俊の声が聞こえていないとばかりに、ノブに手を掛け玄関を開けば、俊と同年代に見える二人組がいた。
一人は、快活そうな見た目のイメージを受ける、眉毛に掛からない程度に髪を揃えた茶髪の少年、もう一人は、柔らかな目尻が内向的な見た目に拍車を掛ける、内側に巻いたボブヘアーの少女だった。
開かれた玄関の先にいた、見知らぬ男性に、少女は半身になって、表札を眺め、少年は目を丸くしている。
「えっと……あの、すんません……誰っすか?ここ、俊の部屋じゃ……」
ようやく、少年が絞り出したのは、疑問しか残されていない弱々しい声だった。それに対し、賢人は明るい口調と笑顔で言う。
「こんにちは、俊君の友人かな?」
少年が不満そうに表情を歪めた。
「こっちの質問に答えてもらってないっすよ。お兄さん誰っすか?俊はどこにいるんすか?」
少年の目元が剣を強めたが、気にも止めた素振りもなく、賢人が続ける。
「こちらは、明石賢人。まあ、俊君の親戚ってところだよ。初めまして、よろしくね」
不安気に瞳が揺れた少女が下がり、少年の背中に隠れると、庇うように両手を広げた。
「嘘っすね、俺と俊は小学生からの付き合いっす。親戚がいるなんてこと聞いたこともないっすよ」
「それがね、最近になって、こちらもようやく見付けることができたんだよ。それに、俊君と付き合いが長いのなら、小さい頃の記憶がないってことも知っているよね?」
「それがどうしたってっていうんすか……?」
「賢人さん!勝手に開けないで下さいよ!」
少年に被ったのは、紛れもなく、聞き慣れた優来俊の声だった。反射のように、少年が叫ぶ。
「俊!大丈夫っすか!なにもされてないっす……か……?」
言葉が途切れた理由は、玄関からリビングに繋がるドアを俊が開いたからだった。どうやら、俊は、玄関まで出ることを阻止されていたらしい。ノブを握っているのは右手、左手は腕ごと着物姿の少女に引っ張られていたようだ。
肩より下に揃えられた黒髪、整った顔には、されなりに動いのか、やや赤みがあり、少し息を切らした少女の姿、おもけに黒を基調とした着物は、若干乱れており、賢人とのやり取りで、冷めいた少年の瞳に熱が入り始める。
「えっと……剛志君?ど……どうしたの?」
少年が急に黙ったことで、不安が膨らんだのか、剛志と呼ばれた少年の背後に隠れた少女が言った途端、少年が頭を下げて声を張った。
「好みっす!付き合って下さい!」
「……馬鹿じゃないの?」