鬼子の剣士は夜明けを望む   作:安代圭

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【前話までのあらすじ】
鬼の胎から生まれた主人公・明。煉獄家の養子として育てられるも、隊士に左手を切り落とされた事をきっかけに煉獄家との縁を断ち、育手・遠藤の元で複数の呼吸法の指導を受ける。
12歳で真菰と共に最終選抜を突破したが、徐々に体質が鬼に寄っていき、合同任務で真菰に斬りかかられるまでに至った。


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第二章 昼の狩人・夜の剣士
第10話 狩人……〇


 肉を断つ感触。生暖かい血飛沫。断末魔の喘鳴。

 己の足元に広がる血溜まりが、端から小さな火を揺らめかせて燃えていく。

 ──人を喰うことと鬼を斬ることの間に、どれほどの差があるのか。

 以前に斬った鬼の言葉が忘れられない。刀を血で濡らす度に、彼の放った問いが繰り返し明の頭を彷徨った。

 連日連夜、鴉に導かれるままに鬼を狩り続けた結果、明の階級はいつの間にか最高位の(きのえ)に到達していた。十二歳の子供であるが一端以上の剣客であると言って過言はなく、戦闘中に迷いが混じるような未熟さはない。しかし、鬼の首を断つ瞬間、肉を斬る感触が、明に鬼殺の罪を問うようになっていた。

 納刀して、返り血に塗れた手を見下ろす。あたりに満ちる、噎せ返るほどの血の臭気を吸い込む。

 世のため人のためという題目を掲げながらも、自分がやっていることは殺戮でしかない。

 鬼に殺される犠牲者を減らしているのは事実だろう。しかし、それでも、私が握る刀は命を絶つための武器であり、私の修めた武芸は人型の生物を殺すためのものだ。目的がどうであれ、自分がやっているのは紛れもなく殺しである。

 人殺しの罪と、どれほどの差があるのだろう。

 明は目を閉じ、深く息を吐いた。

 ──鬼は敵だ。

 ──鬼は悪だ。

 ──鬼の戯言に耳を貸すな。

 迷いなど差しはさむべきではない。煉獄の誇りを忘れたのか。養父は鬼殺の剣士を気高い職業だと言った。母は私の力を人々の為に使えと言った。その言葉が間違いであるはずがない。

 この仕事は、この行いは、正しいもののはずだ。罪であるはずがない。

 

 

「──起キロ!起キロ!」

 けたたましい鴉の声で、明の意識は一気に浮上した。

 薄目を開けると、古びた木目に焦点が合った。朽ちた壁の隙間から陽光が差し込んでいる。視線を上げると、外に鮮やかな紅葉が垣間見えた。

 手さぐりに腕を伸ばせば、いつも通り、体の脇に刀があった。指先に当たった鞘を握りこんで、ようやく昨晩の事を思い出す。木賃宿を見つけられなくて、町はずれの廃屋で寝ることにしたのだった。

「……早くないか?」

 まださほど高くなっていない日差しの角度に、明は顔をしかめた。任務は夜中だ。明け方まで動き続けなければならない事が多いのだから、もう少し寝ていたかった。

 晴彦が急かすように翼をばたつかせたので、明は観念して身を起こした。布団も敷かずに床板の上に寝ていたが、体には何の問題もない。自分の丈夫すぎる体は、こういう時は便利に感じる。

「今回ノ任務ハ北西ノ山! 既ニ一名ノ隊士ガ先行シテイル! 疾ク合流セヨ!」

 真菰に斬られてから初めての合同任務。そろそろあるだろうとは思っていたが、完治して随分経ったはずの肩に、軽い疼痛を感じた気がした。

「……了解した。腹ごしらえをしてからでいいか?」

 立ち上がり、刀を差して面を被る。腕を上に伸ばして体を伸ばせば、ひとまず眠気は追い払えた。

 外に出ると、暖かな陽光が全身に降り注いだ。明の後から小屋を出た晴彦が、急角度で頭上に舞い上がっていく。

 晴彦は必要最低限にしか近付こうとはしないが、こうやって仕事はきっちりとこなしているあたり、真面目な鴉だ。

 先日、改めて「鬼に近い気配だから、近付きたくないのか」と確認した。当然ながら、答えは「是」。他の答えを期待していたわけではなく、返答を聞いても落胆よりは諦念の方が大きかった。

 晴彦は選別の最中から明を監視していた。他の参加者に鴉がついていなかったことは確認しているので、鬼殺隊が明の事を鬼の血を引く者として警戒しているのは、ほぼ確実だ。鬼子の監視に抜擢されるほどなのだから、晴彦は相応に経験のある優秀な鴉なのだろう。その晴彦が厭うほどの自分の気配とは、どれほどのものなのか。

 書状や報告書を足に結び付ける度に、晴彦は身を強張らせる。それでも頑として配属代えを願わず、明の担当で居続ける晴彦は、ある意味で強情な鴉だった。

 

 

 

「私と同じ服を着た人を見ませんでしたか」

 声をかけられた村人は、まじまじと明を見返した。警戒の滲む男性の視線を、明は苦笑いで受け流す。

 彼の反応は当然だ。

 ただでさえ部外者が浮く田舎で、十二歳の白髪の子供が一人でいるだけでも目立つ。その上、隻腕で帯刀し、半面まで被っているのだから、異様な目で見られないはずがなかった。

「ここで、待ち合わせをしているんです。先に来ていると思うのですけど」

「……ああ、うん。見たよ。木崎さん家……あの畑の向こうの家を訪ねていた」

 若干、上ずった声だった。面倒ごとに関わりたくないという雰囲気がひしひしと伝わってくる。礼を言って深々と頭を下げれば、男性はそそくさと立ち去った。

 慣れたことなので、今更、特に思うことはない。

 その家の戸を叩こうとして、藤の花を模した紋が描かれているのに気づき、明は手を止めた。自分は、この家に入るべきではない。

 ここはおそらく、『藤の家紋の家』だ。過去に鬼殺隊に助けられた、鬼の被害者あるいはその子孫が住む家。彼らは恩返しとして鬼殺隊への無償の援助をしてくれているのだと聞いていた。

 耳をすませば、中からは複数人の声が聞こえた。片方は隊士だろうか。細かくは聞き取れないが、談笑ではなく、事情聴取なりをしているような口調だった。数歩後退って出待ちを決め込むと、意外にも早く戸が開いた。

 出てきたのは明よりも随分と年上の少女だった。十六か十七あたりだろうか。少し癖のある茶色の髪を背中で括っていた。

 少女は明の姿を見た瞬間、軽く目を見開き、すぐに姿勢を正した。

「篠原小夜と申します。東出さんでしょうか」

 先に口を開いたのは、その隊士の方だった。明らかに年上の人間からの敬語に面くらい、明は狐面の下で目を瞬かせた。

「……はい、私が東出です。今回の任務は私達二人のようなので、よろしくお願いします」

 明が頭を下げると、篠原も丁重に礼を返した。

「先に到着していたので、この家の方から現在の状況を伺っていました。ご報告と方針の確認をしてもよろしいですか?」

「……はい。頼みます」

 近場の木陰に腰を下ろすと、篠原は背嚢から一枚の紙を取り出した。

「あの、……年上の方に敬語を使われるのは、少し落ち着かないのですが…………」

「私は(みずのえ)なので、上官に敬語を使うのは当然かと」

 困惑を口にすれば、生真面目な返答が返ってくる。

 篠原が折り畳まれた紙を開く。中には墨で描かれた周辺の概略図が描かれていた。所々にばつ印がついている。

「この里と、山向こうの里の住人が被害に遭っています。五日前に隣里の男性がここで、三日前にこの里の女性がここで、二日前には男性がここで、遺体となって発見されたそうです」

 篠原は地図に記されたばつ印を指しながら説明する。

「遺体は腹部と脚部の損傷が激しかったそうです。顔の傷は少なかったため、被害者の特定が可能だったとのことでした。野生の獣の仕業にしては損壊の様子と歯形が妙だったため、猟師の方が鬼殺隊への連絡を勧めたそうです。

 この三名以外に行方不明者はいないため、ここで発生した鬼ではなく、外からやってきた鬼の所業であると思われます」

 墨は所々生乾きだ。先ほどの家の中で、家人か篠原のどちらかが書いたのだろう。

「遺体の発見場所は山の西部に集中していますが、用心深い鬼の場合、狩場と寝ぐらの場所を離すことがよくあります。よって、鬼のいる可能性がある場所は、周辺の山を含めたこの一帯になります」

 篠原は里を囲む山の幾つかを指し示した。

「情報提供者の木崎さん曰く、周辺に山小屋や無人の家屋は存在しないとのことです。よって、鬼は山中に穴を掘って寝ぐらとしていると考えられます。

 この場合、鬼が好むのは、山の北部から西部です。地形等についても考慮すると、最も有力なのはここ。その次が、この辺りになります」

 篠原は小さな範囲を指で円を描いて示した。最初に捜索範囲と言った面積の極一部だ。

「と言うわけで、これから向かいたいのですが、よろしいですか」

「……今から、ですか」

 立ち上がった篠原を見上げて、明は声に驚きを滲ませる。

 今は日中だ。雲ひとつない青空に、太陽が煌々と輝いている。陽光が致命となる鬼は、昼間は徹底して己の気配を隠すものだ。いくら捜索範囲が限られているとはいえ、日中に鬼のねぐらを探すのはほぼ不可能と言っていいはずだった。

 その上、篠原による鬼の場所の特定の仕方も妙だった。今までも、多少のあたりをつけて鬼の捜索してはいたが、篠原が示した範囲は尋常でなく狭い。それを確信のある口調で話しているのだから、にわかには信じ難かった。

「東出さんはこちらで休んでて頂いても大丈夫です。甲ともなれば、任務の量も多く、お忙しいでしょうし、無駄に歩かせるのも申し訳ありませんから。場所が特定でき次第、鎹鴉を飛ばします」

 明の困惑を察したのだろう、篠原は慣れた様子で言葉を連ねた。

「いえ、貴方を疑うわけではないのですが……昼間に山中の鬼を探した経験がないもので。日中は気配がほぼありませんし、どうやって見つけるのだろうかと」

「私は猟師の出身なので、鬼の痕跡を辿る事を得意としています。発見まではお任せください。東出さんには、私が鬼を殺し損ねた時にとどめをお願いしたいのです。お恥ずかしながら、私の剣術は拙いものなので」

 ちらり、と篠原の視線が明の左腕に行った。彼女も、私の実力を不安に思っているのだろうか。それとも、甲の階級の方を信じることにしたのか。篠原の表情からは読み取れなかった。

「……鬼を探す時に、私がいると邪魔になりますか? 一人の方がやりやすいでしょうか」

 困惑の次に胸中に発生したのは興味だった。もし、この人の言う事が事実ならば、この目で見てみたい。

「────、いえ、問題ありません」

 想定外の問いだったようで、小夜は一瞬、言葉を詰まらせた。

「では、私も同行させてください」

 

 

 壬という下から二番目の階級と、剣術に関する自己申告の通り、篠原は剣士としてさほど強くはなさそうだった。常中もしておらず、佇まいにも多少の隙があった。

 しかし、山を歩く身のこなしは非常に洗練されていた。

 足場の悪い場所も、すいすいと身軽に進んでいく。明が呼吸術で強化した身体能力に任せて踏破しているのに対し、篠原の歩き方には目に見えぬ道が見えているような自然さがあった。

「────今回と違って山小屋などをねぐらとしている場合は、爆薬ではなく、煙玉を使ったり、藤の生枝で燻したりする事が多いです」

 篠原は歩きながら、淡々と任務の手順について説明する。それは鬼殺というより、まさしく狩りを思わせる内容だった。

 抑えた声で話している間中、篠原の視線は山中の四方八方を飛び回っていた。地面から木の幹、枝葉まで、広く様々なものを見ているようだったが、明の知る任務時の視線の配り方とは随分異なっていた。

 説明も終わり、沈黙が訪れる。本当に見つかるのだろうかと、半信半疑のまま篠原の後を追って歩く。木漏れ日が、篠原の後ろ姿をまだら模様に照らしていた。

 突然、篠原が立ち止まった。

「……ありました」

 血痕でも見つけたかと、篠原の視線の先にある地面を見たが、ただの草むらで、手掛かりになるようなものは見つけられなかった。

「ええと、…………何を見つけたんですか?」

「足跡です。人の足の形で草が踏まれているのがわかりますか。この跡のつき方は素足ですね」

 篠原は草むらの横にしゃがみ込み、その一部を指し示した。

 首を傾げつつ観察するも、他との違いがあまりわからない。言われてみればそのように見える気もするが、一度目を離せば、どこを指されていたかわからなくなるだろう程度のものだった。

「こっちの足跡には、尖った爪が地面に食い込んだ跡があります。間違いなく鬼のものです。新しいので、昨晩のものだと思われます。

 深さと、落ち葉の散乱具合からして、あちらに走っていたようですね」

 少し離れた地面を指して篠原が続けたが、彼女の言う痕跡がどれなのかはわからなかった。

 篠原が足跡の方向を追って進み始めたので、明は黙って付き従った。

 そこからの歩き方には、迷いがなかった。篠原は確信に満ちた表情で、先ほどまでよりも早足で進んでいく。その視線は機敏に地面や枝葉に向けられていたが、明には篠原の視線の意図が理解できなかった。

「…………先ほどの足跡の他にも、何かが見えているのですか? 随分進みが早くなりましたけど」

「ええ、一つ見つけさえすれば、跡を追うのは楽になりますから。先程の足跡で、方向と走り方がある程度わかりました。そこから予想される動きの線の先を探せば、次の痕跡が見つかります。このようにして辿っていくので、ねぐらを見つけるまでさほど時間はかからないと思います」

 篠原は視線を明に向け、お任せください、と笑みを浮かべた。

「篠原さんには、どんな跡が見えているのですか?」

「あの幹の樹皮が一部剥がれています。あれは肩を擦った跡です。少し先の地面、…………あそこの、日の当たっている辺りには、軽く滑ったような跡があります。随分急いでいたようです。日の出から逃げていたのかもしれません」

 

 

 篠原が『近い』と口だけ動かして伝えた直後、鬼のねぐらに行き着いた。

 小さな段差になっている地面に、黒々とした横穴が空いている。見た目は熊の巣穴によく似ていた。

 常緑樹が頭上を覆い、巣穴の周りは影となって暗い。

 篠原が腰の山刀に手を伸ばすのを制して、明は抜刀した。

 小声で「私がやります」と告げれば、篠原は頷いて了承の意を示した。

 巣穴の爆破の前に、周辺の日当たりを良くする必要があると言われていた。ここは自分がやった方が効率が良いだろう。

 頭上に茂る枝葉を見上げる。幹ごと斬る必要はなく、巣穴周りに日が当たればよい。────ならば、風の呼吸を主体に、水流飛沫を応用してみよう。

 たん、と軽く地面を蹴って跳び上がる。そのまま体ごと刀を回転させて枝の間を縦横無尽に跳び回れば、斬り落とされた枝が瞬く間に地面を覆い尽くした。

 日当たりが良くなった地面に、枝を踏み追って着地する。目を丸くしている篠原と視線が合った。日差しに照らされて、篠原の茶髪が明るく輝いている。

「これでいいですか」

「──はい、十分です」

 気づけば、鬼の気配が濃くなっていた。息を殺す意味がなくなったからだろう。

 巣穴から滲むそれには、はっきりとした敵意と警戒があった。

 それを感じているのかいないのか、篠原は平然とした様子で明に下がるように伝える。明が刀を手にしたまま戻ろうとして、──────巣穴から無数の針が放たれた。

 ────炎の呼吸 肆ノ型隻式 盛炎のうねり

 巣へと振り向きざま、通常より低めの角度で型を使い、明と篠原を狙った針の全てを弾く。

「────お怪我はありませんか」

「……はい」

 巣穴に刀と視線を向けたまま問えば、少しばかり動揺が滲んだ声が返ってきた。

 しかし、彼女の声はすぐに安定を取り戻した。

「すぐに、伏せてください」

 何かを投げる気配がして、明の脇をすり抜けて黒い物体が放たれた。それが正確に穴に吸い込まれるのを目で追う。

 ──あれが、爆薬。

 好奇心から、伏せることなく、左腕を体の前に構えただけで見守った。

 ──着弾とほぼ同時に、地面が爆ぜた。

 花火か銃声を思わせる音と、地響きのような揺れが明の体に叩きつけられた。身構えてはいたが、初めて間近で見る爆薬の威力に驚く。

 飛散した礫が明の体にも当たっていたが、隊服を破るほどの威力ではなかったので無視した。後ろの篠原は伏せているから、殆ど被害はないだろう。指示を聞かず、立ち続けた自分に呆れているかもしれない、という思考がよぎった。

 土煙の奥に、日に焦される鬼の姿が見えた。爆薬で潰された歪な体が、陽光に焼けて藻搔いている。

 痛々しい。

 ────炎の呼吸 壱ノ型隻式 不知火

 日から逃れようとする鬼の首を、明の刀が斬り飛ばした。

 力を失って倒れ込む体を見てから、逃さぬために斬ったのか、苦しみを長引かせないために斬ったのか、わからない自分に気がついた。

 軽く息を吐いて、その思考を振り払う。

「──これで、任務は完了です。下山しましょう」

 振り向きながら篠原に声をかける。先程までとは一変して、篠原の表情は僅かに硬くなっていた。何かまずいことでもあっただろうかと、明は慎重に口を開いた。

「……どうか、されましたか?」

「ええと、その。……やはり、甲の隊士の方というのは凄い剣士であると今更ながらに思い出しまして。自分の鬼殺のやり方は邪道なものですから、ご迷惑だったのではないかと…………」

 消え入るような声で篠原は答えた。

 あまりに卑屈な言葉だった。

「──そんなことはありません」

 明はきっぱりと否定を口にする。

 勢い込んで、篠原の元に大股で歩み寄った。

「貴方の技術は、素晴らしいです。私は今まで、このように鬼を狩ることなど、思いつきもしませんでした」

 熱のこもった口調で称賛を口にした。

 篠原の鬼殺は、明にとってまさしく革命的なものに見えていた。

 明は生粋の剣士である。煉獄の家で育てられ、主な関わりは鬼殺隊関係者ばかり。鬼殺隊の常識が、明の常識だった。

 夜に鬼を探し、刀で鬼の首を斬る。

 それが、明の知る唯一の鬼殺の方法。

 故に、小夜の技術は明の認識を根底から覆すものだった。

「私にも、貴方のような技術を身につける事はできますか」

 唖然とする篠原の目を見つめながら、なおも言葉を継いだ。

「その技術は、隊士一般に広く伝えることは可能でしょうか」

 篠原の瞳が揺れる。

「このやり方が広まれば、殉職者が大幅に減るはずです」

 明の参加した数少ない合同任務には、成人の隊士がいなかった。

 任務中は疑問に思っていなかったが、少し経ってから、成人まで生き延びることが難しいのだと気がついた。

 鬼殺隊の殉職率は非常に高い。鬼と人の間に理不尽なほどの身体能力差があるのだから当然だ。

 しかし、その鬼と真っ向から戦わずに済むならば、状況は大きく変わるだろう。

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