破壊神キッテル(キッテル回想記『空の王冠』三次創作)   作:ダス・ライヒ

8 / 10
今回は短めです。

キッテルにA-10攻撃機を乗せたら、最強じゃね?

それとc.m.様よりエルマーをトランスフォーマーにして良いと言う許可を得たので、立派なサイバトロンの科学者に転生したエルマーを登場させます。


サンダーボルト・キッテルⅡ

 A-10サンダーボルトⅡ攻撃機の試し乗りの為、砂漠の空を飛んだキッテルは、護衛のF-16戦闘機四機と共に攻撃のために敵戦車部隊を発見した。

 

『上空より敵機! 回避せよ! 回避せよ!!』

 

 キッテルの編隊に発見された59式戦車やT-62戦車で編成された戦車連隊は、回避行動を取るために散開し始める。*1

 連隊の中には80式対空戦車を装備した対空戦車中隊が居り、直ちに対空掃射が開始されるが、対空砲火に慣れ切っているキッテルはその弾幕を用意に避ける。*2

 

『クロウ〇一、あんただけで大丈夫か?』

 

 同じく対空砲火を避けるF-16のパイロットから、単独で戦車連隊を殲滅できるかどうかを問われれば、キッテルは頷く。

 

「私を誰だと思っている。諸君らは対空砲火を引き付けてくれれば良い」

 

『戦車連隊だぜ! あんたはルーデルじゃねぇんだ! 一個中隊を待った方が良いぜ!』

 

『弾は足りるのかよ!?』

 

「俺の獲物だ」

 

 戦車連隊を殲滅するなら援軍が必要だと味方は言うが、キッテルは自分の獲物であると返して単独で空襲を仕掛ける。

 戦闘機のパイロットらは呆気にとられるも、キッテルに言われた通りに、対空戦車に機関砲を撃ち込んで引き付けて攻撃機を狙わせないようにする。

 

「助かるな。では、まずは鬱陶しいのからやろう」

 

 F-16が対空戦車を引き付けている間、キッテルは確実に仕留めるべく、四発の対地ロケット弾を密集している対空戦車に向けて発射し、三両同時に仕留める。

 

『なんだこりゃあ! 三両一編に!?』

 

『冗談だろ!?』

 

 キッテルが三両同時に対空戦車を仕留めたことで、F-16のパイロットらは驚く。

 続けざまにGAU-8アヴェンジャーガトリング砲を一回と二回ほどトリガーを押して撃ち込み、二両を撃破した。

 残る対空戦車は自分等が標的にされていると分かれば、散開しながら対空射撃を続けるも、キッテルは逃げ回る戦車を機関砲で破壊しつつ、一両たりとも逃さずにロケット弾を発射して撃破し続ける。

 

『対空戦車中隊全滅! 各個に対空射撃! 戦闘機隊が来るまで回避を続行せよ!』

 

 空に対する対抗手段が砲塔に搭載している重機関銃のみとなった戦車隊は回避行動を続けるが、対空手段を失った戦車隊は敵攻撃機の良い的だ。

 上空に重機関銃を撃ち、必死で対空弾幕を張る戦車隊であるが、キッテルの前では無に等しい。

 更にキッテルの戦闘爆撃機手としての才能や、A-10攻撃機の凶悪な組み合わせにより、続々と砲塔が吹き飛んだり、撃破されて黒煙を上げる戦車の数は増えるばかりだ。

 

『全部やる気か…?』

 

 キッテルが地上に向けて機銃掃射やロケット弾を撃つ度に、爆発していく敵戦車を見て、F-16のパイロットらは全て撃破するつもりなのかと困惑する。

 事実、戦車隊の戦意はキッテルが立て続けに戦車を破壊した所為で崩れており、統制を失ってバラバラに逃げ回り、互いに衝突する戦車が続出している。混乱状態である。

 

「三ダース、いや、六ダースはやったな」*3

 

 キャノピーから見える黒煙を上げる戦車の数を見て、撃破した数をダース単位で数えれば、再び旋回して戦車に機銃掃射やロケット弾を浴びせ続ける。

 キッテルの乗ったA-10が旋回して機銃掃射やロケットを撃つ度に動いている戦車の数が減り、黒煙を上げる戦車の数が増えていく。炎上する戦車からは、脱出が間に合わずに全身火達磨となった戦車兵が飛び出し、獣のような叫び声を上げながら砂漠の上でのた打ち回る。

 脱出が間に合った戦車兵は、キッテルのA-10が飛び去るのを戦車の残骸に隠れて待っている。

 

「あら? クソッ、弾切れか!」

 

 逃げようとする残り一個戦車中隊を仕留めようと、空襲を掛けようとしたキッテルは機関砲を撃ち込もうとしたが、ここに来て弾切れを起こした。ロケット弾も弾切れであり、キッテルは一個戦車連隊を殲滅することは出来なかった。

 彼は悔しがっていたが、単機でこれ程仕留めるのは、熟練の攻撃機乗りでも不可能に近い。*4

 敵戦車連隊を殲滅できなかったが、敗走にまで追い込んだキッテルは喜ぶこと無く、全て仕留めきれなかったことを悔しく思い、基地へと帰投する。

 

「こちらクロウ〇一、弾切れにより敵戦車連隊殲滅できず。基地に帰投する」

 

 逃げて行く戦車中隊を見ながら、キッテルは無線機を使って基地へ帰投すると報告する。

 幸い、敵戦闘機隊が駆け付ける前に逃げ切る事に成功した。先に基地の方へ旋回し、帰路へと着くキッテルのA-10の後ろをF-16の小隊が続く。

 パイロットらはキッテルがやってのけた戦果を見て茫然とする。それもそのはず、なんせ百両以上もの戦車が撃破されて黒煙を上げているのだから。

 

『おい、百両は潰してるぜ…!』

 

『A-10一個中隊でも、こんなにはならねぇぜ!』

 

『ルーデルかよ、あいつ…!』

 

『これなら、一個師団も目じゃねぇ…!』

 

 余りのキッテルとA-10サンダーボルトⅡの組み合わせて出来た戦果に、パイロット達は一個機甲師団でも撃破できるのではないかとざわつき始める。

 キッテルのA-10や護衛のF-16小隊が飛び去った後、広い砂漠に残されたのは、百両以上もの黒煙を上げる戦車と、無残に焼けた戦車兵達の焼死体だけであった。

 このキッテルが単独で叩き出した戦果に、反乱軍は生き残りの戦車中隊から一個大隊分のA-10にでも襲われたのかと思っており、一機だと言う報告を信じなかったようだ。

 かくして、連邦に裏から唆されて反乱を起こした反乱軍は、恐ろしい敵と対峙する羽目になってしまった。

 

 

 

 その夜、キッテルが基地に帰投して、一度の戦闘で百両以上を撃破と言うルーデルでも出来なさそうな戦果を叩き出したことを祝っての祝杯が基地の食堂で行われる中、基地に潜入し、彼に関するデータを収集していたデストロン軍団の情報参謀サウンドウェーブは、人気の居なくなったところを見計らってラジカセ状態から元のロボット形態へと変形(トランスフォーム)して戻り、基地内に潜入させていたカセットロンに集合を掛ける。

 

「カセットロン、集合セヨ」

 

 特殊な電波を使ってカセットロンらを格納庫内に集合させる。

 集合時間は物の数秒であり、サウンドウェーブが基地内に潜入させた全カセットロンが格納庫内へ集合する。

 

「情報収集完了。全員、戻レ」

 

 そして元のカセットテープにトランスフォームして、サウンドウェーブの胸にあるデッキに戻って行く。カセットロンに命じて集めさせたデータを収集した。これでサウンドウェーブは、キッテルの詳細なデータを手に入れたことになる。

 

「キッテルニ関スル情報ヲ、戦闘記録モ含メテ収集完了。コレヨリ、基地ヘ帰投スル!」

 

 必要な情報とデータを全て収集したサウンドウェーブは、直ちに基地から脱出する。

 妨害電波を放ち、基地内のセキュリティーをダウンさせ、堂々と基地の上空を飛んでサウンドウェーブはデストロン軍団の本拠地へと戻って行く。

 基地を警備する警備兵や管制官らは、余りのキッテルの戦果を祝うために食堂へ集合しており、サウンドウェーブの妨害電波を防げないAIや自動システムに任せきりである。

 こうして、基地内の将兵らとキッテルは、反乱軍よりも恐ろしい潜入者の存在に一切気付くことなく、祝杯に興じた。

 

 

 

 デストロンと対を成す存在、正義のトランスフォーマーの集団であるサイバトロンの研究施設にて、とある青年がマシンの調整を行っていた。

 その青年の名は、エルマー・フォン・キッテル。キッテル回想記をご存じの読者なら知っての通り、ニコラウス・アウグスト・フォン・キッテルの弟にして、数々の発明で自国の帝国(ライヒ)を勝利に導いた発明の権威である。

 そんな彼は死後にスペースシャトルに変形するトランスフォーマー、それも人の姿にもなれるプリテンダー族に転生し、人の姿とトランスフォーマーの姿を使い分け、サイバトロンの科学者としてデストロンと戦いと発明品を開発する日々を送っている。

 

「エルマー、エルマー! 大変じゃ! 兄貴がデストロンに狙われとんで!」

 

 発明品の調整に人間状態で取り掛かるエルマーに、スポーツカー*5に変形するサイバトロンのエンジニアであるホイルジャックが、デストロンが兄であるニコラウスを狙っていることを知らせに来る。*6

 ホイルジャックの言うことに、エルマーは調整を止めて驚いて声を上げる。

 

「デストロンが、兄さんを狙っているだって!?」

 

「そうだとも! ブロードキャストが得た情報じゃぜ! 吾輩の計算に寄れば、もうおたくの兄貴の情報は盗まれてる頃やようて」

 

 サイバトロンの情報員ブロードキャスト*7が入手した情報と聞けば、エルマーは信憑性が高いと思って警戒する。

 

「それじゃあ、今から警告しに行っても無駄じゃないか! でも、兄さんならデストロンを打ち破ってくれるはずだ」

 

「んん、それならいいんだがのう。しかし、デストロンが強力な洗脳装置を発明しているかもしれんぞ。まさか、悪党について行く程のお人好しじゃあるまいな?」

 

「そんなわけが無い。僕の兄さんはそうホイホイとついてくるはずが無い、三歳児じゃないんだ。でも、僕も兄さんも貴族だ。デストロンがその手の手段に出れば、受けてしまう可能性がある。一応ながら警戒しないと」

 

 エルマーは身内なだけであってニコラウスの事を良く知っており、自国を勝利に導いた要因である兄ならデストロンも退けられると信じている。だが、科学者としてはキッテルがデストロンに捕らえられ、洗脳される可能性も高い。最悪の可能性も考え、エルマーは兄を助ける発明を考える。

 

「洗脳を解除するマシンを発明しなくては。もしもの場合に備えてね」

 

「吾輩も手伝うで! おたくの兄貴は、メガトロンが目を付ける程の暴れん坊じゃ! デストロンにでも洗脳されたら、ルーデルの二の舞ぜよ!」*8

 

 それが洗脳を解除するマシンの発明をエルマーが思い付けば、ホイルジャックも手伝うと告げ、二人の科学者はそのマシンの開発に取り掛かる。

 この様子を、同じくキッテルがデストロンに狙われているとの情報を得ている大型トレーラー*9に変形するサイバトロンのリーダー、コンボイもまた、対策を練らなければと思う。*10

 

「エルマーの兄を狙われる可能性が高いか。彼が属している組織、ワルキューレが非情な手段に出なければいいが…」

 

「彼女らは非情な軍隊ですよ。エルマーの兄貴を手に掛けるようであれば、我々が連中を懲らしめてやりましょうよ!」

 

「いや、それは駄目だ。我々は出来る限り、人間を傷付ける行為は避けねばならない」

 

 コンボイはキッテルがデストロンに洗脳された場合、ワルキューレが抹殺しようとする非情な手段に出るのではないかと心配すれば、バネットと言う車に変形するサイバトロンの警備員、アイアンハイドは気性の粗さからか、抹殺を行おうものなら実力で止める事を提案した。

 しかし、彼らサイバトロンはデストロンとは違い、か弱い生命体を無暗に傷つけたりしない正義の心を持った集団だ。アイアンハイドの提案にコンボイはワルキューレまで敵に回す可能性があると言って却下する。

 

「しかしそれでは図に乗るだけですよ! 連邦や同盟のように、少し痛い目に遭わせないと!」*11

 

 却下されて熱くなるアイアンハイドに対し、サイバトロンの副官であるスポーツカー*12に変形するマイスターは、割って入って彼を落ち着かせる。

 

「まぁ、落ち着けよアイアンハイド。友達のお兄さんが危険な目に遭わされる理由が分かるが、そうやって熱くなって突っ込むのは、お前さんの悪い癖だぞ」

 

「分かってるさマイスター。でも、仲間を助けず、助からないと決め付けて平然と撃つ奴を許せるのか? 俺の記憶回路では、いかなる理由があろうと、許せんと言ってますがね!」

 

「君の気持ちは分かるよ、アイアンハイド。だが熱くなるのは良くない。とにかく、スモークスクリーン*13たちを呼んで、対策を練らなくては。マイスター、直ちに彼らを集合させてくれ」

 

「分かりました、司令官。彼らを集合させます」

 

 それでも熱くなるアイアンハイドを宥めながら、コンボイはサイバトロンの戦略家や戦術家たちを集め、デストロンによるキッテル洗脳対策を練ろうと思い、マイスターに彼らを集合させるように指示を出した。

 

 果たしてキッテルは、デストロンの魔の手を打ち砕くことが出来るか?

 

 次回をお楽しみに!

*1
一個大隊を四五両とすると、三個大隊編成の連隊なら一三五両となる。

*2
反乱軍の戦車連隊は、三個戦車大隊とその他三個中隊で編成されているようだ。整備大隊は見られない。

*3
一ダースは十二個。

*4
ルーデルにA-10を乗せて戦車連隊に空襲を掛けさせても、全て仕留めるのは不可能だろう。

*5
ランチアストラトス・レーシングタイプ・グループ5である。

*6
喋る時は両耳が光る。

*7
ラジカセに変形する。

*8
ルーデルも英霊として蘇っており、デストロンに洗脳された際は、正義の戦士たちにとって最悪な状況であったようだ。

*9
フレイトランナーCOEがモチーフ。

*10
戦闘力、人事面、決断力は高く、サイバトロンでは最も信頼されているリーダーである。

*11
こう見えてもアイアンハイドは警備員である。若者相手には穏和な態度を取ることもある。

*12
ポルシェ935に変形。

*13
フェアレディZに変形。




キッテルの戦車襲撃シーンは、エリア88のOVA一巻の最初のシーンを参考にしました。

いざ書いてみると、思った以上に短かったので、サウンドウェーブの脱出やサイバトロンの科学者に転生したエルマー、サイバトロン達の登場を書きました。

次回は人喰い虎か、民間機ごと人を撃つような奴と戦わせる予定です。スタースクリームも出るかもよ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。