ボーグバトル!そして一人の少年は『平穏な戦い』に身を投じる!
「キング・ケサル。一緒に行くよ」
「・・・もう一度言うわ、アリシアはボーガーに殺されたのよ」
おそらく話の流れからしてプレシア・テスタロッサだろう。彼女はリンチェン、ライアル、ユーノを睨む。
「・・・一人は管理局員ね。いつから管理局は地に落ちたのかしら」
彼女は吐き捨てるように言った。
「羅輯さんには感謝していますよ。管理局を地に落としてくれましたからね」
ライアルは挑発するように言った。
「・・・あなたが艦長かしら?今すぐ船からこいつを降ろすことをお勧めするわよ」
「・・・非常に悔しいですが、これでも優秀なものですから」
「あれ、リンディ艦長?なんかひどくありませんか?」
プレシアはリンチェンに視線を向ける。
「あなたがリンチェンとかいうボーガーね。・・・普通のボーガーよりはマシそうね」
それでも彼女に向ける視線は冷たいものだった。
「・・・少しだけ昔話をするわ。あの時の私には弟子が一人いたの。本当に出来の悪い弟子だったわ。どうして私から魔法を教わろうとしたのかわからないくらい。それに女性関係も荒れていたから、お世辞にもまともな人間とは言えなかったわ。でも、社会学とか文系分野はよくできたわね。アリシアも本当に懐いていて、私が仕事で忙しい時もちゃんと面倒を見てくれた。・・・女性関係のことがあったから心配だったけど」
「・・・羅輯おじさん」
フェイトがポツリと呟く。その一言で司令室にいた者たちは動揺した。
「・・・話を続けるわ。ある日、その弟子は近くの大会に行っていて、部屋には私とアリシアとリニスだけだった。いつものように仕事をしていたら、魔力炉が暴走を始めそうになったわ。それだけだったら私にもどうにかすることができた。でも、そこにボーグが飛んできて、魔力炉に衝突したわ。それで暴走は抑えられなくなった。アリシアは苦しみながらも、そのボーグを見続けていたわ。それが誰のボーグなのかアリシアには一瞬でわかったはずよ。私よりもアレといる時間が長かったアリシアはアレが持っていたボーグだって」
「・・・アリシアは羅輯おじさんに殺された」
明かされた真実は残酷なものだった。司令室の誰もが沈黙していた。
「その後、アレとまた会ったのは数年後のことね。たったの数年で一派閥のリーダーになって、頭のおかしいことを言っていたわ。ボーガーが人間として認められる世界を創り上げるって。・・・その場で殺してやろうかと思ったわ。でも、アレを殺したところで何も変わらないし、逆に私の身が危なくなるから、我慢したわ」
「・・・もしかして、フェイトさんに僕のようなボーガーを殺させようとしたのは」
「そう、私の指示よ。まあ、ジュエルシード回収の邪魔をする奴にだけ限らせたけどね。あなたたちはいくら駆除しても湧き出すから」
彼女はボーガーを人と思っていないようだ。
「結局、ジュエルシードは全部は集まらなかった。でも、私にはもう時間がない」
「前から思っていたんですが、ジュエルシードは結局何なんですか?」
「・・・アルハザード、今の私達を超越した技術を有した世界。そこに行くための鍵となるものよ。そこにだったら、アリシアを蘇らせる方法もあるかもしれないし、あなたたちボーガーを根絶やしにできる技術もあるかもしれない。たったの数個だけど、何とかして行けるかもしれない。そこにだったら・・・」
突然、プレシアが咳をする。血が口から出ていた。
「・・・この通り、私にはもう時間がないの。・・・最後に言うわ。フェイト、私はあなたを作ってから、ずっとあなたが嫌いだった」
映像が途切れた。司令室は沈黙に包まれたままだった。誰もがプレシアから悲壮な覚悟を感じていた。
「・・・止めてください。リンチェン、ライアルさん、ユーノさん、母を止めてください」
「・・・僕たちに資格はあるのか」
リンチェンは苦しそうに言った。
「・・・私はあなたの記憶を見ました。もちろん羅輯おじさんに関する記憶も。その時はとても憎しみが湧いた。でも、こんなの間違ってます。多分、羅輯おじさんのことだから、今も苦しんでいると思います。おそらく、この瞬間にも・・・」
「それでも、君の母さんからアリシアを奪ったのは・・・」
確かにプレシアのやろうとしていることは間違っている。それはおそらく救いようのないボーガー虐殺につながるだろう。だが、彼女を止めたところでアリシアは蘇らない。どっちにしても救いようのない状況だった。
「・・・羅輯中将を筆頭とした融合派はボーガーが『人間』として扱われる世界を目指しているわ」
突然、リンディが口を開く。
「そして、そんな彼らの目標の一つには、ボーガーが『人間』として裁きを受ける制度の実現があったわ。・・・事故当時はそんな制度が不幸にも存在しなかったけれど」
「・・・」
そう。羅輯もフェイトの言う通り苦しんでいた。ボーガーというだけで裁きを受けなかったという罪悪感に。そして、彼は贖罪のために動き出したのだ。その結果が融合派の結成だった。
それでもリンチェンは悩んだ。本当にプレシアを止めてもいいのかと。
「・・・もう見てられないの」
突然の平手打ち!
「ボーガーのくせにうじうじ悩むなんて、見てられないの!アンタらだったらこう言うと思うの!『それはそれ!これはこれ!』」
なのはの一喝!
「・・・まったく。行きますか、ライアルさん、ユーノ君」
「ええ、暴れてやりましょう」
「ただで根絶やしにはされないとプレシアに思い知らせましょう」
「はあ・・・。ボーガー達はすぐに自分たちだけで突撃しようとするから困る。僕もついていくから、無茶はするなよ」
クロノはめんどくさそうにするが、すでに戦闘準備を整えていた。
「クロノ執務官の言うようにボーガーだけには任せられませんよ!」
他の武装隊員も既に戦闘準備を済ましていた。
「・・・突撃を許可するわ」
時の庭園!
「・・・おや、あのボーガーじゃないか?殺されに来たのか」
明が立ちはだかっていた!
「三人とも、先に行けなの!明君は私とクロノ君が何とかするの!」
「早くいけ!間に合わなかったら、ボコボコにするからな!」
なのはとクロノの援護によって三人は先に向かっていった!
「なのはとクロノか・・・。勝てると思うのか?」
明の魔力弾がなのはとクロノに直撃する!
「・・・くっ、勝ち負けとかどうでもいいの!」
次々と魔力弾が飛んでくる。そのたびに、なのはとクロノは吹き飛ばされる。
「・・・とどめだ」
最後に巨大な魔力弾が飛んでくる。だが、それは一瞬で消えた!
「・・・ここで踏み台か。それに・・・すずかまで。どうしてここに?」
「胸騒ぎがしたからだ!この雑種が!」
「なのはを傷つけようとするなんて、万死に値するよ!」
「・・・すずかちゃん、どうして?」
「絶交されても、私達は親友だよ!」
なのはの目に涙が浮かぶ。
「・・・すずかちゃん、ごめんね。そして、ありがとう」
なのはは立ち上がる。
「明君に絶対に勝ってみせるよ!」
「なんか美しい友情がどこかで輝いているような気がする」
「気のせいでは?」
リンチェン、ライアル、ユーノのボーガートリオは長い廊下を突っ走っていた。
その時、前方に大量の傀儡兵が現れる!
「ボーガーども、ここは俺たちに任せろ!」
武装隊が傀儡兵に突撃する!
「・・・ありがとうございます!」
三人は走り続ける!
三人はついにプレシア・テスタロッサの前にたどり着く!
「・・・やっぱりボーガーは侮れないわね」
先程のような冷たい目つきはしてなかった。
「先に言っておくけど、アレが苦しんでいたのは知っていたわよ」
三人は驚いた。
「そのために、融合派なんてわけのわからない派閥を創り上げたのも、ボーガーに『人間』としての裁きを与える司法制度を創り上げたのも、全部知っているわ」
「・・・でも、どうしてこんなことを?」
ユーノが不思議そうに言った。
「・・・それでも許せなかった。アリシアの死を招いたあの男を。どうにかして無残な死を与えてやりたかった」
「その通りだ。私には無残な死がふさわしい」
三人の後ろに羅輯がいた。とても悲しそうな顔をしていた。
「・・・羅輯、また来たのね」
プレシアは羅輯を見る。だが、その視線は冷たいものではなかった。
「プレシア老師、私はあれからアリシアを蘇らせる方法を探し出しました」
「・・・出来の悪いあなたが?」
「ええ、結局は魔法や科学による方法での蘇生は諦めました」
羅輯は星を模した水晶に飾られたボーグを取り出した。
「それは確か・・・黒暗森林」
リンチェンは彼のボーグを何回か見たことはあった。
「リンチェン、今は違う。こいつの名前は・・・」
「ねえ、おじさんのボーグの名前は何なの?」
「黒暗森林だよ」
「えー!?なんか暗いよ!もっと明るい名前にしなよ!」
「うーん、でもそれ以外に思いつかなかったからな・・・」
「じゃあ私がつけてあげる!それじゃあ・・・」
羅輯の目から涙が零れる。
「・・・光明森林。それが今のこいつの名前だ」
羅輯は必殺技を出そうとする。
「・・・我、面壁者羅輯、現在、対上帝世界説話」
「待ちなさい!いくらなんでもそれは・・・!」
光明森林がプレシアの隣にあった冷凍ポッドに向かって飛んでいく!そして、冷凍ポッドのガラスが割れ、アリシアの胸に当たった瞬間、アリシアの体は強い光に包まれた・・・!
「あれ?私、生き返ったの?デートの途中だったんだけど?」
冷凍ポッドからアリシアが出てきた!まさに奇跡!
「・・・アリシア?」
プレシアは茫然とした。
「・・・母さん」
プレシアはアリシアを抱きしめた。
「・・・ずっと、こうしたかった」
「ライアル、ユーノ、行きましょう」
リンチェンたちは立ち去ろうとする。
「待ってください、リンチェンさん」
それをアリシアが呼び止める。
「もう少し、そこにいてください。・・・まずお母さん。いくら私を蘇らせたいからって、妹のフェイトにひどいことをしたことは許せないよ」
「でも・・・」
「言い訳無用!・・・次に羅輯おじさん。あの事故はおじさんが勢い余ってボーグをチャージ・インして、研究所の壁を突き破って、魔力炉に衝突したことで発生しました。その罪は永遠に消えません。わかっていますよね」
「・・・ああ」
「あの事故で私やリニスだけでなく、たくさんの人が苦しみました。その罪は、司法制度を整備してボーガーが裁かれるようにしても、悪のボーガー組織を潰しても、自殺を試みようとしても、消えるものではないということを自覚してください」
「・・・全部、見てたのか」
「うん!最初は憎しみでいっぱいだったけど、羅輯おじさんが一回目の自殺を試みようとしたときには消えたかな?」
「・・・なんだか恥ずかしいな」
「ずっと見てるからね!・・・次にリンチェンさん。フェイトを傷物にしたのは許せないかな?」
「待ってください。その言い方だと色々と話がこじれます」
「言い訳無用!そもそも、同じ部屋で過ごしているだけでギルティ!」
「それはないですよ・・・」
「・・・まあ、リンチェンさんだったらフェイトの面倒を任せられるかな?・・・やっぱりやめとく!リンチェンさん、女性関係が羅輯おじさん並みに荒れそうだもん!」
「なんか酷いことを言われていますね」
「ライアルさんとユーノさんはリンチェンさんをちゃんと見張っていてくださいね!・・・最後にフェイト!」
三人の後ろにフェイトが立っていた。
「よく頑張ったね。お姉ちゃん、誇らしいぞ!」
アリシアが鼻を鳴らす。
「・・・えっと」
「とりあえず母さんに何かいうことあるでしょ!」
「・・・はい!・・・お母さん、私はアリシアの代わりではありません。人形でも、失敗作でもありません。ただのフェイト・テスタロッサです。あなたの娘の、フェイト・テスタロッサ」
「・・・」
プレシアは何も答えなかった。だが、その表情は柔らかなものだった。
「これで大団円だね!最後に、ちょっと紹介したい人がいるんだ!」
アリシアがそう言うと、その隣に紫髪の少年が現れる。
「この人が私の旦那様の松岡勝治さんです!」
「どうも、松岡勝治です。お義母さん、羅輯『おじさん』、今更ですが、娘さんを僕にください」
「おじさん、こんな奴認めないぞ」
「お母さんも反対よ」
二人は当然のごとく反対した。
「お母さん、羅輯おじさん、大嫌い」
二人は石化した!
「行きましょう!旦那様!」
「ええ、それではリンチェン君、あとは頼みますよ」
そう言って二人は消えた。
「「「・・・どうしましょうか」」」
時の庭園の最奥には三人のボーガーと石化した二人の大人だけが残された。
続く!
羅輯とプレシアの二人は一命を取り留めた!
明?あれも事の顛末、特にアリシアに関することを聞いたら石化した!
神山が治療と称して虚数空間に投げ込んだぞ!よくやった!
だが、リンチェンにはまだやり残したことがあった・・・!
次回カブトボーグ・リリカルヴィクトリー、ラスト・タスク・オブ・リンチェン!
熱き闘志にチャージ・イン!