ボーグバトル!そして一人の少年は『平穏な戦い』に身を投じる!
「キング・ケサル。一緒に行くよ」
「ところでユーノ君、明はどうしたのですか?」
「あいつは裏切りやがったよ」
「それはすごくかわいそうですね」
リンチェン、ユーノ、ライアルの三人は今日もボーグバトルをしていた。
「・・・やっぱり、あいつ降ろそうかな」
クロノは憔悴しきっていた。
「そもそも、どうして乗せたの?」
なのはが不思議そうに尋ねる。
「・・・そういう手順が定まってるんだ。事件に巻き込まれたボーガーは一時的に拘留するという手順が」
「なんでそんな馬鹿な手順を定めたの・・・」
「無いよりかはマシなんだ。無関係なボーガーでも、その場にいるだけで事件をややこしくするからな。それに管理局黎明期の手順よりかはマシなんだぞ」
「・・・どんな手順だったの?」
「処刑」
「最高なの」
「・・・僕もそう思う」
アースラに衝撃が走る。何者かが攻撃を加えてきた。
「おや、何かあったようですね。私はいったん司令室に戻りますね。お二人はどうしますか?」
「・・・一応なのはが心配なので」
「それでは、僕は練習をしています」
ライアル、ユーノはフィールド・ルームから出る。ただ一人残されたリンチェンは練習に励む。目標はただ一つ!世界チャンピオン!
完!
「おや、あの魔導士が侵入してきたのですか」
司令室のモニターにはフェイトの姿が映っていた。
「・・・ねえ、なんか僕たちがさっきいた場所に向かっているように見えるんだけど?」
「おや、確かにそう見えますね」
その会話で司令室の空気が固まった。
「・・・ライアル、リンチェンはどうした?」
「フィールド・ルームにいますよ?まあ大丈夫だと思いますが」
「・・・正気か?貴様」
クロノの語調が厳しいものになる。
「・・・フィールド・ルーム映しますよ」
エイミイはそう言ってフィールド・ルームの映像を展開する。そこには素振りに励むリンチェンが映し出されていた。
「・・・あのボーグ馬鹿!」
クロノはライアルの顔を殴って、司令室を出た。
「・・・ちょうど魔導士がフィールド・ルームのドアを開けましたね」
「おや、フェイトさん。お久しぶりですね」
「久しぶり、リンチェン」
リンチェンは素振りをやめて、キング・ケサルを構えた。
「・・・殺気がさっきから出ていますよ」
「「笑わせてもらいます」」
ユーノとライアルは笑ってしまった。
「・・・つまんない冗談で和んだのはアンタら二人だけだよ」
エイミイは呆れた。
「リンチェン、今日はあなたを殺しにきたの」
「・・・それは物騒な話ですね。理由は聞かせてもらえますか?」
フェイトは何も答えなかった。
「・・・そうですか。それなら先制攻撃ですね」
キング・ケサルがフェイトに迫る。だが、それはあっさりと鎌によって防がれた。
「・・・前よりも強くなりましたね」
リンチェンはさっと引いて、防御の姿勢をとる。
「・・・」
フェイトは何にも言わずに魔力弾をリンチェンに撃ちまくる。
「チベット・グレート・シビレゼーション」
ポタラ宮の幻影が魔力弾を防ぐ。
「・・・埒が明かない」
明らかに異常な数の魔力弾が生成される。
「フェイトさん、ここ船の中ですよ。自殺する気ですか?」
「うん!」
急にフェイトは笑顔になった。
「ずっとね、苦しかったんだ」
魔力弾は生成され続ける。
「あの時、あなたに負けて、あなたの家族に助けられてから、ずっと苦しかったんだ」
「・・・」
「・・・お母さんに貸してもらった記憶映像装置でリンチェンの記憶を見せてもらったよ」
「・・・!」
「こりゃまずい」
「ライアルさん、何がまずいのですか」
「信じてもらえるかわからんが、彼には前世の記憶があるんだ」
「・・・見たのですか?」
「うん、全部。どうりで、あんなに強いんだ」
「あの時の僕はその強さを嫌っていましたが」
「知ってる。全部見たもん」
魔力弾は全て生成されたようだ。
「・・・僕に勝てると?」
「勝てないよ。わかってる。でも、やらなくちゃいけないんだ。それがアリシアの望みだから」
「・・・アリシア?」
「・・・リンチェンには関係ない話だよ。それじゃあ、さようなら」
魔力弾が一斉に飛んでくる。
「・・・チベット・グレート・シビレゼーション」
ポタラ宮で防ぐ。だが、異常な数の魔力弾の前に、ポタラ宮は崩れ去ろうとした。
「リンチェン、いつものリズムだ!」
マンソンがポタラ宮に楽譜を書き込む。それによってポタラ宮は徐々に修復されていく。
「これでしばらくは持ちそうです。ありがとうございます、マンソンさん」
「いつものリズムを忘れるなよ!俺は用事があるからいったん帰るぞ!」
マンソンは去っていった。
「マンソン!来てくれたか!」
「良かった。これでしばらくは大丈夫そうだ」
「・・・ボーガー特有の現象が発生したね」
「しかし、持ちそうにありませんね」
魔力弾の数が異常すぎるのだ。
「だからと言って、攻撃に打って出ようとすると死にますからね・・・」
明らかにフェイトの計算だった。
「これはもうだめかもしれませんね」
ポタラ宮はまた崩れ去ろうとした。
完
「諦めるな!諦めたら、僕たちはあの世でお前をボコボコにするからな!」
「ボーガーは肝心なときに、たまに諦めようとするから嫌いなの!」
クロノ、なのはの二人がリンチェンの後ろに立って、背中を支えていた!
「・・・ありがとうございます!チベット・グレート・シビレゼーション!」
新たなポタラ宮が出現する。そのポタラ宮はさらに頑丈で、残りの魔力弾全てを防ぎ切った。
「・・・そんな」
フェイトは膝をつく。そこになのはが駆け寄る。
「フェイトちゃん、頼みがあるの」
「・・・なに?」
「私と戦ってほしいの。お互いに持っているジュエルシードをかけて」
「おい!勝手なことを・・・」
「クロノ君、ごめんなさい。でも・・・」
「・・・わかったよ」
「本当にすごいな」
リンチェンは映像を見て呟いた。二人の少女の鮮やかな戦い。
「これはどっちが勝つかわからないな」
フェイトは無数の魔力弾を生成する。そして、それらはなのはに向かって飛んでいく。爆音、アースラにまで伝わってくる衝撃、そして土煙。
「・・・なのはの勝ちですね」
リンチェンの言う通り、土煙が消えると、そこには傷つきながらも立ち上がっているなのはの姿があった。
「ディバインバスター!」
なのはの拘束魔法がフェイトを捕らえる。
「・・・スターライトブレイカー」
それは一つの星だった。
こうしてフェイトは司令室に連れてこられた。まだ意識ははっきりとはしていないようだ。ちなみに、アルフも襲撃時についてきたのか、司令室にいる。
「・・・フェイト・テスタロッサ。母親はプレシア・テスタロッサ。・・・実の母ではありませんが」
フェイトは朦朧とした意識で少しずつ話していた。
「・・・私はアリシア・テスタロッサ・・・のクローンです」
少しずつ、また少しずつ自分の出自を話していった。
「・・・クローン?ミッドチルダ文明では禁止されていないのですか?」
「リンチェンさん、地球とは微妙な倫理観の違いがミッドにはあるのです」
リンチェンの疑問にライアルが答えた。
「・・・リンチェン、確かに禁忌とも言えます。ですが、母はアリシアと過ごしたいという衝動に駆られていました」
フェイトの意識はだんだんと覚醒しているようだった。
「そして、作られたのが私です。アリシアの代わりとしての人形。それが私でした」
司令室を沈黙が包む。
「・・・だけど、一つ疑問があるわ。どうしてそんなことをあなたが知っているの?」
リンディが優しく聞いた。
「・・・記憶映化装置。記憶走査に使われる装置をリンチェンに使いました。ですが、あの装置には少し不具合があって、その時のエラーによって私の記憶も見ることができました。そこからアリシアの記憶にもたどり着きました」
だが、まだ疑問が残っていた。それは・・・。
「ところで、どうして僕を、ボーガーを殺そうとしていたのですか?」
なぜ、ボーガーが殺害対象だったのか。
「それは・・・」
その時、モニターの画面にノイズが走る。そして、一人の女性が映る。
「・・・ボーガーに殺されたからよ」
続く・・・。
明かされる残酷な真実!
それでもボーガーは懲りない!
次回カブトボーグ・リリカルヴィクトリー、命はデート・オブ・ラブ!
熱き闘志にチャージ・イン!