アルシャードセイヴァー†選ばれし者たち†   作:椎名真白

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石碑の伝承と母の姿

 階段登って再びの拝殿。テレビの取材が来ていたらしくアズレートは声を掛けられる。海外から来た人に何をしに日本に来たのか取材する番組である。

 アズレートは香奈に先に琴音を連れて行ってあげて下さいと言ってから取材に応じる。普通に旅行ですよーとペラペラな日本語での応対だ。

 香奈はその間に琴音を迷子センターへ連れて行った。程なくしてアズレートが合流。巫女さんが獣の眼光でアズレートを見た。発情期かな?

 迷子の子は別の巫女さんが預かってくれた。そのまま迷子の呼び出しもしてくれる。

 ラモス島からお越しの晶子さん~、娘の琴音ちゃんを預かっているので放送を聞いていたら来て下さい~と、そんなアナウンスが流れたからこれで安心合流できるだろう。

 アズレートは一応親が来るまで見届けるかと、丁度伝承について書かれた立て札、と言うより石碑があったのでそれを読む。

 

「神、豊穣を与えたり  神、等価として使いを求むられ 人、神に使いをあたえ、豊穣を手に入れり 神、人に3つの植物をあたえたり 1つ天にも伸び、1つ屋根を作り、1つ豊穣の象徴なり」

 

 ふむふむと書かれた内容を吟味する。ちょっと内容が難しいがアズレートと香奈の二人で内容をすり合わせて上手く理解した。

 

 昔神様がいた。神様は村人に豊穣の加護を与える代わりに生贄をもとめた。人々は毎年生贄をささげ、かわりに豊穣の加護をうけていた。それがこの祭りの起源である。神様は村人に、竹と葡萄と桃をあたえてくれた。これらは神社の周りにうえてあり、いまでも大切に育てている。できたたけのこや葡萄や桃は毎年お祭りに神様に捧げる供物になっている。これを盗み食べたものは罰が当たり、神様がお怒りになるともいわれている。現に、かつて盗み食べたものがいて、その人はみるみるうちに痩せこけ死んでしまったというはなしである。

 

 と、そんな内容が書かれていたようだ。

 

「ほへー、そんな特別なものだったんだ」

「良くあることではあるが、物騒なものだな……」

 

 独り言だからか言葉遣いがさっきまでと違うアズレート。母親を待っていた琴音も二人して何を読んでいるのかと石碑の近くに来ていた。

 どうやらまだ琴音の母親は来ていないらしい。此方からも特徴を聞いて探しに行こうかと琴音に聞くと、絵に描いてくれると巫女さんから紙とペンを借りてさらさらと描いてくれる。

 小学生にしては妙に上手いイラストでこれから分かりやすいとまじまじと見る。でもおかしいよね何で下着姿なの。

 

「えっとね、お母さん!」

「ええ……と、下着?」

「水着なの!」

 

 何故水着と疑問に思う。まさかその格好でお祭りに来ている訳では……変態かな?

 取りあえずアズレートとしては出店もみたい。観光がてら母親を探す、正に一石二鳥。奈落の事も忘れてないよ。

 さてさて次はどう動こうかと香奈とどこへ行く行かない話していると、琴音がご神木の側にあった鏡に興味を示し其方へと向かってしまった。

 

「おっきな鏡ー!」

 

 その声で鏡が気になり二人もそこへとやって来た。

 ご神木に掛けられた大きな鏡。どこか神秘的でこれも何か伝承でもあるのかなと、香奈は鏡を覗き込む。するとそこから背筋を冷やす恐ろしい気配がした。奈落の気配だ。香奈と一緒に覗き込んだアズレートもそれに気づき身構える。その鏡の中には一瞬、見知らぬ、けれど見覚えのある女性の姿が映った。それを見た琴音は「おかーさん!?」と声を大にする。

 

「えっ!? ちょっと待って、どういうこと!? というかなんでお母さん水着なの!?」

 

 いやいや本当に水着だったねと琴音の絵にそっくりな女性の姿。しかし鏡の中の女性は姿を消している。一体どういう事なのか。香奈とアズレートはここに来て周りに違和感を覚える。

 神社は先ほどまで大勢の人で賑わっていたはずだ。しかし今はどうだろう、人の声は消え、鳥たちのさえずりすらも聞こえない。ふと振り返ればそこにいたはずの巫女さんの姿も消えており、静寂が辺りを包み込んでいた。

 その精神を抉るように外法の術が発動する。言い知れない不安感が精神を汚染せんと蠢いた。意志を強く保たなければアビスシードを植え付けられ、奈落に冒される所だ。

 

「妙に静かではありませんか?」

 

 奈落が動いた事で警戒を高めたアズレートは香奈にそれとなく現状を伝える。まさか香奈もクエスターだとは思っていないので、あくまで自分たちが何かの怪奇現象に巻き込まれたと気付かせようという狙いだ。

 

「こ、これは何……!? それにこの嫌な気配、昔どこかで……っ!?」

 

 それに対し香奈は奈落による攻撃が良い方向に作用したようで、脳が刺激され奥深くに眠っていた過去の記憶が目を覚ました。

 かつて異世界の地で火山に向かって逃げたこと。クエスターとしての使命。そしてガイアのアバターに地面にたたき落とされた事……マジで許さねえ!

 良く周りを見れば景色もどこか変だ。位置が逆に……そう、反転している。まるで鏡写しのように。

 

「お母さん待って!」

 

 あたふたとしていると琴音が一人階段を降りてどこかへ向かってしまう。先ほど見た女性、つまり琴音の母親である晶子の姿を見たからだろうか。しかし一人で動くのは危険だ。それが奈落の罠と言う可能性がある。

 

「ったく正月ぐらい休めねえのか奈落どもが……ってどこに行くんだちょっと!? 香奈さん!」

 

 アズレートは走り出した琴音を見失わないよう追おうとする。頭を抱えた香奈に一声掛ければ香奈も頷き琴音を追って駆け出した。

 

「……異世界の次は鏡の中? この中にいるとでも? ……いいわ、今度こそあの変な鳥、追い詰めて叩きのめしてやるわ……!」

 

 香奈は決意を新たにかつての敵を滅する事を誓うのだった。

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