サボり癖のある指揮官の話   作:鰯くん

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こんにちは!鰯です!
すいません、本編の続編はまだ執筆途中なので、先に季節ネタを回収させて頂きます!


幽霊騒動

昼ごはんを食べた昼過ぎ。

後方支援から帰って来た時に提出された報告書を適当に読んでいた。

するといつもの様に執務室の扉を開けて後方幕僚がボードを片手に部屋に入ってきた。

 

「指揮官様、報告書をもって参りましたー!」

 

ボードには軽い束になっている書類が見える。

それを見てこちらがブルーになる手前、テンション高めに言う彼女の表情はさながら悪戯を行う子どもを連想させた。

 

「どうした?そんなにはしゃいだりして」

 

カリーナはそこでは答えずにドアを閉めると机に小走りで向かってくる。

 

「今週はハロウィンですよ指揮官!」

 

一方的な『いたずら』を嫌々受けとると、彼女はとある噂について話し始めた。

 

「指揮官様、知ってますか?……出るらしいですよ?」

「出るって?」

「決まってるじゃないですか。──幽霊ですよ」

 

またタイムリーな話題が出たものだ。

 

「どうせ勘違いだよ」

 

実は前にも似たような話があったが、結局勘違いだった。

恐らく今回もそれに違いないだろう。

すると何時もは毒づくカリーナだが、今回は勝ち誇ったように胸を張ってドヤ顔をしていた。

 

「それが今回は違うんですよ。実際に見た人も居るんです!」

「へぇ……そうなの」

「む……あんまり反応が良くありませんね」

 

温度差のある返事にカリーナが頬を膨らませる。

すると机の上に手を置いて体を乗り上げてきた。

その大胆な行動に一瞬ドキッとしたが、悟られないように少し離れて距離を取る。

 

「別にそこまで興味がある話題でも無いし。と言うかどちらかと言うと苦手な部類かな」

「ほほぉ……指揮官、幽霊苦手だったんですね」

「小さい頃に見たホラー映画で駄目になった」

「そ、そうなんですか……その指揮官に言うのもアレなんですが」

 

気まずそうに笑うと腕にあるボードから一枚の紙を取り出した。

 

「その現象について、調査して欲しいと来まして……」

 

差し出された紙を受け取って確認する。

するとそこには夜間巡回と書いてあった。

 

「これって本当に??」

「はい、どうもかなり頻繁に起こるらしくて……このまま野放しにすると支障をきたす可能性も出てくるので調査して欲しいとの事です」

 

どうやら事は思ったよりも大事らしい。

 

「なるほど……わかった」

「大丈夫なんですか?」

 

心配した瞳でこちらを見つめる彼女にあまり不安にさせないように喋る。

 

「別に行くのは俺じゃないしなんとかなるよ」

 

だがカリーナはこちらの言葉に愛想笑いで返す。

そしてある意味一番重大な事を告げる。

 

「あはは……それが、今この基地に居る人形。これに割くほどの余裕が無いらしくて」

「え?」

「その、1人くらいしかこれに同行出来ないんです」

 

膝から下の力が抜けていくのを感じる。

いや椅子に座っているから何も変化は無いんだけど。

でも立ち上がったらきっと生まれたての小鹿のようになってしまうだろう。

 

「今日空いてる子って居たっけ?」

「……はい、居ますよ」

 

何故か目線を逸らして答えるカリーナ。

何か後ろめたい事でもあるのだろうか。

 

「誰がいる?」

「それは───」

 

 

時刻は過ぎて夜の廊下。

俺はとある人形と一緒に現場へと向かう最中でここに至るまでの経緯を説明していた。

 

「それで、私が呼ばれたと。──帰って良いかしら」

「待って。本当に待って」

 

さっそく自分の部屋に帰ろうとする彼女を引き留める。

腕を掴んで動きを止めると、ため息をつきこちらへと振り向いた。

 

「なんで私がこんなことをしないといけないのよ」

 

誰もいない暗くなった廊下に呆れた声が響く。

外から入ってくる月明かりが瞳とワインレッドの髪を照らした。

 

「頼むよWA2000。君しか居ないんだ」

「嫌よ。なんでこんな時間から、ましてや宿舎をパトロールしなくちゃいけないのよ」

 

そう、幽霊が目撃されたのは宿舎の今いる廊下。

白い服を着た人影が角を曲がって行くところを目撃したらしい。

しかも1人では無く複数の目撃者による情報が報告されている。

 

「君も知ってるだろ?今日は基地にROとガーランドが居ないんだ」

 

さらに不幸は続きROとガーランドが別任務や後方支援に出ていて不在である。

 

「AN94とか居るじゃないの」

「それだとAK12が付いてきちゃうだろ?アイツには俺が幽霊苦手な事言ってないんだ」

 

知ったらドヤ顔で弄ってくるに違いない。

それだけは絶対に嫌だ。

だが肝心のWA2000は中々顔を縦に振ってはくれない。

なら俺も腹を括るしか無いだろう。

 

「わかった。ただでとは言わない、後で何でもするから頼む!」

 

めげずに頼み込んでいると彼女は大きなため息をついた。

 

「はぁ……わかったわよ。仕方ないから一緒に行ってあげるわ」

「助かる……」

 

1人で安心していると「でも」と付け足す。

 

「しっかりと責任とってよね」

「なんだそんな事か、良いよ何でも言ってくれ」

 

何だかんだありつつもやっとスタートラインに立つことができた。

ここからは気を引き締めなければいけない。

 

「それじゃあ行くぞWAちゃん!」

「テンション高っ!てかWAちゃん言うな!」

 

嬉しくてはしゃいでいる状態からいつものペースに戻ろうとしていたその時、悲劇は突然起こった。

何処かから軋む音が聞こえたのだ。

 

「「──え?」」

 

2人して動きが止まる。

 

「い、今の音は……」

 

隣に立っているWAちゃんを見てみると心配になるほど顔が青くなっていた。

これはもしや。

 

「WAって幽霊にが──」

「そ、そんな訳ないでしょ!」

 

強く否定する彼女。

だが俺には見えていた。

小鹿の様にプルプル震えている彼女の足が。

だが当の本人は必死に否定を続ける。

 

「私は殺しの為に生まれたの!幽霊なんて怖くないんだから!」

 

ここまでハッキリと分かるのも珍しいのでは無いだろうか。

お掛けですこし心が覚めて余裕が出てきた。

だがそれも束の間の一瞬。

 

「わかったわかった。頼りにしてる」

「絶対わかって──ひぃっ!」

 

今度は声の出ないほどの悲鳴を上げる彼女。

その目線を追うと1つのドアにたどり着いた。

 

「───っ!」

 

俺もその光景を見た瞬間、血の気が引いていくのが分かる。

すぐ目の前にあるドアがいつの間にか開いていた。

夜に宿舎の部屋のドアが開いている。

それだけでも不自然だが、このドアはついさっきまでそこは閉じていたはずのドア。

それは俺とWAの2人は知っているし何回も視界に入っていたから見間違いなんて事はあり得ない。

だからこそ、そのドアが開いているのはおかしいのだ。

いや本当に勘弁してください。

まだ始まってもないのに何でこんな目にあわなくてはいけないのか。

これでは最初からクライマックスだ。

WAに至っては既に涙目になっている。

もう始まる前からボロボロだ。

てかもうパトロール行きたくない。

もう駄目だと思った時、すぐ後ろからWAでは無い誰かの声が聞こえた。

 

「指揮官?何をしているんだ?」

 

振り替えるとそこに居たのは。

 

「──AN94?どうしてここに?」

 

12の良きパートナーであるAN94だった。

だが、珍しく今回は彼女1人だけらしい。

その隣には奴の姿が見当たらない。

 

「私は部屋に戻る最中だが……指揮官達こそ、こんな時間からどうしてここに?」

 

彼女の問い掛けに答えようとすると、WAが先に答えた

 

「宿舎に現れた幽霊の調査よ」

「……幽霊?」

「確証は無いけど報告があるんだ」

「そうなのか……揮官達は気を付けて。私は部屋に戻る」

 

気遣ってくれるAN94に笑顔で挨拶を返す。

 

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

 

前を歩いていく彼女の背中を見ているとWAが横から話しかけてきた。

 

「もしかしてAN94とあんまり話してないの?」

「いや、そんなことは無いと思うよ?この前だって部屋の整理一緒にやったし」

「いやそれもどういう状況よ」

 

微妙な表現でこちらを見ているWA。

何か不味い事でも言ったのだろうか?

 

「そろそろ、始めるか」

「そうね、初めましょ」

 

宿舎の廊下を踏み出したその刹那、先の分かれ道で青白い何かが通り過ぎていくのを目撃した。

 

「あれって……」

「ま、まさか……」

「「幽霊??」」

 

始まって早々の心霊現象で嫌だがこれも仕事の内。

追っかけるしか無い。

 

「い、行くぞWAちゃん!」

「あ、当たり前よ!しょ、正体を暴いてやるんだから」

 

2人して足を震わせながらゆっくりと逃げ腰で前に進んで行く。

廊下の角の前まで行くと人影を捉えた。

近づいたのが向こうにもわかったらしくこちらに振り返ってきた。

そこに居たのは。

 

「指揮官、鬼火を見たかも知れない……いや気のせいかも知れないが」

 

先ほど通りすぎていったはずのフリーズしたように固っているAN94だった。

 

「お、鬼火?」

「目の前を青白い何かが通りすぎていくのを見た」

 

と、取りあえず今はそれを追わなければ。

 

「大丈夫だ、俺達もそれを見たから」

 

AN94が俺とWAを一瞥する。

そして微妙な表情をして口を開いた。

 

「何が大丈夫なのかはわからないが……わかった。私も指揮官に協力しよう」

「良いのか?アレを追うんだぞ?」

「確かに怖い、けどそのまま野放しするわけにもいかないから」

 

彼女なりの強さが垣間見えた気がして少し笑みをこぼす。

 

「指揮官?」

「いや、何でもない。どこ行ったか分かる?」

「あの鬼火なら左側へ向かっていった」

 

AN94が指差した方をWAと2人で確認する。

 

「よし、行こう」

「「了解」」

 

WAとAN94が頷いたのを確認すると、ゆっくりと鬼火が通り過ぎたとされる通路をを進んでいった。

 

「ひいいいい!!???」

 「ぎゃぁぁぁぁ!!??」

 

夜の宿舎に2人悲鳴がこだまする。

 

 「……この人選は致命的に間違っている気がする」

 

お化け屋敷に居るバカップル見たいな行動をしている俺達を見て、思い詰めた表現でAN94が呟いた。

あれから鬼火を見かける事はあっても中々追い付けない。

単純に小さな物音等にビビってばかりいるのもあるが、やはり何処かで見失ってしまう。

それが更に恐怖心を煽ってくる。

突き当たりで壁に背中を預けて体を少し休ませながら、前の通路を眺める。

すると、『カツン、カツン』と何かが前から歩いてくる足音が静かに聞こえてきた。

 

「し、ししし指揮官!?この音って」

「いやいや、違うから。ただの足音だよ!」

「ただの足音って何よ!もう嫌~」

 

頭を押さえているWAの肩を叩く。

 

「何よ……」

 

前の方を指差すと、彼女もその先を追って前方の通路へと視線を移動させた。

 

「そうやってまた脅かそうとして……もう引っ掛かったりしないんだからね!」

「いや、あれ!目!何か来る!!」

 

そう、通路の先にあったのは不気味に光る2つの目だった。

それを見た途端頭の中が真っ白になってしまう。

 

「え?ひっ!!何よあれ、こっちくる!!」

「無理!! 」

 

怖い怖い怖い怖い。

恐怖で頭が支配される。

 

「逃げるわよ!早く!」

涙目のWAがこちらへ叫ぶ。

 

「94も逃げるぞ!!ほら」

「あれは……」

 

棒立ち状態のAN94の腕を強引に引っ張りながら駆け足で来た道に戻った。

 

 

 

 「行っちゃった……流石にやり過ぎたかしら?」 

 

 

 

 

くたくたになりながら廊下を歩く。

 

「この基地おかしいんじゃない!?なんでこんなに変なのが出るのよ?」

 

壁を支えにしているWAがやけくそ気味に叫ぶ。

 

「これじゃホントにお化け屋敷だぞ……」

 

今まで良く気付かなかったと褒めたいぐらいだ。

これじゃあ夜も安心して寝れない。

もう体力的にも精神的にも限界に近付いて来たとき、AN94が訝しげに口を開いた。

 

「指揮官、さっきの目なんだが……あれはAK12じゃないだろうか」

「12が?どうして?」

「いや、確信は無い。強いていうなら瞳の色、だろうか」

 

そこで先ほどの場面を思い出す。

あれは……。

真っ暗な廊下の奥にある2つの瞳。

それが浮かんだ時、背後から来る何者かの気配に気づく。

だが時既に遅し。

後ろへ振り返る時にはもう肩に手が置かれていた。

「逃げるなんて酷いじゃない」

長い銀髪の不満そうにしかめる顔が至近距離に視界に映る。

 

「12?」

 

「ええ、AN94がいつまで経っても戻ってこないから探してたんだけど、そしたらちょうと面白そうな事をしてる3人組を見かけたのよ」

 

こいつ確信犯じゃねーか!

 

「本当はそこまま走って追いかけるか迷ったんだけど、それはちょっと可哀想と思ってやめたわ」

そんな事したら気絶してしまうからやめて欲しい。

 

「いや普通に怖かったんだけど……」

 

こちらがやつれた表情をしていると、何か思い出したように笑顔になる。

 

「指揮官って幽霊とかオカルト系苦手なのね!」

 

満面の笑みを浮かべる12。

その言葉を聞いた瞬間、頭をハンマーで殴られたような感覚を覚え膝から崩れ落ちた。

俺は思い出した……幽霊なんて比べ物にならない、比べるなんておこがましい程の存在が居ることに。

見上げと12はいつのも笑顔を浮かべていた。

 

「あ、悪魔め……」

「ん?何か言ったかしら?」

 

当の本人は聞こえたか聞こえてないか定かでは無いが首を傾けておどけてみせる。

すると今度は若干引気味な様子のWAがため息をついた。

 

「アンタ達何やってるのよ……早くあの鬼火を追いましょ?」

 

前と比べて妙に追い付いているのはさっきの正体が判明したからだろうか。

時刻はもうそろそろ12時に差し掛かる。

早く見つけないと寝る時間が無くなってしまう。

廊下をまた歩き始めようとしたその時、12が妙な事を呟いた。

 

「鬼火かどうかは分からないけど、それに近いものなら私も見たわよ?」

「本当に?」

 

彼女の言葉に思わず聞き返す。

 

「ええ、ここに来る途中、部屋に入っていくのを見たわ」

 

みんなの視線が12に集まる。

12はその視線が自分に集まるのを確認して、ゆっくりと語りだした。

 

 

 

食堂の中央に少女が座っている。

それと向き合う形で、俺達4人は椅子に座った。

WAはその姿を確認すると頭を押さえて何度目か分からないため息をつく。

 

「まさかアンタだったとはね……P90」

「ご、ごめんだってば。許してよ、ね?」

 

当の元凶は顔の前に手を合わせてウインクをしながら謝る。

 

「全くよ、次から気を付けなさい?ああ言うのが苦手な子もいるんだから」

「分かってるって!もうしないから……ね?」

 

これ絶対反省してないよ。

またやらかすぞこの子。

 

「あれは鬼火とかじゃなくて仮装するための小道具よ」

「小道具?」

 

予想もしない物につい聞き返す。

 

「ええ、きっとその子の部屋に、青い炎の形をした紙があると思うわ」

 

その説明にWAが納得のいかない表情をする。

「仮にあったとしても、どうしてそれが鬼火に見えるのよ」

 

「簡単な仕組みよ?下から紙と同じ色の弱くて淡いライトで照らすとなるわ。それを囲うようなガラスで蓋をすれば尚よしね」

 

 

「まさか本当に、しかもガラス蓋まで的中させるとはね……

 

12の推理的中に驚愕するWA。

その様子を見て12が『どう?』とドヤ顔でこちらを見る。

確かにこうして置いてあるのを見ると飾りで見間違えることはないが走って持っていたらわからない。

 

「いや、素直に凄い。俺達だけだったら絶対に分からなかった……」

「私にかかればお茶の子さいさいよ」

 

これ以上言うとバカにされそうだから何も言わないでおくことにしよう。

勝ち誇ったように腕を組む12から視線をP90へと移す。

 

「それにしてもドアを弄って脅かしたりするなんてタチが悪いぞ」

「だからごめ……ん?」

 

謝ろうとしていたP90が何かに気付き頭を傾けた。

そして衝撃の事実を告げる。

 

「私、確かに走り回ったけど何処の部屋にも入ってないよ?」

 

「「「「…………」」」」

 

一瞬場が静かになった後、足掻くように口を開く。

 

「う、嘘付いたって駄目だぞ?現に俺とWAは見たんだから」

「何を?」

「何をって……アンタがドアを開ける所をよ」

 

このまでの説明を聞いてもイマイチピンと来ないらしい。

……あれ?そう言えば。

 

「なあWAちゃん」

「何よ」

 

その違和感、よく考えるとおかしい事に気がついた。

 

「俺達が見たヤツ、今思うと不自然だ」

「───え?」

「だってそうだろ?ドアが閉まってからその奥の通路に出てくるまでが短すぎる」

 

出来る人はもうテレポート的な瞬間移動が出来るやつだ。

それをP90ができるとは思えない。

というよりもここに所属してる人達含めても瞬間移動なんて出来る人なんて居ない。

 

「───っ!」

 

事を理解したWAの顔が真っ青になる。

 

「…………」

 

すると皆もソレがどう言うことかを理解し始め、場が嫌な空気に満たされた。

 

「俺、部屋に戻るよ、皆お休み」

「ちょっと待ちなさいよ!今この状況で置いてくの!?」

 

部屋に戻ろうと廊下の方を向くとWAに背中を掴まれる。

 

「どうした?もしかして……怖い?」

 

一瞬ビクッと体を震わせた彼女は顔を真っ赤になる。

これはもう黒だろ!

 

「べっ、別に怖くなんて無いわよ?ただ、指揮官が怖がってないか気遣ってあげたのよ。感謝しなさい!」

 

だがそれをWA本人が認めようとしない。

 

「いいよ大丈夫!俺もう寝るから! 」

「待ちなさいよ指揮官!……ちょっと!」

 

ぐっと引っ張られ背中から前に腕を回される。

ほどこうとしてもがっちり胸の前で腕が固定されている。

背中に至っては殆んど密着している状態だ。

 

「や、やめろっ!スプリングフィールドが居るじゃないか!」

 

お互いに引く姿勢を一歩も見せないまま、口論は続いていく。

 

「嫌よ絶対に!だってそのあと弄られるじゃない!だから今日はアンタの部屋に行く!」

「おい待て考えろWA。それをしたら俺が殺される。RO最近厳しいから駄目なんだって!」

 

前なんて水着の本を買っただけで怒られた。

それも高かったやつ。

ちょっとエッチな内容だったかも知れないが没収しなくても良かっただろうに。

 

「大丈夫よ、きっと分かってくれるわ。それにROは今日いないんでしょ!」

まるで浮気相手の家に遊びいく人見たいな言い訳をする。

「いや駄目だって、こういう時だけ何でかニュータイプばりの反応を見せるんだよROは!」

「まだ宇宙にすら出てないのにニュータイプになるわけないでしょ!」

「それでも駄目だ!」

 

そうして収まる気配の無い討論が続き、気がつくともう1時前に。

 

「ほら、時間も時間だし良い子はなる時間だろ!」

「誰が良い子よ私は子供じゃないわ」

「もういいじゃん諦めてくれよ」

 

流石に疲れてきた……。

気が付いて周りを見るとと居たはずのP90や12、AN94が姿を消していた。

途中で部屋に帰ったんだろう。

 

「アンタそれ怪奇現象起きたの私の隣部屋だってこと知ってて言ってる?はっ倒すわよ?」

 

WAはまだこの話を続けるらしい。

そろそろ体力的にも限界が近い。

 

「大丈夫だって、WAを脅かす奴なんて居ないって」

 

「ホント?アンタ本当にそう思う?」

 

……いや絶対に脅かすと思う。

だってこんな反応が面白い人この基地だと他に居ないだろ。

そりゃ驚かすよ。

俺だったら味をしめてるもん。

するとそれに賛同するように扉が木の軋む音が廊下に響く。

いや普通に怖いんだけどこれ。

また勝手に開いて閉じたよ。

 

「確かにこれは──あれ?」

 

横に居るはずのWAに話しかけようと見たが、WAが居ない。

 

「あれ?WA?」

 

辺りを見渡すと

WAは隅で頭を両手で抱えながらしゃがんでいた。

 

「そうね……アンタに借りを作るのも癪だからスプリングフィールドの所に行ってくるわ」

 

「良いのか?」

 

「良いのかって……アンタがダメって言ったんじゃないの」

 

「ダメなのは変わらないが、大丈夫かなって」

 

「平気よ、アンタに心配されるまでもないわ。私をなめないでちょうだい」

 

そう言うとWAは廊下を歩いて行き角を曲がって姿が見えなくなった。

 

「……さて、俺も寝ようかな」

 

ちょっと罪悪感が芽生えてはいる。

でも誓約もしていない、しかも上司と部下で一つのベッドに入るのは駄目だろう。

何だかんだ眠気は来ていたので、部屋に着くと特に何も考えずにベッドに入って眠りに落ちた。

 

 

 

「──あれ?鍵が開いてる」

 

 

 

「指揮官、これはどう言うことですか?」

 

目覚めて最初に穏やかではないROの笑顔がこちらに向けられる今日の朝。

 

「いや、何も?」

 

だが、明らかに何かしらやらかした時の雰囲気だ。

光がない瞳。

背筋が凍る程の無表情。

でも本当に心当たりがない。

一体何が彼女をこうまでしてしまったのか。

と思っていた時。

ふと、横を見てみると大きな膨らみが出来上がっていることに気づく。

冷や汗が本当に止まらない。

胃に穴が空いてしまいそうだ。

視線をROに戻すと、本能的に怒っている理由がわかったせいか気持ち目付きが鋭くなった気がする。

 

「この方は?」

 

ROが隣に寝ている人に手を伸ばした。

が、触れる寸前でその腕を掴む。

 

「指揮官?何故止めるんですか?」

 

近い視線が本当に痛いし目も怖い。

 

「い、いやまだ寝てるだろ?おお起きてからででも良いんじゃないかな?」

「はい?」

 

何言ってるんだこいつと言う顔をしながらROはさらに伸ばす手に力を入れる。

すると……。

 

「なに……うるはいわよ……」

事の元凶がとうとう目をさます。

ROはその恐ろしい瞳を彼女へと向ける。

 

「何故あなたがいるんですか?────WA2000」

 

……いやなんでいるの?

隣で寝ているWAが何故居るのか俺にもわからない。

しかしプライドが高い彼女が事を正直に話すのだろうか。

凄く不安で仕方がない。

WAは目を擦りながら起き上がると、

口を開いた。

 

「仕方ないじゃない……スプリングフィールドの部屋に入れなかったんだから。起こすのも悪いと思って」

 

思っていたのと違う動機にROがなんとも言えない表情になる。

 

「指揮官も寝ていたと思うんですが……」

「たまたまドアが開いていたのよ。だから……へ?」

 

きっと寝ぼけてたんだろうなぁ。

意識が覚醒し始めたのかみるみると顔が赤くなっていく。

きっとさっきまで話していたことを理解したんだろう。

 

「ち、違うのよ?ほ、本当に違うんだから───!!」

 

WAは起きて早々目にも止まらぬ早さで部屋を出ていった。

 

「……で、結局はどうなんですか?」

 

どうやらまだ追求を辞めないらしい。

 

「きっと部屋のドアが開いていたんだろうさ……それで眠気が近かったWAが部屋に来たってことだろう」

「……信じますよ?」

 

ROが用心深く聞いてくる。

 

「大丈夫だって。本当に何もされてないから」

「ならいいんですが……この話しはこれで終わりにして、支度をしてしまいましょうか」

「ん、じゃあ歯磨いてくる」

「では私は先に執務室へ行って準備してますね」

「宜しく頼む。すぐ行くから」

 

ROが部屋から出たのを確認してベッドから降りる。

体を伸ばした後、朝の支度を始めた。

 

 

 

その後、宿舎に幽霊がいると言う話が掲示板で有名になり、七不思議になるのは少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとしたおまけ

 

「部屋の鍵が開いていたの……あれは私よ」

「お前かい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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