女勇者と蟹工船   作:邪骨

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女勇者と蟹工船の日常

 ・・・・・・嫌な夢を見た。懐かしい夢だった。

 そういえばあの世界は無事に滅亡してくれただろうか。そうであってくれるといいな。

 

 今は二月四日の午前四時。船内の備え付け時計とカレンダーからの情報だから、これで合っているのかはわからない。

 さて、私は粗末な布団から抜け出して、ジャージを脱ぎ捨て作業着に着替える。本日の操業開始時刻は午前五時、私は毎日操業時刻の一時間前には起きるようにしている。これはこの船で二か月程働いて身に着けた習慣みたいなものだ。

 

「ユウシ~おはよ~」

 

 私にそう話しかけてきたのはナンシーだった。彼女はこの船の中でも数少ない女性工員の一人で、私の唯一の同性の友人である。

 ナンシーは今日も短く切りそろえた金髪をふわふわと揺らし色香を撒き散らしているようで、床には股間を抑えた男衆が蹲っている。彼女曰く、「何か勃起して襲ってくるから返り討ちにしてやったのよ」だそうだ。

 ナンシーさん、その淫靡なオーラは無自覚でしたか、そうですか。私は一回も襲われたことないんですけど・・・はッ、まさか胸の大きさか?!

 私は彼女のけしからん脂肪の双丘を眺め何となく嫉妬に駆られた。別に男にモテたいわけじゃないんだけどね。

 

 だって私にはジュルが居るんだもん!寂しくないよ!

 

 ・・・はぁ、話を戻そうか。

 

 それから私はナンシーを連れ立って、これまた小汚い食堂に向かう。

 何が小汚いって、食堂全体が妙にアンモニア臭いのがまず不愉快なんだけど、それ以上にそこら一面に撒き散らされた吐瀉物が汚い。吐いた奴はちゃんと掃除しろ。

 

「ユウシちゃんはどれにするの~?」

 

「どれをと言われても選択肢が無いのだが」

 

 カウンターテーブルの固定回転椅子 (これまた錆びだらけの)に座った私たちの目の前には、海老のようなものと鮭のようなものをそれぞれトマト (缶詰)で煮込んだもの、それが二皿あった。

 ちなみに何故「のようなもの」と付くのかというと、それは彼らの見た目に原因があった。

 海老のようなものには人間の手に見える器官が生えていたし、鮭のようなものには人間の足に見える器官が生えていた。これを「のようなもの」と呼ばず何と呼べばいいだろう。ナンシー曰く「こんなキモイもの初めて見るよー」とのことだったので、おそらくこれはこの世界の現地人ですら知らない悍ましい存在なのだろう。

 ぶっちゃけ食べたくない。

 しかし今日の朝食はこの二品しかなかったので、仕方なくといった感じで注文したわけである。

 ちなみにこの「のようなもの」は昨日釣れた新鮮なものらしい。こんなキモイのが釣れるのか、この海は。

 

 この世界の海原に若干戦慄しながらも、私たちは「のようなもの」を食べてみることにした。

 

 ・・・んッ、これは・・・?!

 

「クセェ!!公衆便所の臭いがする!!!!」

 

「ゲェエッ、オポッ、ゲロロロロロロロロロロォッ」

 

 私はその味に怒鳴り、ナンシーはカエルみたく鳴いて嘔吐した。

 

 こんなヒデェもん食わされりゃそりゃ床一面ゲロ塗れになるわ!!ふざけやがって!!

 

 「わたし、もうこれ食べたくない・・・ユウシにあげる・・・」

 

 胃の中のものを全てばら撒いたナンシーが、鮭のようなものの腕を私の口に捻じ込んできた。

 いらん、超いらん。スゲー不味い!!

 だが何だかドキドキしたのでまあ良しとする。

 

 これを何処かの界隈では百合というそうだ。シゲさんが言っていた。

 だから私はナンシーに「これって百合なのかな」と言うと、彼女に「バカなの?」と呆れた顔で否定された。

 そうなのか。

 

 胃液薫る空気に耐えかねた私たちは、操業開始まであと十五分はあったが、逃げるように工場に向かった。

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