がっこうぐらし! 『わたしたちはここにいます』エンド   作:ランガー

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然れど其処に終点(ゴール)は無く


最近短めが続いていましたが、今回ちょっと切りどころさんが見つからなかったので長めです

原作では八面六臂の大活躍なこの娘もこの作品では……



七日目 走り終わった恋心(セレナーデ)

 みんながヒロインながっこうぐらし、はーじまーるよー。

 

 

 圭のクレイベ『青き生命』の前半が終わったところから。

 

 圭が元気を取り戻したので生徒会室に戻りましょう。

 

「あら、おかえりなさい。もう晩ご飯出来たから座って座って」

 

 おうただいま。りーさんは良妻賢母、はっきりわかんだね。

 

 生徒会室にはみんな揃っていました。っていうかもう晩飯の時間なんすね(痴呆)。

 

「圭? 何かいいことあった?」

 

「ふふん、なーいしょ♪」

 

「?」

 

 可愛い(迫真)。

 

 それにしてもみんな比較的お疲れのようですね。

 

「ああ、バリケードが大変でさ。まあ夜までに終わったのはよかったけど」

 

 はえー、やっぱりレーヴェが抜けたのはきつかったんすねぇ~(他人事)。

 

 っていうかめぐねえたちの前でバリケードの話して大丈夫なんですかね?

 

「え? バリケード? 何に使ったのかしら?」

 

 やっぱり疑問を抱かれてるじゃないか(呆れ)。その幻想をぶち壊すのはまずいですよ!

 

 しょうがねえなぁ(GKU)。ここは私が一肌脱ぐか(意味深)。

 

 えー、ゴホン。

 

 

 めぐねえやゆきが知らぬのも無理はあるまい……。

 一般生徒には秘匿されていたが、バリケード導入計画はかねてより存在したのだ。

 なにせバリケードとここ巡ヶ丘学院高校は切っても切れない関係にある……。

 

「知っているんですか先輩?」

 

 うむ。

 

 古来より拠点を守るための策は数多くあるが、その始まりとされるものが『()()(けい)()』である。

 これは拠点の周りに土を盛り上げ、壁とすることで敵の侵入を防ぐために編み出されたものだ。また、内側を坂にすることで上に登ることができ、見張り台の役割も果たしていたと言われている。

 この仕組みは後に城壁や(やぐら)へと進化していき、土を盛っただけの罵詈景土は歴史の舞台から姿を消すこととなった。

 しかし姿は消えても名前は消えず。敵の侵入や攻撃を防ぐ壁のことを『バリケード』と呼ぶが、これは罵詈景土が由来であることは最早言うまでもないだろう。

 なお日本には土佐、男土、土々呂(トトロ)、などの『土』の付く地名が多数あるが、これも罵詈景土が関係しているのではないかという説もある。

 ちなみに名前の『罵詈』は阻まれた敵が罵詈雑言を並べることしかできないところから、『景』は周囲の景色を見渡せるところから来ているという説が支配的である。

 民明書房刊『攻城と防壁』より

 

 このようにバリケードは人類が生きるにおいて要となり続けてきた。故にサバイバル能力を重視する我らが巡ヶ丘学院高校でも採用されるのは必然と――

 

 

「へーすごーい」

 

 聞けよ(半ギレ)

 

「そんな歴史があったのね」

 

「まあゆきには話が難しすぎてオーバーヒート寸前みたいだけどな」

 

 ああん? だらしねえな?

 まあ誤魔化せたようなので良しとしましょう。

 

「そういえばたかえ先輩はずいぶん張り切っていましたね」

 

 おや、レーヴェが抜けた分はチョーカー姉貴がカバーしてくれたようですね。さすがお助けキャラ。

 

「え? あー、うん。今まで全然働いてなかったから、そろそろ頑張らないとって思ってさ。まああんなに大変だとは思ってなかったけど」

 

「だろ? 雑用ばっかり」

 

 何が雑用じゃ○すぞ(豹変)。

 

 まま、エアロ(手のひら高速スピン)。じゃあ肉体労働は私が代わってやるか(甲斐性アッピル)。

 

「はいはい、文句はそこまで。学園生活部心得第二条!」

 

 (覚えて)ないです。決めてから三日しか経ってないし、覚えてるわけないよなぁ?

 

「えーっと、『学園生活部は施設を借りるにあたり必ずその恩に報いるべし』だったわよね」

 

 めぐねえ覚えとったんか。 それまでの教師生活は忘れてるくせに さっすが成績優秀者なだけはあるぜ!

 

「よろしい。雑用とか言っちゃダメよ? レーヴェも甘やかさない」

 

「「はーい」」

 

 仕方ないね♂

 

 そんなこんなで晩飯は終わり。

 

 

 あとはさっさと寝るだけですが……。

 

「はいはい! 会長殿! 私は部活を頑張ったご褒美が欲しいであります!」

 

 は? ご褒美?

 ご褒美♂ならいくらでも注ぎ込んでやるぜ。

 

「ご褒美と言いましても学校側が用意できるものなんてほとんどないと思いますが」

 

「違う違う。ものじゃなくてイベントだよ。せっかく学校で暮らしてるんだから、他じゃできないことしたいじゃん?」

 

 今までのストーリーは原作で1話より前にあたるところでしたが、ここからいよいよ原作スタートとなります。

 その始まりはやはりあのイベント。

 

「イベント? 何やるんだよ?」

 

「じゃじゃーん! 肝試し! 夜の学校を探索するの!」

 

 そう、肝試しです。

 これは雨の日を乗り切った時点でゆきちゃんが幻想入りしていると発生します。だから真面目なプレイヤーほど見られないイベントになりますね。

 

「ゆきちゃん? あまりみんなを困らせちゃダメよ?」

 

「えー、夜の学校でハラハラドキドキだよ! 絶対楽しいって!」

 

 夜に探索するとあってみんなは渋い顔をしますが、もちろん受けます。じゃけん夜行きましょうね~。

 じゃあゆきちゃんとめぐねえは準備してきて。デカめの鞄全員分な(生徒をパシる生徒会長の屑)。

 

「「はーい」」

 

 ゆきちゃんが元気に退室し、めぐねえもあとに続きます。

 

「いいのか?」

 

「レーヴェが言うなら止めないけど……大丈夫なの?」

 

 大丈夫だって安心しろよ~。このレーヴェ・アドラーに精神的動揺によるミスは決してない!と思っていただこう!

 行き先の二階はもう解放済みなので原作より安全と言えます。強制エンカはあるがな。

 

 まあどちらにしてもこういう学園生活部イベントの最終決定権はレーヴェにあるので、多少反対があっても押し切ることは可能です。我が国は独裁国、悪の枢軸ZOY!

 

 と言っても何の考えもなしにやるわけではありません。今回の目的は物資の持ち帰り。人数に物を言わせて根こそぎかっさらいます。

 

 

 

 よーし、みんな揃ってるなー。

 では早速イクゾーと言いたいところさんですが……

 

「八人は少し多いですね……」

 

 一理ある。というわけで二手に分かれましょう。

 行き先は原作通りの購買と図書室。エンカウントがあるのは図書室の方なのでレーヴェはそちらに行きます。

 

「私は図書室にするわ。ゆきちゃんの分の問題集とか探さなきゃ、ね」

 

「うっ……」

 

「私も図書室にします。また新しい本が欲しいですから」

 

 と、こんな風にめぐねえとみーくんは確定で図書室になります。なので図書室はレーヴェ・みーくん・めぐねえ・たかえ、購買部はりーさん・くるみ・ゆき・けいが無難でしょう。ってかほぼこうなります。

 

 それじゃあイクゾー!

 

 図書室では各々自由に本を探します。なのでレーヴェの行動はギャルゲーみたいなマップでキャラを選ぶ方式で決まります。

 もっともこの状態でめぐねえ以外を選ぶと、『かれらとばったり遭遇して発狂したあげくに食い殺されためぐねえと遭遇する』というクッソ胸糞悪い初見殺しイベントが起きるのでめぐねえ一択ですがね。なお初見はめぐねえを17歳にしないのでそうはならない模様。

 

「あっ、レーヴェ君。いい本ありましたか?」

 

 ないです。めぐねえと一緒に探しましょう。

 ちなみにこの場面では、ゆきちゃんは漫画類、くるみは恋愛小説、りーさんは料理や家庭菜園の本、みーくんは外国の小説、けいは音楽の本、たかえは健康管理の本、めぐねえは教科書や問題集を選びます。こういうところでもキャラクター性が出ていて面白いですよね。

 

「レーヴェ君と二人っきりって、初めてよね。……なんか緊張してきちゃった」

 

 かわいい。好き。結婚しよ。(告白のジェットストリームアタック)

 童顔のおっぱい教師が高校の制服着て中身乙女とかポイント高すぎんよ~。

 

 

 しかし美人教師と男子生徒、夜の学校、暗がりの図書室。何も起きないはずがなく……。

 

 ザッ……

 

 突如、後ろから足音。振り返ると、そこにはかれらの姿が……!

 

「……っ!」

 

 はいここで素早くめぐねえを抱きしめて目と口を封じます。

 ちなみにここでキスで封じるとズキュゥゥゥンという効果音でバレるうえに、たまたま目撃したみーくんが病むので注意。特に病んだみーくんはそのことをプレイヤーに悟らせず、三日後くらいにめぐねえが行方不明になって初めて気付く、なんてこともあります(1敗)。

 

 幸い暗いおかげでめぐねえも『誰か居る』くらいにしか認識していませんし、かれらもこちらに気付いていません。そのままめぐねえを本棚の陰まで連行します。

 514! 514!(連行)

 

 ここで静かにじっとしてろ。いいか、絶対に声出すなよ。絶対だぞ?(念押し)

 

「う、うん」

 

 めぐねえを隠したらかれらの下へ行き、ご退場願いましょう。

 

 おいゴルァ! 降りろ! 入校許可証(免許)持ってんのかコラ!

 

 こいつはゆきちゃんたちの方に行かれるとマズいので窓から落とします(無慈悲)。かれらは死配者の命令ならこんなものでも従ってくれます。ソ連兵かな?

 

 このイベントエンカウントは一体だけなので安心してめぐねえのところへ戻りましょう。

 

「レーヴェ君、さっきのは……?」

 

 居残りしてた生徒だったゾ(過去形)。ちゃんと(天に)帰ったから大丈夫だって安心しろよ~。

 

 ささ、早く本選んで帰りましょう。

 

「そうね。……ねえ、手繋いでもいい?」

 

 は? かわいい(快諾)

 

 

 そんなこんなで肝試しは終わり! 閉廷!

 さっさと合流しましょう。

 

 ちなみにめぐねえは手を繋いでいるところを見られたくないのか、もう離しています。

 顔は真っ赤ですがね。かわいい(世界の真理)

 

 ゆきちゃんたちも楽しんだのかみんな笑顔です。一人を除いて。

 

「楽しかったねー。来年もやろ?」

 

 せやな(即答)。

 

 じゃあもう夜も遅いし、早いとこ帰りましょう。

 

 ゲーム版ではゆきちゃんが正気なことが多いので省かれがちな肝試しですが、物資も取れる、発狂阻止にもなる、ビキビキビキニ123の有能イベントです。

 もう狂ってるって? HAHAHA!

 

「なあ、レーヴェ。さっき声が聞こえたけど……またあいつらを『アレ』で追い返したのか?」

 

 んだともよ。かれらは言葉で操るに決まっとるっぺ。命令を流せばよ、面倒な事は何にもいらねぇ。一声でドカーンと帰ってしまうだよ。えぇ?

 

「そう、か」

 

 くるみちゃんはそれだけ言ってみんなのところに戻りました。

 

 何だったんだ?(すっとぼけリターンズ)

 

 

 

 

 

 

 

 由紀が突如発案した肝試しも終わり。みんながもう寝静まっているであろう時間に俺は一人、二階と一階を結ぶ階段に来ていた。

 なぜかと言うと、実験のためだ。

 

「気を付け」

 

「……」

 

「敬礼」

 

「……」

 

「右向け右」

 

「……ヴ……」

 

 たまたま近くに居た奴に次々と指示を出す。

 

「命令には従うが、実行できるかどうかはこいつらの運動能力次第といったところか。もう帰っていいぞ」

 

 その言葉に従うように階下に下りていく。

 

 どうやらやつらは俺を王だとでも思っているようだ。俺を餌だとも敵だとも認識せず、俺の言葉に耳を傾け、そして従う。

 しかし、動く・止まる・向きを変える程度なら問題ないが、跳ぶ・手を挙げるといった動作はしない。おそらく筋力的――あの状態で筋肉が動いているのかわからないが――にやつらにはできないのだろう。

 

 まるでやつらを従えろと言わんばかりの能力。

 なぜ俺にこんな力があるのか。これもランダルの仕込みなのか。

 

「これでやつらの言葉や考えもわかればゼーア(非常に)いいんだがなぁ」

 

 向こうはこちらの指示に従うが、こちらは向こうの言葉がわからない。そもそも言語能力や意識があるのかもわからないが。

 

「で、いつまで尾行する気だね? 知らない仲じゃあないんだ。もっと気兼ねなく接してくれると嬉しいのだが」

 

 顔を上に向ける。階上から胡桃がこちらを覗いていた。

 

「ご、ごめん。話しかけづらそうだったから……」

 

「いや、別に怒っていないよ」

 

 胡桃が俺のところまで下りてくる。

 

「眠れないのか?」

 

「それもあるけど……レーヴェに話があってさ」

 

 俺に話、か。こんな状況で言うということは他のみんなには言えないことだろう。

 

「軽い話ではなさそうだな。聞こう」

 

「言葉であいつらを操るの、やめてくれないか?」

 

「……理由を聞いても?」

 

 自分で言うのも何だが、この能力(ちから)は非常に使い勝手がいい。

 やつらを殺すより手軽で、安全で、後処理の必要もない。

 

 それは、胡桃もわかっているはずだ。

 

「だって、そんな辛そうな顔して、見てるこっちが――」

 

 胡桃の言葉を手で制す。

 

「さっきも言ったが遠慮はなしだ。ここには私たちしか居ないのだ。私を止めたいと言うならせめて本心で語ってくれないか?」

 

「っ……!」

 

 俺の言葉に胡桃の顔が歪む。

 

 今の言葉が嘘……というわけではないが、何かしらを隠しているのは感じた。もっと()()に理由があるのだろう。

 

「わかった。ホントのこと言うよ。……あたしの居場所を取らないでくれ」

 

「ほう」

 

「あたしには戦うことでしかみんなに貢献できないんだ。でも、レーヴェが()()を使えばそれもなくなる」

 

 胡桃が暗い面持ちで語る。

 

 確かに誰かの役に立っていると思えることは大切だ。

 それが無ければいつ捨てられるか戦々恐々と暮らすことになるだろう。

 

「悪いがその提案には乗れないな」

 

 しかし、だからといってこの力を封じるわけにはいかない。こんな世界で生きる以上、安全第一なのだ。

 

「ッ! 無理を言ってるのはわかってる。でも、あたしにとって重要なことなんだ……!」

 

「そりゃあそうだろうよ。だがこっちにとっても重要な話さ。前にも言ったが私はお前たちの命を預かっているんだ。それに戦えなくても――」

 

 それから先の言葉は出てこなかった。

 他ならぬ胡桃に押し倒されたから。

 

「おいおい、何のつも――グッ」

 

 馬乗りになった胡桃が俺の首に手を伸ばす。

 その顔は影になっていて見えない。

 

「お前さえ……! お前さえいなければ……!」

 

 そのまま首を絞める力を強めていき――

 

 

 

 

 

「なん、で……」

 

 スッ、と首への圧力が弱まる。

 

「なんで抵抗しないんだよ! ナイフを突き刺せよ! あいつらを呼べよ! あたしはお前を殺そうとしたんだぞ!」

 

 涙の激昂。三階まで聞こえるかもしれないのに、構わず気持ちを吐き出す。

 

「先輩のところに連れてってよ……」

 

「胡桃……」

 

 馬乗りのまま力なく泣きだす胡桃。

 

 胡桃に俺を殺す気がないのはわかっていた。

 もし本気で殺すならシャベルを使った方が確実だ。いくら俺でも首と身体が別れては息の根は止まる。

 首を絞められてもダメージはあるが、殺すには非効率だ。

 

 しかし今まで生徒会長としてさまざまな相談を受けて来たが、『死にたい』と言われたのは初めてだ。

 

 ……それだけ、暗闇を抱え続けてきたということか。

 

 ならば、俺も応えないわけにはいかないな。

 

 

 上半身を起こし、優しく頭を撫でる。少しでも落ち着けるように。泣き止むまでずっと。

 

 

 

 

 

「……落ち着いたか?」

 

「うん……」

 

 どれくらい経っただろうか。

 涙が枯れたのか泣き止んだ胡桃を起こし、俺も立ち上がる。

 

「その、さっきはごめん。あたしは――」

 

「気にするな。が、そうだな。悪いと思うならちょっと付き合え」

 

 ここで話すのは少々味気ない。

 行き先は屋上だ。

 

 

 外はもう雨が上がっており、屋上に出ても雨に濡れはしない。

 屋上の手すりにもたれかかり、空を眺める。

 

 そこに雲はなく、空に輝くは満天の星。周囲に明かりがないからこそ、より輝いて見える。

 

「綺麗……」

 

 胡桃が感嘆の声を漏らす。

 

 傷つかぬ者に星空は見えないという。世界が傷ついたからこそ星は輝き、傷だらけな俺たちだからこそ見えるのかもしれない。

 

 胡桃の暗闇を晴らすにはここが相応しい、と少しらしくないことを思った。

 

「なあ胡桃。……お前、寂しかったんじゃないか?」

 

 漫画やアニメの主人公なら『先輩はお前の死を望んでいない』とか『先輩は胡桃に笑顔でいて欲しいはずだ』とか言って慰めるんだろうが、あいにく俺はそんな真似は苦手だ。

 

「『あの日』に心に開いた穴が埋まらなくて、でも見えないからわからなくて。俺たちと居ても晴れなくて。……ずっと悩んでたんだろ?」

 

「……もうわかんないや。でも……そうなのかもしれない」

 

 俺は恋なんてしたことがないので胡桃の苦しみはわからない。

 

 しかし、だからといって支えることができないわけではない。

 

「だからさ。俺と友達になってくれないか?」

 

「え……?」

 

「確かに先輩はもういない。だがお前は一人じゃない。俺も、美紀も、圭も、悠里も、由紀も、貴依も、慈も。みんながいる」

 

 たった七人。しかしここの全てであり、そこに胡桃を嫌う者は一人も居ない。

 

「……友達、か。そんなこと初めて言われたかも。今まで先輩一筋であんまり他人と関わってこなかったし……」

 

 胡桃の心にぽっかりと開いた穴。それを塞ぐには俺一人では役者不足だ。

 だから、みんなで塞ぐ。みんながみんなを支え合う。

 

 それが、『学園生活部』だから。

 

「世界がこんな風になってさ。由紀と慈はあんな感じで、俺はこんなんになって。お前らは扱いに困ってるかもしれないけど、八人でわいわい暮らすのは楽しいと思ってるんだぜ?」

 

 ス……と手を差し出す。

 

「だからさ。お前も俺たちの輪に、改めて学園生活部に加わらないか?」

 

「レーヴェ……」

 

 それに気付いた胡桃もおずおずと手を握ってきた。

 

「……殺そうとしてきた相手にそんなこと言えるなんて、やっぱりお前は最高の生徒会長だよ」

 

「最高なのは俺じゃあない。()()()だ。もちろんお前もな」

 

「わっ」

 

 グイッと手を引き、鼻が触れ合うくらいの距離まで抱き寄せる。

 

「こんなことでお前や先輩が報われるかわからないが……お前が流した涙の十倍は笑顔にしてやるよ」

 

「ふぇっ!? ちょちょちょっ……ええい! 離れろ!」

 

「おや、手厳しい」

 

 顔を真っ赤にした胡桃に押しのけられた。

 

「お前……みきたちに何言われても知らないぞ」

 

「ん? 美紀と圭と悠里にも似たようなことを言ったことはあるが」

 

「あっ、そうなんだ……。ってそうじゃなくて!」

 

 胡桃がガシガシと頭を掻く。

 

「あたしはレーヴェみたいに何でもできるわけじゃない」

 

「知っている」

 

「りーさんみたいに料理が上手いわけじゃないし、みきみたいに頭が冴えるわけじゃない。けいがやってるような物資の管理も苦手だよ」

 

「だろうな」

 

「たかえみたいに気が利くわけでもないし、ゆきみたいにみんなを笑顔にするのも、めぐねえみたいに他人を思いやるのも全然ダメ」

 

 胡桃の声が上擦っていく。その目には涙が溜まっていた。

 

 胡桃は自分を認めることができていない。いつも快活なようでありながら、その実非常に脆い少女だ。

 ここで取って付けたように「そんなことはない」と言ったところで気を遣っているだけだと思われるだろう。

 

「やつらとの戦いには自信があったけど、それももう意味がない。足の速さなんてもう役に立たないし、あたしは何もできない」

 

「それでも、いいんだよ」

 

 胡桃の頬を濡らす涙を優しく拭う。

 

「お前にないものを俺たちが持っているのと同じで、俺たちにないものをお前が持っている。みんな、ちゃんとわかってるから」

 

「レーヴェ……!」

 

 否定はしない。過大評価も過剰な持ち上げもしない。

 

 俺にできるのは、受け入れることだけだ。

 

「だから、ここにいていいんだ。役立たずなんかじゃない。お前は今のままでいいんだよ」

 

「レーヴェ……ありがとう……!」

 

 大声で泣く胡桃を優しく抱きしめる。

 

 

 そんな俺たちを満月が静かに眺めていた。

 




この辺にぃ、三話連続で別々の女の子を泣かせる小説、あるらしいっすよ

共依存させるとなってからくるみの話にはかなり悩みました(隙自語)。原作で明確に先輩への恋愛感情があるから下手にやるとNTRみたいになるし、私のような恋愛エアプ勢が書くにはなかなか難しいねんな
恋愛描写と女性の慰め方に関してはどこにもイキれないわ(半泣き)

ちなみに初期案ではみーくんがレズプレイして心はノンケのままレズ堕ちさせる予定でした
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