破壊神キッテル(キッテル回想記『空の王冠』三次創作) 作:ダス・ライヒ
「っ!?」
突如となくやって来た連邦軍の見慣れぬ戦闘機からの攻撃に、ニコラウス・アウグスト・フォン・キッテルは直ぐに操縦桿を動かして回避行動を取って機銃掃射を躱した。直ぐに機体を立て直せば、自機を攻撃して来た敵機からの無線連絡が入る。
『よう、お前がニコチン・キッチンか?*1 俺は上層部からお前をぶっ殺せと命じられて殺しに来たジェンソン・パーキンス中尉だ。以降はブラックグリフィンと呼んでくれ』
自分を怒らせるためか、わざと名前を間違えて挑発して来るジェンソンに対し、キッテルは安い挑発に乗らず、自分の名前を訂正して伝える。
「初めまして、ブラックグリフィン。それと私はニコチンでもキッチンでも無い。ニコラウス・アウグスト・フォン・キッテルだ。まぁ、私との勝負を受けたことには感謝するが」
そんな無礼なジェンソンに正しい名前を伝えた後、キッテルは勝負を承諾してくれたことに感謝する。だが、相手は詫びることもなく挑発的な言葉を続ける。
『はっ! テメェの名前なんざどうでもいいんだよ! 何故ならこの俺が撃墜してやるからな! 何の英霊か知らねぇが、テメェを撃墜して大尉に昇進して、さらに名を挙げてやるぜ!』
「その意気込みは良し。だが、そう簡単にやられてやるわけにはいかんな!」
更に挑発を続けたジェンソンは、自身が駆るMig-29戦闘機に似たVH-7*2は攻撃を再開した。
凄まじい連射力を誇るガンポッドの掃射を躱しつつ、機体背部のウェポンコンテナのビームガンポッドで反撃するが、敵はエースであり、その攻撃を躱して倍返しをしてくる。
無論、キッテルはそれを避け、機体をガウォーク形態に変形させ、躱しながらの両腕の内臓ミニガンで反撃に移る。
『どうした、ミサイルは弾切れか? 乱れ撃てなくて残念だな!』
攻撃を避けながらも、ジェンソンは挑発を続ける。
今のVF-31Sジークフリートは完全な状態では無い。現状の最大が火力がウェポンコンテナのビームガンポッドのみと言うノーマル状態なのだ。
敵機の両翼を見れば、ミサイルを搭載している。狙われれば厄介な事この上ないので、直ぐに機体をファイター形態へ変形させ、ドックファイトに持ち込もうとする。
VF-31Sジークフリートは、VF-25メサイアと同じく純正のフォールドクォーツを使用している。それもキッテルが乗るためにワルキューレがオリジナルと同じ物を用意したので、あっと言う間にジェンソンのVH-7の背後に取った。
「後ろを取ったぞ! 機体性能の限界を…!」
『馬鹿が! こっちも可変戦闘機なんだよ!!』
「何っ!?」
背後を取ったと思ったが、VH-7が可変戦闘機であり、ロボットことバトロイド形態に変形する。その大きさは通常の機動兵器と同じく18mであり、両手にガンポッドを持てば、直ぐに掃射して来る。
毎分二千発もの機関砲弾を、キッテルは持ち前と言うか、ヴァルハラから帰って来た影響で強化された反射神経で避け、機体を苦手なバトロイド形態へ変形させてビームガンポッドを手に持って撃つ。流石にこの人間離れした避け方に、ジェンソンは驚愕の声を上げる。
『なっ!? ニュータイプかお前!*3』
「ニュータイプ? 私は新人類では無い!」
驚きの声を上げながらも、回避行動を取るジェンソンをキッテルは動じることなく追撃を加え、敵機がファイター形態に変形して逃げれば、追撃の為に自機もファイター形態に変形させる。
凄まじい速度のドックファイトだ。逃げているのはジェンソンであり、ニコが追撃側である。内蔵ミニガンを撃つが、VH-7は大型機にも関わらず、以外にも機動力が高かった。パイロットの技量の事もあるが、並の連邦のパイロットなら、ここまでキッテルを手こずらせてはいない。
「しぶといな。流石は大口を叩くだけの事はある!」
ジェンソンのしぶとさに、流石のキッテルでも、口が汚くて無礼な彼をエースであると認めざる負えなかった。
そんなジェンソンの助け舟と言うか、邪魔物が入って来る。同型機のVH-7一個中隊が、*4キッテルのVF-31Sに向かって来る。
『なっ!? 邪魔をするな!』
『お前にだけ手柄を取らせるか! 奴は我が中隊の獲物だ!』
邪魔に入った中隊とジェンソンの口論が無線機から聞こえる中、キッテルのバルキリーにミサイルが複数の飛んでくる。
「クッ、エースだけじゃないのか!?」
最低限のフレアを使いつつ、キッテルはミサイルを躱し、照準に入った敵機を逃すことなく撃ち落とす。
VF-31Sが放ったビームガンポッドを受けたVH-7がバラバラになりながら墜落していく中、ジェンソンに背後を回られてミサイルが発射される。
『邪魔が入ったが、ケツにミサイルをぶち込んでやるぜ!』
「下品な!」
ありとあらゆる方向からミサイルが飛んでくる中、背後からジェンソンのミサイルが飛んできたので、そこにフレアを撒いて躱したが、敵のエースはそれを読んでおり、躱した方向へ向けてミサイルを撃ち込んで来る。
「クッ!」
自機に向かって来るミサイルに、キッテルは機体をガウォーク形態にして急ブレーキを掛け、急激なGに耐えながら真下から仕掛けて来る敵機を撃破する。
手柄を横取りするために邪魔をしてきた中隊だが、ニコの技量の前に損害を拡大させる。既に五機以上がキッテル一人に落とされており、中隊のパイロットは退いた方が良いと中隊長に告げる。
『ちゅ、中隊長! 我が中隊の損耗率が!』
『ちっ! やもえん! 撤退する!!』
『お呼びじゃねぇんだよ! まぁ、感謝するがな!』
これに中隊長が撤退を選べば、VH-7の中隊は撤退した。
邪魔が居なくなったところで、ジェンソンは撤退する味方に感謝しつつ、再びキッテルを攻撃する。また執拗に追い回してくるジェンソンにキッテルは操縦桿を巧みに動かして躱し、反撃の隙が生じれば、逃さずに行う。
金魚のフンの如くしつこく背後を追って来るジェンソンに、キッテルはインメルマンターンを行おうとしたが、対策をしていたのか、操縦桿を上方に向けた瞬間にガンポッドの掃射が来る。
「ちっ!」
『インメルマンターンってか? やらせるかっての!』
自身の必殺技とも言えるインメルマンターンを封じられたキッテルが舌打ちする中、煽るように背後から追撃して来るジェンソンの煽りが無線機から聞こえて来る。
このまま決着が着か膠着状態が十五分も続けば、逃げ回っては予期できぬ反撃してくるキッテルに対し、ジェイソンは疲弊しきっていた。
『クソッ! あいつももう限界な筈だろ…!?』*5
ジェンソンは額に汗を浸らせ、疲労で呼吸を乱しているが、相手はそれを物とも動き回っている。この時のジェンソンは、疲労で判断が鈍っており、一時間以上はキッテルとドックファイトを繰り広げていると思っている。当のキッテルは十五分以上もジェンソンとドックファイトを繰り広げていると分かっていて、残弾とエネルギーの残量で早急に決着をつけねばならぬと判断する。
「そろそろ限界だな。だが、先に動けば負ける。ここは我慢比べだ!」
生前に戦闘爆撃に乗っていた時に撃ち落とされ、共に乗っていた機関銃手を担いで味方陣地に戻った経験のあるキッテルは決着をつける必要があると言ったが、先に動けば負けると思い、ジェンソンとの我慢比べを行う。
『そっちがその気なら、ぶっ殺してやるぜ!!』
相手も残弾が心持たないのか、先に動いたのは、連邦製バルキリーであるVH-7に乗るジェンソンであった。
残っているミサイルを全てキッテルのVF-31Sに撃ち込み、躱そうと残りのフレアを撒き始める敵機の動きを予想し、そこへガンポッドを撃ち込んだ。
「うぉ!? なら、肉を切らせて骨を断つ!」
流石のキッテルも被弾したが、肉を切らせて骨を断つ戦法を取る。
それはその名の如く、敵に撃たれながら敵に打撃を与える危険な技だ。キッテルは躊躇せずに実行し、機体をバトロイド形態に変形させ、敵機のガンポッドをピンポイントバリアで防ぎながらジェンソンのVH-7に近付く。
『正気か!?』
「うぉぉぉ!!」
これに驚いたジェンソンは機体をロボット形態に変形させ、コクピット部分がある胴体に照準を向けたが、キッテルはスラスターを吹かせて一気に近付き、両腕に内蔵されたアサルトナイフを取り出し、両手に持って敵機に突き刺そうとする。
『うわぁ!?』
相手の予想外の動きにジェンソンの対処は間に合わず、胴体にナイフを突き刺されて機体は機能を停止する。
『畜生! 貴族があんな攻撃をするのか!? 冗談じゃねぇぜ!』
貴族とは思えぬ攻撃に出たキッテルに、ジェンソンは悪態を付きつつ脱出装置を作動させるレバーを引いて壊れ行くVH-8から脱出した。
当の自分らしからぬ攻撃に出た彼は敵機に突き刺したナイフを引き抜き、それを両腕の収納スペースに戻せば、機体をガウォーク形態にして脱出するジェンソンを見る。
照準を向けていたが、キッテルは全ての兵装に残弾がない事に気付き、キャノピー越しからジェンソンに向けて、再戦を期待すると敬礼しながら告げる。
「ありがとう。楽しませてもらったよ。貴官との再戦を期待する」
だが、相手は聞こえていなかったのか、味方に回収された際にジェンソンが行った返答は侮辱的な物であった。
味方のウィンダムに回収された彼は、キッテルのVF-31Sに向けて中指を立てたのだ。*6かなり苛立っているとは言え、これは侮辱である。だが、キッテルは激昂せず、この返答を再戦への物として捉える。
「ふっ、その意気だ。では、基地に帰投するか。戦況はこちらが有利だしな」
ジェンソンことブラックグリフィンとの再戦を期待しつつ、キッテルは戦況を見て、こちら側が有利と判断して基地へと帰投した。
彼の見た通り増援として現れた連邦軍の軍団はワルキューレ空軍を前にして損害を拡大しつつあり、撤退する始末である。
やがてキッテルが戦場を離れた頃にはこの地区での戦闘は完全に終了し、ワルキューレの勝利に終わった。
戦闘終了後、統合連邦の首都にある統合参謀本部にて、戦果結果を聞いた参謀らは、自分等が予想していた敗北となったことで、新しい刺客の選別の為の会議をしていた。
「私がはじき出した勝率五十パーセントがパアになりました。正直、勝てると思いましたが…」
「パーキンス中尉はまだエースになって日が浅い。最初から熟練のパイロットを差し向ければ良かったのだ」
「でっ、次は誰にする? 三十機か四十機の撃墜数の奴以外で。五十機からが望ましい」
「ゴゾン大尉ならどうだ? 彼の撃墜数は五十九機、あのレッドバロン擬きにはこれしかない」
ジェンソンが倒された報告を聞き、会議室で参謀らがキッテルに差し向ける刺客を誰にするか白熱する中、総参謀長は連邦軍の頭脳らに新しい選択肢を与える。
「諸君、何も我が軍のエースで奴の撃墜に拘る必要はないだろう。そこで外人部隊、即ち傭兵パイロットを差し向けてはどうかな?」
この提案に何名かの参謀は難色を示し、何名かが反対の意見を述べる。
「総参謀長、それは駄目です。惑星同盟に何を言われるか…!」
「自分も同意見です。我が軍のパイロットが撃墜したことにしても、同盟軍はこのプロパガンダを見抜き、連邦は嘘吐きの弱虫集団と宣伝するでしょう」
「正規軍としての威厳を示すべきです」
総参謀長らの提案に大多数の参謀らが反対する中、彼は傭兵のパイロット達のリストを参謀らの端末に送る。
「君たちの意見は良く分かる。私も出来れば正規軍のパイロットでやりたい。だが、戦線が拡大し、前線の司令官は引き抜きに難色を示す。パーキンス中尉を引っ張り出すだけでも、相当な苦労をした。これを見て、何か考えが変われば良いが」
次々と出る否定的な意見に総参謀長は納得しつつも、各戦線の司令官たちがエースパイロットの引き抜きに難色を示すので、直ぐに呼び出せる傭兵こそが手軽であると告げる。
送られて来た傭兵パイロットのリストを見た参謀らは、誰がキッテルに敵うかどうかのパイロットを選び始める。
「総参謀長がそこまで言うなら、私も頭を捻りましょう。これが、私の出したキッテル対策の人選です」
一人の参謀が総参謀長の考えを理解すれば、彼は自分で選んだ人選のデータを、会議室に居る全員が見れる位置にある画面に送る。
そこに映し出されていたのは、問題児やら卑劣漢、虐殺に略奪などをした傭兵パイロットの名簿であり、このデータを見た参謀らは驚きの声を上げる。
「うーむ、皆、中々の卑劣漢だ。特に民間機を盾にして撃墜した奴も居るとは…! 人喰い虎のチョムまで居るぞ」
「冷酷で残忍な奴ばかりだな。貴族である彼に失礼ではないか?」
総参謀長がこのような残忍な傭兵らを差し向けるのは、貴族であるニコに失礼ではないかと、人選を図った参謀に問う。
「ですが、これくらいやらなければ、奴を撃墜できないでしょう」
総参謀長からの問いに対し、これくらいの者では無いとキッテルは倒せないと返答する。
これに総参謀長は同意したのか、直ぐに彼が選んだ傭兵を集めるように指示を出す。
「良かろう、次なる刺客は傭兵だ。さっそく彼らを呼び出してくれたまえ。ギャラの交渉は忘れるなよ? ふんだくられては困るからな」
キッテルに対する次なる刺客は傭兵と総参謀長が決めれば、会議は解散した。
次回は惑星同盟軍と戦わせたい所ですが、傭兵やら民間機盾にする奴とかと戦わせたいな…。