サボり癖のある指揮官の話   作:鰯くん

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久し振りの投稿です
誤字等の不備があった場合、随時修正します


催し警護

「いやー、来てくれて嬉しいよ」

 目の前で男性が笑顔で話している。

 ここは一応グリフィン管轄の地区にある飲食店。

 机の上にはコーヒーが自分と向かい側両方に並んでいる。

 カップを掴んで口へ運ぶ。

 口の中苦味が広がった。

 しかめそうになる顔を堪えるながら正面に視線を移す。

 「それで、ご用件は」

 「ああ、そちらに頼んだ通り守って欲しいんだよ」

 「ではそれに対して何かこうしてほしい、等はありますか?」

 俺の質問に対して男は顎に手を置いて考える。

 「そうだね……近くにくる護衛は出来るだけ少ない方が良いかな?あとあまり目立たないようにしくれると嬉しい」

 「はい、わかりましたが…」

 少人数で大丈夫だろうか?

 不安が頭をよぎるがクライアントの要望を無視する訳には行かない。

 「では、また後で。よろしく頼むよ」

 男は席を立ってその場を後にする。

 窓ガラスからその様子を見てため息をつく。

イベントの警護任務か……。

 最後に残ったコーヒーを喉に流し込んで席を立った。

 

 ※

 「護衛任務ですか」

 副官であるROが呟く。

 「そうらしいんだがイベント、ましてや催し物しに2、3人だけの護衛なんて大丈夫なのか?」

 「どうでしょう」

 まあ確かにここら辺は統括している俺達が言うのも悲しいが消して治安が良い訳ではない。

 と言っても今回の依頼を出した人物は別にそう言った場所では無いけど。

 「う~ん、そりゃあ居ないよりかは配置するに越したことはないと思うけどさ」

 消して安くは無いだろうに。

 「今回は誰を?少数と記載してありますが」

 ROが紙をこちらに見せて問いかけて来た。

 「外に2人、中に1人かな。2人の内1人はライフル。中は小さい銃の方がいいな、大きいと目を引くから」

 「そうですね。私も同意見です」

 「なら俺と同伴するのはROで決まるとして」

 「わ、私ですか?」

 驚いた表情でこちらを見る。

 「当たり前だろ、居て貰わないと困る」

 いざとなった時に指揮を取れるから他の人形と独自で行動できる点に置いても是非連れていきたい。

 「あ、当たり前……い、居て貰わないと困る……」

 ROが何故かモジモジし始めた。

 なんだか顔が赤いようにも見える。

 トイレに行きたいのだろうか?

 てか人形ってトイレ行くの?

 「そ、それで、ライフルの人形は」

 「ライフルは──」

 ※

 「で、何で私なのよ」

 同日の夜、依頼した男との待ち合わせ場所にて。

 三人の人影が建物の前に集まる。

 「そりゃあ優秀だと俺が判断したからだ──WA2000」

 「はぁ……指揮官、足引っ張っら承知しないわよ?」

 やっぱりチョロい。

 「引っ張らないから、てかWAは今回外で待機だし」

 「え?外?何で?ROは?」

 「流石にその大きい得物を室内で使うのは難しいだろ?だから俺とROは中で警護対象を守る」

 「それはそうだけど……」

 「終わったら埋め合わせはするから」

 「べ、別に私は寂しいだなんて」

 「いやそこまで俺も言って無いから」

 「……ふんっ」

 「いやお前が自爆しただけだろ?……はぁ、取り敢えずこれを見てくれ」

 電子マップを開くとそこには5階建ての建築物が映る。

 「これは目の前にある建物ですね」

 隣にいるROが指差す。

 「そうだ、今から1時間後の19:00に3階で同伴者一人を連れて来るらしい。俺達はその間、その二人に危害が無いように警護をする」

 「2人??それが私達の警護対象なの?」

 「俺も詳細は聞いていないから詳しくはわからないけど、2人らしい」

 「なんでよ、そこ一番大事なところじゃないのよ」

 WAがムスッとした表情になる。

 「聞きづらかったんだよずっとニコニコしてるんだぞ?めっちゃ怖かった」

 「はぁ……こんな事になるならまた私もついて行けば良かったわ」

 呆れたと言わんばかりのため息をつく。

 すると今度はROが驚いた様子で俺達を交互に見つめる。

 「え?WA2000は前も同じ事が?」

 「え、ええ。そうだけど」

 「まあ警護の任務は基本的に」

 「私知らなかったんですけど……」

 「だってAR小隊としての任務とかも有るだろ?だから」

 「一声かけてくれても良かったではないですか」

 「痴話喧嘩なら他所でして貰えるかしら。今は任務中よ」

 「「はい、すいません」」

 「で、まとめると私達はその依頼人とその同伴者を守れば良いのよね?」

「ああ、そこは変わらない。何かあったら教えてくれ」

 「了解、なら配置につくわよ」

 「頼む、俺達も直ぐ建物に入る。行くぞRO」

 「はい、指揮官」

 俺達は建物内部に入り、WAは少し離れた場所で待機して貰った。

 中は洒落たホテルの様な内装になっていた。

 すると耳についてる通信機器から声が聞こえた。

 『今警護対象が建物の中に入ったわ』

 入り口を見ると依頼をした男と他に1人女性を連れて来ていた。

「了解、確認した。他に何か変わった所は?」

 『特に無いわよ』

 「そのまま頼む」

 『わかったわ』

 WAと通信をしているとROか話し掛けてきた。

  「指揮官、もしかしてここに書いてあるこれって依頼を受けた御方の名前ではありませんか?」

 近くに行って予約の項目が書いてある電子パネルを見る。

 「本当だ」

 「指揮官、警護対象が上に上がります。後を追いましょう」

 ROの後ろについていく形でエスカレーターに乗る。

 「3階に着きました。降りましょう。──ここは」

 エスカレーターから出たROの足が止まる。

 彼女に続いて降りた俺の足も目の前にある光景に足が止まってしまった。

 「──レストラン?」

 目の前にはドレスコードが必要な高級レストランがある。

 一様服は持ってきたが……。

 「どう警護しましょう。指揮官」

 「まさかレストランだとは……取り敢えず外で待機だな。予約取ってないし」

 レストランの前でどうしようか話していると後ろから声をかけられた。

 「その心配なら大丈夫ですよ、グリフィンの指揮官さん。君達の席は取ってある……そこの席だ」

 振り替えると依頼の張本人である男が笑顔で女性と立っていた。

 そして奥にある右端の席を指差した。

 「じゃあよろしく頼むよ」

 男は手を振るとそのままレストランに入っていった。

「俺達も行こうか」

 「は、はい」

 レストランに入って指定された席に着いた。

 座ると同時にWAからの通信が入る。

 『今指揮官達を確認したわ。あと警護対象も』

 「了解、そのまま頼む」

 『わかったわ。引き続き任務を続行するわね』

 「頼む」

 通信を終えるとROが首を軽く傾ける。

 「何か言ってましたか?」

 「いや、特には何も、WAがこちらを確認したってだけ」

 「そうですか。あとこちらも少し思った事があるのですが」

 ROが手招きをする。

 回りには聞かれたく無いことなんだろう。

 体を近付けて耳を寄せる。

 「思ったのですが、今回の警護対象である男性と一緒に来た女性は人形では無いですか?」

 聞いたとこに驚いて聞き返したしてしまった。

 「え?そうなの?」

 「あ、あの…近寄りすぎです。みんなが…みんなが見てるし、恥ずかしすぎます」

 言われて初めて気がついた。

 これ以上ないぐらい顔が近い。

 もう5cmもない距離に唇が……。

 「え?ご、ごめん!」

 慌てて元の位置に戻る。

 あっぶねーっ!

 いやホントに危ないって。

 「あ…… 」

 『ねぇ、なにやってるの?今は任務中よ?』

 「す、すいません」

 正論過ぎる言葉につい腰を低くしてしまう。

 『しっかりしなさいよ指揮官。これだから──』

 次は通信機越しにWAからの説教が長々と始まった。

 ※

 なんだかんだ言って何事もなく2時間が経過した。

 「何も起きないな」

 「起きないに越したことは無いですよ」

 『まって何か動きがあるわ……一階のフロアに3人。サングラスをした人が出ていったわよ』

 「入ったところは見たか?」

 『いえ見てないわ。恐らく私達が

 来たときには既に中に居たわね』

 「そうか、警戒を強めてくれ」

 「どうしました?」

 「実は───」

 ROにWAから聞いた情報を話そうとした時、会場からアナウンスが流れた。

 『実は今日、ご結婚なさるカップルがいらっしゃいます!』

 すると会場の明かりが全て消える。

 『レストランの明かりが消えたわ』

 「大丈夫、演出らしい」

 『あんたが大丈夫でも私が大丈夫じゃないのよ!何も見えないじゃわない』

 するとスポットライトが一組のカップルを照らす。

 警護対象の男とその同伴している女性だった。

 「あの2人、カップルとかそんな関係だったのか」

 「だから警護を頼んだんですね、プロポーズを台無しにしないために」

 スポットライトの光で薄暗い中でROが納得した表情をするのがわかった。

 「つまり、あの女性、彼女は人形って事でその過激派に邪魔をされないように俺達に警護の依頼を頼んだと」

 さっき、来たばかりの時に言ったROの言葉からして推測するとこうなる。

 「ちと考えすぎじゃないか?」

 まあ確かにテロとかあるかも知れないけど流石にこんな何処にでも居るような2人を狙うわけないだろう。

 別に金持ちでは無いし。

 「どうでしょう?念には念をと言いますし」

 「まあ確かに、格好の的だもんな」

 狙われる理由があるとすればそれは何かしらの関係者とかだろう。

 でもそんな情報を聞いてないからこの男はただの一般人だと思うし。

 前を見ると2人が幸せそうな表情をしている。

 パーティーももう終盤。

 するとWAが余裕の無い声が聞こえた。

 『指揮官!早く警護対象と一緒にそこから出て!!』

 「どうし──」

 WAが警告をした次の瞬間。

 大きな爆発音が連続してフロア全体に鳴り響いた。

 ※

 体全身が痛い。

 『きかん!!返事をしなさい!!』

 目を覚ますとそこは崩壊した瓦礫の下だった。

 這いずりながら瓦礫の隙間を出る。

 壁に寄りかかると通信機から声が聞こえる。

 どうやら壊れていないらしい。

 「ケホッ、WAか……何が起きた?」

 『指揮官達の居る建物の一階のフロアが爆破されたわ』

 辺りを見渡すとさっきまで賑やかだった会場は跡形もない。

 「ROは!無事か!?」

 すると少し離れたところから声が聞こえた。

 「はい、何とか」

 彼女は少し離れた所で立ち上がっている最中だった。

 「今からそっちに行く…痛っ」

 動こうとすると右腕が酷く痛む。

 確認すると左腕が少しえぐれていた。

 『どうしたのよ指揮官?』

 「左腕が切れてる」

 『今からそっちに行くわ』

 「来れそうか?」

 『わからないけど、行けそうならそっちに合流する』

 「わかった」

 ※

 最悪ね、建物が倒壊してる。

 でも作りが頑丈に出来ているらしくしたの階はまだ原型を留めてるのが救いかしら。

 指揮官達の居るフロアは落ちていないわね。

 4階から上は右に大きく傾いて潰れていた。

 私は銃を持って崩壊した一階から指揮官達と合流できそうな場所が無いか探す。

 「酷いわね…」

 入ってみると地獄絵図だった。

 外からしかわからなかったけど綺麗だった面影は欠片も残って居ない。

 階段もエスカレーターもダメになっている。

 でもそもそも上の階の瓦礫で上に上がれそうだから大した事ではないか。

 「早く行かないと」

 私は崩れた瓦礫の上を歩いて上の階を目指した。

 

 ※

 「大丈夫ですか指揮官」

 俺が行こうとした時、もう既にROはこちらに着いていた。

 「まあ何とか…酷い有り様だな」

 「これからどうしますか?」

 「一先ずは基地に待機してる皆に負傷者を搬送させる」

 ポケットから端末を取り出して基地に連絡を取る。

 画面に軽いヒビが入っているが使えそうだ。

 『はい…どうしました指揮官様?』

 「カリーナ、今から送るデータに傷者搬送するための部隊を派遣してくれないか?」

 『わかりました、直ちにそちらへ送ります!』

 「頼んだ」

 端末の通信を切る。

 「あの男を探さないと…いてて」

 どうやら腕以外にも傷があるらしい。

 「手伝います、指揮官、肩に腕を」

 ROの肩に腕を回して立ち上がる。

 「すまない、助かる」

 「早く探しましょう。時間がありませんから」

 「さっきまで居た所を重点的に探そう」

 ゆっくりと歩きながらその場所に向かう。

 でも辺りはもう原型がないほどに崩壊している。

 それでも手掛かりを探しているとROが唖然とした表情をした。 

 「そんな…」

 その光景から隣からは震えた声が。

 「…………」

 月明かりの光で照らされて見えたのは瓦礫の隙間から1本の腕だった。

 「ゆっくり、下ろしてくれ」

 ROは何も言わずに姿勢を低くする。

 腕を見てみると所々機械の様な金属部分が見える。

 「やっぱり、人形だったのか……あっ」

 「腕が」

 少し見えていた腕は肩から上が無くなっていた。

 「すいません指揮官。今の状況ではこの瓦礫を退かす事は出来ません」

 ROが俯きながら言う。

 「そうか……」

 「──出来るわよ、私が来たんだから」

 声のした方へ向くとそこにはWAが銃を両手に持って立っていた。

 黒い彼女の服は所々白く汚れている。

 急いで登ってきてくれたのだろう。

 「ほらRO、手を貸して」

 WAが腕の近くにある瓦礫に手を付ける。

 「は、はい、わかりました」

 呼ばれたROも瓦礫に手を付けた。

 「せーの、よいしょ!っと」

 二人が持ち上げた瓦礫が捲れる。

 「残念だけど、今回の任務は失敗よ指揮官」

 WAがこちらを見るとそう言った。

 瓦礫があった場所を確認すると酷く損傷した人形が倒れている。

 「治せそうか?」

 「恐らく無理です指揮官。損傷が酷すぎます」

 見てみると足も両方膝下から無くなっている。

 ……頭部も。

 そこで有ることに気がついた。

 妙に胴体が浮いているのだ。

 「この人を退かすぞ」

 「はい!」

 「わかったわ」

 ボロボロの身体を退かすとそこには男が倒れていた……無傷で。

 警護対象を見つけたタイミングでカリーナから連絡が来た。

 『指揮官様、もう間もなく到着いたします!もう少しの辛抱を!』

 程なくしてまた別の声が聞こえる。

 『指揮官、こちらM4A1です。大丈夫ですか?今建物の前に来ました。これより捜索を開始します』

 「ROはこの人を、WAは大破した人形を下へ運んでくれ」

 「ですがそうすると指揮官が」

 「俺は後で大丈夫だから」

 「……わかりました」

 二人は時折こちらへ振り返りつつもWAが来た道から下へと降りて行った。

 後ろを振り返る。

 つい一時間前までは賑わっていた場所とは思えない。

 いつも見ている戦場と言われた方がまだしっくり来る。

 俺は散乱した瓦礫の山から視線を空に移した。

 空はもう暗く、雲の隙間から光る星が嫌なくらいにハッキリと見えた。

 

 事は思っていたよりも大きい物だったらしい。

 そもそもこの依頼人がロボットの人権を謳う協会側の役職の人だったらしく、そこに人類人権団体が介入してきたという事。

 そんな人が目立つ所で、ましてや人形にプロポーズをするんだから反対組織には格好の的だったのだろう。

 見せしめとしてあの建物は爆破された……と言う事らしい。

 しかも、情報は俺達が行く前に漏れていて爆弾を設置していた。

 恐らくWAが見た3人だろう。

 ……今でもあの光景が目に浮かぶ。

 ちぎれた腕と、五体が無くなってだるまになったボロボロの体。

 そして、その人形はバックアップが取れていなかった。

 ……正直、人形にも感情があるか?と言われたらわからない。

 少なくても話してる分には今まで違和感を感じる事はなかった。

 人形もいくら機械とは言え、バックパックが取れていない人形は破壊される=死だ。

 だから死にたくないのは一緒ではないだろうか?

 話によると痛みも人形は感じると聞く。

 それに自分を犠牲にしてまであの男を助けた。

 きっとそれは彼女が──。

 「指揮官?」

 ROに話し掛けられて意識を前に戻す。

 「ああ、ごめん」

 「いいえ、大丈夫ですけど……指揮官こそ大丈夫ですか?」

 心配そうにこちらに見つめるROに苦笑いを返す。

 「大丈夫、問題ないよ」

 シーンと司令室が静かになる。

 俺は目下の書類に目を向けた。

 死者10名、負傷者(重、軽傷者含む)27名、行方不明者15名、計57名

 今回の任務中に出た被害者の内訳である。

 4階から上はもう殆どが亡くなっていた。

 1階に居た人達は殆どが負傷者だが、重症が多い。

 負傷者の大半は重症だろう。

 きっと死者数も増えていく。

 報告書をまとめて机に置く。

 あの人形は自分の意思で男を守った。

 自分だけ生き残る事もできただろう。

 でも、それでも身を挺して男を守った。

 きっとそれは好きな人を守りたいと言う感情から来たのだろうか。

 いやそうであって欲しいと言うエゴから来た自分自身の願望かも知れない。

 俺はあの、爆発が起こる前の2人の幸せそうな笑顔を思い出してふとそんな事を思った。

 

 

  

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

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