちすべてが物語だからで片付くわけもない。

 

士官学校の同期、ミハエリスは旧帝国領ボナン制圧の際戦死した。婚約者を残したまま。

 

 

二人目の上司ツェンカー中佐は旧辺境域反乱鎮圧において賊軍に寝返り、討ち死にを果たしたという。 彼の息子夫婦は幼い孫を残し、粛清されたという。

 

 

部下のブリンクマンは三代の大公に仕えた歴戦の下士官だった。軍を終の棲家と常々言っていた。蛮星カリィにおいて、寄航中の半舷上陸で町に繰り出したところ、独立派のテロによって死亡した。

 

 

彼らの死は、宇宙戦艦ヤマトの物語に何の関係もない。

 

だが確かに生きていたのだ。その事を俺は覚えている。

 

だから物語だから、と沈められないと思考を止める気にはならなかった。

 

 

しかし葛藤は有った。

 

もし俺がヤマトを沈めれば地球人類の希望は宇宙のチリとして消える。

 

今更人を殺めるのはいけないとは言わない。

今までにグレムトゲールとして、軍人として多くの兵士を殺し殺させてきたのだ。

 

だが、地球の命運をまがいなりにも握っていると考えてしまえば、決心が鈍った。

 

今にして思い返せば、思い上がりも甚だしい。

 

 

そしてもう一つ。ヤマトがサレザーまでたどり着き、ガミラスに降下した時、ガミラス帝国が終わらない保証はない。

 

正直、この国に未練などはない。

 

兵士を使いつぶし、恐怖と暴力で秩序を築き、強制収容所を有する、よくある専制国家だ。

 

独り身ならば、生き残りを最優先しただろう。

 

残念なことに、或いは幸運なことにこの身は結婚をしている。親族も生きている。

 

だから星が滅ばぬように、あの船を止めるだけだ。

 

 

 

宇宙戦艦ヤマトを沈めるにはどうするべきか。

 

彼らが物語的都合でなく、運と実力で勝利していた場合それは薄氷の上の勝利だ。

 

であるならばその薄氷を崩してやればいい。

 

いくつもあるピンチをうまく生かし、そのままとどめを刺せるようにする。

 

元来ガミラス側が戦力を整えていれば葬れるはずなのだ。

 

現実は官僚主義と予算、侮りが邪魔をする。

 

艦隊戦力を結集すればヤマトは葬れるはずだった。

 

第六空間機甲師団分遣隊との合同作戦で勝負は決まるはずだった。もみあげのおかげで千載一遇のチャンスを失ったが。

 

七色星団決戦はあと戦艦が2隻、いや1隻有っただけで結果は変わっただろう。軍実務者クラスの大量逮捕とそれに反発した提督たちの反乱が結果として護衛のいない空母艦隊を編成させた。俺に至ってはデスラー政権にとって邪魔になると思われたのか刑務所送りにされていた。

 

処刑を待つ身だった俺が出所できたのは一重にドメル上級大将の口添えに過ぎない。

観艦式の為に派遣され取り残された本国の艦隊はその残余が意図的なサボタージュで機能不全に陥り、さらには他戦線の増援に回されたことで艦艇の在庫が底をついていた。

親衛隊の一部まで派遣され戦線を維持していたというのだから深刻さがわかるだろう。

 

そんな中、本土に残っており、都合よく死んでもまったく痛くなく、いう事を聞くほかなく、そして最低限の実力をドメル上級大将に保証されていた俺に白羽の矢が立ったのだ。

 

此処が最後のチャンスだろう。お歴々の討論でドメル閣下残した貴重な時間は失われた。

もはやサレザー星系外でヤマトを撃つことはかなわない。

 

「状況は?」

 

作戦準備のため与えられた艦隊司令部の作戦会議室は艦の整備状況や資材搬入資料で埋め尽くされていた。

 

「ゲルガメッシュ、シュバリエル両艦ともに整備状況は8割5分と言ったところです。」

 

そう答えるのは同じく命令違反の罪で捕まっていたシュルツだ、その隣には彼の副官ガンツ少佐もいる。

両名ともザルツ義勇軍士官という事でレプタポーダ等の収容所に送られず本国の軍刑務所に収監されていたのは運がいいとしか言いようがないだろう。

 

 

報告されて渡された整備状況をまとめた書類に目を通す。

逮捕され取り上げられた座上指揮艦は本国のドックで整備を受けていた。ドメル艦隊が引きとらなかったのは時間的猶予の問題だろう。彼が出撃した時点ではエンジンを取り外しての重整備が始められていた。慌てて戻したはいいが結局七色星団決戦には間に合わなかった。

 

そうして俺とシュルツの手に再び戻るのだからままならない。

 

「宣伝相の座乗艦は?」

 

もう一隻何とか手配できた船が有る。宣伝相の座乗艦シャングリラ―である。

この船を押し付けられた時本土防衛を親衛隊が行うことで話がまとまりかけていたらしい。ここに待ったをかけたのがタランン兄弟と宣伝相だった。

 

保険であることを強調していたが座乗艦を譲られたのは大きい。最前線に赴くわけでもないのに最新鋭のハイゼラード級を乗り回していたのだから有効活用だろう。

 

「そちらはすでに整備は完了しています。空いた時間で工員が再塗装を行っていますよ。」

 

整備目録にない行為であるためシュルツを咎めるべきだろう。しかし実際は時間は余っている。

弾薬の調達が進まないのだ。

 

「長魚雷は現段階で151本集まりました。」

 

純粋な驚きが出てくる。ガイデロール級用長魚雷の工場はすでにラインを閉じつつあるのだ。汎用型魚雷が主流になりつつある現在、前線に備蓄は有れど後方のガミラス本星には在庫がなく、親衛隊も保有していない為譲ってもらえるわけでもない。そんな現状でよくも150本も集めたものだと感心する。

しかしその淡い希望は打ち砕かれる。

 

「残念ながら使用できるのは半分以下です。なにせ軍学校や博物館の展示品、整備練習用の物までかき集めたものですから。メーカに整備を命じましたがどこまで間に合うか...」

 

書類上は立派であったが実情はお粗末なものだった。ガミラス本土各地に保管されていた分が50本程度あとは実用に適さない保存状態でしかなくこれ以上は近隣星系にもないだろう。ヤマトを戦艦3隻だけで打ち取るのにせめて準備だけは万全としたいものだったが、この分では諦めるしかあるまい。

 

「整備を切り上げる。現段階で詰めるだけの長魚雷を積んで軌道上に船を上げて即応待機に移るぞ。」

 

警戒網はヤマトが2日以内に到着することを示している。準備の時間さえ足りないのだ。

通信衛星と重力波監視のブイが知らせてくるそれはおおよそ2度のゲシュタムジャンプでサレザーに到達できる距離にまで侵入されたことを示している。

 

「ガンツ少佐、ゲルガメッシュを任せる。頼んだぞ。」

 

艦こそ譲り渡されたものの乗員と指揮官は自前で用意せねばならない。優秀な副官はその優秀さを活かし逮捕を免れ現在は3000隻からなる本国艦隊に随行しもはやガミラス内ではほとんど経験のない長距離艦隊行動を行っている。離れていようとも苦労することに変わりはないようだ。

 

艦隊砲戦で最大の火力を持つシャングリラ―は乗員をゲルガメッシュとシュバリエルから乗員を抽出することで対応する。だが寄せ集めの乗員を御せる人材はおらず、必然シャングリラ―は俺が使う必要がある。あいたゲルガメッシュの指揮ができる人材はガンツ少佐以外いないのが実情なのだ。

 

 

 

サレザーの重力安定点はいくつかある。ヤマトがワープアウトするとしてエンジンに過負荷がかからないような場所はラグランジュポイントとなる。

ガミラス本星とイスカンダル星の二重連星はそのラグランジュポイントが極めて小さい。イスカンダル帝国時代に本拠地をサレザーに置いたのも星系内の母星付近に直接ワープアウトできないことが極めて稀有で有利だったからだ。

 

本星に一番近いラグランジュポイントは第五惑星エピドラとその月アスタルの間にあるものだ。

ゆえにヤマトがワープアウトする可能性が一番高いのはそこだろう。

 

ワープアウトしたヤマトがバレラスに到達するまでおおよそ十分、これまでに確認したデータを基に算出された数字は信頼に値する。

 

この十分間でヤマトは亜光速まで加速し本星を襲うだろう。

 

そうした緊張の中開戦の号砲は軌道上の実験都市から発射された。

 

紫色の殺意は強烈な閃光とともに第五惑星のエピドラを破壊して消え去った。

 

開いた口が塞がらない。あれは波動砲だろう。おそらく。総督府と親衛隊がとんでもない戦力を隠していることだけが確信できる。だが呆けている暇はない。

 

ヤマトは生きている。

 

「艦隊前進!ヤマトを迎撃する!」

 

そう叫んだ俺を艦橋要員たちは信じられないものを見る目で見返す。

 

呆けながらも復命し作業を辞めないのは熟練ゆえだろう。

 

エピドラ崩壊の影響をアスタルの陰でやり過ごせたが星の残骸ともいえるガス雲が視界を遮っていた。

 

ヤマトの未来予測点に向け増速を開始する。と同時に星間ガス雲に変貌したエピドラの雲の中からヤマトが突き抜けてくる。

 

第二バレラスからの通信と、ヒステリックとも言える追撃命令がヤマトの生存が幻覚でないと伝える。

 

「艦隊統制射撃!砲撃戦用意、集中砲火で行足を止めるぞ!」

 

号令をかけ加速の最中砲戦を開始する。月の影から出た三隻は単縦陣を形成しヤマトの横に陣取る。

 

「撃て!」

 

恐怖と焦り、そしてそれ以上の興奮が体を包む。今この瞬間の為に戦艦に乗り続けたのだと実感した。

 

ド級戦艦三隻からの砲撃はお互いが干渉しないよう離れつつもヤマトの船体側面を見事とらえた。

 

命中弾は5発。艦首と艦尾に一発づつ、そして艦中央の魚雷発射管に三発。

 

誘爆をねらい330mm陽電子カノンから放たれた光線は寸分たがわず命中したものの、装甲をえぐり紫煙を船体から吐き出せるが誘爆には至らなかった。

 

そうしてこちらが一撃を与えたのだから向こうも反撃してくるのが道理だ。青白く主砲が光り閃光が放たれる。

 

大きな揺れと共にけたたましいサイレンの音が聞こえてくる。行足は止まらず、主砲も第二射を放ったのだから大きな問題はないのだろう。目の前の戦艦に集中する。

 

第三射、第四射と砲撃を加えていく。しかし、当たらない。加速を始めたばかりならばともかく亜光速の中同行戦を行えば、照準と標的がぶれるためなかなか命中弾を出すことができない。それは敵も同じことであり、幸いシュバリエルもゲルガメッシュⅠも被弾はすれど損傷が軽微なため落伍することもなかった。問題が発生したのは6分を過ぎたころ、親衛隊の空母隊の担当宙域に入ったことだろう。

 

艦載機隊を発信させるため減速に入るヤマトに対しこちらは優速を保ちつつ陣形変更を行う。変則的な鶴翼陣に移り前後と右舷に展開する。頭を押さえこれ以上進ませない構えだ。

 

陣形変更のために砲戦が途切れた合間にヤマトは艦載機隊の発進に成功する。前衛空母群には悪いが、彼らの相手を務めてもらわなければなならない。

 

短いインターバルのち砲戦が再開される。三隻からの集中砲火を波動防壁でもって防ぎきるヤマト。この出力の防壁を展開することはガミラス艦艇には不可能だ。

 

統制射を防がれようとこちらは敵の砲撃を防げない。側面に展開する本艦は最大火力を浴びるとばかり考えていたがそうではなかったようだ。

 

前方に展開するシュバリエルが前部砲塔群で砲撃され瞬く間に火だるまとなる。後方魚雷発射管に長魚雷を装填した直後だったのか爆炎はシュバリエルを二回り上回る。炎に照らされる中部下を気遣う余裕はない。至近距離で砲撃を続ける本艦に側面魚雷が発射されていた。対空砲火で1/3を落とすも残りは全弾が命中する。船体側面の魚雷発射管を吹き飛ばし爆炎が船体を舐める。一切の魚雷を搭載していないから誘爆は恐ろしくないが、単純に火力が高い。だがやられるだけではない。シュバリエルが爆沈したタイミングでゲルガメッシュⅠがその持てる最大火力を投射していた。全魚雷発射管からの全力投射だ。

 

ヤマトの艦尾に集中した魚雷群は後部主砲とsamそして対空砲火群にその多くが撃墜される。半数近くが撃墜されようとも残り半数が着弾しヤマトの推力を奪う。

 

後部カタパルト、サブエンジン、尾翼その他上部構造物は軒並み破壊された。後部主砲すら吹き飛ばしたその威力は格別だった。そして生き残った副砲がゲルガメッシュⅠの給弾口に命中した。

 

ガイデロール級における弱点の一つであり、艦尾付近まで貫く輸送路はヤマトの副砲をやすやすとエンジンまで伝える。運よく給弾口に魚雷が残っていなかったために誘爆は起こさず結果としてメインノズルとエンジンを破損したゲルガメッシュⅠは落伍した。

 

決定的とも言える一撃を加えようともヤマトは前進を止めない。

 

シュバリエルの抑えがなくなり、増速を開始する。

 

いつの間にかガミラス本星の重力につかまっていたのだろう。衛星軌道に侵入を開始したヤマトに追従しなくては。

 

青く緑に輝くガミラスを眼下に最後の死闘を演じる。降下体制に入った二隻はしかしお互いにその砲火でもって傷をつけあう。

 

ヤマトの装甲を抜くには本艦の主砲威力はあまり低く、ヤマトの砲戦能力はそれまでの死闘で減退していた。

 

近距離で放たれる陽電子衝撃砲は確実に船体を捉え表層構造物を破壊する。とうに副砲は沈黙していたがついに第1主砲も直撃により蒸発した。

 

応射はヤマトの波動防壁に一部が阻まれる。敵艦首主砲を狙った一撃は空振りに終わるも、艦尾を狙った一撃は煙突ミサイルを貫通、誘爆を持って後部の副砲とアンテナをへし折る。

 

だが一段と近づく暗い地表に対しヤマトを引き離す手段はほぼない。撃沈するしか方法はない。

 

さらに距離を近づけ近接火器のパルスレーザーすら投入する。

 

第三主砲は吹き飛び使用可能なのは第2主砲のみとなった。元より魚雷は搭載しておらずとどめとなりうるものは何もない。

 

しかし相手も満身創痍と言えるだろう。そしてサレザーの太陽が再び艦橋内を照らした。

 

軌道上でガミラス星を一周したのだ。

 

シュバリエルの残骸が見えてくる。艦の外殻はすべて吹き飛び廃艦同然の姿だがバイタルパートは生き残っている。

 

そしてゲルガメッシュⅠ。エンジン部分が吹き飛んだ戦艦は、しかし艦首をこちらに向けていた。

 

ガンツ少佐の意図を読み、かく乱のため残存火力をすべて派手にぶつける。

 

ゲルガメッシュⅠは短い交差時間の間に艦内に備蓄された残りの長魚雷をすべて打ち尽くす。

 

波動防壁と近接火器に阻まれるはずのそれらは、至近距離ゆえに迎撃もできず、ヤマトの側面に集中する。

 

外部装甲と外殻部分を吹き飛ばし爆発はヤマトの重要区画をむき出しにする。

 

このチャンスを逃すわけにはいかない。

 

唯一ダメージを与えることのできる主砲は第2主砲だけが生き残っている。右舷後部の開口部を狙う射角を得る為艦を減速させる。

 

「撃て」

 

そう、号令を下した瞬間、ゲルガメッシュⅡ(シャングリラ―)は紫光につつまれた。

 

 

 

 

 




以上で本作は一応完結です、が番外編が存在します。本作のエンディングに納得のいかない方はお読みいただけると幸いです。本編で語らなかった部分も後書きで色々書こうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
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