満は休憩がてら二人の砂遊びを眺めている。六花は気付いてにこっと満に手を振りかけて……そんな満に対し、あなた良い体しているわねと突っかかってくる女性の姿に気付き、あ、お邪魔しちゃまずい? と慌てて手を引っ込めた。晶子である。
そこの天上の美で奈落から救出(脱出)した母親おいとククリは呆れた顔をする。奈落の腹を突き破った普通人とか何者だそいつとアズレートの友人の間でもっぱらのウワサだ。
「鍛えているからな。筋肉量は多いはずだが」
満は話しかけてきた晶子を迷惑に思うでもなくそう返す。
ククリと六花はその様子を見てこそこそと囁き合う。
「……あの人、娘さんいなかったっけ? やってることナンパっぽくない……?」
「な……ナンパってあれですよね! 異性にお声掛けして……ふわわ!」
六花はそれを聞いて顔を真っ赤にした。初心な田舎の少女故致し方なし。
浮き輪を着けた琴音がおかーさん? おかーさんどこー? おかーさーんと晶子を探し、満に突っかかっているのを見ると大きなため息を吐いた。
「母が、すみません」
そのまま晶子を連行していく。晶子は残念そうな顔をしながら、また後でねーと手を振った。また来る気か。
「娘さんの方がしっかりしてるんじゃないかな、あれ……」
「そ……そうですね」
「……」
満はそんな二人の親子のコントみたいなやり取りを見送った。
離島と言う事もあってか、何だか時間の流れを穏やかに感じる。別にフラグとかではない。
砂場には大きな城が出来上がっていた。絶妙に大作なお城である。ククリは記念に写真を撮った。
「あ……そうだ! アイスクリームです!」
唐突な六花。
「口の中しょっぱいですし食べませんか? 剣崎さんと竜道さんもいかがです?」
「そういえばその辺に売ってたか。結構な間遊んでたし、休憩がてらボクも食べに行こうかな」
六花は剣崎さんも誘ってきますねと休憩している満の方に向かい同じ言葉を投げかける。
そうして三人、アイス屋の方に行くとメニューを見た。意外と色んな味があり、六花はお勧めだと言う柑橘系のアイスを購入。ククリはそれとは違う夏みかんジェラートを購入した。
「んー……! おいひいですー!」
「んー、いいね、こういうの、沁みるなあ」
「……」
黙々と口に運ぶ満が頼んだのは、しょうゆジェラートだった。
ところでクエスターの中で唯一交流を深められていないマナト、君の明日はどっちだ。
そんなわけでアイスを食べる三人。
「竜道さんのも美味しそうです、一口交換しませんか?」
「いいよ、ほら」
「わーい!」
ほいっと差し出し六花とククリは互いのアイスを交換し合う。
「剣崎さんもいかがです?」
あーん、と言いながらアイスを勧める六花。
満は既にアイスを食べ終えており、椅子に凭れ掛かっていた。
「俺のは食べ終わってしまった。交換は出来ない」
「ふふふ、いいですよ。味見ですよー」
あーんと差し出してくる六花。満は「そうか」と言ってそれを食べた。
アイスクリーム屋のお姉さんが微笑ましく三人の事を見ながら「おにーさんたちは島の外の人かい?」と聞いてくる。
「旅行で来た」
「はい、ボクも旅行で」
「はい! 私も旅行です!」
旅行だった。
お姉さんは島のところどころにある不思議な
「この島に変わった像があるだろう? あれは
どうやらその神様を祀ったものが所々にある置物の正体らしい。
「富む、とはご利益がありそうですね」
「……」
「変わった像だなあ」
実家が神社の六花は興味津々、他の二人も言われて近くにあった像に目を向けた。
六花は実家が神社だと言うと、お姉さんがさらに詳しい話を聞かせてくれる。
撫兎富は嘗て戦いで傷ついた神様が、この島に逃げ延びた際、盲目の少女に出会い、傷を癒して貰ったところ、そのお礼として少女の目を治し、さらに島民の健康を願いこの島へと住み着き、そのままお眠りになった。
「ふむふむ」
「盲目の治癒、かあ」
「……」
「
「兎や、触れるだけで病や傷を癒すなど、類型の神話は多いですね」
「詳しんだな」
「えへへー、こう見えて現役の巫女ですから」
「流石だねえ」
えへんと胸を張る六花にぱちぱちとククリが拍手を送る。
満は像に近づくと、少し頭を擦り付けた。
※
「マナトおにーさんは、他の人とは一緒に行かなかったの?」
他の特殊な力を持った者たちと別れて行動していることを指摘する。
マナトはうーんと少し考えてから返答した。
「ああ、俺は宿で景色を見ながらゆっくりするのが好きなんだ」
「二人ともそうなんだー」
「二人? っとこの子もそうか?」
この猫も景色を見るのが好きなのだろうか。
「ううん、違うよ? おにーさんと、もう一人」
香織はそう言って宿の方を指さす。
先の会話から海にクエスターたちは向かったらしいが、宿に残ったクエスターもいるようだ。
「へえ、他にもいるんだね」
「うん、でも、ちょっと、怖い?」
香織は首を傾げる。目では見えないがその色は分かる。紫色の、どこか澱みのある力を持った人がいた。
「そうでもないさ」
「そうなんだ?」
香織がマナトの言葉に頷くと、猫がマナトの方に飛び込んだ。
「にゃんっ」
お、こいつ遊んで欲しいのか? マナトはそれから猫と香織と遊んであげると、良い時間になってきたので香織はそろそろ帰るねと言う。そのまま猫と共に宿の方へたったったとかけて行ってしまった。目が見えないと言うのに迷う素振りが無かったので、宿の子なのだろう。手を振って見送ってから、そういえば自分も宿の方から来たんじゃんと宿に帰った。
海に行っていた面々も宿へ帰ってくる。泳いできたのでそのまま風呂に直行した。
ベルトからシャードを下げたククリや、水着の中にペンダントとして入れていた六花など、良く見ればクエスターの証拠が分かる位置にある。
海側のメンバー同士、一緒に遊んでいたと言う事もあって、話こそしないが互いにクエスターだと言う事には気付いていた。それは他にクエスターがいると聞いていたマナトも同じで、この三人クエスターじゃね? と薄々感付く形となった。