破壊神キッテル(キッテル回想記『空の王冠』三次創作) 作:ダス・ライヒ
お許しください!
どうぞ、何なりと指摘ください。
※6月14日、大幅に改変しました。
復活のキッテル
ニコラウス・アウグスト・フォン・キッテル。
この名を聞いて何者かと思い浮かべれば、我々と似た世界で、自分の国である帝国を完全勝利に導いた英雄である。
正確に彼以外の卓越した才能を持つ者達の存在による影響が大きいが、彼の存在が無ければ、あの世界で帝国は勝利することは無く、我々が知るドイツ帝国*1と同じ末路を辿っていただろう。
彼は創設されたばかりだった空軍*2に最初から属したパイロットであり、大戦においては帝国に対する愛国心と自身の貴族としての誇りを胸に空を駆け抜け、数々の大勝利を齎し、時には撃墜されながらも生き残り、最終的には戦争を生き延びて最終勝利すら齎した伝説のパイロットである。
その証拠に大戦後に撮影した写真には、キッテルが身に着けている空軍の制服の胸には、数々の勲章が付いている。帝国には悪魔の如く恐れられ、懸賞金すら賭けられるほどの技量を持つ最強のパイロットであった。
空のみならず、彼は陸にも猛威を振るい、一説には破壊神とも呼ばれた。
三年にも渡る大戦から数十年後、彼は自身の回想録をキッテル回想記『空の王冠』を出版する。
売れ行きは触れないでおくが、その数十年後に、空では無くベッドの上で他界。言葉に出来ない程これ以上ない幸せな最期*3であった。
そんなニコラウス・アウグスト・フォン・キッテルことニコの魂は、案の定、戦乙女たちに死した戦士たちの館、ヴァルハラ*4に招かれ、同じく招かれた英雄級のパイロット達と共に果てしない空戦を楽しんでいる。
現役時代や大戦後も含め、自分の為に制定されたと言って良い最高級の勲章を授与してからは、飛ぶことを制限されていた彼に取っては快適な日々であった。
煩い上司も居ないし、止める憲兵も居ない。身体も全盛期の健康体のまま。飯も酒も美味い上、住み心地も最高で、ずっとヴァルハラに居たいとすら思えるほどだ。
ヴァルハラにも全盛期の自分を打ち負かすパイロットも居り、空戦にも飽きることは無い。
だが、ある日を境にそのパイロット達は殆ど消える。やがてはヴァルハラに居るパイロットは、自分一人となった。
何が起こったか?
その疑問をぶつけるべく、キッテルは自分にとっては鬱陶しい喋りをする従者の男に問う。
「カマト、みんな何所へ行ったのだ? 誰も居ないぞ」
金髪碧眼と言うアーリア系の容姿を持つニコラウス・アウグスト・フォン・キッテルことニコは、カマトと呼ばれる従者に、自分と同じパイロット達は何所へ行ったのかを問うた。
ここ戦闘機パイロットの間は、様々な世界や時代からやって来たエースパイロット達が集まり、日々切磋琢磨する場だ。女性やサイボーグを含めて様々なパイロットや戦闘機が集まり、キッテルにとってはとても飽きる事も無い刺激的な日常だ。明日になればまた新しいパイロットと機体がやって来るので、楽しみは尽きない。
だが、そんな日々も今日を持って終わる。自分が一勝しか出来なかったパイロットも含め、皆が何処かへ消えてしまったのだ。
「あっ、キッさんすか? 誰も居ない? あぁみんな、戦女神さまのご指名入って、現世にリボーンしてバトル中っすよ」
「なに、現世に呼び出されて戦っている…!?
ラグナロクまで遥か先だと思っているニコに対し、カマトは変な口調で現世の現状を告げる。
「いや~それが現世もラグナロクなんすわー。超ヤベー物量を持つアーミーが、異界に大侵攻しまくって、こっちにも来たつぅーか。更にそんなヤベーのが二つも同時に攻めて、ワルキューレ激ヤバな感じなんすわ~。JK語で言えば、やばたにえんな感じなんすよ」
「お前の喋り方は余り理解できぬが、とにかく現世が危なくて、我らヴァルハラの住人の助けが必要なことは分かったぞ。でっ、私に指名は?」
自分には余りに理解できない喋り方に、キッテルはある程度の事を理解すれば、自分の使命が無いのかと問う。
「それがキッさんまだご指名無いんですわ、ちょっと、確認しますねー」
現世が最終戦争状態と聞き、キッテルは自分に指名が無いのかと問えば、カマトは懐からスマートフォン*5を取り出し、画面をタップしてキッテルの指名と言うか、召喚しようとする召喚士を調べる。
二分後、誰もキッテルの事を指名していないことをカマトは報告する。
「あぁ、今のとこ、誰も居ないっすね。待ってりゃ来るんじゃないすか?」
「待っているさ。来たら直ぐ報告してくれ」
「あの、キッさん? 指名されたら直ぐ現世にリボーンされるんですけど、聞いてます?」
話を聞かずに、キッテルはいつもの使っている席に腰を下ろし、日課と化している牛乳*6を飲み始める。
数分後、現世の戦況は切羽詰まっているのか、一人間に残されたキッテルにもお呼びが掛かった。直ぐにカマトは、牛乳を飲みながら読書をしているキッテルに知らせる。
「キッさん! ご指名っすよ!」
「遂に来たか…! なんだか、生き返るなんて言う体験…初めてだな…」
「まぁ、最初はそんなもんすっよ。そんじゃ、リボーンして存分にバトっちゃってくださいよ!」
「あぁ、分かった。数百年ぶりの実戦か。ここでは相当鍛えたから、大丈夫なはずだ」
遂に召喚されたことに、キッテルは嬉しそうに立ち上がり、生き返ると言う生前では考えられない経験をすることに緊張感を覚える。
そんな彼の緊張を解そうと、カマトは並大抵の人間には分からないことを言う。キッテルの緊張感は消えたが、それは苛立ちによってである。
身体が光りに包まれたキッテルは、そのままヴァルハラより姿を消し、現世へと召喚された。
現世へと召喚されたニコラウス・キッテルことニコは、事前に用意されていた大戦時の
召喚された現世の場所は、生前の自分と同じ世界のようであるが、今の走行中の車に揺られるキッテルは、再び生きて空を飛べることに喜びを感じていた。
自分が死んで数百年、あるいは数千年か。知らぬ間に驚異的な進化を遂げた兵器を前に不安な気持ちでいっぱいであるが、どんな敵と空戦を交えることになるだろうかの気持ちが勝っている。
基地に到着すると、早速出迎えの将校達が敬礼を行う。
言い忘れていたが、ワルキューレ*7はとても女性が多い軍事勢力だ。男は前の世界の軍隊と逆に全く見掛けない。男は最初に会った自分を召喚した召喚士と神官くらいである。
そんなことを気にせず、キッテルは前世と同じように将校らしく振る舞い、車から降りて敬礼を返した。長身の白人で金髪碧眼の美青年の鋭い眼差しに、何名かの女性将校は顔を赤らめた。
「出迎えご苦労。私はニコラウス・フォン・キッテル元帥大将…と、言っても諸君らの空軍には元帥大将なる階級は存在しないか。それもこの制服の階級章は大佐だな。つまり私は大佐扱いと言うことか」
敬礼した後にフルネームを一部省いて挨拶したニコは、身に着けている制服の階級章を見て、自分の扱いは大佐だと判断する。出迎えた初老の女性将校、基地司令官の少将はそうであると頷き、キッテルを基地内へと案内し始める。
「えぇ、そうです。司令部より貴方を大佐扱いにするように命じられています。では、基地内を案内します」
基地司令官の案内に従い、キッテルは彼女の後に続いた。基地内は生前の空軍基地より数百年は進歩しており、天才過ぎる発明者である自分の弟*8でも、一生掛けてもここまで発展させることは出来ないだろう。
当のキッテルは基地の設備よりも、格納庫にどんな航空機があるのか気になった。滑走路の方を見れば、ヴァルハラで幾度か交戦したバルキリーと呼ばれる複数の可変戦闘機が離着陸を繰り返している。他は爆装したジェット攻撃機があるが、キッテルの興味を引くほどのデザインでは無い。
遂に格納庫へ行くと、キッテルの興味を引くほどの機体が駐機されていた。
「おぉ、これは…!」
駐機されている機体を見たキッテルはやや興奮してか、基地司令官よりも前に出る。
「まるで子供みたいね…」
興奮しながらどの機体に乗れるかどうか楽しみにするキッテルを見た基地司令官は、まるで子供のようだと表す。事実、そのニコは燥いでいる子供のようであり、興奮しながら機体に触れて試運転して良いかどうかを聞いてくる。
「基地司令官殿、この機体の試し乗りをして良いか?」
「ちょっと可愛いですね」
「はぁ、ここは最前線基地なので、シミュレーターの方へどうぞ」
聞いてくるキッテルに副官がイメージとは違う彼の燥ぎ回る少年のような行動に愛らしさを感じる中、基地司令官はシミュレーターの方で勘弁してくれと告げる。
それからいくつかのシミュレータールームに向かい、そこで幾つかの機体を試した後、キッテルは乗る機体を決断する。
「では、私はこのVF-31ジークフリート、隊長機用のS型を所望しよう」
ニコが乗る戦闘機は、可変戦闘機のVF-31Sジークフリートを現世の愛機に決めた。
違う型ではあるが、ヴァルハラに居た時は同系の機体に乗って戦ったことはある。J型やF型に乗るヘルメットをしない少年のパイロット相手に*9、慣れ無い機体で何度か打ちのめされたことはあったが、百戦中三十敗の内、七十勝ほどは勝ち取った。
その前にバルキリーの三段変形の内、人型であるバトロイド形態には未だに慣れないが、鳥人間状態のガウォーク形態、航空機状態のファイター形態は完全に物にしている。
ヴァルハラで慣れ親しんだ機体を選んだキッテルは、いつ出撃を許されることや、何所の航空隊の所属されるか、あるいは編隊長にされるかを問う。
「私の出撃はいつになる? それと何所の所属になるか、あるいは私を長機にした部隊を編成されるのだ?」
「待ってください。今、持ってこさせます」
生き返って早々に早く飛びたかったキッテルは、今すぐにでもジークフリートに乗り込み、飛び立とうとする素振りを見せていた。
誰から見ても、飛びたいと言う衝動を隠さないキッテルに対し、基地司令官は止めて副官に空軍司令部より出された命令書を持ってこさせる。
数分後、命令書を持って来た副官から受け取った基地司令官は、命令書に書かれていた内容を見て眉を顰める。書かれていた内容は、とても自分には理解し難い物であった。
興奮するのを止め、不気味な速さで冷静さを取り戻したキッテルは、どんな内容なのかを問う。
「その様子だと、貴方には不快な内容だと分かるな。小官に見せて貰えまいか?」
言い辛そうな表情を浮かべる基地司令官に、キッテルは命令書を見せるように言えば、彼女は命令書を渡した。
命令書を受け取って内容を確認したキッテルは、書かれている内容を見てやや驚いたが、高笑いを始める。
「ハッハッハッ! 分かっているではないか! どうやら上層部は、この私に
書かれていた内容とは、ニコラウス・キッテルを単独兼独断行動を許されたワンマンアーミー*10とし、各基地の補給を許可なしに自由に受けられる権限を与えると言う物であった。
生前では絶対に出来ないと言うか、認められない権利を与えられたキッテルは大いに喜び、出撃準備を始めた。
「フッ、英雄と祭り上げられ、英霊として復活するのも悪くないな。これ程までに、自由に飛べる権限を与えられようとは! これはヴァルハラよりも凄い日々になりそうだ!」
出撃の準備を済ませ、コクピットに座り込んだキッテルは、これから起こるヴァルハラ以上の日々に胸を躍らせつつ、計器類に異常がない事を確認してから機体を起動させてキャノピーを閉めた。
それから操縦桿を握って機体を滑走路まで移動させ、パイロットスーツ専用のヘルメットを被って機能に障害が無いか確認する。
「機能は正常、無線機異常無し。管制官、聞こえるか? あぁ、こちらクロウ〇一*11。離陸したい。どの滑走路が空いている?」
無線機を起動させ、管制官にどの滑走路を使って良いかを問う。
この時、コールサインを決めていなかったので、キッテルは生前に使っていたコールサインで管制官に連絡した。
『こちらデルタコントロール、そのコールサインは当基地には存在しない。何者だ?』
「なんだ、腹いせか? あぁ、こちらは新しく配属されたと言うか、この機体を正規の手続きで受理したニコラウス・フォン・キッテルだ。そちらに私への報告は行っていないか?」
『暫し待て。確認する』
管制官はキッテルの事を知らないらしく、彼が正規の手続きを得て乗っているVF-31Sを受理したことを伝えれば、確認のために無線を切った。暫く待っていると、管制官からの無線連絡が入る。
『こちらデルタコントロール、空軍においてコールサイン、クロウ〇一の登録を正式に認められた。ようこそ、クロウ〇一。貴官のライセンスの最優先権に従い、離陸を許可する。六番滑走路が使用せよ』
「こちらクロウ〇一、感謝する。では、ライセンス持ちの名に恥じない働きをして見せる」
許可が下りれば、キッテルは指定された滑走路まで機体を移動させ、離陸体勢に移る。
「さぁ、久しぶりの空だ。ようやく飛べるな」
生き返って初めての空に、キッテルはやや緊張しながらもスロットルを全開にして離陸しようとする。ランディングギアが滑走路を離れれば、自動的に収納され、キッテルが駆るVF-31Sジークフリートは空を飛ぶ。
キャノピー越しから伝わる何百年か何千年ぶりの空の風、それも生きて感じることが出来たキッテルは、初めて空を飛んだ時の事を思い出した。
その次に初陣に敬愛する上司、腕を競い合った同僚、好敵手たちとの戦いなど、空を飛ぶだけで次々と思い出す。やがて十分な高度まで取れれば、キャノピー越しから見える空を見て、思わずキッテルは叫ぶ。
「フォォォォォ! 最高だ! 私を召喚してくれた者に感謝せねばな!」
生き返って再び空を飛べたことに、興奮しているキッテルは自分を召喚した人物に感謝したいと述べる。
生前では自分が勲章授与者と国内では英雄であったこともあり、死の危険が去った大戦後にも、事故があると言う理由で飛べる機会は余りなかった。
だが、今では自由に飛べる。それに自分がヴァルハラに招かれた戦士と言う事もあって、ワルキューレの空軍上層部は自由に飛べ、更には単独と独断行動も許されるワンマンアーミーのライセンスまでくれた。
ここまで優遇されて、期待している成果も挙げられなかったら、自分にそのライセンスをくれた上層部に申し訳ないどころか、会わせる顔すら無い。
「せっかくフェン・エップ元帥殿*12が絶対にくれることが無い好き勝手に出来るライセンスをくれたのだ。例えエルマーでも出さないだろう。その分の成果を出さなければ、上層部や空軍司令官殿に面目ない。さて、来世の敵軍パイロットの実力、どれほどの物か試させて頂こうか!」
必ず期待に応える事を、ワルキューレ空軍の上層部や総司令官に誓えば、キッテルはあるボタンを押して自機のVF-31Sをレッドバロンの愛機であるフォッカーDr.Ⅰのように赤く染め上げた後、攻撃機の編隊を追って前線へと向かった。
次回からは、その名の如く破壊の限りを尽くします。