ヒエラルキーリセット   作:正直者ライアー

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入団試験

希望者同士のトーナメント戦
トーナメント戦では戦闘不能にするかもしくは確実に相手を殺害できる状況に持ち込まれば勝利
上位8名が入団資格をもつ
その後の面接で問題なければ入団可能




激しい

全能だから歩けた喜びは知らなかった。全能だから食べれる喜びは知らなかった。全能だから死ぬ恐怖は知らなかった。全能だから親のありがたみも知らなかった。全能だから生きる喜びも知らなかった。

 

 

 

 

 

 この18年間はかつてのように呆然と日々を喰らうだけじゃダメだった。何も与えられていない分周りの手を借りながらも自分で獲得していかなければいけなかった。捨て子だった俺を拾ってくれた彼女は俺に言語を教え、歩き方を教え、戦い方を教えてくれた。彼女が自分に生き方を教えてくれた。そしてもう一人で生きていける俺はオラリオへと向かうのだ。

 

「もう行くのかい?」

 

こっそりと扉を開いたはずなのに彼女は気づいてしまったようで俺に声をかけた。

 

「ああ。早いうちに出ないと昼までにつかないからな」

 

「そう。立派になったわね」

 

彼女は俺の姿を一瞥するとそう言った。

 

「そうそう、これを持って行きなさい」

 

彼女が差し出したのは紋章が刺繍された布に包まれた細長い何かだった。

 

「私が冒険者をしてた時に使っていた剣よ。貴方はすでに素晴らしい武器を持っているけどたまに使ってあげて頂戴。ここで眠らすより貴方が連れて行ってあげた方が喜ぶわ」

 

「分かった」

 

そして歩き出した、が振り返ってしまった。少し寂しかった。

 

「また今度戻る」

 

「いつでも来なさい」

 

今度こそ振り返らない。俺は前を向いて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オラリオは想像の数倍賑やかな街だった。メインストリートに出ると種族様々な人間が入り交い沢山の言葉が飛び交っていた。初めての光景に少し心を躍らせた。まずは宿を見つけ昼食を取りたいところだ。ファミリア探しはそれからだ。

 数分前、自分は確かに宿を探していたはずだ。それなのに今は来たこともない路地裏を全速力で駆けている。少し後ろをみると屈強な男達が怖い顔で俺を睨みながら迫っている。俺もさらにスピードを上げたが目の前には大きな石壁があった。要するに行き止まりだった。なぜこんなことになったのだろう。俺は少しも悪いことはしていないはずだ。ただ歩いていたら囲まれた。

 そんなことを考えているうちにも行き止まりで動けない俺に奴等が迫ってくる。彼等は皆一様に顔面に気色の悪い笑みを浮かべていた。こうなったら戦うしかない。俺は拳を握ると最前の男を殴り飛ばした。

 思えば、この世界に来て訓練以外で人を思い切り殴り飛ばしたことはなかった。ぐしゃりと肉が潰れる感触がひどく不快だ。上手い具合に拳が直撃したようで俺が殴り飛ばした男は泡を吹いて倒れていた。そしてそれをみた他の男達は激昂して彼等の腰にさしている短剣だの剣だのを抜いた。

 もうこれは喧嘩じゃない。奴等は完全に俺を殺しに来ている。初めて来た街でいきなり殺し合いをすることになるなんて予想外のさらに斜め上すぎて誰も考えないだろう。俺は割と晴れやかな気分で歩いていただけなのに。

 拳で相手をするには無理がある。彼等は冒険者だ。武器の扱いに長けているのだろうし、剣と拳のリーチの差は大きい。俺は背中に背負った二本の剣の一つを抜いた。俺がかつて創り出した剣だ。日本、この世界では極東の刀によく似ている武器だ。薄く細く長く綺麗に光る刀身が血の気の粗い冒険者達を威嚇した。

 

「あいつぶっ殺してあの剣奪え!」

 

 彼等は自分達を鼓舞すると切り掛かってきた。殺すわけにはいかないから武器を割るか足か腕を切るか。剣を構えていると降りかかってくる斧が見えた。俺は斧の間合いに潜って刃を振り上げた。俺の振った刃が斧の木の柄に当たり、切り裂いた。瞬時に相手の得物を破壊した俺を見て冒険者達がざわついた。そして頭に血の昇ったまま二人目を手にかけようとした時、何者かが彼等の後ろから来たようで彼等は焦って逃げ出して行った。薄暗い路地裏に急に一人になり俺は立ち尽くした。そして冒険者の後ろ、俺の前から来た人物達が俺に話し掛けた。

 

「やぁ。こんにちは」

 

「どうも」

 

 髭を結んだドワーフの男性と緑髪のエルフの女性。最前に金髪の小人族。よく分からない取り合わせだ。

 

「路地裏で喧嘩があると聞いて見に来たんだ。君はもうファミリアに所属しているのかな?」

 

金髪の小人族の男性が僕に話しかけてきた。

 

「いや。今からファミリアを探すところだ」

 

そういうと彼等は何かをヒソヒソと話し出した。

 

「済まない。申し遅れた。僕はフィン・ディムナ。ロキファミリアの団長だ。そしてガレス、リヴェリアだ。実は今の戦い見せてもらったんだけど君には冒険者としての素質を感じた。明日からロキファミリアで入団試験を行うんだが君も来ないかな?」

 

「マグナ。マグナ・アテルニトス。是非参加させて欲しい」 

 

俺はフィンに差し出された手を握った。フィンはポケットから羊皮紙とペンを差し出すと入団試験の場所と時間を書き、サインをすると俺に渡した。

 

「明日入団試験の時にこれを門番に渡せばいい。待っているよ」

 

「分かった。感謝する」

 

 急に不良冒険者に絡まれ、その後にファミリアの勧誘を受けるとは思わなかった。身体がくたくたで腹もペコペコで俺は露店で適当に干し肉を買うと一番安い宿屋に入り、眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝早く起きた俺は風呂に入って身体を清めると戦闘服とまではいかないが動きやすい服に着替えて剣を一本腰に差し、もう一本は布に包んだまま背中に背負った。

 迷いながらもなんとかロキファミリアの本拠に着くとそこには沢山の冒険者が集まっていた。俺は昨日フィンからもらった羊皮紙を門番に見せると案内された。そして暫く椅子に座って待っているとファミリアの団員に呼ばれた。どうやら俺の番が来たらしい。

 中庭に出ると大きな円形の戦闘場があり、冒険者達とファミリアの団員が囲っている。俺は戦闘場の中に入ると腰に差した剣を抜いた。

 相手は鎧を纏った大男だ。長い剣を構えて俺の方を向いている。

 

「制限時間は五分!どちらかが戦闘不能になれば終わり!使えるものはなんでも使え!」

 

「構え!」

 

「始め!」

 

旗が振られて戦闘が始まった。そして旗が振り下ろされると同時に男は突進してきた。跳馬のように飛び越えると歓声が沸いた。男は振り返り、また突進してくる。今度は飛び乗り、鎧の隙間から見える首の付け根に刃を突き立てようとすると審判による停止が入った。

 

「判定員の皆さんどちらが勝利か判定をよろしくお願いします」

 

三人の判定員のうち俺に挙げられた札は三つ。俺の勝ちだ。礼をすると闘技場を後にした。

 数分後、俺はまた闘技場へと呼ばれた。大体試合は一周したようで参加者の半分は振い落とされたようだった。危なげなく二人目を倒し、また次へ。

 朝から始まった選抜が夕方になるころには100人以上いた人数が8人に絞られていた。そしてこの8人が入団者になるのだ。まとめて同じ部屋に移されて待っていると団員が俺を呼んだ。

 

「これから面接をします。質問に答えるだけなので安心して下さい」

 

そう言われて木の大きな扉が開いた。

 

「やぁ。マグナくん。昨日ぶりだね」

 

「こんばんは」

 

そういうとフィンは椅子を指して座っていいよと言ったので俺は座った。

 

「さっきの戦いは見事だったよ」

 

「ありがとうございます」

 

「どこで訓練したんじゃ?」

 

フィンではなくガレスが質問をしてきた。

 

「母に戦い方は教えてもらいました」

 

「家名はなんというんじゃ」

 

「アテルニトスです」

 

「なんと、、」

 

場がざわついた。そしてリヴェリアが尋ねてきた。

 

「リオは元気にしているか?」

 

母の名が出てきて少し驚いた。冒険者をしていると聞いていたが意外に有名だったのかもしれない。

 

「はい」

 

そして暫くの間質問に答えて終わった。他の7人も同様に終わったらしく全員問題なく入団が許可された。

 

 

 

 

 

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