「マジですいませんっしたぁーー!」
俊の部屋のフローリングに傷をつけそうなほど勢いよく額を叩きつけたのは、俊の幼馴染で、陣内剛志という少年だった。正面に正座で座る賢人は、剛志の旋毛を見て、ははっ、と短く笑った。
「剛志君だけじゃないよ、本当に疑ったりして、ごめんなさい……」
その剛志の隣に座り、ちょこん、と頭を下げたのは、俊の同級生で成瀬咲良という少女だ。申し訳なさそうに、きゅっ、と締められた唇と、睫毛の端が垂れて八の字になっているのは、本人の髪形もあり随分と印象に残る。
「いや、良いんだよ。こちらも、俊君に妙な気を使ってしまって拗らせてしまったからね。なんとも思っていないから、とりあえず、話しがしにくいから、顔をあげてはくれないかな?」
剛志の背中をベッドから眺めていた俊が溜め息を吐く。
剛志と咲良には、二人は自身の遠戚として話しを通した。最初は、疑念を抱いていたが、俊の両親の過去についてまで会話が及ぶと、剛志と咲良が徐々に傾き始め、今のような状況になってしまった。もちろん、両親に関して、ほとんどは、作り話しなのだろう。
俊まで、さきほどまで聞かされていた話しが嘘だったのではないか、と思えるほどだった。濁りもなかったので、あらかじめ決めていたのかもしれない。
賢人に声を掛けられた剛志が顔をあげれば、そこにあったのは、咲良とは違う満面の笑みだ。
「いやーー、それにしても、俊にこんなカッコいいお兄さんと可愛いお姉さんの親戚がいるなんて驚きましたよーー」
伸びた鼻の下と視線を向けられた真夜は、大儀そうに剛志を一瞥し、さっ、と顔を背けた。
そんな冷たい態度をとられながらも、伸びきった人中が縮む気配がない。
もしかしたら、逆に喜んでいるのかも、などと俊が考えていたところ、咲良がベッドに手を置いて言った。
「ねぇ、優来君は、二人のこと覚えてたの?」
間髪いれず、真夜が鋭く口を出す。
「それ、どういう意味?こっちのことは話したわよね?まだ疑ってるってこと?」
氷を連想させるほど冷めた口調に、咲良が両手を胸の前で合わせて身を引いた。まるで、小動物のような柔弱さが気に障ったのか、真夜の頬が僅かに動く。
「返事がないようだけど、どうなの?言っておくけど、このままって訳にもいかないわよ。だって……」
「そこまでだよ、真夜ちゃん」
そこで口を挟んだのは、やはり、賢人だった。真夜の唇が一文字に引き締まる。
「この子達のほうが正しい。こちらは、彼らにとっては煙みたいに現れたようなものだからね。疑って当然だよ」