カブトボーグ・リリカルヴィクトリー   作:ryanzi

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ボーグバトル!それはどういうわけか全次元世界に広がった「なにか」!
ボーグバトル!そして一人の少年は『平穏な戦い』に身を投じる!

「キング・ケサル。一緒に行くよ」




カブトボーグ・リリカルヴィクトリー十五話 悪夢!エア・ストリップワン!

少し暑い日だった。砲撃によって崩れかけているビッグベンが十三時を告げている。

リンチェンは日陰をできるだけ歩きながら、〈栗の木カフェ〉に向かっていた。

 

 

「次はイギリスか?あそこはクーデターがあったばかりだと聞いたけど大丈夫なのか?」

 

この前の試合の後、伊藤誠は一命を取り留め、ヨコハマの病院に入院していた。

 

「・・・ええ、大丈夫だと思います」

 

「まだ気にしてんのか?あれは足を滑らした俺が悪いんだ」

 

「・・・でも?」

 

「気にすんなって。俺もお前もボーガーだ」

 

「そうですね。考えてみたら当たり前のことでした」

 

二人は笑った。

 

「いてててて。傷口に響くぜ」

 

「大丈夫ですか?一応は怪我人ですから無茶しないでくださいよ」

 

「まったく、誰のせいでケガしたと思ってんだ」

 

「僕のせいですね」

 

二人はまた笑った。

廊下ではリンチェンの付き添いである神山がリンチェンが出てくるのを気長に待っていた。そこに二人の女性がやってきた。その二人を見て神山は驚いた。そして、二人は病室に入っていく。そして、数秒後にリンチェンが入れ替わりで出てきた。

 

「なんだか邪魔しちゃいけないような気がしました」

 

「その判断は正解だぞ、リンチェン」

 

神山はその二人が誰なのかは知っていた。前世で見たことがあるからだ。

 

「・・・あの二人が誰なのか神山君は知っているんですか?」

 

「うん?知らんな?」

 

だが、黙っておくことにした。ここであの二人の正体を明かすのは野暮だろうと思ったからだ。リンチェンもそれに何となく気がついた。

その時、探偵服を着た少女たちが前からやってくる。

 

「「「あっ」」」

 

ちょっと気まずい空気が流れた。

 

「リンチェン、ちょっと病院のフィールドで遊んでいけ」

 

「・・・わかりました」

 

リンチェンは神山の表情を見て、自分には聞かせられないような話をするのだろうと察することができた。

リンチェンがその場から去ると、神山は口を開いた。

 

「ミルキィホームズ、聞きたいことがある。どうして学園都市の連中がいた?」

 

「・・・私達にも正確なことはわかりません。ただわかっているのは伊藤誠の能力に興味を示しているということだけで、この前も引き渡しを要求してきたのですが・・・」

 

「本当に伊藤誠だけか?我は奴らを注意深く見たが、あいつらはリンチェンにも興味を示したようにも見えたぞ」

 

「・・・本当にわからないんです。それを調べるために行動しているんですが」

 

神山は事の深刻さを肌で感じていた。あのシャロが真剣なのだ。

 

「・・・我はリンチェンのことが心配だ。迷惑な頼みだと思うが、あいつに危機がもし迫っていたら、あいつを守ってくれ。はっきり言って、学園都市に勝てるかわからん」

 

「大丈夫ですよ!世界大会の間は彼を尾行するように学院から極秘指令を言い渡されているので安心してください!」

 

シャロはシャロだった!

 

「シャロ!言っちゃダメじゃん!」

 

ネロがツッコミを入れる

そのおかげで、神山は少し安心した。彼女たちだったらすべてがギャグになるだろう。

 

 

 

 

そして、リンチェンは一人でイギリスにやってきた。

 

「リンチェン、もし困ったことがあったら近くの人に助けを求めるのだぞ。すぐ近くに頼りになるお姉さんたちがいると思うから!ちょっと頼りないかもしれないが!」

 

神山はそうアドバイスしてくれた。事実、探偵服を着た少女たちがずっとついてきているのには気づいていたが、気づいていないフリをすることにした。

あちこちから茹キャベツとぼろぼろになった古マットの匂いがする。

朽ちかけている十九世紀の街並み。家の側面は梁材で支えられ、窓はボール紙を代用していた。

これがロンドンだとは思えなかった。だが、リンチェンにはかつてのロンドンを思い出すことはできなかった。

思い出せたとしても、それは危機紀元のときのロンドンなので無意味だ。

リンチェンは上の方を見上げる。そこには巨大なピラミッド型の建築で、上空三百メートルの高さまで白コンクリートをきらめかせた建物がそびえていた。クーデターを目論んだイングソック党が建立したのだ。それがあと三つもあるのだという。

 

WAR IS PEACE

FREEDOM IS SLAVERY

IGNORANCE IS STRENGTH

 

壁面にくっきりと浮かび上がったイングソック党のスローガンの文字はその優雅さと壮大さによって見る者に圧倒感を感じさせた。強固すぎる。とても歯が立たない。そんな印象を建物は与えていた。

未だに黒い口髭をたくわえた男、ビッグ・ブラザーのポスターが街中に貼ってある。クーデターはまだ終わっていないようだった。

そうしている間に、〈栗の木カフェ〉の前にたどり着いた。店はがら空き状態だった。いや、一人だけいる。

リンチェンは中に入って、彼の前の席にすわる。数十秒後に探偵服を着た少女たちも入ってくる。

 

「初めまして、ジョニー・ザ・ウィンストン・スミスさん。それとも山田・・・」

 

「ジョニー・ザ・ウィンストン・スミスでいい。そういえば会うのは初めてだなリンチェン。勝治から話は聞いていたが」

 

ウェイターが飲み物を運んできた。そして、何かのシロップをかける。それでも飲み物が放つ、中国の火酒を思い浮かべさせるような油臭い匂いは消えなかった。

 

「ヴィクトリー・ジンという酒だ。子供でも飲めるが、安全は保障できないな」

 

「・・・いただきます」

 

飲んだ瞬間、ゴム製の棍棒で殴られたような感覚がしたが、次の瞬間には世界の全てが陽気に見えた。

なお、少女たちはジンではなくジュースを飲んでいた。

 

「なるほど、確かに安全は保障できませんね」

 

「だろ?」

 

ジョンも一口飲んだらしく、彼の目からは涙が出ていた。ジンの匂いを放つ涙を。

 

「・・・ところで彼はどこにいますか?」

 

「さあな。プロレ地区を歩いていれば見つかるんじゃないか?アイツの焼くアンパンは良い匂いだから、すぐに探し出せると思うぞ」

 

その時、スクリーンにノイズが走る。

 

「おおきな栗の木の下でー、あーなーたーとーわーたーしー、なーかーよーく裏切ったー・・・」

 

聞き手を馬鹿にしたような音楽が流れる。

 

「・・・今回のイギリスチャンピオンは元イングソック党の党中枢の一員だ。あいつは危険だ。気を付けろ」

 

「わかっています。あなたのその様子を見る限りは察することができます」

 

「俺も101号室であいつと戦って、なんとか勝ったが、このざまだからな」

 

「・・・また会いましょう。ジョニー・ザ・ウィンストン・スミス。リュウセイの永遠のライバル」

 

「ああ、また会おう。それと、今の俺にはあいつのライバルでいる資格がない」

 

 

ミルキィホームズはずっとリンチェンの後をつけていた。

 

「あの子どこに向かってんの?」

 

ネロはそう呟く。

 

「アンパンという言葉は聞き取れましたが・・・」

 

エルキュール・バートンが自信なさそうに答える。

その時、おいしそうなパンの匂いが漂ってきた。

 

「もしかして・・・」

 

シャロの予想通り、前方にアンパン屋があった。店名も『アンパン屋』と日本語で書かれていた。以前は別の店があったのかウィークスという文字が殴り消されていた。

 

「そのままですわね・・・」

 

コーデリアが呆れたように言った。

そうしている間にリンチェンはアンパン屋の中に入っていった。

 

 

「レイラさんを知っていますよね?」

 

リンチェンは店主に言った。

 

「・・・そうか。お前もか」

 

店主は子供だった。だいたい十二歳ぐらいだろうか?

 

「先にシャッターを閉めてくれませんか?」

 

「・・・そういうことか」

 

店主がボタンを押すとシャッターが一瞬でしまった。

 

「これでいいか?」

 

「ええ、彼女たちも悪い人たちではないんですが・・・」

 

店の中にはアンパンの匂いが満ちていた。

 

「安心しろ。このシャッターの防音は完璧だ」

 

「なら安心しました」

 

「それで、俺に何か用か?」

 

「いえ、ただの安否報告みたいなものです」

 

「・・・レイラに何かあったのか」

 

「管理局に連行されました」

 

「マジで何があったの?」

 

リンチェンは自分の出自も含めて、店主に全て話した。

 

「そうか、俺があんなことを言ってしまったばかりに・・・」

 

「僕も悪いんです。本当ならすぐにやめさせるべきだったのに」

 

「反省をしているだと・・・?お前、本当にボーガーか・・・?」

 

「何を言ってるんですか。ボーガーだって懲りるし、反省もしますよ」

 

ビッグベンが三時を告げた。音が店内にも聞こえた。

 

「そろそろ子どもたちがやってくる。シャッターを開けないとな。・・・裏口から出てくれ。あとパンもいくつか持っていけ」

 

店主はアンパンの入った袋を渡す。

 

「わかりました」

 

リンチェンは店の奥に入っていく。後ろでシャッターの開く音がする。そして子供たちの歓声が響いてくる。

 

「レイラさん、彼は生きていますよ。ちゃんと、彼のままですよ」

 

上の方を見上げて言った。当然、彼女には聞こえないだろう。

 

 

 

裏口から出ると、リンチェンはあたりを見回した。少女たちの姿も見える。

 

「・・・いつの間に」

 

シャロがどや顔をしていた。リンチェンはそれを無視して、歩き始めた。

袋の中にはアンパンが五個入っている。おそらく、そういうことだろう。リンチェンは自分の分を取り出し、残りの四個が入った袋はベンチの上に置いた。

案の定、少女たちはアンパンを食べながらリンチェンを尾行していた。

リンチェンもアンパンを食べながら歩く。うまかった。

 

「そろそろホテルに戻りますか」

 

その時、リンチェンの直感が危険信号を発した。

 

 

 

ミルキィホームズたちはリンチェンを尾行し続けていた。

突然、リンチェンが頭を伏せて横に伏せた。

 

「えっ」

 

それと同時に、通り全体が騒がしくなり、住人たちが戸口の中に逃げ込んだ。

ちょうどそのとき、アコーディオンの蛇腹を思わせる黒服を着た男が路地から飛び出てきて、ミルキィホームズの方に駆け寄り、躍起になって空を指差した。

 

「イングソック弾だ!」

 

彼は喚いた。

 

「お嬢さん方、気を付けて!頭の上で爆発しますぜ!早く伏せて!」

 

イングソック弾というのはイングソック党が保有していたミサイルのことだった。ミルキィホームズは男の言う通り、地面に伏せた。

案の定、歩道を揺るがすような轟音が響き、軽い物体が彼女たちの上に降り注ぐ。起き上がってみると、一番近くの窓のガラス片が体を覆っていた。

リンチェンは歩き続けていた。通りの二百メートル先まで家々が破壊されていた。

 

「あれ?どうしてミサイルが来るのがわかったんでしょうか」

 

エルキュールが不思議そうに言う。

 

「・・・野生の勘!」

 

シャロがどや顔で言う。

 

「ありえないと思うんだけどなあ・・・」

 

ネロはそう言ったが、彼女はリンチェンの前世について知らないので仕方がないだろう。

 

 

「馬小屋でお願いします」

 

リンチェンはホテル『熱き闘志』にチェック・インした。いいチェック・インだった。

ちなみに『熱き闘志』は世界中に展開しているボーガー向けのホテルである。

 

「なんだか屋根裏部屋みたいですね」

 

「・・・シャロ、僕は・・・」

 

「あの・・・」

 

「これはひどいですわ」

 

探偵服を着た少女たちも馬小屋に泊まるみたいだ。

 

「・・・別の部屋にした方がよかったかもしれません」

 

そうぼやいたが、リンチェンは横になるとすぐに寝てしまった。

 

 

「すぐに寝ましたね」

 

ミルキィホームズは一気に暇になってしまった。

 

「いや、まだ日中じゃん!いくらなんでも早すぎるよ!常識的に考えておかしいよ!」

 

「あの・・・リンチェンさんはボーガーですから常識とかは・・・」

 

エルキュールはフォローを入れるが、どこか逆効果になっている。

 

「・・・馬小屋の方がいいかもしれませんね」

 

「なに言ってんのさ、コーデリア」

 

「よく考えてみてください。これはずっとリンチェンを監視できるチャンスですわ」

 

「「「!」」」

 

こうして彼女たちは話し合いの末、交代でリンチェンを見張るということを決めた。

最初はエルキュールが監視するということになった。

他の三人はシャロの先祖が住んでいたというベーカー街221bに観光に行った。

 

「私もついていきたかったけど、任務だから・・・!」

 

こうして張り切ってリンチェンを監視した。

 

 

 

冥王星が二次化した。羅輯が敗北したのだ。

 

「・・・さようなら、羅輯さん」

 

また、リンチェンの友人が一人消えてしまった。

 

「程心さん、AAさん。僕は曲率駆動が使えません。支援をお願いします」

 

「了解しました。そこで待機してください」

 

その間にも軍のボーグ艦隊は二次化していく。

 

「・・・また人類滅亡ですか」

 

海王星が二次化した。

リンチェンがいるのは天王星だった。二向ボーグが来るのは時間の問題だ。

ふとリンチェンの目に奇妙なものが映る。絨毯のように見えた。

だが、それは二次化した人体だった。

 

「・・・僕もああなるんですかね」

 

その時、通信機からいくつもの声が聞こえてくる。

 

「・・・いやだ、しにたくない」

 

「あ、あれは、曲率駆動。光速ボーグだ!自分たちだけ生き残るつもりなんだ!」

 

「痛い痛い痛い痛い・・・」

 

「だれかたすけて・・・」

 

「おい!助けてくれ!死にたく・・・」

 

「・・・どうしてこんなことに」

 

「あのガキが早く起きていればこんなことにはならなかったのに・・・」

 

「地球文明の最期だ・・・」

 

「あ・・・」

 

リンチェンは黙って聞いていた。黙って・・・。

 

 

 

今度は掩体紀元のときの夢だった。転生してから、毎日のように前世の時の夢を見ていた。

 

「だ、大丈夫ですか。だいぶ苦しそうでしたが・・・」

 

紫髪の少女が心配そうに見つめる。

 

「大丈夫です、心配をおかけしてすいません」

 

その時、おでこに違和感を感じる。触ってみると、冷えピタが貼ってあるのがわかった。

 

「す、すみません!なんか熱があったのでつい・・・」

 

「いえ、ありがとうございます」

 

前世の時のトラウマを見た時は少し体調が崩れやすいのでありがたかった。

 

(・・・神山君が頼れと言ったわけが少しわかりました。・・・それでも頼りないですが)

 

 

 

 

試合当日!リンチェンの体調は悪化していた!

 

「うう・・・、あの後も悪夢を見続けるとは思いませんでした・・・」

 

早起きできたのが不幸中の幸いだった。スタジアムに早く着くことはできた。

 

「・・・あっ」

 

あの少女たちがついてきていない。それもそのはず、リンチェンが早起きしてしまったからだ。

 

「・・・ここで世界大会終了ですかね」

 

リンチェンの視界が暗くなる。

 

 

 

 

「大丈夫ですか!」

 

リンチェンの体が誰かに支えられていた。

 

「・・・君は」

 

あの紫髪の少女だった。意識が朦朧としているせいか、なぜか発光して見えた。

 

「無茶しないでください。突然いなくなっていたから、その・・・」

 

リンチェンは少し申し訳なく思った。

 

「と、とにかく休める場所探しますね」

 

「その必要はないぜ、お嬢ちゃん」

 

ジョニー・ザ・ウィンストン・スミスだった。

 

「リンチェン、これを飲め」

 

ヴィクトリー・ジンの瓶が差し出された。

 

「・・・ありがとうございます」

 

リンチェンはそれを一気飲みした。

 

「リ、リンチェンさん!」

 

紫髪の少女にもそれが危ないものだとはわかっていた。

 

「・・・ふう、結構効きますね」

 

だが、リンチェンは乗り越えた。もう少女の支えも必要なくなっていた。

 

「ジョニー・ザ・ウィンストン・スミスさん、ありがとうございます」

 

「礼なんていいぜ。それよりも試合がんばれよ」

 

彼は去っていった。

 

「あと、・・・名前を聞いていませんでしたね」

 

「あ・・・エルキュール・バートンといいます」

 

「エルキュールさん、ありがとうございます。心配をおかけしてすみません」

 

そして、リンチェンはリフトに乗っていく。リフトが上がった先に、イギリスチャンピオンが待ち受けている。

 

「・・・試合、頑張ってくださいね」

 

だが、エルキュールの表情はどこか悲しげだった。そして、なんか発光していた。

リフトが上がっていく。リンチェンの姿は見えなくなった。

 

 

 

「君もわかっていただろう。いつか闇のない場所で戦うことになると」

 

「・・・」

 

イギリスチャンピオン、オブライエン。イングソック党の元党中枢。

 

「心配することはない、リンチェン君。君を打ちどころのない人間にしよう」

 

オブライエンはボーグを取り出す。

 

「「・・・チャージ・イン」」

 

両者静かにチャージ・インする。

 

「ルーム・101!」

 

オブライエンが必殺技を繰り出す!次の瞬間、リンチェンはどこかの部屋で板ベッドに縛り付けられていた。

照明は目が眩むほど明るく、周りには様々な計器の目盛版が並んでいる。

 

「・・・ここは?」

 

「安心してくれ。ここはボーグ空間だ」

 

「ボーグ空間?」

 

「私にも詳しいことはわからない。とにかく、ここでの出来事は現実では一瞬の出来事だ。」

 

オブライエンの顔は肌が荒れてやつれている。目の下の肉がたるみ、鼻から顎にかけて走る皺に疲れの色が窺われる。

 

「君にはとことん付き合うことにしよう、リンチェン」

 

彼は言った。

 

「そうするだけの価値があるボーガーだからね。自分が何に苦しんでいるのか、十分すぎるほどわかっているだろう。転生した時からわかっていた。それから逃れようと闘ってきたわけだ」

 

「あなたは、僕をどうしようというのですか?」

 

「治療するんだ。君が苦しんでいるのは過去のトラウマだ」

 

オブライエンは何かの機械の目盛をいじっている。そして、苦痛の波がリンチェンを襲う。

 

「さっきの苦痛は目盛り四十だ」

 

オブライエンが言った。

 

「君の前世については知っている。なぜなら私は完全な存在だからだ」

 

「・・・神ということですか」

 

オブライエンは首を横に振った。

 

「神ではない。私は党なのだ」

 

「党・・・。イングソック党は滅びたはずなのでは?」

 

苦痛が襲う。

 

「何と馬鹿げたことをいうのだ、リンチェン、馬鹿げたことだ!」

 

彼は言った。

 

「党は不滅なのだ!それに、党が滅びれば人間も滅びるのだ!なぜなら、党が世界だからだ」

 

「・・・狂った唯我論ですね」

 

「ふむ、君はボーガーにしては形而上学に詳しいな。ならばわかるだろう。君は努力を放棄しているだけだ。君は自分の記憶をコントロールしていないだけだ。その気になれば、君は過去のトラウマをなかったことにできる。記憶のコントロールに関しては『過去をコントロールするものは未来をコントロールし、現在をコントロールするものは過去をコントロールする』といった党のスローガンがある」

 

「・・・」

 

オブライエンは手の甲をリンチェンの方に向けながら、左手を上げて見せた。親指を折り、他の指四本は伸ばしている。

 

「私は指を何本出しているかね、リンチェン?」

 

「四本ですね」

 

「もし党が四本ではなく五本だと言ったしたら・・・さて何本だ?」

 

「正気に戻ってください。もう党は滅びたんですよ」

 

その答えとして激痛が返ってきた。

 

「指は何本だね、リンチェン」

 

「党が滅びたのに、なぜ世界が滅びてないのか教えてあげましょうか?」

 

激痛。

 

「・・・飲み込みが悪いようだな、リンチェン」

 

「どうしようもありませんよ。党は滅びたんですから」

 

「さっきから何を言ってるのだね、リンチェン?党は不滅だ。現に私がここにいる」

 

「もう言いますよ。・・・僕が世界そのものだからですよ!」

 

その一言でリンチェンの目の前には現実のスタジアムの風景が戻ってきた!

 

 

「・・・今、ひどい押し問答が繰り広げられていたような」

 

「気のせいだと思いますわ」

 

「・・・それにしても、シャロさんはいつ正気に戻るんですか?」

 

シャロは白目になって呆けていた。

 

「仕方ないよ。だってご先祖様が住んでいた家が瓦礫の山になっていたんだもん」

 

「しばらくは戻りそうにありませんね」

 

 

「ふむ、ルーム・101から脱するとは・・・。ならばミラー・ヒューマン・ミラー!」

 

空中に何百枚もの鏡が現れる。。そこには顔つきの整ったチベット人が映っていた

 

「自分がどんな有様か、よく見るのだ!」

 

彼は言った。

 

「チベット人である君の姿を見るがいい。君はどこからどう見てもチベット人だ。顔も、性格も、どこからどう見てもチベット人だ。どうあがいても君はオリ主とやらにはなれないのだ。確かに君の顔は整っている。だが、君はチベット人なのだ。人間にはなれやしないし、オリ主にもなれないのだ。なぜなら、魔法少女リリカルなのはとかいう物語は日本人が主役だからだ。そして、君はチベット人だ。どうやってもハーレムはできないだろう」

 

「何を言ってるんですかあなたは」

 

「君はチベット人なのだ」

 

彼は言った。

 

「もしも君が人間だというのなら、それ人間の姿なのだ」

 

リンチェンは呆れてものも言えなかった。

 

「・・・二つだけ言うことがあります」

 

「ほう、なんだね」

 

「まず、あなたの考え方自体はとっくの昔からチベットに存在していました」

 

「ほう、それは興味深い」

 

リンチェンはさらに話を続ける。

 

「次に、あなたの言うように僕がチベット人で、人間ではないとしましょう」

 

「ようやく認めたか」

 

「それでも僕はイギリスに『客』として来ています。つまり・・・『お客様は神様』なんです!」

 

一瞬でオブライエンのボーグは場外に吹き飛んだ。

 

「・・・なので、僕が人間でないとしても、僕は神様なので問題がありません」

 

リンチェンの勝利だった。

 

完!

 

 

 

 

「二重思考を忘れたのかね、リンチェン?」

 

なぜかオブライエンはボーグを握っていた。

 

「私が負けたという事実はこれからなくなるのだよ・・・!」

 

オブライエンがシャボン玉のように宙に浮いた。

 

「君を治療してあげよう・・・!」

 

そう言って、オブライエンは殴りかかってきた。リンチェンはそれを指一本で止める。

 

「なるほど、君は『神』だからそれくらいは余裕か。だが、私は『党』なのだ!」

 

互角の勝負が始まる!

 

「いや、もう勝負終わったでしょ」

 

「ネロ、それがボーガーです」

 

もはやそれは神話の戦いだった!

雲が割れ、地面も割れて宙に浮く!人々も宙に浮き始めた!

 

「えっ、あの、なんか私達浮いているような」

 

「コーデリア、どうする?」

 

「どうしようもありませんわ」

 

割れた地面がシャロの頭にぶつかる!

 

「・・・はっ。なんか浮いてる!もしかしてここは宇宙?ってなんでですかー!」

 

そうしている間にもリンチェンとオブライエンの戦いは白熱していた!

お互いの拳がぶつかり合う!その衝撃によって次元震が発生していた!

 

「リンチェン、私は『党』なのだ!だからこそ不滅なのだ!」

 

「オブライエンさん、普通に考えてみてください。神様と政党、どちらが強いですか?」

 

「そりゃ神様に・・・あっ」

 

その失言によってオブライエンは全ての力を失った!

 

「ケサル・キング・ストライク!」

 

リンチェンの必殺技によって、オブライエンは吹っ飛ばされた!

 

「・・・僕の勝ちですか」

 

それと同時に地面と人が落ちていく。

とにかく勝負はついたのだ。

 

「・・・眠気が」

 

リンチェンは気を失った。

 

 

 

「・・・党は不滅なのだ。不滅なのだ」

 

ロンドン市内のどこかに吹っ飛ばされたオブライエンは這いつくばっていた。

 

「・・・ビッグ・ブラザーは不死なのだ」

 

もはや無様としかいうほかなかった。

 

「はあ、やっぱりギアスを与えるんじゃなかったな」

 

オブライエンの目の前に羽根の生えた青年が立っていた。

 

「・・・て、天使?」

 

「そう思われても仕方ないね。俺は神だ。お前の言うビッグ・ブラザーとやらをこの世界に転生させてやった張本人だ」

 

「か、神。本物の神なのか?話には聞いていたが・・・。き、聞きたいことがある。ビッグ・ブラザーは」

 

「殺したけど?」

 

「そうか殺したのか・・・えっ?」

 

「もう一度言ってやろう、俺が殺したんだ」

 

返ってきた言葉は信じられないものだった。

 

「な、なぜ、ビッグ・ブラザーは不死身で、そもそも殺す意味が・・・」

 

その言葉に、神と名乗る青年は笑った。

 

「ホント馬鹿だな。あれはただ力を借りて舞い上がっていただけの人間だ。あと殺した理由に関しては・・・目障りだったからだな」

 

「め、目障り?」

 

「そう、目障り。本当ならアイツがギアスを使ってハーレムでも築くか、踏み台にでもなればよかったんだ。それがなんだ?急にどっかの紙屑みたいな小説のように独裁者になろうとした。面白くも無いし、目障りだった」

 

「だから、殺したのか」

 

「そうだけど?」

 

オブライエンは恐怖した。目の前の何かは人間を何とも思っていないのだ。

 

「言っとくけど、お前の考えていることはわかるからな。うーん、どうしよっかな。殺さなくてもいいからな」

 

オブライエンは額を地面につける。

 

「助けてください、お願いします、お願いします。これからはあなたのことを信仰します」

 

その様子を見た青年は笑った。

 

「いいね。賢い判断だ。・・・やっぱり目障りだから殺そう」

 

「神様!お願いです!」

 

彼は叫んだ。

 

「私を殺さなくてもいいでしょう!もうビッグ・ブラザーは殺したじゃありませんか!この上、どうして私を殺したいと・・・」

 

「うるせえ、死ね」

 

どこからともなく、光り輝く箔が現れる。

 

「二向箔、相手は死ぬ」

 

その箔がオブライエンにくっつく。

 

「な、なにを・・・」

 

オブライエンの体が二次化する。血管は飛び出て、四肢はバターのようになった。

 

「お掃除完了。あとは・・・」

 

青年はスマホらしきものを取り出す。

 

「おい、マツオカ。あのガキから神格権の剥奪をしておけ。は?忙しいから無理?今すぐやれ!」

 

青年はスマホを握りつぶす。

 

 

 

リンチェンは目を覚ました。ここはどこなのか?答えはすぐに出た。医療室だ。

 

「・・・どこにも怪我がありませんが」

 

だが、リンチェンは気づいていた。自分は神ではなくなっている。

 

「・・・勝治さんの手引きですかね?」

 

リンチェンはベッドから起き上がる。そして、鏡の前に立つ。チベット人が映っていた。

 

「・・・僕は人間じゃないんですかね」

 

「「「そんなことない」」」

 

振り向くと、前世でリンチェンと一緒に戦った友人たちが立っていた。

 

「チベット人だから人間じゃない?それを言ったら俺も人間じゃないぞ」

 

「あんな気違いのいうことなんて気にしなくても大丈夫です」

 

「お前はちゃんとした人間だ。ボーガーである前にな。韓国人の俺が言うんだから間違いない」

 

だが、その友人たちは一瞬で消えてしまった。

 

「・・・幻覚でしたか」

 

「幻覚なんかじゃありません」

 

エルキュールが入ってきた。

 

「私にも見えていました。今のはリンチェンさんの・・・」

 

「昔の友人ですよ。もうとっくの昔にこの世を去りましたが」

 

とっくの昔、18903729年以上も昔の戦友たちだ。

 

「・・・ご愁傷さまです」

 

「・・・」

 

そのとき、ある気持ちがリンチェンに芽生えた。

 

「エルキュールさん、頼みたいことがあります」

 

「な、なんでしょうか」

 

「僕の・・・友人になってください」

 

確かに今の世界にも友人はいる。神山、すずか、ライアル、ユーノ、フェイト、・・・一応なのはも。

だが、今は無性に友人がもう一人欲しくなっていた。

 

「・・・いいですよ」

 

エルキュールは微笑んだ。

彼女が発光していたことにリンチェンも彼女自身も気づいていなかった。

 

 

続く!

 




イギリスチャンピオンに勝利したリンチェン!
次の戦いの場はドイツ!
だが、ドイツも不安定な国になっていて・・・!

次回カブトボーグ・リリカルヴィクトリー、出版禁止!?ザ・マン・イン・ザ・ハイ・キャッスル

熱き闘志にチャージ・イン!
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