きっ、と鋭い視線を向けられた男性は、苦笑を浮かべると、ベッドの上で正座をして二人を眺めていた俊に顔を向けた。
整った目鼻に、短目な黒髪は清潔感を漂わせる。それでいて、服の上からでも分かるほど鍛えられた体格、少女のほうもそうだが、男の俊から見ても羨ましい容姿だ。
男は、切っ掛けを作るように、にっこりと微笑んで言った。
「突然、押し掛けて申し訳なかったね。具合はどうだい?気分が悪いとか、意識が定まらないとか、なにか症状はあるかい?」
優しい声音に、俊は首を振る。
「いえ、特には……強いて言えば、頭に痛みはありますけど……」
ちらっ、と横目で少女を一瞥すれば、今度は俊にまで刺さるような目線を送り始めた。
男は、そんな少女の態度に慣れているらしく、巧笑を崩さずに胸に手を当てて続ける。
「そう言えば、自己紹介がまだだったね。こちらは明石賢人、で、そっちの女の子が……」
「柊真夜」
嫌に冷たい雰囲気を纏ったまま、自身を賢人に差されると同時に、仏頂面で名乗ったかと思えば、俊から顔を逸らす。
どうにも気難しい印象を受けてしまい、俊は賢人へ目線を流す。
「それで……あの……僕に何か用が……?」
「用件がなければ、来ないわよ。こんな殺風景な部屋」
酷い言い様だが、ワンルームのリビングにテーブルとベッド、腰ほどまでの高さしかない本棚のみと、お世辞にも生活感があるとは言えない俊の部屋を見回した真夜は、本棚から一冊抜き出すとパラパラとページを捲って、すぐに閉じた。
「置いてある本も娯楽要素が少ないみたいだし、なんていうか、普段の生活も見えてこな……」
「いい加減にしなさい、真夜ちゃん」
ピシャリ、と言い放った賢人の声に、真夜の表情が強張る。
「彼が闇骸に襲われて気を失ってしまったとはいえ、こちらが自宅にまで無断で押し掛けているのは事実なんだ。彼の生活に口を出す権利はないよ」
「だって……」
唇を尖らせた真夜は、オズオズと賢人を盗み見ると、目に見えて項垂れた。怒られた子供みたいだ。
「あ、あの……僕は気にしてませんから……それに、僕の部屋が殺風景なのは、本当のことですし……」
俊のフォローを聞きはしているのだろうが、真夜は顔をあげようとせず、代わりとばかりに賢人が言う。
「彼女は、人と接するのが苦手でね。こういうことは、ちゃんと言ってあげなきゃいけないんだよ」
そこで、場を仕切り直そうとしたのてあろう賢人が、パン、と両手を打つ。
「さて、それじゃ、こちらの自己紹介も終わったことだし、話を先に進めることにしようか。そうだね、まずは、俊君が一番気になっている昨夜の出来事の説明から入ろうか」