まずは名前だ。俺の名前はデウス。走り書きで黄ばんでボロボロの紙に書く。そして年齢は一億歳くらいがいいとこだろう。種族は神に当てはまるのだろうか。神と書いてみたが文字はすぐさま消えた。なるほど神じゃない種族ではないとだめなのか。だとすると俺はヒューマンだろう。そして容姿をいじる必要はない。今の姿こそ全ての生物の完成形なのだ。最後に五つだけ要望を聞いてくれるらしい。まず一つめは武器だ。俺が今ここで創り出した神の武器を一つだけ持っていけることにしよう。そして脳内に武器のイメージを思い浮かべる。構想を練り、形を思い浮かべるとそれは俺の目の前に出てきた。あとはこれに仕組みをのせよう。最高に美しい仕組みを思いつきこの美しい武器にのせた。
そして二つ目だ。それはこの武器を扱う能力だ。全能である今はこれを扱えるが転生したら人の身になる。そうなってしまえばある程度の能力がないと神が創り出したこの武器は扱えない。
三つ目は俺の能力を常人以下にすることだ。二つ目と矛盾しているような気がするがそれは大丈夫だ。四つ目で努力を重ねればどこまででも強くなれるようにしておこう。全能には飽きた。考えれば欲しいものが出てきて好きなことが出来てなんでも分かってしまう。そして都合がいいことに全能などと言っておきながら死ぬことだけは出来ない。全能を得てこれがとんでもない生き地獄だと知った。
最後は今の記憶を受け継ぐことだ。全能であった記憶を引き継ぐことで知れる何かがあるのかもしれない。
五つの望みをボロボロの紙に記入した。書き漏らしはない。これを机の上に置いてしばらくすると全ての神を司る神のサインが刻まれボロボロの紙は消えた。そして自分の後ろに魔法陣が現れた。
転生の準備は整った。あとは俺を生贄にして新しい俺になるだけ。俺は躊躇うことなく魔法陣の中に立った。優しい暖かさが俺を包む。
デウス。今から貴方を別の世界に転生させます。次の世界は「ダンジョンに出会いを求めるのは間違いだろうか」
です。約五億年間の神としての勤務、お疲れ様でした。
転生は成功したようだった。視界には雲に覆われて雨が降る空が写っている。そして身体を濡らす雨と頬をなぞる冷たい風に俺は察した。多分捨て子としてこの世界に出現してしまった。転生したらどう生まれるというのは運なのだ。変えられることではないのだ。全能の時に味わえなかった絶望をいきなり味わった。木箱に入れられて路地に捨てられた俺を通り掛かる人全てが見るのだ。それは恐怖だった。人というものへの恐怖だ。身体が冷たくなっていく。転生していきなり死ぬのだろうか。そう思っていると俺を影が覆った。
「雨の日にかわいそうにね」
浮遊感が全身を支配した。抱き上げられるということはこんな感覚なのか。存外に心地いいものだった。
全能はある意味赤子と同じなのかもしれなかった。