ボーグバトル!そして一人の少年は『平穏な戦い』に身を投じる!
「キング・ケサル。一緒に行くよ」
リンチェンは前世でもチベット人だった。
彼は普通の少年だった。ただボーグバトルが少し好きなだけの。
でも、ある日、人民軍ボーグ軍の一部隊を壊滅させたことで日常は失われた。
戦いが終わるたびに、また次の戦いが始まる・・・。
そして、リンチェンの心は疲弊する。
だからこそ、次の人生では『平穏な戦い』を望んだのだ。
だが、リンチェンは結局、同情する同情によって新しい戦いに危うく身を投じそうになる。
その反省を踏まえて、リンチェンはついに決心する。
「なのはに全て任せましょう。何かあってもリュウセイさんがこの世界にいるし・・・」
神山伊織は前世では日本人だった。断じてバビロンの王ではない。
彼は普通の少年だった。ただバビロンの王に憧れていただけの。
彼の本当の名は佐藤太郎。ただのサラリーマンだった。
だが、大人であったからこそ、リンチェンの人生の異常性を理解できた。
そして、ある決意を抱く。
「これ以上、リンチェンを訳の分からん戦いに巻き込むわけにはいかぬ。なのはもおるし、リュウセイもおるそうだから、何とかなるであろう!」
世界大会が始まった!
「いやあ、テーマパークに来たみたいだな。そうだろ、すずか」
「そうだね神山君!」
「・・・すずか、本当にボーガーになっちゃったわね」
「あきらめるの、アリサちゃん」
神山、すずか、アリサ、なのはの四人は択捉島の空中浮遊スタジアムに来ていた。
日本チャンピオンと戦うことになるリンチェンを応援するためだ。
「それにしても、いろんな人が来てるの」
「本当だな、日本ボーグ協会、国際カブトボーグ協会の役員たちも来ておるな」
「あれ?神山君、それ以外の人たちも来ているけど?」
「む、そうなのか・・・?」
神山の視線の先。それはある意味では混沌と言えた。
「あら、本当ね。・・・あれは偵都ヨコハマの捜査官たちね。探偵もいるわね。怪盗でも潜り込んだのかしら?あと学園都市の生徒も多いわね。ボーグに超能力なんて関係ないはずだけど?・・・神山、どうしたの?」
「・・・なんでもない」
アリサが挙げた組織以外にもいくつかの組織が紛れていそうだった。
「・・・ちょっと思い出したことがある」
「どうしたの神山君?」
「すずか、適当に考えてくれ」
「わかった」
神山は行ってしまった。
「うーん、何なんだろう?神山君の思い出したこと・・・」
「・・・すずか」
「あきらめるの、アリサちゃん」
その頃、リンチェンはボーグを磨いて精神を集中させようとしていた。
落ち着かないからだ。今回の日本チャンピオンは天野河リュウセイを打ち破ったらしい。そんな相手に自分が勝てるのかわからない。それにスタジアムの様子がどこかおかしい。
そこに神山が走ってきた。
「リンチェン、大変だ!なんかスタジアムがやばいことになっておる!」
「やっぱりですか?変な空気を感じてはいたんですが」
「やっぱりなんてレベルではない!明らかにおかしなレベルになっておる」
そう言って神山はメモをリンチェンにこっそりと渡す。
{別作品の奴らが、このスタジアムに来ておる}
リンチェンも筆談に応じる。
{どういうことですか?僕みたいに転生してきたと?}
{そういう訳ではない。アイツらの場合は魔法少女リリカルなのはの世界と同一線上に存在しておる。これは転生してから、しばらくして知ったことだが}
{つまり、コラボみたいなことになっていると?}
{そういうことだな}
{いったい何が目的で?}
{わからぬ。なぜ奴らがカブトボーグに興味を示すのか}
「おいおい、逆に怪しまれるぞ」
「「!」」
そこには日本チャンピオンの伊藤誠がいた。
「安心しろ、俺もスタジアムの異常には気づいている」
「・・・あなたは大丈夫そうですね。そんな感じがします」
「わかんないぜ?俺だって奴らと同じかもしれないぞ」
「いえ、あなたはどちらかというといい人のような気がします。・・・また、試合で会いましょう」
「・・・ああ、試合のときに」
誠は去っていった。
「・・・ところで、神山君。あの人も?」
「・・・ああ、だが我の知っている伊藤誠ではない。だからといって、本人じゃないというわけでも・・・」
そんなこんなで時間がやってきた。
『実況はこの僕が、うわあ、何をする、やめ・・・』
・・・実況が交代するという事態が起こったが、試合は始まろうとしていた。
「チャージ三回!フリーエントリー!ノーオプションバトル!」
「・・・チャージ三回、フリーエントリー、ノーオプションバトル」
「ウオオオオ!」
「・・・」
「やっぱりリンチェン君は静かに戦うね」
「確かにそうね。でも、違和感を感じるわ」
「・・・何となくアリサちゃんの言うことが分かる気がするの」
「ボク、なんとなくリンチェンとかいう子の戦い方は嫌いだな」
譲崎ネロは嫌そうな表情をしていた。
「・・・私も何となくわかります。彼はどこか本気を出していないように思えます」
コーデリア・グラウカはネロの言葉に同意した。
「おいおい、噂通りかよ」
「ああ、あれが『冷めた超新星』とかやらのボーグバトルだ」
「たしかにつまんねえな」
他の観客たちもリンチェンの戦い方を気に入っていないようだ。
「・・・お前も随分と嫌われる戦い方をしているな」
「おや、同情する同情ですか」
二人のボーグは熾烈にぶつかり合う。
「そういう大層なもんじゃない。どこか立場が似ているような気がしてな」
「立場・・・?」
その時、誠側の観客席から次々と怒声が発せられた。
「死ね誠!」
「この屑が!」
「生きていてすいませんと言え!」
そして垂れ幕が出現する。
『誠死ね!氏ねじゃなくて死ね!』
「誠さん、あなた何をしでかしたんですか?」
「・・・お前も生まれ変わりならわかるはずだ。前世の業とかいうやつだ。今の人生も含まれるが」
「・・・聞かないでおきます」
「いや、聞いてもらう。見てもらうといったほうが正しいが。・・・いくぞ、ナイス・メモリー・ボート!」
リンチェンは光り輝く空間の中にいた!
「・・・今からお前には俺の記憶を見てもらう。俺の記憶を見たものは正気を保てずに、バトルに敗北する!これが効かなかったのは天野河リュウセイだけだ!なんとかゴリ押しで勝ったけど!」
「・・・ボーグ空間の出現ですわ。やはり伊藤誠はPSY-ボーグでしたのね」
「黒子さん、このホットドッグおいしいですよ」
リンチェンの目の前に次々と映像が現れる。恋と破滅の映像が。
「・・・これがあなたの記憶ですか。確かに凄惨ですね」
「ああ、全て俺の自業自得だけどな」
「・・・それにしても、ボーグがない世界なんて初めて見ましたよ」
「・・・あれ?意外と平気そうだな」
そして映像は今の人生に切り替わる。
「・・・ヨコハマって結構物騒なんですね」
「確かに一般人からすると探偵も怪盗も迷惑だな。まあ、ボーガーには関係ないが」
彼はヨコハマで何股もしていた。
「反省しなかったのですか?」
「すまん。欲望には勝てなかったんだ」
映像は海鳴市に切り替わる。そこで彼は理不尽ともいえる暴力と罵声を浴びることになる。
「・・・その時、知ったんだ。俺がいかに屑だったのかを」
その時、伊藤誠は心を入れ替えた。だが、暴力はエスカレーターのごとくエスカレートしていく。
「そして、奴らの一人がついにやりやがったんだ」
伊藤誠に関する悪質な噂がヨコハマ中に広がっていく。
「こうして俺は孤立していった。探偵からも怪盗からも嫌われるようになってしまった」
ここで全ての映像は途切れた。
「・・・これ以上は見せる必要はないだろう。さて、リュウセイと同じようにお前も正気を保てたか」
「・・・一ついいですか。僕の記憶も見せたいのですが」
「うん?まあいいか、流してみてくれ」
「それでは・・・メモリー・オブ・エンドレスバトル」
リンチェンの記憶に関してはカブトボーグ・エンドレスバトルを参照してください。
「ぐわああああ!あとどれくらい続くんだ!」
「あれ?時間膨張は十秒で済むはずですが・・・。すみません、おそらく18903729年くらい続くと思います」
「す、すみませんでした!もう無理です!」
こうしてリンチェンの映像は終了した。
そして、二人は元のスタジアムにいた。
「はあはあ・・・。なるほど、お前の濃密な記憶に比べれば、俺の記憶なんてどうってことないか」
それはそうと、未だに伊藤誠に対する罵声は続いていた。
「・・・誠さん、あなたの勝ちです」
「・・・は?」
リンチェンはキング・ケサルを自分の手に戻す。
「お、おい!そんなことしたら・・・!」
「誠さん、フェアスポーツですよ」
リンチェンは、伊藤誠に微笑んだ。
そして、誠に罵声を浴びせる観客たちのほうを向いて、彼らを睨む。
「おっと、手が滑りました」
リンチェンのボーグが観客席に向かって等速直線運動!
完!
「・・・俺も足が滑っちまったよ」
伊藤誠は自分の身を盾にして、自分に罵声を浴びせていた観客を守った。血まみれになっていた。
「・・・誠さん、非常に残念ですが、もう一回手が滑ります」
リンチェンのボーグがもう一度、観客席に向かって等速直線運動!
完!
だが、キング・ケサルは完全に空中で静止した。
「どういうことですか?」
リンチェンは濃密な人生の中で、直感が鋭くなっていた。その直感にしたがって、ある方向を向いた。
そこにはいかにも探偵のような服装をしたピンク色の少女がいた。
「・・・どうもこうもないですよ。あなた、誠さんの意思を無駄にする気ですか?」
少女がそう言うと、キング・ケサルはリンチェンに向かって飛んでくる。
だが、曲率駆動を習得したリンチェンにとっては余裕で避けれるものだった。
さっと避ける。リンチェンがさっきまでいたところにクレーターができる。
「ひどいじゃないですか。人のボーグをそんな荒く使うなんて」
「私はあなたが投げた時のスピードをできるだけ再現しました」
「なるほど、確かにこれはひどいクレーターですね。これが人に当たったら恐ろしいことになりそうですね。そんなことをする人がいないとは思えませんが」
リンチェンは人を殺そうとはしていなかった。ただ外道が取るべき行動を取っただけである。
少女もそれをわかっていた。わかっていたからこそ・・・。
パシンッ
平手打ちをリンチェンにかました。暴力は基本だ。
「・・・あなたは殺人罪を犯そうとしました。それでもわかりませんか?」
その平手打ちによって、リンチェンは外道としての自分を客観的に見ることができた。
「・・・わかりました。でも、僕以外の人は承知しなかったようですよ?」
「あの『冷めた超新星』が本気を出した!?」
「こうしちゃいられない!あいつが本気をだして、俺たちが本気を出さなかったらどうするんだ!」
「すずか、いくぞ!」
「わかったよ、神山君!」
「「「「「「「「「「チャージ・イン!」」」」」」」」」」
あっという間に観客席の一部が血に染まった。
「「「「「「「「「「あー、すっきりした!」」」」」」」」」」
「・・・さっきはカッとなってしまっていました。本当にすいません」
リンチェンは少女に頭を下げた。
「えっと、その、私も平手打ちしちゃったし。お互いさまということで・・・」
(少しかわいい)
リンチェンはそう思った。
「・・・シャロ、逮捕するなら今のうちだぜ?」
伊藤誠は血反吐を吐きながら言った。
「誠さん、やっぱり、あの必殺技には続きがあったんですね」
「ああ、あの後の話だが、俺の噂を聞いてちょっかいをかけてきた怪盗がいた。ついカッとなった俺はそいつをボーグで殴り殺してしまった。それで俺は指名手配になっている」
「でも、どうして世界大会に・・・」
「・・・シャロ達に頼んだんだ。・・・俺を嫌ってなかったのはあいつらだけだったからな。せめて世界大会で行けるところまでは行きたいって。俺も結局ボーガーだからさ」
誠は今にも死にそうだった。
「誠さん、もういいです。・・・シャロさん、救急車を」
「わ、わかりました!」
「いいんだ、リンチェン。治ったところで次の戦いには間に合いそうもねえ」
「そんな・・・」
「・・・さようならだ、シャロ、リンチェン、いいボーグバトルだったぜ」
誠は息を引き取った。
「誠さん・・・?誠さん、嘘ですよね!・・・・うわああああああ!」
リンチェン、悲しみの叫び!
「まったくうるさいですの」
学園都市の生徒たちはそれを冷めた目で見ていた。
「伊藤誠が死んじゃいましたが、どうするんでしょうか?」
「きまっているですの。ヨコハマの連中に遺体の引き渡しを要求するですの。それにしても、まさかリンチェンとかいうチベット人もPSY-ボーグだとは思わなかったですの」
続く・・・
当然、一命を取り留めた伊藤誠!
だが、けがの治療が間に合いそうにないので、結果的にリンチェンの勝利となった!
リンチェンは次の戦いの地、イギリスに行くが・・・!
次回カブトボーグ・リリカルヴィクトリー、悪夢!エア・ストリップワン!
熱き闘志にチャージ・イン!