小さい頃歌ってました。
そんな事は置いといて、このゲームをやっている人なら分かると思うんですが、『荒野からの贈り物』ご存知ですか?
今回はそれを見て思い付いた話になります。
「指揮官様、今日の業務のパトロールなんですが……」
カリーナが浮かない表情をしながら執務室にやって来た。
いつも明るく元気な彼女にしては珍しい。
「どうした?何か気になる事でもあった?」
「いえ……実はこのパトロール、少々不審な情報がありまして」
「不審な情報?」
「この任務はその付近の調査も含まれているんです」
カリーナが手元から書類を取り出した。
「ここでは原因不明の行方不明者が数日で増加しているらしくて……書いてある通りなら争った様な形跡も残っていません。本当は指揮官様には行かせたくなかったのですが……」
「大丈夫、行ってくるよ」
不安そうしているカリーナの頭を撫でると表情に少し笑顔が戻った。
「指揮官様……気を付けてくださいね!」
笑顔で見送ってくれる彼女を背に、執務室を後にした。
通路を歩いている時に、先ほどの話について考える。
場所が場所なだけにあんまり行きたい所ではない。
あまり治安がよろしくない場所だからだ。
でも、このまま放置しておく訳にも行かないし……。
まあ実際に行って確かめるのが一番と言うのはいつの時でも変わらないと言うのも事実な訳で。
俺は今回の任務に連れていくメンバーに声をかけ、ヘリポートへと向かった。
※
その目的地に着くと、ヘリから皆が降りてくる。
周りは倒壊してる建物もそこそこ多い。
でも人の気配がしないのが少し不気味だ。
ここは一様、行方不明者の一番最後に確認された場所の近くらしい。
らしいと言うのはそこまで正確な座標が無くてあやふやになっているからである。
行方不明者が殺されたなんて考えたくもないがそれがあり得るのがこの地域の特徴。
武装している人が出てくる可能性も十分にあり得る。
前では人形を無理やりバラバラにしたなんて話も聞いた。
手元に広げている電子マップを見て事の危険性を改めて実感する。
「今はちょっと何時もと違う。身の危険を感じたら発砲を許可する」
その言葉に、辺りが緊迫した空気になった。
「指揮官……それはどういう」
隣に立っているROが困惑した表情で聞いてくる。
「今から行くところはここ数日で原因不明の行方不明者が増加してる。何かしらあってからじゃ遅いからな」
「そうなのですか?」
「ああ、だから万が一、状況によっては中断して撤退もあり得るかもしれない」
「指揮官、メンバーはどうすんですか?」
今度は斜め向かいに居るM4が落ち着いた表情で電子マップを見つめる。
「メンバーはM4とAR-15の第1部隊、SOP ⅡとROとM16の第2部隊、AK-12とAN-94の第3部隊。この3つで行動する」
「指揮官はこの中のどの部隊と行動を共にするんですか?」
準備がある程度整ったAR-15が各チームを一瞥する。
「今回、俺は第3部隊に動向していくよ。第1と第2は周辺のパトロールを頼む。俺達第3部隊は近辺の調査を行う」
「わかりました」
正直な話をすると君達2人の間に入れるほどメンタル強くありません。
「よし、なら行動を開始する」
それぞれが動くための最後の軽い点検をしているとき、前から歩いてくる影が見えた。
「指揮官……大丈夫ですか?」
顔を上げると、ROが心配そうな顔をしていた。
「大丈夫だよ、そっちこそ気を付けてくれ」
「はい……」
煮え切らない返事が少し気になったが、特に問題ないだろうと考えてAK-12達が居るところへ向かう。
こうして調査を含むパトロールが始まった。
※
そして何事も無く調査を初めて1時間が経過した頃。
初めて誰かの人影を見掛けた。
どうやらそれは2人も同じだったようで警戒を強める。
「指揮官、気を付けてください」
「あの人影を追うの?」
嫌な予感がする。
ここから先へ行くと戻れないとでも言うような気持ち悪い感覚だ。
「いや、追おう。何か知ってるかも知れない」
ホルスターから拳銃を取り出して2人と一緒に慎重に向かっていく。
すると、歩行速度は殆んど変えていないのに向こうのに直ぐに追い付くことが出来た。
向こうの方が足が遅かったんだろう。
でも違和感を覚えるほどに遅すぎた。
それはAK-12も同じだったらしい。
「指揮官、おかしいわよあれ。足が遅すぎるわ。あれは本当に人間なの?」
「センサーに反応は?」
「していません。あれは人形では無いでと思う」
そこで、ずっと背中ばかり見ていた視線がまたまた足元へと移った時に、あることに気がつく。
「でも……あれ?なんか千鳥足みたいだな」
「確かにふらついているわね……94、警戒を強化して」
「了解、警戒を強化します」
2人が本格的に銃を撃つ一方手前まで警戒を強める。
自分の頭でも、アレはいけないと無意識に判断しているのが分かる。
「待つんだ、酔っぱらってるだけかもしれないだろ?」
「指揮官はバカなの?こんな人の気が無い所でお酒なんて飲む訳けないでしょ?」
何いっているのとこっちを見るAK-12。
そのぐらいきっと分かってる。
だけど本心がそれを否定していた。
違う、まだそうと決まった訳じゃないと。
「でも、じゃなきゃ説明がつかないだろ?」
「そうかしら?他にも色々……指揮官、雑談は終了よ」
AK-12は途中で話を遮ると、目の前の物が人ではなくて奴らだと判断を下す。
「やっぱりそうなのか?」
「ええ、認めたくないのは分かるけど、今回は黒よ」
「──わかった」
通信機をポケットから取り出す。
「現時点を持ってパトロール及び調査を中止、今から2時間後、ヘリポートまで後退」
『何があったんですか指揮官!?』
ROの焦った声色が耳元で響く。
「広域性低濃度感染症──ELIDの感染者を発見した」
『そんな……』
「だから出来るだけ早く集合地点に戻ってくるんだ。皆も警戒してくれ」
『指揮官!!』
通信機の電源を切る。
その時、タイミング悪く感染者が振り向いてきた。
『グシャアアアァァァ!!』
すると覚束ない足取りでゆっくりと向かってくる。
「指揮官は下がって!94は戦闘準備、指揮官の援護を」
「了解」
周囲に数発の銃声が鳴り響く。
幸いまだ症状が軽い。
でも、人にしては多すぎる弾薬を使った。
AK-12は銃を構えるのを止めると後ろにいる俺に振り向いた。
「指揮官……悪い知らせよ、今の銃声で感染者がここに集まってきているわ」
「数はわかるか?」
「今観測出来るだけでもざっと20人は居るわね。何処かへ避難しないと逃げ切れないわ」
AK-12が言うならそれは確実だ。
20人も相手を出来るほどの弾を俺達は所持していない。
避難出来る、最低でもAR小隊が来るまでの時間稼ぎが出来る所を探さなければ。
だが、どこも倒壊し過ぎて中に入れない建物が多く中々見つからない。
暫く探していると5階ほどの高さがある建物が目に入った。
しかもそこまで壊れていない。
あれなら中に入る事が出来る!
「なら、あそこに逃げよう」
「了解、なら早く行かないと時間が無いわ!今ならまだそこまで来てないから間に合う」
決まると、ほかの感染者が集まる前にその建物へと逃げ込んだ。
※
「まって指揮官、前方に何か居ます」
建物を捜索しているとAN-94が銃を構える。
「本当ね。またさっきみたいな化け物かも知れないわ」
前に居る2人が警戒していると奥から小さな人影が歩いて来る。
「待つんだ2人とも、銃を下ろして……子供だ」
「お願い…パパを助けて…?」
見たところ当たり前だが武装もしてないし、襲ってくる様子も見られない。
……感染はしてないだろう。
「敵じゃない。それに子供なら感染して発症する前に死んじゃうらしいから大丈夫だ」
俺達も子供の元へと向かう。
すると子供がズボンに強くしがみついてきた。
「お願い、パパを助けて」
握る手を離して屈み、子供と同じ目線に合わせる。
「パパはどこにいるの?」
子供は一度こちらを見るとさっき来た道を指差した。
「あそこに居るの。でもパパ凄い苦しそうで」
苦しい?
それってもう……。
考えを振り払うように頭を振ると屈んだ姿勢から立ち上がって2人の顔を見る。
「……」
言葉にはしないが、AN-94は俯き、AK-12は首を横に振った。
「2人は子供を見ててくれ。俺が確かめに行く」
拳銃をホルスターから取り出してスライドを引く。
前を確認しながら行こうとした時、AK-12に呼び止められた。
「まって、1人では危険よ。私も一緒に行くわ」
確かに、もう発症していた場合、拳銃だけじゃ対抗出来ないかも知れない。
「わかった。AK-12、一緒に来てくれ」
「了解。94は子供と一緒に辺りを注意して」
「はい、警戒を強化します」
AN-94の返事を確認して、改めて通路へと向かった。
「じゃあ行くぞ」
「ええ、行きましょ」
※
薄暗い通路の中を歩く。
ホラー映画のワンシーンにありそうでちょっと怖い。
幸い、外はまだ辛うじて明るく、あと少しで日没と言った所だろうか。
ここでは無い周囲の探索をしているM4達AR小隊は大丈夫だろうか。
色々考えながら歩いていると隣からの声で現実に引き戻された。
「ねぇ指揮官」
「どうした?AK-12」
「それよ、一々AK-12って言うの面倒じゃない?」
指摘されて考えてみるけど、そんなこと考えた事なかった。
「いや、別にいいんじゃないか?面倒じゃないし」
「12の方が呼びやすいんじゃないかしら?」
別に変わらない気も……。
でも折角だし、この話に乗るのもアリかな。
仲良くなるきっかけにもなるだろう。
「どうだろう。でもそっちの方が短くて良いかも知れないな」
「なら、これからは私の事は12って読んで」
「わかった。これからよろしく──12」
「ええ、これからもよろしくね、指揮官」
でも、彼女は中々に掴みづらい性格をしてるんだよな。
だから、独り善がりしてるんじゃないかって不安になってしまう。
だからこのAK-12……じゃない、12の提案は結構嬉しかった。
※
通路をさらに進んで行くとうめき声みたいな、鳴き声みたいな不気味な声が聞こえた。
「今の声、何かしら」
「わからない。でも物音でも無いし動物の鳴き声にしても妙だな」
12が銃を構える。
「気を付けて指揮官。もしかしたらもう」
「ああ、警戒を強めるぞ」
「了解」
俺も銃を前へと構えて何時襲われても大丈夫な様に体制を整えた。
進むに連れていってハッキリとした物に変わっていく。
ずっと聞こえていたのはどうやらうめき声だったみたいだ。
そして、1つの扉にたどり着く。
「声の聞こえた所はこの先ね、準備は良い?もしかしたら開けた瞬間襲いかかってくるかもしれないわ」
「大丈夫だ、開けてくれ」
俺の合図と共に12はドアノブを回さずに扉を回し蹴りで扉を蹴破り前に倒した。
まさか蹴破るとは思っていなかったから面食らって動けなかった。
入ると部屋というには殺風景で、外側に壁は無く、外の風景が綺麗に見える。
慎重に進んで行くと、誰かが壁に寄り掛かるように座っていた。
そこに居たのは──。
「頼む…殺してくれ…」
肌の皮が腐りが所々剥がれ、見るに耐えない状態の男性だった。
男は片方しか開いていない瞳をギョロリとこちらへ向ける。
「頼む…苦しいんだ…」
言葉が話せるなら意識はまだあるだろう。
会話が通じるかはまだわからないが。
まずは落ち着かせないと。
駆け寄ってると屈み視線を合わせる。
「落ち着いて、大丈夫ですから。俺たちは調査にきたPMCです」
すると這いずっていた腕が止まった。
「PMC……?ああ──」
止まった男性の様子を見ていると、隣に居た12が耳打ちしてきた。
「指揮官、彼はもう助からないわ」
「でも…まだあの人には意識がある」
「息子が居るんだ。こんなみっともない姿を見せるわけにはいかない」
やっぱり、家族だったのか。
──ならあの子供は?
感染しているのか?
頭の中で一瞬にして疑問が次々と浮き出る。
すると、男は予想もしてなかった言葉を口にした。
「あの子は俺の誇りで、財産で、だから俺を殺してくれ!まだ俺が父親のうちに」
男はうつむいたあと、俺の持っている銃に向かって手を伸ばしてくる。
そして、男は銃を掴むと銃を持つ腕を支えに膝立ちになる。
「指揮官!?」
「来るな12!」
取り押さえようとした12を近寄らせないように制止させる。
変に刺激してはいけない。
「俺は化け物になりたくない…人間として、あの子の父親として死にたいんだ」
「待って下さい!まだ助かるかもしれませ──」
俺の言葉を遮るようにして男が話す。
「もうダメなんだ…体も調子が悪い。服の下はもう殆んど皮膚がない」
男が這いつくばった跡を見ると剥がれた皮膚がボロボロ転がっている。
「っ───」
その光景に息が詰まる。
体中の毛が逆立つ感覚を覚えた。
「なぁ、頼むよ。息子が来る前に…俺を殺してくれ」
拳銃を持つ手がガタガタと震える。
俺は殺しをするためにグリフィンに入った訳じゃない。
人殺しをするために、入ったわけではない。
でも人を殺した事はない訳じゃない。
でもそれは正当防衛だ。
いつも殺さないように努力している。
でもこれは?
手元に今自分が握っている拳銃と男の顔が交互に映った。
目を閉じて自分に言い聞かせる。
助けるために、その人を殺す。
手の震えは止まりゆっくりと目を開く。
──男の頭に拳銃を向ける。
そのときに男の憑き物が取れた様な表情が見えた。
この『無抵抗』の人の頭を撃ち抜けば、全てが終わる。
撃たなきゃ手遅れに…。
引き金に人差し指をかける。
でも、あの子供は?
本当は助かるかも?
なんで俺は……助ける立場の人に拳銃を向けている?
──引けない。
拳銃を握った手がまた震え始めた。
引き金から指が離れしてしまう。
このまま放っておいても彼は死ぬ。
ゾンビのような死ぬまで汚ならしく、暴れる化け物になって。
でもそうなったらそこに彼の尊厳はない。
もしかしたら彼が自身の息子を殺してしまうかもしれない。
俺はどうすれば良い?
彼の尊厳を守る為に銃を撃つか。
彼を最後までこのままにして、化け物になったときに撃つか。
「………………」
もう一度、今度は震える手をもう片方の手で押さえてゆっくりと拳銃を構える。
人差し指が引き金を引くとき、やけに時間がゆっくりに感じた。
「───ありがとう……」
「───っ!!」
感謝の言葉が聞こえた刹那、1つの銃声が殺風景な建物の中に響いた。
床には吐き出された薬莢がカランと音を立てて転がっていく。
※
『指揮官、今銃声が聞こえた』
AN-94からの通信が入る。
「こっちは大丈夫だ。保護してる子供は大丈夫なのか?」
『子供なら大丈夫』
「そうか、今からそっちに向かう。合流したのち、ここを撤収する」
『了解した』
「AR小隊、予定通りにヘリポートで合流。撤収するぞ」
『指揮官、そちらは大丈夫ですか?』
「大丈夫。生存者は子供が1名、死者が1名。子供はこちらで保護してるから一緒に輸送機で運んで貰うよ」
『わかりました』
「わかった。ではまた後で」
『はい、お疲れ様です。指揮官』
「……そっちこそ、お疲れ様」
あ互いに労いの言葉を言うと通信を切った。
目の前の動かなくなった男をもう一度見る。
男は最初に会った時のような苦痛に歪めた顔では無く、穏やかな表情をしていた。
そして、震えの止まった手元にある拳銃を見つめる。
「指揮官、別にあなたが悪いわけでは無いわ」
「……はぁ。最悪の気分だよ」
吐き出すように息にして肺にある空気を吐く。
「指揮官は良くやったわ。こうするしか無かったんだもの」
12が励ますように言ってくれるが、それが逆に自分のやったことを自覚させられた。
「それは!…わかってはいるけど。でも俺は無抵抗な人を、敵意の無い人間を殺すために銃を持った訳じゃない!」
こんなもの!!
手に握られている銃を思いっきり振り上げる。
これが無かったらと考えてが止まらない。
他の道があったかもしれないと。
でも、それは……。
力が抜けるように振り上げた腕を下ろした。
コンクリートの床にはポツポツと水滴が落ちる。
「まだ、意識かあったんだ…それを俺は…俺は」
拳銃が手元からコンクリートの床に落ちる。
すると、不意に柔らかい何かに包まれる感触を感じた。
12が俺の頭を抱き締めてる事に気が付く。
「無理しなくてもいいの。みんな、選ばれし者ってわけじゃないもの」
「そうだけど…でも」
俺は彼女の背中に腕を回した。
そして、さっきの事を思い出して強く、強く抱き締めた。
「指揮官は頑張ったわ…だから、あなたこそ一度落ち着いて」
何時もの小バカにしたような言い方ではなく、優しい声で。
いつもこれなら良いのに。
「あなたはあの人の尊厳を守ったのよ。立派な事をしたわ、きっとこれは他の人には出来ないし出来ても指揮官の様に悼む事なんてしないもの」
12に優しくそっと頭を撫でられる。
「だから、あなたは彼を救ったのよ、指揮官」
「っ───」
12の言葉に俺は───。
俺はただ、声を押し殺して泣くことしか出来なかった。
地面には冷えた薬莢と拳銃が転がっている。
※
「ごめん、みっともない姿見せて」
照れ臭くなって視線をずらした。
心なしか顔が熱い。
「別に良いわ、指揮官の可愛い所も見れたし」
やっと見ることのできた彼女の表情はいつも通りの笑顔で。
さっきまでのアレが嘘のようだ。
「毎回一言余計なんだよ……まあ今回は助かった」
「なら、さっさとここから撤収しましょ?」
「そうだな……」
来た道を戻って行くとAN-94と子供の姿が見える。
「パパは?パパはどうしたの?」
寄ってきた子供の頭に手を置いて屈み姿勢を低くする。
「……パパはね、お星さまになったんだよ」
「お星さま?」
「うん、君の事を空から見守ってくれるんだ」
「見守る?」
「そうだよ。きっと、いつでも君の事を守ってくれる」
「そう、なんだ…」
段々と、子供の目尻にじわじわと涙が溜まっていく。
「頑張ったね…でももう大丈夫。ちゃんと安全な所に連れていってあげるから」
「うっ…ふぇぇぇん!!」
「──ごめんな」
俺も度胸がない。
この子にそのままの言葉を言う事が出来なかった。
誰にも聞こえない小さな声で、この魔法が解けてしまった時の未来に謝罪をする。
外はもう暗く、夜空には一際輝く1つの星が輝いていた。
※
子供は無事、グリフィンの管轄でとある地区へと運ばれた。
そして、AR小隊が現地で回収し持ち帰ってきた物にごく少量の崩壊液が入っていたと思われるビンが発見された。
カリーナから聞く話では今調査しているらしい。
「これはまた面倒な事に…」
「でも、良かったですね。被害が甚大では無くて」
ROが書類の束を持ち上げる。
「そりゃあそうだけど、またこんなことがあったら堪ったもんじゃないよ」
「もしかしたら、また同じような任務が来るかも知れないですね」
「はぁ…否定できないのが辛い」
ため息をついて目の前にある書類を手にすると、執務室の扉が開く。
「指揮官、ちょっと良いかしら?1つ聞きたい事があるんだけど」
「12か…」
部屋に来たのは12ことAK-12だった。
手ぶらは珍しい。
皆何かしら書類やらを持って…る?
この前ゲーム持ってきてる奴居たなぁ。
落ち込んでた俺を励ましたかったのかはわからないけど「一緒にゲームやろ!」って言ってた後。
あやつは俺tueeeして帰っていった。
なんか嘗められたようで頭に来ましたね、はい。
「ん?」
頭の中で脱線していると、ROが何かおかしいと思ったのか頭を傾ける。
「指揮官、この前の子供に言っていた事なんだけど」
「あの子がどうした?」
「子供?」
「『パパはお星さまになった』ってどういう事?」
この前の子供に言ったやつか。
「あー、あれね。昔俺の住んでいた所で良く言われてたんだよ。死んだ身内がお星さまになって空から見守っててくれてるってね」
「それって化けて出てるってこと?」
それでは感動物語がたちまちホラーになってしまう。
訂正しなければ。
「いやそれはちょっと違うぞ12」
「あの…指揮官ってAK-12のこと12って言ってましたっけ」
話を訂正しようととしたところで、ROが割り込んで話しかけてきた。
「ん?この前の探索でちょっとね」
あだ名で呼び合うのは別に珍しい事ではないだろう。
でもアレを改めて言うのはちょっと恥ずかしい。
だから詳しいことは言わずにぼんやりとはぐらかした。
すると12がここぞとばかりにガソリンを撒いた。
「そうそう。まさか、指揮官に抱き締められるなんて思わなかったわ」
12が、それはもう眩しい、イラつく勝ち誇ったドヤ顔で話す。
一瞬にして空気が変わった。
和やかな暖かいものから背筋が凍りそうなほど空気が重くなる。
……部屋から出ても良いかなこれ。
2人が見合っている内に自室から廊下に出よう。
ゆっくりと音をたてずに椅子から立ち上がる。
「指揮官?何処へ行こうとしてるんですか?」
音も立てていないのに感じ取ったのか立ち上がった瞬間にこちらに振り返ってきた。
めちゃくちゃ怖い。
声こそ何時もと変わらないが、目が恐ろしくて合わせられない。
「いや、ちょっと忘れ物をしてな。部屋に戻ろうかなって」
「すぐに戻りますか?」
「ど、どうだろう。長引くかも──」
「すぐ、戻りますか?」
言い方が強くなる。
怖い、怖いよ。
普通に怖い。
目とか合ったらどうなるんだろ俺。
怖くて見ること出来ないんだけど。
「呼び名1つで騒ぎすぎじゃない?」
お!ナイスだ12。
そのパンチは効くぞ。
「いえ、私もRO635と言う名前をROとあだ名で呼ばれているのでそこではありません。なんで2人は私たちがELIDと戦っている時に抱き合っていたのですか?」
「それは…」
その話をよりによって12に!?
いや、今の12ならしっかりといってくれるはずだ。
少なくても今回の件で俺たちはそこそこ距離が近くなれた気がする。
「指揮官が泣いて居たから抱き締めてあげたのよ。そしたら抱き返してくれたの」
あ……。
「は?」
「あの時の指揮官は可愛かったわ、まるで子供の様で」
いや言い方!!
なんで煽るの?
もう火に油じゃなくてガソリン撒いてるもんだよそれ。
しかも殆んど合っているのがムカつく。
何一つ間違ったことは言っていない。
そうだよ12はこんなやっだった忘れていた。
心の中でガ◯マの真似をして叫んだ。
謀ったな、謀ったな12!
だからそんな怖い声出さないで下さいますかROさん。
確かにさっきまでシリアスだったけどこんなシリアス望んでない。
早くこの火を消化をしないと
「違うんだって、それはその…」
めっちゃ言いづらい。
どうしようこれ。
「抱き合っていたことの何が違うのですか?……教えて指揮官」
とうとう敬語がなくなった!
不味いってこれ本当に洒落にならない。
「これは俺が精神的に折れそうになって──」
「その後の恥ずかしそうにした指揮官は忘れられそうにないわね」
俺の声に重なるように12が口を開く。
おい頼むよぉ……オーバーキルだって。
「そうなんですか……これは有罪ですね」
彼女が自身のアイデンティティーとも言うべきメガホンを強く握る。
「いや、確かに有罪ですけども!」
「認めましたね?」
「そうなんだけど、違うんだ!」
「どっちなの?」
「違う!」
「違うのですか?」
「……いや違くはないけど」
「やっぱり!?」
「話を聞いてくれ!!……その、俺が精神的に折れそうな時に、12に助けられたんだよ」
「……そうなのですか?AK-12」
ROがAK-12へと振り返る。
「ええ、指揮官の言った通りね」
「何故毎回あんな回りくどい言い方をするのですかあなたは!?」
「私はただあなたの質問に答えただけよ?」
抜け出すなら今だ。
「じゃあ、自室に行ってくるね」
「え?あ、はい」
これでやっとここから脱げ出せる。
もう消化が終わってるけど、途中ガソリンに水入れてたからなぁ。
てかもうマグマだろあれ。
※
執務屋に戻るとROはいつも通りに戻っていました。
無事鎮火できて何よりです。
もうちょっと表現力というか、言葉のバリエーションを増やしたい……
『◯◯が聞いてきた』とか、多様しすぎてしまう。
何処か参考になるサイトとか無いかなぁ