ヒエラルキーリセット   作:正直者ライアー

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マグナの魔法とスキル

〈魔法〉
【精霊踊り】

〈現を彷徨いし精霊よ。力をかしたまえ〉

自分より下位にある精霊を扱うことが出来る。戦闘、もしくは回復も出来る。
精霊を目視できる

〈スキル〉 
【祝福】
ステイタスの成長速度上昇
精霊を扱える
(常時発動)


正義心によく似た自己満足

 朝焼けに照らされて輝く白金の髪とガラスの破片のような目が、どんなに腕の立つ鍛治師にも造れないような美しい剣を振る姿が、美しくて綺麗で仕方なくて。彼を一目見たとき私の時間が止まった気がした。触ればすぐに崩れてしまいそうな程の脆さと、何度でも立ち上がる泥臭い強さの矛盾の美しさが私の目と頭に焼き付いて離れないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺がダンジョン探索を初めて暫くの時が立ち、一人で潜れるほどには慣れてきた。十階層までの敵なら相手ではなく、十階層を過ぎて十二階層までの敵なら慎重に戦えば倒せるようになった。

 今日は十二階層まで一人で進もうと、朝食を食べるとすぐにダンジョンに潜った。

 ゴブリン、コバルト、ダンジョン・リザード、フラッグ・シューター。雑魚を狩るだけの作業に飽きた頃に出てくるのはウォーシャドウ。新米殺しと言われるこの敵は他の雑魚より一味違う雑魚だが所詮は雑魚で相手にならない。そしてキラーアント。一体一体は雑魚だが集団を呼び寄せるのがとにかく厄介だ。火炎瓶でまとめて焼き払って殺しながら進み、次の階層へと下ると霧に覆われたエリアに出た。夢中になって進んできて、十階層に到着した。

 ここからは豚頭人身のモンスター、オークや少し頭の良いインプが出てきて慎重な戦いが要求される。

 そして十一階層に現れた時、俺は空気の違いを感じた。まさに違和感だ。普段はいないものがいる感覚。何より他のモンスターが少ない。そこにある脅威から明らかに避けているように。そして俺は迫る殺気に顔を上げた。赤い鱗に鋭い眼光。鋭い牙を剥き、咆吼をあげた。すると竜の手に何かが掴まれているのが見えた。竜の咆吼とは違う音が聞こえた。人の悲鳴だ。

 リヴェリアは敵わないと思う敵がいたらすぐに逃げろと言った。特に一人で行動するときは見たことのない敵と知らない敵には挑むなと言った。

 リヴェリアの忠告と悲鳴と咆吼が頭の中を駆け巡る。俺は刃を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 いつもと違う十一階層を駆ける。他のモンスターが逃げ出していてよかった。いざとなったら背中に背負った剣も使おう。

 こいつがインファント・ドラゴンとやらか。リヴェリアに教えてもらったことがある。十一、もしくは十二階層にまれに出現するモンスターでレベル1が戦う相手ではない。これと戦ったと知ったらリヴェリアは怒るのだろうか。そんなことを思いながら俺は竜の腹を刃で斬りつけた。堅い鱗が刃に当たった感触がして鋭利な刃が鱗を切り裂いた。竜はまだ手に握る人を離さない。やっぱり強い。俺の刃で鱗を数枚切り裂いたとて特に怯むこともなく、俺を睨みつけて威嚇した。これだけで終わりではない。一撃、二撃、三撃と叩き込む。一つ一つは大した攻撃ではないかもしれない。それでも積み重なればダメージは大きくなるはずだ。竜の腹は傷だらけになった。すると竜が大きな咆吼をあげた。そして次の瞬間、赤い炎のような光を纏い、消える頃には俺が刻んだ傷がなくなっていた。そして遂に手に握る人を離したのと同時に、俺に火を吐いた。

 絶望だ。こんなの絶望しかない。なんとか与えたダメージも無くなってしまうなんて。攻撃を避けながら倒し方を捻り出す。再生される前に攻撃を叩き込みまくって殺し切るか、再生すら追いつかないほどの傷を与えるか。倒し方はそのどれかでそれを実現するには何をすれば良いのか。

 一つ目をするには竜の弱点を順番に狙い、怯ませ続けばいい。しかし竜の身体は堅い鱗で覆われていて弱点なんてほとんどない。強いて言えば目だ。

 二つ目をするには。再生できない程の大きなダメージ、それこそ頭をもぎ取りでもしなければいけない。頭をもぎ取るにしては細くて薄い刃だ。そもそも刃の用途が違う。

 そんなことを考えていると竜の拳が直撃した。俺の身体は吹き飛ばされて、ダンジョンの壁に打ち付けられた。全身を鈍い痛みが遅い、白金色の髪を血が濡らした。

 そもそもこれに挑んだのが間違いだったのかもしれない。だけどあの悲鳴を聞いた時、逃げる気はしなかった。それが人間だけが抱く正義心に似た自己満足だと分かっていても、意味のないものだと分かっていても刃を抜いてしまったのだ。気づけば俺の目の前を炎が覆っていた。足や、腕や、身体が焼かれて死にそうになった時、目の前に黄金色に光る大剣があったのだ。紋章の付いた布はチリチリと焦げて灰になっていくが、それは竜の炎ではなくて自身の力によるものに見えた。

            「今こそ自分を使え」

剣がそう言っているようにみえた。

 

「大丈夫ですか!」

 

竜の身体にどこからともなく飛んできた矢が刺さり、竜の気がその方にむいた。すんでのところで焼き殺されずに済んだ。矢の方向には俺が先程助けた人がいた。ここまできたら立ち上がらないわけにはいかない。倒されたら何度でも立ち上がる、それが俺だ。焼けた足と腕を使って醜く立ち上がって、目の前の黄金の大剣を掴んだ。

 俺はもう一度駆けた。壊れた身体を無理矢理動かして、未だ弓使いに夢中の竜の背中を駆け上がって、頭まで登った。そして後頭部側から自分に向かって刃を刺すようにして竜の目を刃で刺した。竜が哭く。視界を失って暴れる竜にしがみついたまま、首に大剣を振った。鱗がぐしゃりと潰れて、丸太のような竜の首が地に落ちた。

 首が落ちた竜は数秒の間、自分の首が無いことに気づいていないように暴れたが、やがてピタリと動きを止めた。

 殺した。遂に殺した。

 

「や、やりまし、た」

 

弓使いが安堵したように膝から崩れ落ちた。そして暫くすると焦ったように俺の元へやってきた。

 

「助けていただいて本当にありがとうございます!」

 

 そう言うと彼女は俺の身体を見て驚いた。焼けて真っ赤だ。ポーションは掛けたが再生には時間がかかるだろう。なんとか声を出そうとすると彼女は話さないでくれと言った。

 

「この傷はポーションでは治りません。エリクサーがあるといいんですけど高価なものなので私も持っていません。多分ハイ・ポーションなら治りやすくなると思うので掛けておきますね。それとファミリアと名前が分かるものは有りますか?」

 

そう言われて俺は首から下げたタグを見せた。もしもの時の為にリヴェリアに持たされていたものだ。

 

「ロキ・ファミリアのマグナさん。わかりました。それでは肩を貸しますので上へ行きましょう」

 

「申し遅れました。私はアポロン・ファミリアのシオンと申します。苗字はありません。それでは行きましょう」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全身を覆う痛さに俺は目覚めた。この空間は真っ暗でもう夜だと言うことは分かった。そして白い布団が俺に被さっていて、寝る前の記憶が薄い。ただ竜を倒したことは分かった。焼かれたことも分かった。段々と記憶が蘇ってきて、シオンという女性に助けられたことも分かった。そこで自分の状況を理解した。

 肩を貸してもらっている最中に俺はとうとう力尽きて気絶してしまった。それでもシオンは頑張って運んでくれたらしい。

 俺は痛む身体を起こして周りを見た。するとすぐ隣に、アイズが椅子に座ったままベッドに寄りかかるようして眠っていた。ずっと看病してくれていたのだろうか。それにしても暑い。俺はベッドから手を伸ばして近くの窓を開けた。そしてその音に気付いたのか、アイズが目覚めた。

 

「マグナ?起きた?」

 

「ああ。すまなかった」

 

「良かった。ほんとに怖かった」

 

アイズが感情を言葉にすることは少ない。それ故に今の怖かったという言葉が本心だと分かった。

 

「ずっと起きなかったから」

 

「その間見てくれていたのか?」

 

「、、、うん」

 

「すまない。ありがとう」

 

アイズは安堵し切って、伸びをした。

 

「身体、痛い」

 

「変な場所で寝たからだな。来い」

 

俺は自分の隣を叩いた。するとアイズは顔を真っ赤にしてやってきて、俺の隣に横になった。

 

「マグナっていつもわざとやってるの?」

 

「?なんのことだ?」

 

「、、、知らない」

 

俺は隣に人がいる安心感とわけのわからない鼓動と共に眠りに落ちるのだった。

 

 

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