「……」
ばしゃばしゃと満は自由形でひたすら泳ぐ。
「おさかなー」
六花は満をぱちゃぱちゃ追いかけて泳いでいた。
この島固有の魚など珍しいものが多く、エメラルドグリーンの透き通った海面は都会では中々見れないもので心が清らかになる。
勿論山でも中々見れないものなので、偶に泳いでいる魚を手で捕まえようとしては逃げられていた。
満はふと、誰かが溺れているのを発見する。どうやらその少年は流されてしまっているらしく、運の悪い事に誰も気付いていない。
「……へえ、綺麗なものだなー、って、あれ? 誰か……」
浅瀬を歩いていたククリがそれに気付く。けれどククリは泳げない為、助けに行けない。さてどうしようかと思っていると、満が少年の方に泳いでいた。
「けほっ、た、助け……」
「落ち着け、俺に捕まってろ」
「あ、りが」
「無理に喋ろうとするな」
そう言われ満に抱き着く形で助けられた少年。
「剣崎さんこっちへー!」
満が救助しに行ったのにいち早く気付いていた六花は、砂浜にシートを引いて待っている。
満は一目散にシートの方に少年を寝かせると応急処置をした。幸い肺まで海水は入っていなかった為、軽い処置だけで済んだ。
「はぁ……無事のようです」
六花はそれを見てほっとする。何なら加護の力も使う勢いだった。
「あまり深い所に行ってはダメですよー?」
「海は危険だ。一人で沖まで行くな」
満が少年に目を合わせて言うと、うんと頷く。
少年の親がそれに気付いてやって来て、何度もぺこぺこと頭を下げてお礼を言う。少年もまた、満と六花に助けてくれてありがとうと言って、お礼の品として綺麗な石を渡してくれた。自然に出来たものではなさそうな人工石で、宝石のようにキラキラとしている。満はそれを受け取ると、自分の荷物の方にしまった。
「剣崎さんお手柄でしたね」
「うん、見事だったよ」
その様子を見ていたククリもやって来て満の事を褒める。
満はその少年にライフガードの監視役の人が気付いていたのを知っている。すぐに救助に来ようとしていたので、満が動かなくとも少年は助かっただろう。
そのライフガードの人が満の所にやって来てお礼を言う。
「偶然近くにいたのが俺だっただけのことだ」
そう言って一度アナウンスしておいた方が良いと助言すると、子供から目を離さないで下さいとのアナウンスが流れた。
海にいた晶子も琴音に気を付けるのよーと言う。琴音はお前の方が危ないんだよなあ……って顔をした。
「近くにいても、手を伸ばせない人もいるものです。剣崎さんは良い人です」
「そうか」
「気付いていてもボクじゃ助けられなかったしね。ボクもうっかり波に持っていかれないようにしなきゃなあ」
「気をつけろ」
「うん、気を付けるよ」
「竜道さん! じゃあ砂で遊びましょう!」
「そうか、砂遊び……そういう手があったね!」
ククリは六花に誘われて砂遊びを始める。
満も一度休憩するかと荷物の近くに腰を下ろして横になった。
※
「さて、遊んでほしいのか。それとも、何の用かな?」
木々をかき分けながら猫を追いかけるマナトは、やがて開けた場所に着いた。
そこには簡単ではあるが遊具があり、小さな公園になっているようだった。
その公園で一人の女の子が手毬を使い遊んでいた。
白い薄手のワンピースを着た可愛らしい少女で、何故か目を瞑っていた。
猫はそのまま女の子の胸に飛び込み、それを優しく抱き留める。
「こんにちはおにーさん。この島の人、じゃないのかな?」
先ほど聞こえた声から男と判断した女の子はそう言った。
「ああ、旅行でここに来たんだ。君は地元の子?」
「
「そうか。俺は柏木マナト」
互いにそう自己紹介する。
香織はマナトの事を指さすと、何か確信を持った様子で続ける。
「お兄さん、不思議な力を持っているね」
どうやらマナトの持つクエスターとしての力を指しているらしい。
「おっと、分かる人には分かるんだね」
「他にも何人かいたけど、それって何の力?」
「う~ん、俺も詳しくは分からないけど、退魔師みたいな力かな」
「すごーい!」
「うん、凄い力だと思う。でも、万能ではないんだ」
「そうなの?」
「できない事も意外と多いって事かな」
「私の目もやっぱり治せない?」
やはり、香織は目が見えないのか。マナトは薄々気付いていたが、その言葉で確信する。
しかし他にもクエスターがいるとは思わなかった。実はすぐ近くにいたのだが、意外と気付かないものである。
「残念だけど、俺にはできないかな」
「ううん、いいの! ごめんなさい、無理なこと聞いて」
香織は残念そうに俯いた後、その考えを振り払うように再び笑顔になって謝る。
「いいさ、俺も力不足を実感しているからね」
自信なさげにそう言うマナトに対し、香織は首を振るってその言葉を否定する。
「でも、おにーさんは強いよ。私、分かる」
「そう言って貰えると俺、嬉しいよ」