カブトボーグ・リリカルヴィクトリー   作:ryanzi

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愛国者という賞賛と罵声を浴びた男はどのように最期を迎えたのか。


次元の方舟 後編

章北海率いる愛国派は積極的に反管理局運動を取り締まった。

一見すると矛盾した行動だ。彼らも反管理局と言えるのに。

だが、愛国派は自分たちの主導によって新たな次元世界の創造を目指しているので、彼らは特に矛盾を感じていなかった。

もちろん、彼らの目的を察していた者もいた。

 

「全次元世界の皆さん、章北海の言葉に惑わされないでください。彼はあなたたちの虚栄心に付け込み、あなたたちの分裂を企んでいるのです」

 

カリムを筆頭とした聖王教会。

 

「愛国派の主張は危険すぎるものだ。彼らの言う通りにしていたら、管理局以前の状況に戻ることは確実だ。市民の皆様には、もう一度よく見まわしてほしい。今の平和な世界を」

 

地上本部トップのレジアス・ゲイツ。

こうした者たちは常に愛国派を危険視していた。

 

 

 

愛国派に賛同する市民は日々増え続けていた。

 

『旧ベルカ貴族の二割が第十二管理世界での国家樹立を望む』

 

『ルーフェン政府の半分が愛国派の影響下か?』

 

『ヴァイゼン政府首相が愛国派支持発言!』

 

毎日のように、このようなニュースが流れた。

もちろん、愛国派に反発する市民も増加した。

 

『第十二管理世界で暴動発生!愛国派市民の安否は・・・』

 

『ルーフェン政府がテロリストに襲撃された』

 

『ヴァイゼン政府首相暗殺!』

 

 

 

何よりも人々が恐れたのは章北海の率いる艦隊だった。

自然選択を筆頭とした艦隊は、ある意味では愛国派の戦力と言えた。

特に旗艦の自然選択は章北海が乗り込んでいるというのもあって、最強の戦艦といえた。

 

『愛国の艦隊』

 

各次元世界の愛国派によって構成された艦隊を人々はこう呼ぶようになった。

畏怖と畏敬の念を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

もちろん、まだ千文字を超えていないし、章北海も死んでいないので話は続く。

愛国派はある問題を抱えていた。それは同盟関係を結んだ派閥が存在しないことだ。

理由は明らかだった。どの派閥でさえも管理局を存続する前提で成り立っていたからだ。

そういうわけで、味方がほぼいないということが愛国派を苦しめていた。

 

「もっと考えろ、章北海・・・」

 

同盟相手がいないというのは政争においては痛いものだった。

 

「一人で戦えるわけがない。もっと考えろ、章北海・・・」

 

章北海はぶつぶつと独り言を言っていた。

 

(・・・提督がおかしくなった)

 

元地上本部職員、現在は章北海の右腕のロイはそう思った。

 

 

 

だが、ある時、状況が一変した。

 

「私は宣言する!ボーガーに『人間』の地位を約束すると!」

 

融合派。ボーガーが参加する管理局を目指す派閥。それを率いる羅輯。突如現れたその派閥のリーダーは章北海に衝撃を与えた。

 

「・・・まさか、彼も!」

 

章北海は席を立って、どこかに行こうとした。

 

「提督、どこにいくつもりですか!」

 

「適当に考えてくれ!」

 

「ちょっと待ってください!・・・行ってしまった」

 

ロイはその場に残された。

 

 

 

記者会見を終えて、帰路についている羅輯の前に章北海が現れる。

 

「・・・私は亜細亜艦隊に所属していたものだ。あなたは前世で面壁者ではなかったか?」

 

「・・・場所を変えよう」

 

章北海の推測通りだった。羅輯も生まれ変わっていたのだ。

 

「・・・なるほど、君もか」

 

「ええ、面壁者羅輯」

 

「面壁者というのは恥ずかしいからやめてくれ」

 

「わかりました。では、羅輯准将。現在の管理局についてどう思われますか?」

 

「・・・君の意見と同じだ」

 

ミッドチルダ文明の産物である時空管理局は、地球文明出身の二人にとっては非合理極まりないものだった。

 

 

数日後。

 

『融合派と愛国派の会合において両代表が同盟を宣言!』

 

そのニュースは全次元世界を驚愕させた。

 

『愛国派代表の章北海がボーガーであることをカミングアウト!』

 

同時に流れたニュースによって、愛国派内でも次々とボーガーであることをカミングアウトするものが続出した。だが、決して愛国派を離れる者はいなかった。それは章北海の人望によるものだった。

だが、聖王教会は黙っていなかった。

 

『破門』

 

愛国派と融合派に言い渡されたのはその二文字だった。

 

「これが聖王の意思だ」

 

聖王教会の枢機卿の一人はそう言った。

だが、事態は予想外の方向に進んだ。

 

『自己破門』

 

信者たちは次々とネットで融合派を支持することを表明したのだ。無論、愛国派を支持するものも現れた。

 

「我々は、ボーガーは『人間』だ」

 

あるボーガーはそう言った。

 

「我々には死刑を受ける権利がある。それは我々が『人間』だからだ」

 

ある悪のボーガー組織はこのような声明を発表した。

風が吹いていた。愛国派と融合派に追い風が。

 

「・・・我々は愛国派と融合派の破門取り消しを宣言する」

 

後日、枢機卿は泣きながら会見に臨んだ。

 

 

 

こうして管理局の改革は徐々に進んでいった。

管理世界の政府の発言力は強力なものとなり、ボーガーが管理局員になるようになり地上と海の両方で戦力増強が可能となった。

次元世界は夜明けを迎えつつあった。

 

 

 

 

 

 

だから、章北海には死んでもらうって言ってるでしょ!まだ話は終わっていないよ!

 

「闇の書?ああ、あの第一級ロストロギアか」

 

「そうだ。お前もついてくるか?戦力は多いほうがいいからな。ちなみにクライドもついてくるぞ」

 

「すまんなグレアム。その日は第九十七管理外世界に用事があるんだ」

 

「そうか。まあ重要な仕事だから仕方ないな」

 

章北海が第九十七管理外世界によく足を運ぶことは知られていた。

 

「それじゃあご武運を祈るよ」

 

「ああ、お前のほうもな」

 

 

 

 

章北海が何度も地球を訪れるのは先進的なシステムを取り入れるためだけではなかった。

かつて、最初に地球を訪れた時に行き倒れた章北海を助けてくれた夫婦を訪れるためでもあった。

ちなみに、二人は章北海が別世界から来たということは知らない。ただの中国人だと思い込んでいる。

 

「ベイさん、また来てくれたんか!」

 

「ほな待ってて、ちょうどチャーハンを作っているから食べていき!」

 

八神夫婦は関西訛りのある日本語を喋りながら、章北海をいつものように出迎えてくれた。

章北海は癒しを求めて第九十七管理外世界に訪れるようになった。

 

 

 

「・・・クライドが死んだ?」

 

帰ってきた章北海を待っていたのは最悪の知らせだった。

 

「・・・すぐに行く」

 

章北海はすぐにグレアムのところに向かった。

着いた場所は墓地だった。

そこにはギル・グレアムとその使い魔、そしてリンディ・ハラオウンと息子のクロノ・ハラオウンがいた。

 

「グレアム、どういうことなんだ?」

 

「・・・闇の書が運搬中に暴走した。あいつは最後まで残って闇の書を食い止めようとしたが・・・」

 

その先の記憶はなかった。

 

 

 

 

 

それからの四年間は仕事に打ち込んでいた。親友の部下の死を忘れようとするかのように。

 

「・・・あれから地球に行っていないな」

 

そう気づいた章北海はよろよろと転送ポートに向かった。

 

 

八神夫婦は暖かく出迎えてくれた。一年前に子供が生まれていたようだ。可愛い赤ん坊だった。名前は八神はやてというらしい。久しぶり癒されたような気がした。

・・・なぜか闇の書があったということを除けば。八神夫婦にそれとなく聞いてみたが、彼らもどうしてあるのかが分からないらしい。それに、どういうわけか八神はやてから強い魔力を感じた。

 

(・・・まさか)

 

 

 

それからというものの、章北海はしばしば八神家を訪問するようになった。

ある日、いつものように地球行きの転送ポートに向かっていると、グレアムの使い魔のリーゼロッテが立ちはだかった。

 

「やあ、ロッテ。奇遇だね」

 

「・・・アンタ、どういうつもりだ?」

 

「どういうつもり?質問の意味が・・・」

 

ロッテは数枚の写真を章北海に見せる。そこには八神家に入ろうとする章北海、八神夫婦と談笑する章北海、彼らの子供と遊ぶ章北海、最後の写真は部屋の一部を拡大したもので闇の書が映っていた。

 

「・・・これは私の仕事だ」

 

「へえ、仕事?これが仕事だって?ちょっと調べてみたけど、四年前にも行っていたみたいじゃないか?あの日も仕事と言って、この家に入り浸ってたんだろ?」

 

「・・・何を求めている」

 

「ただの警告さ。アンタ、いつか地獄に落ちるよ」

 

そう言って、ロッテは去っていった。

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

・・・章北海はこれ以降も八神家を訪れ続けた。

もちろん、地球の先進的システムを学ぶという名目で。

それを疑うものはグレアム以外にはいなかった。

本当だったら、もっと疑うものがいるべきだったのだ。

レジアスでもカリムでもよかったのだ。

章北海が一人で抱え込んだのは間違いだったといえるだろう。

 

 

 

ある時、久しぶりに八神家を訪問した。だが、出てきたのは車いすに乗った八神はやてだけだった。

 

「・・・ベイおじさん?」

 

彼女は章北海のことを覚えているようだった。

それから聞いた話は章北海にとって衝撃的だった。八神夫婦は既にこの世を去っていたのだ。

そして、彼女は父親の知り合いだと名乗る男の援助を受けているという。

 

「その人の名前は・・・?」

 

「ギル・グレアムっていう人や」

 

さらに衝撃だった。章北海の同僚だった。

 

 

 

「グレアム、一体どういうことだ。君の使い魔に言ったはずだ。これは私の仕事だと」

 

「・・・ベイ、君は闇の書をどうするつもりだ」

 

「決まっている。結局のところ、道具は使う人しだいだ。はやては今のところ善良な少女だ。それを・・・」

 

「ベイ、それじゃあ駄目なんだよ」

 

「・・・どういうことだ」

 

「遅かれ早かれ、闇の書は暴走を始める。私はそれを利用して闇の書と決着をつけるつもりだ」

 

「・・・もっと考えろ、グレアム。それが何を意味するのか知っているだろ?」

 

「ああ、間違いなく私は地獄に落ちるだろうな」

 

グレアムの表情は苦しそうなものだった。

 

「グレアム、君のような奴がそんな残酷なことをできるはずがない。考え直せ」

 

「だが、それ以外に方法があるのか」

 

「・・・あれも一種の機械なんだろ?」

 

そう言って章北海は部屋から出て行った。その後、本屋でプログラミング関係の書籍を買い込んでいる章北海の姿が目撃された。

 

 

 

そして章北海は八神家に住み込むことになった。はやては快く承諾してくれた。

管理局の仕事をしながら、はやての世話もする。大変な仕事だった。

 

「はやて、チャージ・インはこうするんだ」

 

「こう?」

 

「そうだ。いいチャージ・インだ」

 

・・・大変な仕事だった。だが、それでも苦には思わなかった。

はやてが寝静まったころには、闇の書の解析もしていた。・・・章北海自身はこうした作業が苦手だったが。

たまにはやてを狙う男たちがいた。どういうわけか強大な魔力を持っていて、対処するのも大変だった。

ある時、その男たちの一人に殺されそうになったこともあった。

 

「さてと、モブには死んでもらうぜ」

 

敵の攻撃が迫る。ここで終わりなのか。章北海はそう思った。だが、次の瞬間にも意識はあった。

 

「貴様がここで死ねば、はやてはどうなるのだ!我の嫁にしてしまうぞ!」

 

その男からは今までの男とは違う空気を感じた。

 

「・・・それは最悪だな」

 

章北海と男の連携によって、なんとか敵を撃退できた。

男の名前は神山伊織というらしい。どこか不思議な男だった。

 

「・・・神山、あいつらは何者なんだ?」

 

「転生者だ。・・・我もその一人だが」

 

「・・・転生者?」

 

「ああ、説明が難しいが聞いてくれ」

 

神山が言うには、この世界は『魔法少女リリカルなのは』という物語の内部だというのだ。

そして、八神はやては物語の三人目の主人公だと。

 

「・・・私も登場人物の一人だというのか?」

 

「そこの説明が難しいのだ。お前は本来なら実在しないはずなのだ」

 

「・・・つまり私も転生者だと?確かに前世の記憶はあるが、リリカルなのはなんて聞いたこともないぞ」

 

「・・・どういうことだ?念のために、お前の前世について聞かせてほしい」

 

章北海は自分の前世について語った。

 

「・・・本当なのか?お前の言っていることが本当だとすれば、お前はカブトボーグの世界の出身だということになるんだぞ?」

 

「・・・カブトボーグ。まさか私の世界も創作物だったと?」

 

「そういうことになる。少なくとも、お前が生きていたのは原作より先の未来になるがな。ボーグ戦艦も三体文明も聞いたことがないぞ?」

 

章北海は笑った。笑った。笑った・・・。

 

「だ、大丈夫か?」

 

 

「だって、可笑しいじゃないか。全ては茶番だったのか、アハハハ・・・」

 

今までのことは全て茶番だった。自分のやってきたこと、出会い、別れ、全ては茶番だったのだ。

 

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

確かに相談できるような内容ではなかった。

でも、羅輯にだったら相談できたはずなのだ。

一人で抱えることはできない問題だったのだ。

 

 

 

神がいるのなら、そいつにボーグバトルを挑みたい。そう思いながら、深夜も闇の書の解析に励んでいた。

血は何度も吐いた。・・・無駄だ。もっといい方法があるはずだ。考えろ、章北海

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

だが、章北海は一人で抱えてしまった。

部下にも、同僚にも、上司にも、旧友にも言わずに。

 

 

 

「ロイ、すまんが愛国派を頼む」

 

それだけ言って、章北海はロイの前から消えた。

 

「・・・はい?」

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

そして、彼は孤独になろうとした。

 

 

 

「レジアス、あの時はすまなかったな。貴重な戦力を引き抜いてしまって」

 

「ふん、お前らしくもない」

 

「・・・地球に八神はやてという少女がいる。もし彼女に会うときがあったらよろしく頼むよ。そんなことないと思うけれど」

 

それだけ言って、章北海はレジアスの前から消えた。

 

「・・・」

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

かつての敵対者からも離れようとした。

 

 

 

「・・・どうしたんですか。二度と会いたくないと言ったはずですが」

 

「あの時はありがとう。私のようなものと一緒に弁当を食べようとしてくれて。それじゃあ、さようなら」

 

それだけ言って、章北海はカリムの前から消えた。

 

「・・・え?」

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

そして、彼は行動に出た。

 

 

 

「自然選択が勝手に動いています!」

 

「どういうことだ!」

 

「わ、わかりません!章北海さんに連絡を・・・!」

 

 

 

自然選択はアルカンシェルを乱発する。次元の海に歪みが生じる。

 

「・・・はやて、お前は主人公になる必要はない。ただ幸せになってほしい」

 

自然選択は自動制御によって動いていた。

章北海は闇の書を抱いていた。

 

「・・・三回目の『茶番』はどうなるのか、楽しみだな」

 

自然選択は歪みに突入した。

 

 

 

〔時間之外的往事〕

 

虚数空間は特殊な空間だ。そこでは魔法の類が一切使えない。

さて、闇の書は魔法技術の最高傑作といえる。つまりはそういうことだ。

彼が生きているのか死んでいるのか、それは定かではない。

まあ、死んでいるに違いないが。

これで闇の書の悲しみに彩られた歴史は終わった。

八神はやてはヴォルケンリッターという家族を迎えることはないだろう。

闇の書は二度と彼女に干渉できないので、足も治るはずだ。

『物語』は殺されたも同然だが。神々はどうするのだろうか。

少なくとも、松岡勝治はアリシアのことしか眼中にないので、どうこうするつもりはないだろう。

 

 

 

六月四日の朝。はやてはいつもより早く起きた。今日は自分の誕生日だからだ。さっそくリビングに向かう。

 

「・・・あれ?」

 

彼女は気づいた。自分の足で、歩いている。

 

「ベイおじさん!私、歩いとる!自分の足で!」

 

だが、章北海の声はしなかった。一応、リビングに向かうことにする。章北海はいつもリビングで寝ているのだ。

 

「ベイおじさん・・・?」

 

彼の姿はなかった。だが、テーブルにリボンで飾られた箱が置いてある。そのそばには置手紙らしきものもある。

 

「・・・なんか急な仕事でもあったんか?」

 

手紙を見ると

 

『誕生日おめでとう、はやて。すまない。もう二度とお前に会えないかもしれない』

 

「・・・どういうことや」

 

『事情は言えない。もう一つ、謝らなくてはいけないことがある。あの変わった本は私が持って行ってしまった』

 

「・・・」

 

『プレゼントを見てほしい』

 

はやては箱を開けた。

 

『多分、お前の手に馴染むはずだ』

 

中からボーグが出てきた。

 

『支援未来、それがボーグの名前だ。お前の未来が幸せなものになることを祈る』

 

 

 

続く・・・




次回予告!

リンチェンは中国チャンピオンだ!なので世界大会に出場できる!
そういうわけで始まる世界大会!
一応、日本にいるので、最初に日本チャンピオンに挑むことになるのだが・・・!

次回カブトボーグ・リリカルヴィクトリー、決戦!チャンピオン・オブ・ジャパン!
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